真・恋姫†無双 ご都合主義で萌将伝!   作:AUOジョンソン

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「訓練開始→副長の言い訳→副長逃走→あっさり俺に追いつかれて捕縛→土下座までが訓練がある日の日常かな」「・・・ふ、副長さん?」「何ですか壱与さん、その仲間を見るような目は。違いますよ? そんな趣味があるわけ無いじゃないですか」「・・・仲良く、しましょうね?」「話聞いてますかー?」

それでは、どうぞ。


第三十四話 とある日常に

「ふえー、終わったー」

 

あの後、一時間もせずに桔梗たちも復活し、部屋の後片付けも響に手伝ってもらった。

道具を片付けに倉庫まで行くという響に付き合い、こうして荷物の半分を持って通路を歩いているのだが、流石に疲れたらしい。

響はなんだかやりきった表情で、言葉とともに息を深く吐いていた。

 

「悪いな、響たちにまかせっきりにしちゃって」

 

「あはは、別にいいよー。やっぱり訓練とかを止めちゃうのは駄目だしさ。ギルさんしかみんなの代理はできなかったんだから、仕方ないよ。役割分担役割分担」

 

「そういってくれると助かる。今度何かお礼するよ」

 

「んふふー。お礼って言うとー、こう、甘酸っぱい系でも良かったり?」

 

「どんな系統だよ、それ」

 

はは、と軽く笑いを返すと、響も笑った。

 

「甘酸っぱい系っていうのは、うぅん、こう、ちゅ、ちゅーとか?」

 

「・・・恥ずかしいなら言わなきゃいいのに」

 

「はっ、恥ずかしくても、女の子には言わなきゃならない時があるのです!」

 

「そっかー。はははー、そっかー」

 

「く、うぅぅぅぅ・・・! ば、ばーか!」

 

そういって響は走り去って言ってしまった。

・・・からかいすぎたか。

後で謝っておこう、そう心の中だけで決定すると、響が走り去っていった方向から、こちらに向かってくる足音がする。

・・・? おかしいな、響は走り去っていったのだから足音は遠ざかっていくはずなのに。

疑問に思いながらも顔を上げて足音のほうへ目を向けると、土煙を上げてこちらに駆けてくる響がいた。

 

「ギルさぁぁぁんっ!」

 

「は? ちょ、早っ、むぐうっ」

 

「いったぁぁ! 前歯打ったぁ!」

 

ぐう・・・! 響のやつ、魔術使って速度上げながら突っ込んできやがった・・・!

俺にダメージは無いが、なんか響が口を押さえてる。

言葉のとおり、前歯を打ったのだろう。ガチンと音がしたし。

 

「ぐ・・・加速したちゅーの味は、鉄の味がしましたぁ・・・」

 

「あーもう、ほら」

 

唇を切った程度の傷なら俺の治癒魔術で治せる。

 

「ふえー・・・ありがとね。うぅ、今度はこう、唇に衝撃吸収する魔術かけておこうかな・・・」

 

「普通にするって言う選択肢は無いのか・・・」

 

ぼーっと考え事をする響に目線を合わせて、口付ける。

すると、響は少しこっちを見つめた後、その表情のまま顔を真っ赤に染めた。

 

「きょ、きょきょきょ・・・きょうちゃん、おそとはしってくるぅぅぅぅぅぅ!」

 

「あっ、おい!」

 

意外と不意打ちに弱いんだな。キャラが壊れるほど慌てて去っていったぞ・・・。

可愛いやつめ。

 

・・・

 

「で、このお酒を調べれば良いわけ?」

 

「ああ。孔雀とキャスターなら簡単だろ?」

 

「まぁそりゃそうだけど。・・・凄い銘だね。「女王殺し」か」

 

顎に手を当ててふぅむ、と感心したように息を吐く孔雀の隣で、キャスターが女王殺しに手を当てて静かに目を閉じた。

少しの間の後に目を開くと、あっけに取られたような表情で口を開いた。

 

「んー。今軽く調べてみたけど、特に魔術的な仕掛けは・・・ん?」

 

「どうした? キャスター」

 

「これは・・・これ、ちょっと借りるよ? 意外と面白いことが分かるかもしれない」

 

「そりゃもう、俺か卑弥呼の手元から離れるなら是非」

 

「よし、なら早速解析してみるとしよう」

 

「・・・ボクは役に立てない所にある話みたいだし、大人しく退散するかな」

 

「俺もだ。じゃあキャスター、頼んだぞ」

 

「ああ、頼まれた」

 

早速机に向かったキャスターに声をかけ、俺と孔雀はキャスターの部屋を出た。

孔雀はそのまま隣の自室に戻るのかと思いきや、そのまま何事も無かったかのように俺の隣を歩いている。

 

「さ、どこにいこうか?」

 

「え?」

 

「・・・もう、こういうときは二つ返事でじゃあどこどこに行こうか、って返すものだよ」

 

いきなりの言葉に呆けていた俺に対して、孔雀は片目を瞑り人差し指を立てながらそう返してきた。

表情が少し呆れ気味なので、おそらく乙女心の機微に疎い俺に対してため息をつきたい気分なのかもしれない。

 

