真・恋姫†無双 ご都合主義で萌将伝!   作:AUOジョンソン

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「あ、私はこの水着がいいですっ」「あわわ・・・じゃあ私も、朱里ちゃんと一緒のにしようかな」「・・・読みどおりだな。じゃあ胸元に名前を書いてっと・・・」「成人女性がスク水着てて胸元に名前って・・・」「しっ! ばれなきゃいいんだよ!」


それでは、どうぞ。


第四話 蜀での水泳大会に行くために

いつもの政務中、桃香からこんなことを言われた。

 

「久しぶりに、ご飯を一緒に食べに行かない?」

 

「・・・そうだな、久しぶりに一緒に街へ行ってみるか」

 

「やったっ。それじゃ、がんばって終わらせようねっ」

 

「おお、やる気だな」

 

「もっちろん!」

 

そう言って先ほどよりも早く筆を動かす桃香。

よほど街で息抜きできるのが嬉しいらしい。

これは、俺がしっかりとリードして、桃香に楽しんでもらわないとな。

俺も桃香に負けないように筆を動かしつつ、どこに行こうかと頭の中でプランを組み立てていった。

 

「・・・よしっ、終わったよ、お兄さん!」

 

「ん、俺もだ。じゃあ、行くとするか」

 

「はーいっ」

 

元気に返事をする桃香を見て自然と笑みが浮かんでしまう。

さて、どうするかなぁ。

 

・・・

 

「桃香はどんなものが食べたいんだ?」

 

「ん? んー、ちょっと暑いから、軽いものが食べたいかなぁ」

 

「ふむ・・・じゃあ、饅頭にするか。アレくらいなら、ちょうどいいだろ」

 

「うんっ」

 

そんなことを話しながら目的地まで歩いていく。

最近暑いねー、とか、他愛も無い話題でも、桃香は嬉しそうに話す。

 

「お、ここだ。すいませーん」

 

「はいよ! おや、ギル様じゃないか。今日は劉備様と一緒なんだね」

 

「へー、お兄さん。今日『は』ってどういうことなのかなぁ」

 

にっこりと笑顔でこちらを振り向く桃香。

 

「どういうことなんだろうなー。と、桃香は何にするんだ?」

 

「・・・じゃあ、肉まんにしようかな」

 

「分かった。肉まん二つください」

 

「はいはい、ちょっと待っててくださいな」

 

そう言って奥へと引っ込むおばさん。

いつも大量に買うときにはお世話になっているので、顔も覚えられていたのだろう。

・・・いつも、鈴々とか恋たち大食いの将とくるからなぁ。タイミングが悪かったな。

 

「はい、肉まん二つ。お待ちどうさま」

 

「ありがと。代金は・・・っと」

 

こっそり宝物庫を開き、お金を取り出す。

それを渡すと、おばさんはうん、ちょうどだね。まいどありー、と大きな声をあげた。

俺と桃香は饅頭屋を後にして、歩きながら肉まんを食べる。

 

「あ、あそこの木陰に座ろ、お兄さん」

 

「おお、いいな。涼しそうだし」

 

そう答えると、桃香は俺の手を引いて小走りで木陰へと連れて行く。

そのまま木の根元へ座り込んだ桃香に習うように、俺も腰を下ろす。

 

「ふえー・・・。涼しいねえ」

 

「年寄りみたいだな」

 

「むー! 女の子にそういうこと言ったらだめなんだよ、お兄さん!」

 

そう言って肉まんを持っていない手で俺の頭をぽかぽかと叩いてくる桃香。

ごめんごめん、と謝るが、心が篭ってなーい! と機嫌を直してくれない。

 

「ちょっとした冗談だよ。ほんとにそんなことは思ってないから」

 

「・・・ホント?」

 

「ああ」

 

「なら、いいよ」

 

「ありがと」

 

そう言って桃香の頭を撫でる。前に撫でてほしいって言ってたしな。

突然のことに驚いたみたいだったが、すぐにこちらに頭を寄せてきた。

 

「ん~・・・。お兄さん、頭撫でるの上手だね」

 

「慣れてるからかな」

 

「ふふ。・・・ん、なんか、ねむ、く・・・」

 

桃香は呟く様にそういうと、俺に完全に体を寄りかからせてきた。

寝息が聞こえるので、眠ってしまったんだろう。

 

「全く、また睡眠時間削って勉強してるのか?」

 

以前も桃香は他の王に負けないように、と政務の勉強をしていたことがあった。

その時は睡眠時間を削って勉強していたためか、常に眠そうな顔をしていたのを思い出した。

 

「・・・にしても、こっちのほうが肉まんっぽいよな」

 

俺の腕を抱きこむようにして眠ってしまったので、桃香の二つの凶器が腕に押し付けられているのだ。

全く持ってけしからん。

 

「ふにゅう」

 

奇妙な声を上げながら、桃香がさらにこちらに密着してくる。

 

「全く、可愛いなぁ、うちの王様は」

 

ゆっくりと腕から離れさせて、胡坐を掻いている俺の脚に桃香の頭を乗せる。

女の子が男に膝枕をされて嬉しいのかは分からんが、座ったまま寝るよりはましだろう。

幸いにも木の周りは芝が生い茂っている。体を痛めることは無いだろうが、あまりにも寝すぎるようだったら城に行って寝かせないとな。

桃香の前髪が額に張り付いていたので、撫でるついでにかき上げる。さらさらとした手触りが心地良い。

 

