魔法少女リリカルなのは~黒き迅雷の軌跡~   作: イナズマ

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読んでいる人がいるかわからないですが、だいぶ遅くなってごめんなさい。



第4話 アークVSシグナム

「よし、では始めるか。勝利条件いつも通りでいいだろう、アーク?」

 

「ああ、相手を降参させるか、一発決めるか、だろ?」

 

うむ、とシグナムは頷く。

模擬戦の数は互いの手の内がわかる程にはやっているので両者ルールは熟知している。

バリアジャケットの展開はお互いに済ませてある。アークが身に纏うのは黒いジャケットを模したものだ。そのジャケットはどこか軍服に近いデザインであった。そして、右手に握られているのは「ヒュペリオン」と名付けられたデバイスである。それは剣の形態を取っており1メートル程の黄色の魔力刃が形成されている。準備は万端。あとは合図を待つだけである。

 

「ということだ、なのは。開始の合図を頼む」

 

「うん!じゃ、いくよ?」

 

カウントが始まる。

 

ーー3。両者重心を低くし、体から力を抜く。

 

ーー2。シグナムはいわゆる中段の構え。それに対してアークは体を斜めに向けるだけ。

 

ーー1。二人の模擬戦を見つめ新人たちは唾を飲み込む。

 

ーー0!

 

「はぁぁぁ!」

 

カウントがゼロになったのと同時に掛け声とともにシグナムは距離を詰める。さすがベルカの騎士といえる初動の速さ。それは互いの距離を無にするほどのものだった。だが、それに反応できないアークではない。シグナムの武器は剣である。故に近づいて斬るのが唯一の攻撃だ。それがわかっているから、彼はバックステップで距離を離し、そしてーーー。

 

「シュートバレット!」

 

アークの周囲に形成されるスフィア。数にして10個。

 

「いけっ!」

 

合図をうけ、スフィアは拡散しつつ発射される。基本中の基本である射撃魔法であるが、弾速こそ速い魔力弾。一度発射されてしまえば方向が変えることができない魔力弾をシグナムはものともせずに避ける。

展開、発射、移動、展開、発射、移動の繰り返し。だが、あくまでこれは牽制、剣戟ではシグナムに分があるの明白であるからだ。距離を詰められては反応できない。故に自ら距離を詰める。魔力弾はあくまで布石でしかない。

 

「っ!?」

 

シグナムは驚愕する。瞬間的に、ほんの一コマ、彼女の視界から標的が消えた。次にアークを再認識した時には既に彼の間合いであった。

 

「う……らぁ!」

 

黄色い一閃。稲妻が走ったかと錯覚するほどの速度、申し分のない剣戟。だが、それすらも歴戦の騎士シグナムは反応する。

アークの魔力刃に吸い込まれるようにシグナムとの間にレヴァンティンが入り込む。そして、互いの剣がぶつかり合い轟音が鳴り響く。

 

「恐ろしい反応速度だな!」

 

「ふ、そういうアークも良い斬り込みだった」

 

「涼しい顔して言われると、なんか腹立つ……なっ!」

 

力む声と同時にアークは無造作に斬り払う。突発的に力が加えられたためかシグナムは弾かれる。技こそシグナムが上だが、男性であるアークの方が力があるためだろう。

彼がすべきことは距離を離すこと。古代ベルカ式の魔法を操る騎士のシグナム相手では至近距離の戦闘は分が悪い。故に彼は相手の苦手なレンジで戦う。

後ろベクトルに加速しながら、左手をシグナムに向け魔法名を口にする。

 

「ヴァリアブル・バスター!!」

 

言葉にするよりも早く、環状魔法陣が展開され砲撃が発生。それは即射という比喩が正しいほどに早い展開だった。

だが、結果はーーー。

 

「掠っただけか……」

 

シグナムへ視線を向けると、左太もものバリアジャケットが破れている。どうやら体勢の立て直しからの回避は間に合ったためか直撃ではないようだ。

 

「タイミングがもう少し早ければ撃墜されたかもしれん。あそこで後ろに下がらなければ、な。珍しく判断ミスをしたな、アーク?」

 

「偶然だ、そんなこともある」

 

なんせ寝不足だからな、と心の中で付け足す。しかし、言葉にはしなかった。言い訳を口にするなど戦っている相手に失礼極まりないだろう。

そして、彼はまるで当然とばかりな表情で左手をシグナムへ向け、決め台詞のように言う。

 

「だが、次は判断ミスしない」

 

環状魔法陣を展開。既にチャージは完了している。もちろん標的はシグナムである。言い訳はしない。だが、多少なりとも性格の悪さが滲み出ているのが彼から伺えた。アークがもし付け足すならこう言うだろう。「戦いの最中に話している方が悪い」と……。

