双星の雫   作:千両花火

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Chapter6 夢見る兎の軌跡編
Act.57 「始まりの悪夢」


 空を飛びたい。そして、どこまでも遠くへ、あの宇宙に届くように、高く。

 

 それが篠ノ之束という存在を形作る原点で、そして今も続く夢のカタチだ。

 

 束はきっかけを今でもよく覚えている。

 妹と一緒に空をぼんやりと眺めていて、ふと箒が言った言葉………「お空はどこまで続いているの?」、そんな子供っぽい言葉だった。

 束の返事は、「いつか、一緒にそれを確かめに行こう」だった。そして、束自身も狭い地球じゃなく、もっともっと広い宇宙へと思いを馳せていた。だから、箒にも自分と同じ思いを抱いて欲しかった。だから、見せたいと思った。宇宙から見た、青いこの地球の光景を見せてあげたいと思った。

 

 昔から束は周りから浮いた存在だった。生まれたときから天才で、傲慢でもなんでもなく、同年代の子供とは頭の出来が違いすぎた。始めの頃は親や先生も天才だと褒めていたが、、その異常な頭脳に気付いたとき、束に向けられるものは恐怖であった。歳不相応なスペックと、なかばそれを無自覚で次々と常識の遥か上を走っていく子供。

 周囲の人間はもとより、親からも怪物でも見るような視線を向けられることも少なくなかった。違ったのは、妹の箒、そして千冬と一夏の織斑姉弟くらいだ。

 だから束の世界にはこの三人しかいなかった。自分と、三人だけが優先するべきことで、あとはすべて有象無象のくだらないものとして色褪せて見てしまっていた。

 しかしあとにして思えば、自身に向けられる負の感情に嫌気が指していたとはいえ、もう少し他人の感情の機敏を気にかけていたらああまで悪化することはなかったかもしれない。

 

 それから束は空を飛ぶためのマルチフォームスーツの開発に取り掛かった。束の頭の中にはすでに完成系があったとはいえ、丹精を込めて作ったマルチフォームスーツの実証試験に漕ぎ着けるまでそれなりの時間がかかった。それでも、一般的な常識から考えれば異常な早さであった。

 完成した初期のISは、ISという名前すらないものであったが、その必要最低限な機能は一通り揃っており、世界に技術革命を起こすには十分すぎるほどのものだった。それをたった一人で、なんの支援もなく作り上げた束は紛れもない鬼才であった。

 しかし、それが限界であった。たしかに箒たちを喜ばせることができると自負していたが、束はせっかくだからこれに箔を付けたいと思った。それに、いずれ宇宙へと進出するためにはまだ能力不足なのも確かだった。だから、さらに予算や資材の提供が必要となったのだ。一人だけではどうしてもこれ以上のものを造るには活動資金が不足していたから。

 

 ISの雛形たるフォームスーツを学会の発表に踏み切った束であったが、そこでもたらされたのは賞賛ではなく嘲笑であった。

 

 曰く、非現実的。曰く、子供の戯言。

 そんな容赦のない誹謗が束に向けられた。まだ若く、子供といって差し支えない束の言うことは子供の絵空事だとして、束がどれだけ説明しても受け入れられることはなかった。自身の発明、そして自身の頭脳に絶対の自信を持つ束にとって、それは耐え難い屈辱であったし、なにより自分の夢が否定されたようで束はその日、はじめて泣いた。

 

 だが、それでもそこで終わらないのが篠ノ之束であった。いくつかの発明で特許を取り、それを元手に資金を少しづつ増やしていった束はとうとう現在のISと同じコアを備えた空を翔けるマルチフォームスーツ『インフィニット・ストラトス』を完成させた。自己学習能力、そして操縦者の保護機能、量子通信による相互通信機能、おおよそ束が考えられる宇宙空間での活動に必要な機能を詰め込んだ。

 それがはじまりのIS。無限の可能性を内包する、束の夢のはじまりを象徴する機体のはずだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「えっ、資金援助?」

「はい。どうでしょう、篠ノ之博士」

「でも、私の発明は認められてないけど……。そこまでしてくれる理由なんて……」

「あなたの発明は素晴らしい。それだけですよ」

 