「昼休みが終わるまでは・・・んー、体感的に三十分くらいかな。それまでは、しばらく寝顔を楽しむか」

 

桃香は午後からは何もないはずだし、部屋で寝かせたほうがいいだろう。

通りがかる人たちの暖かい視線を受けながら、俺はしばらく桃香の寝顔を楽しんだ。

 

「お兄さん・・・だいすきぃ・・・」

 

「ありがとう。俺も大好きだ」

 

「えへへぇ・・・」

 

寝言を言う桃香も、とてつもなく可愛い。

これが・・・癒しか。

 

・・・

 

「お兄さん、大好きだよ」

 

「ああ、俺も大好きだ」

 

確実に夢だと分かる夢ってあると思う。

たぶん、これはそんな夢。

でも、なんだか暖かいものが胸に広がるこの感覚は、夢じゃなきゃいいのになぁって思う。

 

「ほんとに、私のこと好き?」

 

「疑り深いなぁ。じゃあ、証明しようか」

 

そう言ってお兄さんの手が私の頬をさらりと撫でて、私は瞳を閉じる。

うっすらと開けたまぶたから、近づいてくるお兄さんの唇を捉えて、あと少しで触れる・・・。

 

「っはうっ!?」

 

「おおう!? びっくりした・・・」

 

・・・なーんてところで、目が覚めてしまいました。

突然奇声を上げた私に驚くお兄さんは、変な夢でも見たか? と言いながら私を背負いなおしました。

って、おんぶされてる!? 

 

「な、なんでおんぶ!?」

 

「え? いやほら、桃香途中で寝ちゃったろ? 俺の昼休みも終わりそうだったから、城で寝かせたほうが良いかなぁって」

 

いやぁ、気持ちよさそうに寝てたから、起こすのも可愛そうだなと思って、と言うお兄さん。

ここからだと後姿しか見えないけど、きっと優しい笑みを浮かべてるんだろうなぁ。

・・・お兄さんの背中、広いなぁ・・・。また、寝ちゃいそう。

 

「まだ眠かったら寝てていいぞ」

 

「・・・ふぇ? でも、重くない?」

 

眠気でちょっと反応が遅れた上に変な返事になっちゃったけど、お兄さんは気にした風も無く

 

「重くなんか無いぞ。むしろ軽いくらいだ。ほら、俺ってサーヴァントだし」

 

「むぅ、それじゃあ、一般の人からしたら重いってことー?」

 

なんだかちょっとお兄さんのことを苛めたくなって、そんな意地悪なことを言いつつ首に回した手をきゅっと締める。

お兄さんとさらに密着しちゃって、ちょっと恥ずかしいけど、それ以上に嬉しいと感じる。

 

「うお、苦しい苦しい。大丈夫だって。普通の人が背負っても、桃香は軽いから」

 

「ふーん。そーなんだー」

 

「うむむ、これ以上はまずいぞー」

 

「知らないっ。もう寝るっ」

 

「おう、おやすみー」

 

こんなに自分勝手に振舞っても、お兄さんはさらっと受け入れる。

・・・んもう、そういうの、反則なんだから。

 

・・・

 

再び寝息を立て始めた桃香を背負って城へと戻る。

いつぞや共に戦った兵士たちがさすが兄貴ですっ! とか良く分からないことを言っていたが、気にしないことにした。

 

「あれ? ギルじゃない」

 

「お、詠。ちょうどよかった。桃香の部屋ってどこだ?」

 

「へ? 桃香の部屋? ・・・って、何であんたの背中で寝てるわけ・・・?」

 

「まぁまぁ。とにかく、部屋に案内してくれよ」

 

はぁ、仕方ないわね、付いてきなさい。と歩き始めた詠の隣に並ぶ。

すると、詠はもじもじとしながら話しかけてきた。

 

「・・・もしかして、桃香と・・・その、なんかしてきたの?」

 

「んー、まぁ、いろいろと」

 

「っ。・・・そう、なんだ」

 

「ああ。よっぽど疲れてたんだろうな」

 

「疲れるようなこと、したんだ」

 

詠は何かぼそりと呟いたが、俺の耳には届かなかった。

何て言ったんだ? と聞く前に、詠は立ち止まって口を開く。

 

「ここ、桃香の部屋よ」

 

「お、ありがと。開けてくれるか?」

 

「・・・仕方ないわね」

 

そう言って扉を開けた詠の後ろに続いて、桃香の部屋へと入る。

桃香の部屋では香を焚いていたのか、甘い香りがする。

優しく、ゆったりと包み込むような甘い香りを感じながら、詠が案内するとおりに寝台へと向かう。

 

「よ・・・っと」

 

桃香を寝台に横たわらせると、薄い布団をかけておく。

いくら暑いといっても、布団を全くかけないでおくと体を冷やしてしまうからだ。

女の子が体を冷やすと良くないと前に何かの本で読んだことがある。

 

「ねえ、ギル?」

 

「なんだ、どうかしたか?」

 

「・・・今日の夜、あんたの部屋に行ってもいいかしら」

 

「構わないぞ。ただ、午後から政務があるから、少し遅くなるかもしれない」

 

「ん、大丈夫。待ってるわ」

 

その後、ほら、政務室まで行くわよ、と言って俺の手を引く詠。

おお、詠から手を握ってくれるなんて。

 