「と言うわけで、鈍感ギルはボクと一緒にお出かけだよ。これをギルたちの言葉でなんていうんだっけ? でぇと?」

 

「もうちょっと伸ばす感じだな。ま、いいや。デートしようか」

 

「お、やったね。言ってみるものだよ」

 

「どこに行こうかなぁ。孔雀は甘いものよりもうちょっと渋いものの方が好みだよな」

 

「渋いものって・・・そんな枯れた老人みたいな言い方、あんまり他の女の子には言わないほうがいいよー。なんだっけ、あの弓のお母さんとかさー・・・っ!?」

 

馬鹿、紫苑に向けて年齢の話をするとは愚かな。

止める間もなく言い切ってしまったので、孔雀の頭を少しずらすぐらいしかできなかったが、まぁ十分だろう。

 

「こ、これがうわさの遠距離射撃・・・! と言うかどこから撃ったわけ!? この場所って完全に物陰になってるよね・・・?」

 

「まぁ、あの話をした後の紫苑だからな。矢の軌道くらい操れるさ」

 

「完全に宝具の域だよそれ・・・」

 

壁に刺さった矢を見ながら戦々恐々とする孔雀を連れて、城を出る。

・・・多分、俺が孔雀をかばうのを見越して撃ったのだろう。

こういうときの紫苑は、多分一騎当千できるレベルである。

 

・・・

 

「お、ギルじゃねーか」

 

「多喜? こんなところで何やって・・・うおおおおッ、このカボチャライダーじゃねえか! すげえ自然でびっくりした!」

 

「ケッケッケ」

 

多喜がなにやら露店を開いているようなので見てみると、店先に並んだ野菜たちの中にそっとライダーの頭部が並べてあったのだ。

他の野菜たちの中に馴染んでいて普通に手を伸ばしてしまった。

これ、子供とかにやったら完全にトラウマ物だぞ・・・。

 

「いやー、最近街中も平和になってきたじゃんか。そうなると警備隊ってあんまり出張らなくなってきて、俺の出番も少なくなるわけよ」

 

「そうだな。ま、いいことなんじゃないか?」

 

「よくねえよ! 俺の財布的に! またお前にツケんぞ! キュッとツケんぞ!」

 

カッ! と目を見開いて叫ぶ多喜。

・・・いやいや、お前、反省してないな?

 

「何だその斬新な脅し文句。次やったら市中引き回しって言ったよな?」

 

「ちょっ、多喜? どんだけツケたらギルがこれほどまでに怒るのさ・・・」

 

「ギルの怒りが怖くてツケができるか!」

 

「よく言ったマスター!」

 

「ライダーまで乗らないでよ! この場をボク一人で収拾する自信ないよ!?」

 

ガバッ、と野菜の陳列台から体を引き抜きかけたライダーを、ズボッと陳列台に押し戻す孔雀。

まぁいいや。これくらいにしておかないと孔雀のクールなイメージが崩れそうだし、去っておこう。

 

「・・・ま、自分で稼ごうって思ったのはいいことだ。がんばれよ。応援してる」

 

「ん、おー。ま、売れ行きは結構良い方だし、心配しなくてもいいぜ」

 

「はは、安心した。また今度、買いに来るよ。孔雀、行こうか」

 

「あ、うん。・・・じゃ、じゃあね。多喜、ライダー」

 

「おう。せいぜいギルに可愛がってもらうんだなー」

 

「ケッケッ! 爆発しろ!」

 

「もうやだこのカボチャ系サーヴァント」

 

・・・

 

「なんと言うか・・・ボクがアレを召還してたら、性格矯正のために令呪を使うことも厭わないと思うね」

 

「触媒なしで召還したから、相性良いサーヴァント召還されたんだろ。だったら多喜とライダーの気が合うのは当然だろう」

 

「あー・・・そっかぁ」

 

「・・・キャスター召還のときに触媒は?」

 

「あるわけ無いでしょ? パラケルススが誰かも知らなかったんだから」

 

「ですよねー」

 

「・・・触媒使って召還したマスターいないんじゃないの? ギルもそうでしょ?」

 

「完全に偶然だったからな。・・・あ、甲賀はどうなんだろ」

 

「あー・・・彼はなんか用意してそうだよね。と言うか自分の国の英霊だし」

 

一人うんうんと頷きながら思索に耽る孔雀を隣に連れて、俺たちは町を歩く。

先ほど多喜の野菜市を見たので、そのまま流れで市場へと来ているのだが、やはり活気が凄まじいな。

 

「ん、結構いいものそろってるよね。この辺」

 

「そりゃ、こういう野菜とか料理の材料になるものは華琳のおかげで質が高いものが集まるようになってるし、そうでなくとも三国の中心地だから良い物は自然と集まるさ」

 

「なるほどねぇ。ま、ボクは料理しないし料理は食べられれば良いって感じだしなぁ・・・」

 

「じゃあ愛紗の料理食べてみるか?」

 

「あっはっは、アレはね、料理とは言わないんだよ?」

 

凄くまぶしい笑顔だが、言ってることは結構酷い。

あれでも一応は食べられるものになったんだぜ・・・?