 ある日、束の下に一人の女性が姿を現した。見るからに外国人というような金髪と青い目、しかし流暢な日本語を喋るその女性は日本に支部を持つ企業の人間だという。

 もともとあまり他人を信用しない束であったが、はじめて自身の発明を認めてくれたということで多少はちゃんと話を聞いていた。

 いろいろな美麗賛句を言われたが、束はそうした世辞には靡かない性格だった。なぜなら、自分の能力、作ったものには絶対の自信があったためだ。だからはじめは適当に流していた束であったが、最終的にはその女性の申し出を受けることになる。

 

 完全に信用したわけじゃなかった。ただ、宇宙へ出るという夢のためには、どうしても外部からの協力が必要だったからだ。

 それに、たびたびISのデータ取りに協力してくれていた親友の千冬にも「おまえは一人でなんでもできてしまうが、もう少し頼ってもいいんじゃないか」と言われていたことも理由のひとつだった。

 

 

「――――ってわけで、その話を受けようと思うんだ」

「そうか。だがこれでおまえの研究が捗ればいいことではないか」

「そうなんだけどねー」

 

 夜も遅くに、自宅の倉庫を改造して作ったラボで束は千冬と一緒にISの調整を行っていた。まだ二人とも学生という身分(束はほとんど学校には行っていない)であったが、こうして二人で毎日少しづつISを作り上げていくことが日課であった。

 ISコアのベースには千冬のパーソナルデータを使っている。だから千冬には機体の実働データの収集を協力してもらっていた。人に適合して補助するマルチフォームスーツにはやはりデータだけでなく、こうした実際に人間との機動データが重要であるため、束も助かっていた。千冬がいなければ束の研究も五年は遅れていただろう。

 なにより千冬は束にとって対等な唯一の友人だった。なにより二人とも弟妹に対しての家族愛が強かったこともあり、ブラコン、シスコントーク仲間だった。だから千冬も一夏や箒を喜ばせようとする束の研究にも協力していた。

 

「まぁ、あの二人を驚かせるにはもう十分だとは思うが」

「かもね。でも、どうせならもっともっと、大きなものを見せたいもの。それに、私も見たい」

「おまえなら宇宙船を作っても納得してしまいそうだよ」

「んー、構想はあるんだけどね。そのためには、やっぱり支援を受ける必要があるからな~。でも、まだ認められていない私が受けるにはちょっと厳しいし、今回みたいな援助は幸運だったかな」

「どれほどの援助を受けるんだ?」

「とりあえず研究資金として一千万」

「いっせっ……!?」

 

 未だ学生の身で幼い弟を養っている千冬にしてみれば、それはとてつもない金額であった。

 

「研究成果によっては倍増だってさ」

「そこまでか? 逆に怪しくはないか?」

「んー」

 

 本音を言えば、束も完全に信用などしていなかった。むしろ、なにかあるとすら思っていた。そしてそれは事実であったが、このときの束は世間知らずと自身の才能への過信から社会的な権力、そして組織の力というものを甘く見ていた。だからなにかあっても自分なら対処できるという根拠のない自信を持っていたのだ。

 

「でもさすがの束さんも無からお金も資材も作れないからね。外部の協力は必須だし」

「ふむ………まぁ、おまえなら大丈夫だとは思うが」

「でもこれで二機目の作成も可能になった。相互干渉機能を持たせても、単機だけじゃ意味ないもんね」

「単機でも十分すぎるスペックだと思うが……」

「ふふっ、束さんは天才だからね!」

 

 屈託のない笑みを浮かべながら束はさらなる可能性をISに与え続けた。広い広い、宇宙に出たとき、名実ともに相棒となる存在。自分が生み出した、まさに子供といえる存在に束は心の底からわくわくしていた。自分の作ったISが、箒たちを、そして多くの人を乗せて空を飛び、宇宙を開拓する力となる。

 果てのない、無限の宇宙を歩くもの、無限の可能性を込めて生まれる、未来のISたち。束は、夢の心地よさに酔いしれていた。

 

 

 ***

 

 

「装備を作る?」

 

 支援をしている組織、名前は『フロンティア』というのだが、その所属で束との連絡役という女性からの要請でISに装備可能な武装の開発の打診がきた。束からすれば、それは眉をひそめるものだ。