・・・

 

日も沈み、夜空には星が輝きだした頃。

政務を終わらせた後、手伝ってくれた朱里と愛紗に礼を言ってから、帰路へとついた。

すでに詠は部屋で待っていることだろう。

自分の部屋へとたどり着き、扉を開く。

 

「遅れた、ごめんな」

 

「べ、別に、気にしてないわ」

 

俺が入ってきたことに気づいた詠は、肩をびくりと震わせた。

灯りも点けず、寝台の上に座って待っていたらしい。

 

「ありがと」

 

そう言って俺は詠の隣に腰掛ける。

それで、何かあったのか? と聞くと、詠は俯いたまま

 

「・・・あんたってさ、月とはもう・・・し、したの?」

 

「したって・・・ああ、そういうことか。ああ、したよ」

 

それを聞いた詠は、そう、と一言つぶやいてから、顔を上げた。

潤んだ瞳で俺の顔を見上げながら、詠は口を開く。

 

「その・・・ボクのことも、抱いてほしいの」

 

・・・なるほど、あのちょっと追い詰められていたような顔はそのことを考えていたからか。

思えば、月も下着で布団に包まっていた日、同じような顔をしていたように思う。

 

「いいのか? ・・・痛いらしいぞ」

 

「だ、大丈夫よ! あんたくらい、受け入れてやるんだから!」

 

それならいいけど、と言いながら、俺は詠を抱き寄せる。

んひゃ、と可愛い悲鳴を上げながら胸へと飛び込んできた詠と一緒に、寝台に倒れる。

俺の上に乗っかった詠に口づけをして、ゆっくりと服に手をかけていく。

 

「途中で怖くなったりしたら言うんだぞ?」

 

「そんな事言わないわよ!」

 

憎まれ口を叩きつつも、詠の顔は真っ赤に高潮していた。

 

・・・

 

鳥の鳴き声で目が覚める。なんて清々しい目覚めだろうか。

隣に眠る詠を起こさないように気をつけながら、体を起こす。

ぎっ、と寝台が音を鳴らし、その音を聞いたからか、詠がんぅ、と声を上げる。

少しの間のあと、寝息が聞こえてきたので、起こしたわけではないようだ。

寝台から降りて、服を着替える。

・・・ちなみに、だが、俺の体の汚れはほとんど無いといってもいい。

なぜなら、鍛錬の末取得した魔力放出Eがあるからだ。

 

「よっと」

 

効果としては、『自身の魔力を外に放出し、若干の衝撃を発生させられる』程度だが、体の汚れを吹っ飛ばすにはちょうどいい威力だ。

 

「ん、大体取れたな」

 

しかし、服を着た状態から、もしくは裸からの鎧の脱着は一瞬なのに、裸から服を着るまでは自らしなければならないとは。

・・・いや、そこまでずぼらになる気は無いのだが、若干の疑問はある。

まぁいいや。とりあえず、詠の体を拭くための水とか持ってくるかな。・・・かなり、べとべとだし。

ああ、シーツも変えないといけないな。血とかって落ちないしなぁ・・・。

 

「さて、今日も頑張りますか」

 

朝食の時間まではまだ少しある。水を汲んできて、詠を起こして、体を拭けばいいか。

そうと決まれば行動しよう。

桶を片手に、扉を開く。ここから一番近い水汲み場はどこだったかなぁ。

 

・・・

 

あの後、恥ずかしがる詠の身体を隅々まで拭いてやり、朝食を食べた。

今日は街の巡回と称して、服屋の職人から水着を受け取りに行かなければならない。

後で一刀と合流して、服屋へと行くべきだな。

そんな事を考えながら一人城の中を歩いていると、一刀が壁に寄りかかって腕組みをしていた。

 

「・・・ギル」

 

きらり、と白い歯を光らせながら、一刀は俺を呼ぶ。

俺は一刀の前で立ち止まり、一刀のほうを見ないまま口を開く。

 

「服屋はなんと?」

 

「完成させた、と言っていた」

 

使いの人から受け取ったと思われる竹簡を一刀から手渡される。

ざっと中に目を通すと、おおむね一刀の言ったとおりのことが書いてあった。

完成したので、受け取りに来て下さい、という旨の内容だ。

 

「ならば、今日にでも受け取りに行こうか」

 

気分は怪しい取引をしている業者だ。

にや、とニヒルな笑みを浮かべた一刀が、無言でサムズアップする。

こつこつと二人分の足音を響かせながら、俺たちは服屋へと向かった。

・・・後で聞いた話によると、あまりにも鬼気迫る雰囲気を纏っていたため、兵士たちはドン引きしていたという。

 

「ごめんくださーい」

 

一刀が服屋へと入っていくのに続いて、入店する。

 

「おお、これはこれは、いらっしゃいませ、お二人とも」

 

「こんにちわ。例の品は?」

 

「出来ていますとも。・・・量が多いのですが、大丈夫でしょうか?」

 

「ああ、大丈夫だよ。・・・なぁ、ギル?」

 

「もちろんだ。俺の蔵に限界の文字は無い」

 

「はぁ、そうでございますか。それでは、こちらへ」

 

そう言って、店主は俺たちを裏へと通してくれた。

そこには、ずらりとならぶ水着の列。

 

「おお・・・すばらしい・・・!」

 