 

「アレを食べるくらいなら生野菜かじったほうがマシだよ」

 

「それよりは火を通したほうがいいんじゃないかな・・・」

 

「んふふー、結構いけるもんだよ? 研究で忙しいときとかに保存してある野菜かじったりして急場を凌ぐんだけど、慣れればいけるよ?」

 

魔術の実験をしながら人参をかじるシュールな孔雀の様子を想像してしまった。

 

「研究のときとかは出掛けるのも面倒くさいし、もうなんか、生でいいかなって」

 

「大雑把と言うかずぼらと言うか・・・」

 

「まーねー。髪とかもあんまり弄ったりしないしねー。キャスター召還するまではこう、顔の九割が前髪で隠れてたからね」

 

こーんなだったんだよ、と手振りで昔の髪の長さを伝えようとしてくる孔雀。

その長さだと黒い布被った様な外見になるんだが・・・前見えてたのか?

 

「もっかい伸ばしてみるかな。しちゅじ・・・ゲフンゲフン、執事服着てる所為かなんか男の子っぽく見られてるし」

 

「お、いいね。ちょっと楽しみかも」

 

「そう? んふふ」

 

と言うか、執事服着てる所為でボーイッシュになってるの、気にしてるんだな。

メイド服に替えて欲しいっていうのは今まで言われなかったから、執事服が気に入らないわけじゃないんだろうが・・・。

やっぱり女の子だし、男子と間違えられるのはショックなんだろうな。

 

「ん? あれ、鈴々じゃないかい?」

 

「お、ほんとだ。・・・って、鈴々と真名交換するほど仲良かったのか」

 

「まぁね。意外かな?」

 

「それなりに。性格的には逆だろ?」

 

元気いっぱいで天真爛漫な鈴々と、冷静沈着で大人っぽい孔雀は真逆の性格といってもいいだろ。

 

「おーい、りんりーん」

 

「んー? おぉ、孔雀なのだー!」

 

孔雀に気付いた鈴々がこちらに駆けてくる。

いつもどおりの口調と明るさである。

 

「こんにちわ。何してるの?」

 

「とくになんにもしてないのだー。お姉ちゃんは仕事で忙しいって言って遊んでくれないし、訓練もお勉強もしたくないからここに来てるだけなのだ!」

 

「・・・ウチの副長とどっこいかなぁ」

 

「実際に逃げ出さないだけ副長さんのほうがマシじゃない?」

 

「孔雀はなにしてるのだ? お兄ちゃんとお出かけかー?」

 

「そうだよ。でぇと中。いいでしょー」

 

「でぇと? ・・・よくわかんないけど、鈴々も一緒に遊ぶのだ!」

 

「む・・・ま、いっか。響とかひーちゃんとかならまだしも、鈴々だし」

 

「やったのだ! お兄ちゃん、おんぶなのだー!」

 

「あぁっ! お、おんぶなんてしたらボクと腕が組めなくなるじゃないか! やっぱ駄目!」

 

「へっへーん。おっそいのだー。早い者勝ちなのだ!」

 

「く、うぅ・・・しまった、判断を誤ったか・・・!」

 

ぎり、と歯を食いしばるほど悔しがる孔雀。

・・・そこまで悔しかったか。

 

「ま、今のところは鈴々に譲ってやれよ」

 

「わかったよ。もぅ」

 

口を尖らせながら俺の裾を握る孔雀。

こんなことで拗ねるなんて、ちょっと鈴々と精神年齢近かったりするのかもしれないな。

本人に言うと怒られそうなので心の中だけで呟くが。

 

「ええと、この辺ですぐに行けてなおかつ鈴々が背中から降りるような店は・・・ちっ、無いな・・・!」

 

目が笑ってないぞ、孔雀。

 

・・・

 

「ぐ、うううぅぅぅぅ・・・!」

 

目の前で数十分ほどずっと唸っている孔雀の視線は、俺の胸あたりに固定されている。

正確には、俺の胸と言うより俺の膝の上に座る鈴々に固定されているのだが。

 

「おいしいのだ~。あ、その餃子食べないのかー? 貰うのだ!」

 

「おいおい、まだ自分のところにたくさんあるんだからそっちから手をつけろよ」

 

「孔雀のほうが美味しそうだったのだ~!」

 

「ぐぐぐぐぐぐ・・・」

 

「・・・孔雀も孔雀で早く食べちゃえよ。さっきから箸何本折ってると思ってるんだ」

 

「これで十四本目だよ。大丈夫、後でお金は払うよ。もうちょっとだけ折らせて」

 

「・・・いや、なんていうか、折るのが目的の店じゃないからな、ここ」

 

店主もなんかビクビクしながら箸を差し出すようになってるし・・・。

ああ、ごめんな。そんな目で俺を見ないでくれ、店主・・・。

俺にはどうしようもないんだ・・・。

 

「はむっ! もむもむもむもむ・・・!」

 

ようやく料理に手をつけたが・・・口の動き早いな・・・。

 