 当然、いったいなぜそんなものが必要なのか、と聞いた。

 するとISの有用性の実証のために、対テロ装備としてや、災害支援のための使用を検討しているという。そして認められれば、さらなる援助が見込めるとのこと。

 束は、目的が宇宙進出だと既に伝えているし、そのためには莫大な資金がいることは承知している。だから、疑問に思いつつも、最終的には人の役に立つことであるし、夢のためには必要だと思って承諾した。

 そして束は紛れもない天才であった。あっという間に、IS用のハイスペックな武装や災害支援装備の設計と仕様書を作ってしまった。あくまで設計だけで実際に作ってはいないが、束の頭脳から生み出されたそれは完璧なものであった。

 しかし、それでもISは未だに世界に対する実績に欠けていた。スペックが高すぎて、実現不可能だと思われていたこと、その生産に莫大な資金がかかることでコストパフォーマンスが高すぎたことが理由だ。束はそれでもそれに見合う性能があると自負していたし、そう説明していたが、なかなかそれが認めれない。支援していた『フロンティア』からの要望で、実績が出せるよう、より性能を高くするように求められたりもした。この当時のISは人外級のスペックを持つ千冬をベースにして開発されていたため、一般人どころか、軍人でも扱いに難儀するほどのものであった。こうしたところは束は無頓着であったため、より扱いやすい操縦を可能とするように改良していった。もちろん、女性しか扱えないなんていう欠陥などありはしなかった。

 

 そしてコアの製造が始まった。実証試験を兼ねるため、災害救助組織での試験運用をするという名目である程度の数が要ると言われ、作ったコアの数は全部で100個。

 そして同じ数のISが災害救助として使用されることになる。その性能はこれまでの常識を覆し、まさに技術革命を起こすほどのものであった。

 これにより救われた人間も多く存在しており、そういった人から束に感謝の手紙が届いたこともある。束としては夢へのつなぎであったが、それでも見ず知らずの人間からこうした感謝を受けることなどなかったので、初めて手紙をもらったときは身を悶えさせて喜んだ。

 束は、だんだんと人と触れ合ってもいいかも、と思い始めていた。自分の才能が、誰かのためになる。誰かに感謝される、それがこんなにも嬉しいと初めて知ったのだ。対人能力の低い束が、初々しく他人のためになにかしたいと思う姿は、妹の箒よりも幼く見えた。

 

 そして一年半をかけて束はさらに366個のコアを製造した。これで最初に作ったプロトタイプも合わせ、合計467個のISコアが世界へと配られた。

 

 あとは、ISが正式に宇宙進出のために使われる――――はずだった。

 

 過去にもしも、というものは存在しない。それでも、もし、もしも、このとき束が小さな疑念をしっかりと調べていたら。自己の能力を過信していなければ。信じるという意味を、履き違えていなければ。

 

 おそらく、歴史は大きく変わっていたはずだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

 

「えっ、どういうこと?」

 

 束は受話器を片手に声を荒げていた。

 電話相手は国際宇宙開発局で、内容はISの宇宙での有用性を示す発表についてだ。以前はまともに相手をされなかったが、今回は企業のバックアップと災害支援にも使えるスーツということで注目されるものとなっている。既に内々に発表と同時に国連を通じての宇宙開発を目的としたパワードスーツとして研究・開発に着手されるという話になっている。少なくとも、束はそう聞かされていた。

 しかし、聞いていた期日を過ぎても一向に連絡もなにもない。連絡役の女性ともここ最近はうまく連絡が取れない。さすがに訝しんだ束は、直接問い合せることにした。

 見知らぬ人物を相手に話すことは未だコミュニケーションに難がある束には少々躊躇われることであったが、それ以上に事態の進展が気がかりだった。

 そして緊張しながら問い合わせると、思いもよらない返事をされたのだ。

 

 『そのような話は聞いたことがありません』と。

 

 束は焦ったように事情を説明し、さらに支援して手続きをしてくれた企業のことも話した。しかし、何度聞いても答えは「知らない」というものだった。そしていたずら電話だと判断されたのか、通話をあっさりと切られてしまった・

 束は次に国連へと問い合せた。これにはなかなか骨が折れたが、なんとか担当へと取り次いでもらい、ちゃんと事情を話したがやはり答えは同じだった。

 混乱する束であったが、心のどこかではその優秀な頭脳が導き出した結論をわかっていた。

 