一刀が立ち並ぶ水着を見て感嘆の声を上げる。

 

「完璧だよ! ありがとう」

 

「いえいえ。こちらも、龍の皮を裁縫するという経験をさせていただき、嬉しく思っていますよ」

 

その後、一刀には店主への支払いをするという事で表に連れて行ってもらい、その間に俺は宝物庫を開ける。

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)

 

真名を開放すると同時に、水着たちが地面へと沈むように消えていく。

きちんと宝物庫の中へ収納されたのを確認してから、俺も表へと戻る。

事前に確認した作戦通り、一刀が店主相手に時間稼ぎのための世間話に興じていた。

 

「一刀、終わったぞ」

 

「お、そうか! じゃあ、俺はこれで」

 

「あ、はい! 毎度あり!」

 

服屋を出て、城へと戻るまで、俺たちは無言だった。

だが、そこには確かに男の友情があった。

 

「・・・それじゃあ、今夜、いつもの酒屋で」

 

「了解。それまでに、予定をつめておく」

 

「ああ、頼んだ」

 

そう言って、俺たちは拳をぶつけ合い、分かれた。

 

「・・・よし、後は・・・っと」

 

・・・

 

俺の財力によって貸切になった酒屋で、俺は黒板 (のようなもの)を前に口を開く。

 

「・・・これで全員か?」

 

「ああ」

 

「よし、それでは、これから計画を発表する」

 

俺以外の男が、わずかに首を縦に振る。

その視線は、期待に彩られており、どれだけ楽しみにしていたかが伺える。

黒板にチョーク(のようなもの)で文字を書き記す。

 

「まず、川へ行く順番だ。まずは鈴々や朱里、雛里といった暑さに強くない小さい子が多い蜀からいこうとおもう」

 

数日前に暑さで雛里が倒れたばかりだし、緊急性が高いのは確かだ。

 

「それから、魏。最後に、一番暑さに耐性がある呉を連れて行こうと思っている」

 

うんうん、と男たちが頷く。

 

「そして重要なのが、見張りの兵の位置だ」

 

ざわ、と雰囲気が変わるのを感じる。

俺は全員の性癖や所属する国を考慮しながら立てた兵の配置図を黒板に張って説明を始めた。

兵たちは納得してくれたようで、露骨に喜びをあらわにするものやこっそりとガッツポーズをとるものなど、さまざまな反応をしていた。

 

「後、一刀の事なんだが・・・」

 

ごくり、と一刀がつばを飲み込む音が聞こえた。

 

「一刀には、水着の発案者として、これからの水着の有用性を確認するため、として俺と一緒に前線に出る事になる」

 

「そ、それってつまり・・・!」

 

「ああ。水着の有用性を確認するためには観察しないといけない。・・・そう! じろじろと水着姿を見ても、文句を言われない立場なのだ! ・・・あ、月と詠のをじろじろ見たら王の財宝(ゲートオブバビロン)な」

 

「あ、ああ。大丈夫だ。節度を持って、怪しまれない程度にチラ見するから」

 

「ならいい。総員、節度を持って楽しく見ようじゃないか!」

 

「応!」

 

俺と一刀のことについては、兵士たちから文句が出ると思ったが・・・特に反発もなく決まったな。

 

「俺と一刀だけみんなに近くなるが、お前たちはいいのか?」

 

俺が単刀直入に聞いてみると、兵士たちはなに言ってんですか、と笑い

 

「そもそも、大将が言い出して兄貴が船を出してくれなかったら、俺たちは水着を見ることすら出来なかったんだぜ?」

 

「そうッスよ。遠くから見られるだけで満足ッス!」

 

「お前ら・・・」

 

一刀の瞳が、感動で潤む。俺も、少し感動してきた。

なんて・・・なんていいやつらなんだ・・・! 

一刀・・・お前、いい仲間(とも)を見つけたな! 

 

「よし! 計画の開始は明日! みんな、体調を整えておけよ!」

 

「応!!」

 

その後、俺たちは翌日に響かないように自重しながら酒を飲み、騒いだ。

おかげで程よく疲れる事が出来て、ぐっすり眠れるだろう。

俺も明日の天気がよくなることを願いながら眠り、翌朝、まぶしい日差しを感じて目を覚ました。

 

「おお・・・!」

 

天気は快晴。じりじりと肌を焼くような日差しは、今日も猛暑になる事を示していた。

これならば、水浴びは確実に受け入れられる事だろう。

 

「よし、早速動こう」

 

いてもたってもいられず、俺は政務室へと急いだ。

 

・・・

 

「あーつーいー!」

 

桃香がへたれ、机に突っ伏した。

ふふふ、いい感じに気温が上がってきている! 