「もむもむ! もむもむも!」

 

「飲み込め」

 

「んっく。鈴々、そこ代わって」

 

「やなのだー!」

 

「イラッ」

 

「どうどう」

 

口で「イラッ」とか言う人久しぶりに見たな。

 

「仕方ないな。ほら、鈴々こっちの膝。孔雀はこっち」

 

鈴々も孔雀も小さいから左右それぞれの膝に乗れるだろ。

・・・若干周りの視線が恥ずかしくなると言うことを除けば、特に問題は無い。

 

「ひゃっほう!」

 

凄く機敏な動きで俺の膝の上へとやってきた孔雀が嬉しそうに箸を動かし始めた。

 

「はむはむも! もむはむは!」

 

「孔雀はたまに何がしたいのか良く分からなくなるのだー!」

 

「とても同意だ。でもそこが可愛かったりするんだよ」

 

「可愛いのかー」

 

「可愛いのさー」

 

「そーなのかー」

 

「そーなのさー」

 

絶対に良く分かってないであろう鈴々を撫でてごまかしながら、ふぅとため息。

これで数時間は機嫌が良くなるだろう。

 

「んふふー。ついでにラーメン追加しちゃおうかなぁ」

 

ご機嫌な孔雀はその後、ギョーザ一人前とチャーハン二人前を注文し、鈴々と競うように平らげていった。

 

・・・

 

「おなーかいっぱーい、ゆめいーっぱーい」

 

気の抜けた声で妙なテンポの歌を歌う孔雀。

なんと言うか、腹いっぱいになってちょっとハイになっているようだ。

人差し指でこめかみ抉り出さないように気をつけないとな。

 

「・・・なんだその歌」

 

「お腹が一杯だと夢も一杯になるよの歌。作詞作曲鈴々です」

 

「そうなのか、鈴々」

 

「ふえー?」

 

「違うみたいだぞ?」

 

「まぁねぇ。鈴々が作詞とかできるわけ無いじゃない。どうしたの?」

 

「おぉう・・・なんだろう、ひーちゃんと同じにおいがする」

 

ハイテンション過ぎて会話のキャッチボールができてないぞ。

三発くらいデッドボール食らってるんだが。何なの? ドッヂボールのつもりなの?

俺小学校のころ敵チームに黒い三連星やられてからドッヂボールトラウマなんだけど。

 

「で、次はどこに行く? 涼しくなってきたし、久しぶりにわくわくざぶーん行く?」

 

「一応水着は宝物庫にあるけど・・・」

 

「ざぶーんに行くのかー!?」

 

「おお、いきなり元気になったな。こういうところは見た目相応だよなぁ」

 

まぁ、あそこは温水プールだからな。

夏も終わって少し涼しくなってきたとはいえ、あそこなら年中水遊びが楽しめる。

 

「行ってみるか」

 

「おー! なのだー!」

 

元気にはしゃぐ鈴々を背負いながら、ざぶーんへの道のりを歩く。

 

・・・

 

「ひゃっほー、なのだー!」

 

水飛沫を上げて滑り降りてくる鈴々。

孔雀は浮き輪の上で仰向けになってぷかぷか浮かんでいる。

 

「面白かったのだー。孔雀、次は一緒にすべるのだ!」

 

「えー。・・・ま、いっか。いくよ鈴々」

 

「おーなのだ!」

 

孔雀を連れて大はしゃぎでスライダーの上へと向かう鈴々。

鈴々だけではなく孔雀もそれなりに楽しそうな顔をしているので、先ほどの微妙そうな声は演技だったのだろう。

 

「わひゃーっ!」

 

「おーっ!」

 

小さい弾丸が二つ、水しぶきを上げて着水した。

二人ともとても笑顔である。良いことだ。

 

「次は三人ですべるのだー!」

 

「は? おいおい三人は流石にせま・・・うおお、何だこの力! 英霊一人引っ張れるとかありえねえ!」

 

「・・・体は小さいのに力は恋並か。化け物だね」

 

「いくのだー!」

 

こうして鈴々に無理矢理引っ張られてウォータースライダー十連続で滑らされた俺は、精神的にへとへとになったのだった。

 

・・・

 

日が暮れるまで鈴々と孔雀とざぶーんで遊び、無事に帰ってきた翌日。

俺は今、月の部屋の扉を開けた状態で固まっていた。

 

「ふっふっふ・・・あっはっはっは・・・あーっはっはっはっは! 正妻の座は私がいただきます!」

 

「へぅ・・・えと、壱与さん、土足で寝台の上に立たないでくださいぃ・・・」

 

目の前に広がる光景は、寝台の上に立って悪役三段笑いを披露する壱与と、どこかずれた慌て方をしている月の姿だった。

月に注意された壱与は、自身がどこに立っているのかを確認したのか、急におとなしくなった。

 

「・・・申し訳ないです。今降ります」

 

「ありがとうございます。あ、椅子どうですか?」

 

「おお、これはこれはわざわざ。よいしょっと。月さんもどうぞ」

 

「あ、はい」

 

壱与に進められるままに椅子に座る月。

 