「嘘、そんな、こと、……!」

 

 しかし、事態はそこで終わらなかった。

 まるでタイミングを見計らったかのように、束の白衣の中にあった電話が鳴った。束がビクリと身を震わせてそれを取り出す。この端末にかけてくる人物は一人しかいない。

 

『ごきげんよう、篠ノ之博士』

「あなたは……!」

 

 そう、その女性はこれまで何度も束と会い、束のIS開発を支援してきた組織の人物。その女性はこれまでと同じように穏やかな声色で束に話しかけるが、それがむしろ束をイラつかせた。

 

『もう事情は察しているようですね。お疲れ様でした博士、あなたの功績は世界の変革をもって証明されるでしょう』

「なにを、なにを言って……!」

『ISコアは既に世界に散布される手筈となっております。数は少々足りませんが、まぁ許容範囲でしょう。あなたも疑念を抱く頃合でしょうしね』

「なにを言ってるんだよ!」

『ああ、それと謝らなければならないことがいくつか。まず、ISは未だ、あなたと我々しか知りません』

「…………え?」

 

 どういうことだ、それは。既に実証試験として災害支援用として使われたのではなかったのか。

 束の疑問に、受話器からの声は変わらない調子で告げる。

 

『実証はいたしましたよ。我々だけで、ですがね。実際災害地、局地的な使用にも問題なく稼働いたしました。実に素晴らしい』

「な、そ、それは、どう、……!? だって手紙だって!」

『あなたの頭であれば、もうお分かりでしょう?』

「………!!! 全部、偽証のためのっ!」

 

 ギリリ、と束が歯軋りをする。屈辱だった。これ以上ないほどの屈辱だ。プライドの高い束は利用されたこと、そして疑念を持っていても、舞い上がってしっかり調べなかった自分の迂闊さを呪った。

 

『もっとも、あなたが本気になれば我々のことなどすべてお見通しだったでしょう。その個人の技術力は我々の組織に対しても上をいくものでした。実に素晴らしい。ゆえに、あなたには技術的ではなく、心理的なブロックをさせていただきました。博士はずいぶんと初心なご様子……おかげでやりやすかったですよ』

「~~~~ッッ!!」

 

 夢を、そして人のためになるならという束の願いを裏切る行為に、手に持った受話器にヒビが入る。片手で髪を乱暴にかきむしり、どんな言葉にも変換できない怒りが無造作に乱雑に発散される。

 だが、同時に疑問も思う。なぜ、いまそれを暴露したのだ。

 束の価値は、こいつらが一番よくわかっているはずだ。利用していたということは、こいつらにはISを生み出す技術はない。少なくても、コアを作り出すことはできないはずだ。コアは束が厳重にブラックボックス化したので、コアの生産工程は誰にも明かしていないし、事実束がすべてのコアの製造を行ったのだ。

 なのに、束を切り捨てるかのような真似をする。それは、つまり。 

 

『お察しの通り、あなたの能力は脅威と判断し、これ以上の介入は好ましくないと判断いたしました。すでにISコアの数は十分………あなたの役目は十分です』

「なにが、なにが目的なんだよおまえはぁっ!!」

『あなたならわかるのでは? 今のくだらないことしかない世界に飽き飽きしている。だから変化を起こしたいのです』

「ISで世界征服でもするつもりなの? 残念だけど、ISにそんな力、は………」

 

 だが、気付く。気付いてしまう。

 できる、と。ISを使えば、世界を相手にすることが確かにできる。

 

『それでは面白くありません。力による支配より、もっと面白い方法がありますよ』

 

 いたずらを語るようなその声に寒気を覚える。

 

『あなたも楽しんでください。あなたなら、楽しめるでしょう? もうじき、世界を揺らします。あなたには特等席で見てもらいたいですね』

「おまえは、おまえはなんなんだよ!」

 

 なかなか理解されない束をして、理解できない存在。それがこの女であった。束の叫びに、女性はクスリと笑って、語る。

 

『私は亡国機業プレジデント………マリアベル。よろしく、そしてさようなら。いつかまた、どこかで会いましょう。願わくば、刺激的な再会を祈っていますよ』

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

「そんな、私のプログラムを改変するなんて……!!」

 