 

「へぅ、大丈夫ですか、桃香さま・・・」

 

月も暑さでふらふらしているようだ。

・・・うーむ、弱っている月も良いな。

 

「月、大丈夫か?」

 

「はい、まだ、大丈夫れす」

 

ああ、暑さで月の呂律がわやわやに・・・

 

「・・・桃香、一つ提案があるんだが」

 

ここは、月の体調を一番に考え、少し早めに計画を発動するとしよう。

 

「ふぇ? なーに、お兄さん」

 

「実はな・・・?」

 

俺は桃香や朱里、愛紗に水浴びをしてはどうかと持ちかけた。

 

「ギル殿が以前話していた暑気払いの話ですね。ですが・・・」

 

当然彼女たちは服を濡らすのはどうか、と言ってきたが、それについてはこちらに解決策がある、と伝える。

 

「解決策、ですか・・・?」

 

「ああ。だから、後はみんなが行きたいかどうか、何だけど」

 

「お兄さんが服の問題は何とかしてくれるみたいだし、行こうよ、愛紗ちゃん。このままじゃ、みんな仕事にならないよ?」

 

「・・・そうですね。確かにこの暑さでやられているのも事実・・・分かりました、将達を集め、川へと行きましょう」

 

「それじゃあ、いろいろと準備が必要ですね」

 

「そうだ。朱里、これを」

 

「ふぇ? これは・・・。見張りの配置図ですか。なるほど、そういうのも必要ですね。使わせていただきますね。ありがとうございます」

 

よし、以前話を通していたからか、唐突にこんなものを出しても怪しまれない。

これは事前準備が功を奏したな。

 

「それでは、愛紗さんは将の皆さんを集めてくださいますか? ギルさんは見張りの兵の人たちの招集をお願いします」

 

「分かった。すぐに向かおう」

 

「了解だ。それじゃあ、後でな、桃香」

 

「うんっ。二人とも、いってらっしゃーい」

 

「いってらっしゃいませ、ギルさん、愛紗さん」

 

元気を取り戻した桃香と、少し回復したもののまだふらふらしている月に見送られながら、俺は一刀の部屋へと急いだ。

部屋に着くと、決められたタイミングで扉をノックする。

 

「ギル、成功したのか」

 

扉を開けるなり、そう聞いてくる一刀に、サムズアップすることで答える。

その後、俺たちは兵士たちが集まっているであろう中庭へと歩き出した。

 

「兄貴! 大将!」

 

中庭に着くと、兵士たちが出迎えてくれた。

 

「その表情・・・成功したみたいですね」

 

「兄者、楽しみだな」

 

「そうだな弟者」

 

「そう考えると、この暑さも気にならなくなってくるッスね!」

 

「ああ、むしろ暑さに感謝したくなってくる」

 

「よし、将達は後少しで門の前に集まるはずだから、先に向かおう」

 

全員が頷いたのを確認して、俺たちは門へと向かう。

宝物庫に入っている水着のすべては頭の中で管理できていて、すぐにでも取り出せるようになっている。

 

「・・・お、集まってきてるな」

 

「あ、お兄さん!」

 

「ギル殿、ご苦労様です」

 

いやいや、全然だよ、と答えると、それでどうするのだ? と鈴々に聞かれた。

 

「川で水浴びはいいけど、服が濡れるのはいやなのだー」

 

「ああ、それは大丈夫。・・・王の財宝(ゲートオブバビロン)

 

警備の兵士のおかげで人払いは出来ているので、人目を気にせずに宝具を展開できる。

地面から、服屋にあったままの姿で水着が出現する。

頭と手足が無いマネキンのようなものに着けられた水着たちは、まるで荒野に突き立つ無限の剣のように並び立つ。

 

「はわわ・・・地面から、下着が生えて来ました・・・!?」

 

「ギル殿っ!? いきなり何を・・・!?」

 

「ああ待て待て、これはだな・・・」

 

一刀と一緒になって、水着の説明をする。

最終的に水を掛けて機能の説明をして、ようやく納得してもらった。

さらに、一刀が発案者であり、水着の有用性を確かめるためについてきてもらう事を話した。

 

「・・・なるほど。・・・というか、その蔵を水着の収納場所に選ぶなんて・・・」

 

神秘の塊である宝具の使い道について若干首を傾げられたが、まぁそこはスルーしてくれ。

 

「好きな水着を選んでいいぞ。着替えてから向こうの川まで来てくれよ? 警備の兵士たちには道案内の役を任せてあるから」

 

俺の言葉に、兵士たちが驚いた顔をする。

最初はそんな話なかったからな。だが、兵士たちにも眼福があってしかるべきだろう。

みんなにばれないように笑いかけると、兵士たちは嬉しそうな視線を向けてくれた。

 

「それじゃあ、俺と一刀は先に行って準備してるよ。頼んだぞ、みんな」

 

「はいっ! お任せください、ギル様!」

 

蜀の兵が元気な声を上げる。

 

「さて、一刀、行くぞ」

 

「ああ!」

 

・・・

 

先に川に来て、日よけのための場所を作ったり、みんなが休むスペースを作ったり、お菓子を置いておいたり。

後は、酒だな。桔梗辺りが飲むだろう。

しばらくすると、みんなやってきた。案内してきた兵士たちは、何人かがくがくしている。・・・大丈夫か、あいつら。

それから、みんなは川の中へ飛び込む。

つめたーい、とか、気持ちいいですね、とかいろいろな声が聞こえてくる。

 

「おお・・・!」

 

一刀が感動の声を上げる。

水の中に入って戯れるみんなを見ていると、それだけで報われた気がする。

 

「あれ、お兄さんは水着、着ないの?」

 

「ん? ああ、俺は着なくても大丈夫だしな」

 

魔力放出で水くらい弾けるし。

 

「そうなんだ。なーんだ、お兄さんの水着姿も見たかったのになぁ」

 

「また今度な」

 

「うんっ。・・・でも、この水着ってやっぱり布の面積が少ないように感じるんだけど」

 

「それでも多いほうだぞ。なぁ、一刀?」

 