「・・・こほん。ふっふっふ・・・」

 

「そこからやり直すのかよ」

 

「はうっ!? ギル様っ!?」

 

見ていられなくなって声をかけると、びくんと跳ねる壱与。

そんな壱与を尻目に、とてとてと月が扉の近くへとやってきた。

 

「あ、ギルさんこんにちわ。どうかしたんですか?」

 

「それはこっちの台詞・・・いや、うん、ちょっと用事があったんだけど・・・後で良いや」

 

なんだか忙しそうだし。

決して壱与のハイテンションに巻き込まれたくないわけじゃない。

 

「あ・・・い、今でも大丈夫ですよっ? 壱与さんの与太話はいつもすぐ終わるものなので」

 

「さらっと酷いこと言うな・・・。というかいつもって言ったか」

 

「はい。ふらっと私の部屋に現れては今みたいなことを口走りますね。前に詠ちゃんに言い返されてちょっと涙目になってからは詠ちゃんがいないときを見計らってくるようになりましたけど」

 

「・・・壱与、お前・・・」

 

「はうっ! とんでもなく軽蔑のまなざしで見られている!? でも結構カ・イ・カ・ン!」

 

なんと言うか、極度のマゾで陰湿って凄まじい性格してるなお前。

 

「ああっ、壱与、見られてます・・・ギル様に変態を見る目で見られています・・・! これだけでご飯五杯はいけます!」

 

一人で盛り上がっている壱与はそっとしておくとして。

 

「それで月、さっき言った用事だけど・・・」

 

「あ、はい。なんで」

 

「あはぁぁぁぁっ! 放置っ! 放置来ました! フヒヒィ・・・ギル様は私のツボを分かってらっしゃいますね!」

 

「ん、ああ。詠がな、物置に入れておいたはずのほ」

 

「あっ、ちょっと下着が・・・替えが確かこっちに・・・」

 

「ああ、それなら物置を整理したときに厨房の壁にたてか」

 

「そうだっ。この感覚を早速卑弥呼様に・・・」

 

「さっきからうるさい!」

 

「ひうっ!」

 

「ごめんな、月。ちょっと待っててくれ。俺、今から壱与の性格を修正しなきゃいけなくなった」

 

「ふふ。私もそうしようかなって思ってたんですよ。詠ちゃんからも「次にこういうことを言われたら、ちゃんと反撃しなきゃ駄目よ」って言われていたので」

 

「そっか、じゃあ一緒にやろう」

 

ふふふ、と二人で笑う。

流石マスターとサーヴァントだ。相性がいいからか、考えていることも大体一緒なのだろう。

 

「ギル様からのご褒美は嬉しいですが・・・月さんは、ちょっと」

 

「この状態で嫌そうな顔が出来る壱与の精神が分からない。実は卑弥呼並に図太いんじゃないのか、こいつ」

 

まぁいいや。取り合えず鎖で縛ってと。

 

「あ、猿轡も必要ですよね、ギルさん」

 

四肢を拘束された壱与に近づき、妙に手際よく猿轡を噛ませる月。

 

「んー! んんんーんー!」

 

「よろこんでいますね」

 

「いや、凄く嫌がってるように見えるけど」

 

「ちょっとー、あんたのところにウチの壱与が邪魔してな・・・お邪魔しましたー」

 

「よし、いいところに来た」

 

俺と月が暴れる壱与の前でそんなことを話していると、扉が開いてひーちゃんが顔を覗かせた。

これは好機と即時撤退しようとするひーちゃんの腕を掴み、部屋の中へ招き入れる。

 

「やだ! わらわ帰るの! 帰って弟の胃をぼろぼろにしてくるの!」

 

「駄々こねんな! というか弟に加減してやれよ!」

 

何だ「胃をぼろぼろにする」って!

胃痛の薬送るの追加しておかないと駄目じゃないか。

前に送ったとき凄い速さでお礼の手紙着たんだぞ。

 

「姉に逆らえる弟なんていないのよ! らりるれろ!」

 

相当パニックになっているらしい。

 

「とにかく、壱与にお仕置きをする人員募集中だったんだ。ほら、ひーちゃんも鈍器で後頭部殴られたりしただろ?」

 

「三回ほどね。まぁ、そういうことなら良いわ。ろうそくとかあるの?」

 

「前に壱与としたときに使った残りなら」

 

そういって宝物庫からろうそくを一つ取り出した。

なんとこれ、ろうはぽたぽたと溶けてしまうものの、長さはずっと変わらないという代物なのだ。

なので、夜の読書のお供なんかに重宝する。

・・・夜の「読書の」お供だからな?