 

「ヴァリアブル・バスター!!」

 

先ほどよりものよりも高火力の黄色の砲撃が放たれた。

 

 

 

 

 

「シグナム相手にここまで戦えるなんて、さすがゲンヤさんが推薦するだけあるね」

 

アークとシグナム。近づいては離れ、黄色い閃光が飛び交う二人の戦いになのはは言葉を漏らす。だが、いまいち彼の戦い方に違和感を覚えるなのは。

 

「なのはさん、確かグライド一等空佐は魔力変換資質を持ってると聞いたことがあるのですが……」

 

「うーん、確か持っているはずなんだけど……」

 

どうやら、なのはだけの疑問ではないらしい。噂だけとは言えアークを知っているティアナも疑問を感じた。だが、なのはが違和感を感じたのは、また別のところであった。

 

「でも、無造作に振り回しただけであのシグナムを吹き飛ばせるものなのかなぁ……それにあの即射できる砲撃魔法も気になるし……」

 

はて、そんな疑問を抱きながら模擬戦を眺めていると、新たな観客が現れた。

 

「やっぱ、やってるんだ……」

 

現れたのはフェイト。その表情はやはりかというもの。どうやらシグナムと模擬戦をするのは予想の範疇だったらしい。

 

「あれ?フェイトちゃんどうしたの?」

 

なのはは違和感で傾けていた首をさらに傾げる。フェイトが来た理由をまったく理解していない様子である。

 

「訓練の時間過ぎたのに戻ってこないから、何があったのか見に来たんだよ。まぁ、予想の通りだったけど……」

 

「にゃははは、ごめん。それで聞きたいことがあるんだけど」

 

模擬戦をしている両者に、いやアークに一瞥する。無論聞きたいのはアークことだろう。

 

「アークのこと?」

 

「え、私は別にアーク君とは一言も言ってないよ?」

 

言葉と表情がまったく逆だった。もちろんなのははニヤニヤしっぱなしである。つまり確信犯。

 

「茶化すつもりなら、聞かなかったことにするよ?」

 

「ちぇー、つまらないなーフェイトちゃんは……」

 

なのはが想像していた反応とは異なるフェイトに口を尖らせる。

 

「まぁ、そんなことよりさ。実際アーク君はどんな魔導士なの?データ上だとオールラウンダーとは記されていたんだけど」

 

視線の先には、直線的な魔力弾の中に誘導弾を入り混ぜ変則的な弾幕でシグナムを遠ざけつつ、立ち回るアークの姿。そして、初手でみせた突然の斬り込みでシグナムに強襲をかけては、一撃離脱をしていた。

 

「アークは私と同じ中距離から近距離を得意としてる魔導士だよ。あと、さっきの魔力弾からの急速接近が反応し辛いのは魔力弾に気をそらせつつ、高速移動魔法を使ってるからだと思うよ。まぁ高速移動魔法自体が速いから反応しにくいというのもあるだろうけど」

 

手品でいうならミスディレクションが近いものだろう。それは他のものに気をそらせつつ、手品をするトリックである。アークの場合は魔力弾で気をそらし、素早く動くために魔力弾の範囲外から高速移動魔法で周りこみ近づいているからであった。

 

「ふーん。なら、アーク君が使ってた砲撃魔法はどういう理屈なのかな?」

 

砲撃魔法を多用するなのはが興味を持つのは当然であろう。彼、アークが使う砲撃魔法は環状魔法陣が同一でありながら、1射目と2射目の性質が異なったからだ。そしてなりより、気になるのは展開から発射までのタイムラグのない砲撃であった。

 

「それは確か……って、なのは模擬戦とめて!」

 

フェイトの視線の先には、刀身に炎シグナムと“雷”を纏った魔力刃を展開するアークが対峙していた。

 

「え、なんで?」

 

「いいから、早くっ!!」

 

 

 

 

 

互いに使用する魔法は近距離用のもの。剣に属性を付与し威力を上げるものであった。

シグナムは炎を、それに対しアークは雷を刀身に纏わせている。

 

「紫電……」

 

「迅雷……」

 

シグナムは上段構え。アークは逆袈裟斬りの構え。

シグナムは振り下ろし、アークは斬り上げる。

 

「「一っ……!!」」

 

両者の刃が交わる寸前、間を切り裂くように桃色の砲撃が駆け抜ける。

 




ヒュペリオン
アークのアームドデバイスであり、剣状態のもの。実体剣でなく魔力刃を展開する両刃剣。代用が効くようにAIを搭載していない。

簡単にいうならこの程度です。

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