「え? あ、ああ。そうだな。・・・もっと、小さい水着を着てるやつだっているしな」

 

その言葉で脳内に浮かぶのは、ある漢女。

うっふぅぅぅぅんとかぶるぁぁぁぁぁとか吼えるあの化け物だ。

 

「うっ・・・」

 

「くっ・・・」

 

「え? え? どうしたの、二人とも」

 

心配し始めた桃香になんでもない、と告げて、ヒモビキニの話をする。

天の衣装には不思議が多いんだねぇ、なんていう桃香たちに苦笑を返しながら、周りを見渡す。

すごいな。ここまで水着の美女美少女が集まるのは、この大陸だけなんじゃなかろうか。

一刀も恥ずかしそうにしながら、ちらちらと水着姿の少女たちを見て楽しんでいる。

 

「・・・あの、ギルさん」

 

そんな時、くいくいと俺の服のすそが引かれる。

誰だろうか、と引っ張った人物を見ると・・・。

 

「へぅ、あの、この水着・・・似合ってますか?」

 

「そ、その、この水着・・・どう?」

 

月と詠の二人が水着姿で立っていた。

月の水着は白一色でひらひらとした装飾が特徴的な水着。

詠の水着は白い生地の中に黄色がアクセントとして使われている水着だった。

こうしてみると、二人の白い肌がかなり露出している。いや、水着だから当たり前なんだけど。

いつもは長袖のメイド服着てるし、さらにハイニーソックス穿いてるから生足なんて見る機会はほとんどない。

 

「二人とも、綺麗だよ」

 

正直それしか浮かばなかったので、恥ずかしがらず、きちんと伝えた。

二人は嬉しそうに笑みを浮かべると、一緒に涼みませんか? と誘ってくれた。

喜んで、と返すと、桔梗が酒盛りをしている場所の近くの岩場までつれてこられた。

ここなら、みんなの楽しむ様子が見られるし、水にも近いから涼しいし、と詠に説明される。

 

「一番は、ギルさんと密着できるから、なんですけど」

 

確かに、今座っている岩は三人が座るには小さく、かなり密着しなければならない。

今の俺の服装は、いつもの暑苦しい姿ではみんなも暑く感じるだろうという事で上は白いTシャツにしているのだが・・・二人の肌が直接触れて、俺は今大変な事になっている。

何だこのすべすべな肌。うおお、寝台の上で触れるのとは違う健康的な肌の感覚が、俺をだめにするぅぅぅ・・・。

救いを求めて一刀を見てみるが、一刀も一刀で水辺でぽーっとしている。どうやら、みんなの水着姿にあてられたらしい。なんだそりゃ。ピュアボーイ過ぎやしませんか。

 

「うう、なんかどきどきするよぅ・・・」

 

「えへへ、私もだよ、詠ちゃん」

 

そういって笑いあう二人を見て、なんだかほんわかとした瞬間。

 

「いっくのだーっ!」

 

「てぇい!」

 

「ぬおう!?」

 

「きゃあっ!?」

 

「ギルッ!?」

 

鈴々の手からすっぽ抜けた木の棒が、俺の顔面にヒットする。

神秘の篭っていない攻撃のため俺には通用しないが、衝撃まで無効化できるわけじゃない。

こぉんっ、と甲高い音を立てて、俺の額に当たった木の棒は、俺を後ろへ倒れさせた。

 

「いつつ・・・」

 

実際そこまで痛くはないが、そこは癖である。

俺に当たった後空中に跳ね返った木の棒が、俺の横に落ちてからんからんと情けない音を立てる。

 

「だ、大丈夫なのか、お兄ちゃんっ!」

 

「大丈夫かよ、ギルっ!」

 

岩の向こうから鈴々と翠の心配そうな声が聞こえる。

木の棒をつかんで起き上がり、岩の上へと上る。

 

「大丈夫だー。ほら、鈴々」

 

ぺいっ、と木の棒を投げて渡す。

見事にキャッチした鈴々は、ごめんなのだー、と少し気落ちした様子で謝って来た

 

「いや、俺でよかったよ。詠や月だったら、こんなのじゃ済まなかっただろうし。だから、鈴々はある意味上手に飛ばしたって事で」

 

「えへへー、そうなのかー?」

 

「そうだよ。ただ、玉をちゃんと打ち返して、すっぽ抜けなかったらもっと上手だな」

 

「分かったのだ! 今度は、玉を打って飛ばすのだ!」

 

危ないから、飛ばす方向も気をつけるんだぞー、と注意してから、岩に座りなおす。

 

「ふふ、ギルさんは将来良いお父さんになりますね」

 

俺たちの目の前で遊んでいた紫苑が、そんな事を言ってきた。

 

「そうか?」

 

「ええ。鈴々ちゃんに危ない事を教えてあげたり、上手に誘導したり。そういうことが出来る人は、良い親になるんですよ」

 

「へえ。紫苑に言われると、真実味が増してちょっと嬉しいな」

 

「ギルお兄ちゃんはおとーさんになるのー?」

 

「そうね。もしかしたら、璃々のお父さんになるかもしれないわよ?」

 

「ぶっ!」

 

「ちょ!」

 

「ふぇっ!?」

 

紫苑の言葉に、俺と月、詠がそれぞれ驚きをあらわにする。

そんな俺たちの様子を見て、紫苑はくすくすと上品に笑うと

 