読書抜かしたら大変なことになるので駄目だぞ? ・・・俺は一回抜かしたことあるけど。

 

「・・・あるんだ。っていうか使ったんだ。わらわとしては冗談のつもりだったんだけど・・・。壱与も中々いかれてるけど、ギルも人のこと言えないわよね」

 

「ほほう、今日のろうそく係はひーちゃんか」

 

「何そのろうそく係って!」

 

「夜になったら火の付いたろうそく掌に乗せて燭台替わりになる係り」

 

「それ壱与しかやるのいないわよね!?」

 

流石現役女王だ。突っ込みが鋭い。

 

「まぁ、冗談なんだけどな」

 

「・・・そうなんですか」

 

「何で月ががっかりしてるのかは、言わないほうが良いの?」

 

「第二の壱与を誕生させてもいいのなら真実を口にすると良い」

 

「やめとくわ」

 

即答である。一切のラグが無かった。

真実を求めると苦しいだけだというどこかの刑事の言葉はあながち間違いではないのかもしれない。

キャベツ食べたくなってきた。

 

「ま、わらわもちょっと見過ごせなくなってきてるのよね。わらわだけでも胃痛が凄まじいことになってる弟が、精神も患っちゃってねぇ・・・」

 

「弟良くお前たちについてくるな。邪馬台国すっごく怖い」

 

ストライキ起こしそうなものだが。

今度何か和むようなものを送っておくとしよう。

 

「それで? 何する?」

 

ワクワク、と目を輝かせている卑弥呼が、壱与を指差しながら呟く。

 

「何するって言ってもなぁ。俺が何かすると喜ぶし」

 

「へぅ。めっ、てするだけじゃ駄目ですか?」

 

「それしても駄目だったからこの人格が形成されちゃったんじゃないの」

 

そうか・・・壱与って結構駄目な子だったんだな。

 

「このまま放置すると放置プレイ、何かお仕置きするとSMプレイ・・・マゾって結構無敵だな。対抗策が見つからない」

 

「それはギルに対してだけでしょ。わらわなんか何度後頭部狙われてると思ってるのよ。さっき三回殴られたって言ったけど、未遂含めると三桁いくからね?」

 

「良くそんなの後継にしようと思ったな、お前」

 

「いやー、わらわの後を継ぐくらいだから、やっぱりやる気にあふれてないと」

 

「・・・殺る気?」

 

「そっちも重要ね」

 

「へぅ・・・お二人が遠く見えます・・・」

 

月が俺たちの会話を聞いて変な納得を見せる。

 

「ちょっとギル? 箒の場所聞くのに何時間かけて・・・何これ、儀式の最中?」

 

「詠の発想は突飛だなぁ」

 

この混沌の中に足を踏み入れた二人目は詠だ。

壱与を論破して涙目にした張本人である。

 

「・・・あ、詠と二人っきりにしておけばいいんじゃないかな?」

 

「んんんんー! んんんー!」

 

「良いわね、それ。壱与もこんなに喜んでるわ」

 

「んー!?」

 

「というわけで詠、頑張って」

 

そういって俺は壱与の猿轡を取り、月とひーちゃんと共に部屋を出た。

 

「ちょっ! 詠さんと二人っきりとかなんて拷問・・・ああっ、詠さんの眼鏡が光ってる! だっ、駄目ですよ! 私はギル様以外のお説教は聞き流すことにして・・・」

 

「あんたねぇ、懲りずにまた正妻がどうとか言いに来たの? まったく、月に同情するわ・・・」

 

「何でそんな嬉しそうな顔するんですかっ!? 絶対同情してませんよね? ちょ、夢ならさめ・・・」

 

「さ、仕事に戻ろうか」

 

「はいっ」

 

「あー、肩こったわぁ・・・最近背伸びすると腰が痛くなるようになってね・・・」

 

数時間後様子を見に行くと、満足そうにため息をつく詠と口から魂が抜けかけている壱与がいた。

取り合えず簀巻きにしてひーちゃんに引き渡すと、詠より盛大なため息をつかれた。

 

・・・

 

「あ、いたいた」

 

「キャスターか。解析終わったのか?」

 

「まぁね。中々面白いものだったよ、アレは」

 

「詳しい話を聞きたいんだが・・・」

 

「もちろん。私の部屋へ来ると良い」

 

そういって踵を返したキャスターについていき、キャスターの部屋へと入る。

若干妙な臭いがするのには慣れた。

 

「「女王殺し」なんだけどね、この酒はあるスキルに反応するように出来てるんだ」

 

「そのスキルとは?」

 

「「カリスマ」だよ」

 

「・・・いや、雪蓮とか呑んだけどただの度の強い酒みたいに呑んでたぞ?」

 

雪蓮なら有り余るカリスマがありそうなものだと思うんだけど。

それにしては、これ、ちょっと度が強いわねぇ。で済んでいたんだが。

 

「説明が足りなかったね。カリスマスキルを持つものがこれを呑むと、呑んだものが持つ魔力を使用して酩酊状態にするみたいなんだ。酒を呑むってことは、自分からそれを招き入れるってことだから魔力耐性も意味無いんだろうね」

 

「なるほど、銘に偽りなしだな」

 

ひーちゃんは馬鹿みたいに魔力あるからな。俺も持ってるし。

・・・もしかしたら月にも効くかもしれないな。

 

「そこまでは分かったんだけどねぇ。材料とか何の術がかけられてるのかまでは分からなかったよ。甲賀にも協力して貰ったんだけど、駄目だったね」

 