 通話を終えた束は即座にISコアネットワークに接続した。未完成ではあるが、コアの強制停止システムの構想はあったのだ。なんとかそれを起動させて、断腸の思いですべてのコアの活動を停止させようとした。

 しかし、コアネットワークを通じて知った情報は、束を驚愕させた。

 

 コアのプログラムを一部改変してあったのだ。深層のプログラムまでは及んでいないが、表層プログラムの一部が書き換えられていた。束は、相手の力量を見誤っていた。たしかに自分には及ばない。だが、それに迫るものは持っていた。

 束は即座にアンチプログラムをコアネットワークに流し込んだが、すでに遅かった。改変されたコアプログラムは完全にコアに癒着しており、これ以上の改変を防ぐことで精一杯であった。コアの強制停止も不可能だ。むしろ、これほどの技術力を持つのなら、強制停止システムが存在すること自体が危険すぎると判断した束は迷いながらもそのプログラムを削除。さらにそのハードディスクごと物理的に破壊した。

 確かに世界に散らされたコアは回収は不可能だが、それでもこれ以上外部からの改変も不可能となった。ISコアすべてを統べることはもう創造主である束でもできない。

 

「くそ、でも、いったいなんでこんな改変を……」

 

 改変されたコア表層プログラム。表層、つまり外部と接するプログラム、それはコアと適合する人間のフィルターに関するものだ。ISにも適正があり、適正が低い人間が使えば悪影響を及ぼす。だから汎用でありながら、一定水準を満たさなければ起動できない制限がかけられていた。

 そのフィルターに、ある制限が加えられていたのだ。

 それは、適正条件として、操縦者たる人間の遺伝子情報が女性であること。男性であれば起動が不可能となるものだった。

 いったい、なにがしたいのかわからない。たとえISを兵器として使おうというのなら、男性が適合できないのは致命的だ。

 

「女性を台頭させるため? でも、今の状況ではただの欠陥でしか………」

 

 忌々しいことだが、世界はまだISを認識していない。なら、その価値すらわかっていないのだ。それなのに男性が使えないというのはマイナスにしかならない。とても受け入れられるようなことではない。

 

「何かする気なんだ、でもいったいなにを……」

 

 束は凄まじい早さで情報を集めていく。本来ならすぐにでもこの場から避難するべきかもしれないが、マリアベルと名乗った女性の言葉が気がかりであった。あの言い方からして、今なにかを起こしているようにしか思えなかったのだ。

 そして束の部屋にある無数のモニターがあらゆる情報を表示していき、やがて束はそれに気付いた。

 

「軍事基地がクラック?」

 

 それはリアルタイムでのことだ。もちろんそんな情報は表に出ることなどないが、どうやら裏では関係者が大騒ぎしているらしい。

 束もその関係施設のコンピュータに侵入、その情報をさらに集めていくと、とんでもないことがわかった。クラックされたのはミサイルの発射システムだ。そして既に発射シークエンスに入っているらしい。

 まさか、これがそうなのか。だが、そんなことをしていったいなにを………そう疑問に思う束が、そのミサイルの目標を見て絶句する。

 

 総数にして二千を超えるミサイルのすべてが、日本を目標としていた。しかも、そのロックオンしている座標は………。

 

「この、町………!!」

 

 しかもご丁寧に、大型ミサイルのいくつかは束の生家である篠ノ之神社の座標がピンポイントで設定されていた。

 

「マリアベル……ッ!! あの女ァァ―――ッ!!!」

 

 そして束がミサイルの発射を阻止しようとする前に、無慈悲にミサイルが発射された。

 

 束が絶叫する。

 

 束の悪夢が始まった瞬間であった。

 




急遽出張となり五日ほど遠出してきました。なんでいっつもウチなんだ。

この物語では綺麗な束さんで通しますので、過去はかなりの改変となります。ここでは白騎士事件も亡国機業ってやつの仕業なんだ。なんだって!それは本当(ry

過去編終了後は番外編を入れようと思います。なんかアンケートできると聞いたので活動報告でアンケートをしてみることにしました。興味があるお方は是非どうぞ。

過去編は4~5話くらいの予定です。それではまた次回に!

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