「璃々の相手もしてもらっていますし、私はギルさんのこと、とても好きですよ?」

 

「そう直球で言われると、照れる前に嬉しく思っちゃうな。ありがとう、紫苑」

 

「いえ、どういたしまして」

 

そんな中、璃々が蟹を捕まえたらしい。嬉しそうにこちらに報告してきた。

 

「おかーさん、お兄ちゃん、カニさん捕まえたー!」

 

「あらあら、小さなカニさんね」

 

「んー」

 

璃々はカニをまじまじと見て、何か考え込み始めた。

その様子をほほえましく見ていると、ぎゅう、と両手の甲をつねられる。

 

「ギルさぁん? まさか、紫苑さんだけじゃなくて璃々ちゃんも一緒にいただいちゃうんですか?」

 

「ギールー? 璃々はまだあんなに小さいんだから、無茶しちゃ駄目なんだからね!?」

 

「なんだと!? 違う、そういう目で見ていたんじゃないぞ!?」

 

「だって、紫苑さんと璃々ちゃんを見て鼻の下を伸ばしてました」

 

「璃々をそのケダモノみたいな視線で見てたくせに」

 

すごい勘違いをされているぞ・・・。

それから、二人の勘違いを正すためにしばらくの時間を要した。

最終的に、璃々がもう少し大きくなってから手を出すのは良い、という事になった。

・・・全く勘違いは直らなかったようだ・・・。

もう勘違いを正すのはあきらめる事にして、目の前のみんなに視線を戻す。

そこでは、朱里と雛里が水を掛け合っていた。・・・スク水で。

 

「それっ」

 

「ひゃっ。・・・朱里ちゃん、やったなぁ・・・!」

 

「雛里ちゃんこそ、やりましたね~!」

 

うわ、何あの空間。飛び込んでいいの? すごい癒されそうなんだけど。

今のこの傷心を癒すのはあの空間しかないと思うんだ・・・。

 

「きゃっ、もう、冷たいよぉ・・・あ、ギルさーん」

 

「えへへ・・・。え? あ、あわわっ。ぎ、ギルさんっ」

 

ずっと見ていたのに気づいたのか、朱里と雛里がこちらに手を振ってくる。

手を振り返すと、二人は水掛けを中断してこちらにやってきた。

 

「ギルさん、この水着というのは機能的でいいですね。水が掛かっても透けませんし、何より動きやすいですっ」

 

「それはよかった。・・・二人はみんなと遊んでこないのか?」

 

あっちで野球っぽいことやってるのとかいるけど。

 

「いえ・・・その、皆さんの本気の遊びにはついていけないというか追いつけないというか・・・」

 

「あー・・・」

 

そうだな、文官の二人に本気で遊ぶ鈴々たちに追いつけというのは無茶だったな。

 

「あら、それなら璃々と遊んであげてくださいませんか? 鈴々ちゃんたちには流石に璃々の力が追いつかないので・・・」

 

「はいっ」

 

雛里が元気に返事を返す。いつもは帽子で隠れる事が多い雛里の表情も、こうして水着だけになると隠される事なく見ることが出来る。

笑顔も照れた顔も楽しそうにはしゃぐ顔も、すごく新鮮に見える。

 

「璃々ちゃん、よかったら、私たちと遊びませんかー?」

 

新鮮といえば、朱里もなんだか新鮮な感じがするな。

水着に着替えてはっちゃけているのか、やはり帽子がないから印象が代わるのか、とても楽しそうに遊んでいる。

 

「わーい! 遊ぶ遊ぶー!」

 

こうして璃々と遊んでいるときも、実に楽しそうな表情で水と戯れている。

・・・水着の力、恐るべし・・・。

 

「桃香さま! 周囲に怪しいものはいませんでした!」

 

そう言って一刀の近くの茂みから出てきたのは、いつもどおりの服装をした焔耶だ。

焔耶も水着を着ればいいのに、お前たちがかかわったものを着れるか! と断言されてしまった。

・・・まぁ、桃香至上主義の焔耶は、同時に少し男嫌いでもあるからなぁ。

目の前で蒲公英にからかわれて真っ赤になっている焔耶を見ながら、でも、もったいないなぁ、と思ってしまうのである。

で、十分に焔耶をからかった蒲公英は、杯を傾けて酒を飲んでいた。

 

「・・・蒲公英って結構飲むんだな」

 

先ほどから桔梗と同じペースで飲み続けているような気が・・・。

 

「おう、ギル。こやつ、なかなかいけるクチだぞ?」

 

「えへへー、いけるくちだぞー!」

 

「へえ、意外だな。月なんか、三杯くらいでふらふらするのに」

 

「ぎ、ギルさんっ」

 

慌てた様子の月が恥ずかしそうに変なこと言わないでくださいっ、とちょっと怒ったように言ってきた。

そんな月も可愛いなぁ、と思いながら、ちょうど酒を飲みきった桔梗の杯に、ワインを注いだ。

 

「ぬおっ?」

 

いきなり空中から注がれたワインに驚き、杯を落としかけていたが、すぐに持ち直した。

 

「いきなりごめんな、桔梗。それ、俺のお勧めのお酒だから飲んでみて」

 

「なんじゃ、ギルの仕業か。酒を貯蔵して置けるとは、便利じゃのう」

 