「謎の多い酒だな。ま、今度ひーちゃんか壱与に聞いてみるよ。弟にも手紙を出せば返事くれるだろうし」

 

「そうだね。確か邪馬台国原産のはずだから、そっちのほうが詳しいかもしれない」

 

分かった、ありがとうとキャスターに礼を言って部屋を出る。

 

「・・・あ、そういえば月ってどんな酒でも大抵ふらふらするな」

 

別に女王殺しじゃなくても酩酊するじゃないかと気付き、なんだか若干寂しくなった。

仕方が無い。ひーちゃんへの必殺アイテムとして保管するとしよう。

 

・・・

 

「さぁ副長、今日も今日とて訓練だ!」

 

「お疲れ様でしたー」

 

王の財宝(ゲートオブバビロン)! 開け宝物庫!」

 

「ちょっ! 冗談じゃないですか! 宝具射出とかなにトチ狂って・・・うひゃあっ!?」

 

「・・・ああ、そうか。その服ちょっとした防護魔術付いてるんだもんな。このランクの宝具で致命傷与えるのは不可能か」

 

「何でがっかりしてるんですか!? というか致命傷負わせる気でいたんですか!?」

 

いつもどおり副長で遊ぶ・・・じゃなく、副長と訓練している最中、珍しい客がやってきた。

 

「今日もお二人は楽しそうですねぇ」

 

「あれ? 風じゃないか。こっちに来るなんて珍しいな」

 

いつものようにキャンディを咥えてやってきたのは、魏の不思議系軍師、風である。

訓練場に訓練を見に来ることなんて今まで数えるほどしか見たことが無いので、若干驚いた。

 

「それはですね~。今日はお仕事がお休みなので、城壁の上を歩きながら考え事をしていると下にお二人が見えたので~、ちょっと声をかけていこうかなぁと思いまして~」

 

「それはそれは。あ、ついでに隊長のお相手どうです? 血に飢えてるそうなので」

 

「お話し相手なら風にも務まるのですが~・・・訓練となると力不足ですねぇ。ああ、春蘭さんでも呼んできますか~?」

 

「それは良い。副長もそろそろ魏の最強と戦っておくべきだもんな」

 

一回恋と愛紗とは戦ってるからな。次は春蘭、その次は雪蓮あたりか。

 

「あれ!? なんか凄く自然に夏候惇さんの相手させられそうになってます!?」

 

「何を言ってるんだ。最初からその話だったじゃないか」

 

「あ、あれ? そうでしたか・・・?」

 

「こいつ・・・騙されやすい嬢ちゃんだな」

 

そういうな宝譿。それだけ純粋なやつだということだ。

 

「さて、じゃあ今日も元気に三国挑戦状の旅だな」

 

「止めてくださいよ! 一回目呂布さん、二回目関羽さんってどんな判断ですか! 命をドブに捨てる気ですか!」

 

「鈴々とか霞とか春蘭とか雪蓮とかまだまだたくさん候補はあるぞ?」

 

「わーん! この人話聞いてくれないです!」

 

はっ! セイバーとかサーヴァントたちを候補に入れてないだけありがたいと思うんだな!

俺が訓練してたころはセイバーの固有結界の中でぶっ続け一日耐久訓練とか恋と行く強敵探しの旅(結局見つからなくて恋と戦うことになる)やらされたりとか、一週間の間ずっと気配遮断してるアサシンが攻撃しかけてきたりしてたんだぞ。

それに比べれば・・・。

 

「はっ・・・! た、隊長の目が凄く遠くを見ています・・・!」

 

「何か辛い事があったんでしょうね~。もう一押しで泣きそうな雰囲気です~」

 

「流石にそれは追い討ちが過ぎるというか・・・」

 

「アレだけ苛められていて良く弁護するような言葉が出てくるな」

 

「あ、宝譿さんこんにちわ。・・・というか、隊長のアレは別に苛めってわけじゃ・・・」

 

「なんだなんだ、壱与とか言う嬢ちゃんと同じニオイがしてきやがったな」

 

「宝譿、その話を詳しくお願いします~」

 

うん、いろいろ辛かったけど、俺頑張ったよなぁ。

前世も含めてこんなに頑張ったこと無いんじゃないかなぁ。

 

「・・・さて、俺の辛い回想も終わったことだし、訓練再開するか」

 

「凄く突然ですね!?」

 

「回想のあたりは触れてはいけないのですか~?」

 

「人の回想なんてあんまり面白いものでもないだろ。浅く話すならともかく、長い時間回想ばっかり語られるのも面白くないだろう?」

 

というわけで訓練再開!

早速セイバーでも呼んでこようかな!

 

・・・

 

流石にサーヴァントは無理ですと額をこすり付けつつ土下座されてしまったので、地獄の固有結界体験ツアーはまた後日ということになった。

なので、中庭のコースを走らせつつ、時折宝具を射出して避けさせるという常人なら三秒でリタイア確実の訓練をこなさせる事に。

まぁ、副長の実力ならば終わった後に息を切らせながら文句を言うくらいで終わるだろう、なんて思っていたらまさにその通りになってしまった。

 

「んだよ、つまらん」

 

「あの宝具の雨を潜り抜けた部下にかける言葉ですか!?」

 

「はっはっは、冗談冗談。良くやったよ。まさか一発も当たらずに終わるとは思ってなかったからさ」

 

「うむぅ・・・きちんと褒めてくれるなら、別に良いんですけどね」

 

子供のようなやつである。

まぁ、副長はこうじゃないとな。

 

「じゃ、なんか食べに行こうか。風も行くだろ?」

 

「そうですねぇ。まぁ、ここまで来たのなら最後までお付き合いしますよ~」

 

「はいはい! 今日は麻婆豆腐の気分です!」

 

「泰山行くか」

 

「や、やっぱり餃子の気分です!」

 

そんなにトラウマか、あの麻婆豆腐。

 

「うぅ、コンゴトモヨロシクしたくないよぅ・・・」

 

「・・・何か、あったのですか~?」

 

「語るも笑い、聞くも笑いの話がだな・・・」

 

「その滑り出しは初めて聞くな・・・」

 

宝譿の突っ込みもそこそこに、副長の泰山初体験時の話を聞かせる。

さて、この辺で餃子の美味しい店はっと・・・。

 

・・・

 

「突然だけどさ」

 

「ん?」

 

「生足と黒タイツと白タイツってどれが好き?」

 

「・・・なんだよ突然」

 

困惑する一刀を尻目に、俺は言葉を続ける。

 

「ウチの軍師とかさ、月たちとかさ、結構いろんな種類あるじゃん? ハイニーソとかさ」

 

「あ、ああ。そういわれてみるといろいろあるな」

 

「俺らも結構現代の服とか広めたけどさ、朱里たちとかは最初っからあれじゃん? 平行世界の邪馬台国にいる卑弥呼もミニスカニーソだしさ」

 

「でも、可愛いからいいじゃないか」

 

「それもそうか。・・・で、何でランサーは黙ってるわけ?」

 

「なんとっ。ここで私に振るわけですか!」

 

「いや、というかお前たち、俺の家で何を議論してるんだ全く・・・」

 

俺の対面にはちゃぶ台をはさんで一刀がいるのだが、右にランサー、左に甲賀が正座している。

先ほどの女の子の足についての談義も、お茶をすすりながら聞いてはいたのだ。参加してなかったけど。

 

「で、甲賀は?」

 

「生足だな」

 

「答えるのですかマスター!?」

 

「聞かれたならば答えねばなるまい」

 

変なところで真面目な男である。

流石イケメン。

 

「ちなみに俺は黒タイツかなぁ」

 

「一刀殿っ!?」

 

「ああ、分かる分かる。詠とかな」

 

今日こんな話題を挙げたのも、詠のタイツをじっと見つめてたら目潰しされたからだ。月に。

いいじゃないか、目の保養だったんだし。

 

「で、ほら、ランサーは?」

 

「わ、私は・・・も、黙秘権を! 黙秘権を行使させていただきます!」

 

「なんだツマラン。・・・甲賀!」

 

「分かっている。令呪によって命ずる・・・」

 

「マスタァァァァーッ!? 正気ですかァッ!?」

 

甲賀の言葉とともに輝き始めた令呪を見て、ランサーが机を叩きながら立ち上がる。

 

「キャラ変わってんぞー」

 

「二画残ってるからな。こういうところで使って行かんと」

 

「答えないとサーヴァント史上最もくだらない事に令呪使われるぞ」

 

「こっ、答えます! ですので、どうか令呪を使用するなんて馬鹿げたことはおやめください!」

 

「最初からそういえばよいのだ。まったく、無駄な時間を食ったな」

 

はぁとため息をつく甲賀を裏切られたような目で見ながら、ランサーは諦めたように座りなおした。

 

「ええと・・・女性の脚の好み・・・ですよね?」

 

「そうなるな。別にタイツには限定しないぞ。ニーソでもブーツでも何でもどうぞ」

 

「そうですね・・・でしたらやはり和服に白足袋でしょうか」

 

「なるほど、日本男児としてチラリズムは外せない、と」

 

「萌えと同じ日本の文化だよな!」

 

おいおい、なんか開き直ってんぞ現代の学生が。

まぁ、否定はしないけど。

 

「ふぅ。こう、なんかスッキリしたよ。また談義しような。次は・・・そうだな、髪型とか?」

 

「・・・二度と、開催されないことを祈ります・・・」

 

全てを燃やし尽くしたようなランサーと甲賀に見送られながら、俺と一刀は城へと戻った。

まぁ、ランサーは翌日ケロッとしてたので、きっと吹っ切れたのだろうと思う。

 

・・・




その日の帰り道でのこと。
「髪の次は・・・胸のことでも語るか?」「あ、胸といえば聞いてくれよ。遊撃隊全員の身体検査があってさ、その結果って隊長である俺は見なきゃいけないわけさ」「お、なんか面白そうな話の予感が・・・」「副長の胸囲な、胴囲とどっこい位だった。どっちも薄いんだよね」「やばい、目から汗出てきた」

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