そう言ってくいっと杯を傾ける桔梗の向こうで、蒲公英が桔梗だけずるーい! と騒ぐ。

 

「大丈夫だって、蒲公英にもあげるから」

 

ぱちん、と指を鳴らし、蒲公英の杯にもワインを注ぐ。

わーい、と喜んだ蒲公英は一気にワインを飲み干した。

 

「ふぇー、なんだろこれ、果物みたいな味がするー」

 

「ああ。ブドウっていう果物から出来た酒なんだ」

 

「ほほう。・・・これは、一気に飲み干す類の酒ではないな? 料理と共に楽しむような酒であろう」

 

「おお、すごいな桔梗。肉料理とか、魚料理とか、料理に合わせて白と赤を分けて飲んだりするんだよ、それ。今はお菓子しかないから、それで我慢してもらうほかないけど」

 

「ふむ。ならば、今度は食事のときに貰おう」

 

まぁ、ワインだけでもおいしいんだけどね。

料理と一緒に飲むと、さらにおいしいというかなんと言うか。

 

「そうしてくれ」

 

おーいしー! と絶賛する蒲公英を見て楽しんでいると、桃香と愛紗、星がこちらに向かって歩いてきていた。

 

「ギル殿、愛紗を見てくれ。こいつをどう思う?」

 

「すごく・・・可愛いです。・・・って、何を言わせるんだ」

 

「いやなに。やはり愛紗のこの姿を見ないのは損だろうと思ってな」

 

先ほど天の御使いにも見せたのだが、鼻血を出して倒れてしまった。と星は続けた。

急いで一刀を見てみると、幸せそうな顔をして倒れていた。

・・・アレはアレで、良い逝き方なのかもな。

 

「は、離せ星! ギル殿の前でこんな事・・・恥ずかしいではないか!」

 

「ほほう? 先ほど、ギル殿はどう思うだろうか、と言っていたのはお主ではないか」

 

「そ、それはっ、ギル殿が用意してきた水着だからであって・・・」

 

「遠慮するな、愛紗。ほうら、見てみろギル殿。この育ちに育った果実を」

 

そう言って、星は背後から愛紗の胸を鷲掴み、むにゅむにゅともみ始めた。

 

「な、なにをっ!?」

 

「おー」

 

「へぅ、すごいです・・・」

 

「アレが・・・巨乳の威力・・・!」

 

愛紗も桃香に負けず劣らずすごいもの持ってるなぁと感心していると、両隣からも驚いたような声が聞こえる。

いやー、女の子から見てもすごいだろうね、アレ。

 

「ちょ、やめ、星っ!」

 

「はははっ。どうですギル殿。ご満足いただけたか?」

 

「ああ、大満足だ。ありがとうな、星、愛紗」

 

「ほら、愛紗。ギル殿がありがとうと言っているぞ?」

 

「うぅっ、嬉しいような恥ずかしいような・・・」

 

ぼそっと何かを言いつつ、愛紗は桃香に慰められていた。

あの二人が一緒にいると、威力が四乗になるよなぁ。

 

「お、星も水着似合ってるじゃないか。綺麗だよ」

 

先ほどまで愛紗の後ろにいたために見えなかった星の水着姿がはっきりと見えた。

 

「む? ・・・ふ、ギル殿は正直に者を言う御仁だな。少し恥ずかしいくらいだ」

 

おお、照れてる星が見れるとは。可愛いじゃないか。

 

「まぁ、ありがとうと言っておこう。それでは、愛紗でも慰めてくるかな」

 

そう言って愛紗のほうへと歩いていく星。

そういえば二人がおとなしいな、と両隣の少女を見てみると

 

「やっぱり胸なのかしら・・・。むむぅ」

 

「へぅ・・・胸が無くても、ギルさんへの気持ちなら負けません・・・」

 

・・・二人とも、胸が小さいの気にしてるのかな。

それとなくそんな事関係なく好きだと伝えるべきか。

 

「どうしたの? お兄さん」

 

「ん? 桃香か」

 

「なんか悩んでるみたいだったから」

 

「いやぁ、みんなでこうやって水浴びが出来るのは良い事だなぁって思ってたんだよ」

 

貧乳の娘をどうフォローしようか考えていた、何ていえないため、当たり障りの無いことを言っておく。

 

「そだね。少し前じゃ、考えられなかったけど」

 

「また、こうしてみんなで来ような」

 

「うんっ。そのためにも、平和な今を続けていかないとね」

 

「そうだな。俺も、微力ながら協力させてもらうよ」

 

「うん、ありがとう。・・・でもたまには、こうしてお休みしながら、ね」

 

桃香の言葉に、そうだな、と答える。

なんだかしんみりしちゃったな。

 

「よし、俺も鈴々たちと遊ぼうかな」

 

「あ、じゃあ、私もー!」

 

「ギルさん、頑張ってくださいね?」

 

「また棒にあたるんじゃないわよー」

 

「分かってるって」

 

こうして、月たちと楽しく水遊びが出来るなら、こうして平和を維持してきた甲斐があったというものだ。

もしかしたらまたなにか問題が起きるかもしれないけど・・・そのときは、七体のサーヴァントが相手になる。

ま、そんな事がこない事を願うばかりだけど。

・・・こうして、暑い夏の一日はゆっくりと過ぎていく。

 

・・・




「これがギルさんの心象風景・・・!?」「それは悲しすぎる」


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