“IS”とはなにか?
現存する最強の兵器。世に女尊男卑を生み出したもの。それも間違いではないが、発明者である篠ノ之束の言葉を借りるなら。
“IS”とは、夢の可能性である。
空を飛ぶ夢のために、それを多くの人と共感するために。束が描いた夢を、多くの人に見せるために。共に、空を飛ぶために。
そのための、あらゆる可能性を内包させたもの。無限の可能性を生み出す、果てしなく、どこまでも続く青い空を飛ぶもの。
ゆえに、『無限の成層圏』、インフィニット・ストラトス。
そこに束が込めたものは、ISそのものが、夢を共有する存在になって欲しいという願い。だからこそ、ISに『心』を与えようとした。そのISを纏う人間を感じ、学習することでIS自身が成長するように促そうとした。
もちろん、それは並大抵のことではない。そんな『心』が生まれるかどうかも束にすらわからなかった。
しかし、それは間違ってはいなかった。
今、ここにもうひとつ、………操縦者の意思に応える『心』を持ったISが生まれたのだから。
***
爆炎の花が咲く。
無人機のビームすべてが直撃したことによって生じた炎は、完全に鈴と『甲龍』を包み込んだ。それを見ていたオータムはケラケラと笑いながら眼下にいる火凛へと目を向ける。
「これで邪魔者はいなくなったなぁ? さぁ、黙って一緒に来て……」
「………く、くはっ」
「ああん?」
「くく、くひゃ、あはははっ、あひゃははははっ!!」
オータムの視線の先では、火凛が裂けるのではないかと思うほど口を大きな三日月型に変形させ、目を見開きながら奇声のような笑い声を上げていた。それは、狂ったとしか思えない姿だった。真横にいる雨蘭もどん引きしている。妹のこんな姿を見るのは初めてだっただけに、雨蘭のほうが衝撃は大きかっただろう。
「なんだぁ? トチ狂ったか?」
「くひゃはっ、鈴音……! そして『甲龍』! やっぱり、あなたたちは最高だよ、今、この場にいることに感謝するよ……あはっ」
「なに言ってやがる?」
「私の予想は間違ってなかった……! ISとは! そこまで至れるものだった! これが、ISの可能性、ISの進化……!」
「進化、だと?」
その異様な興奮状態を見て、ただ事ではないと感じたオータムが、撃墜したはずの鈴のほうへと顔を向ける。そして、すぐにその異変に気づく。撃墜しているならば、なぜ機体が落ちないのだ。残骸ひとつすら落ちてこないなんて、あの直撃を受けて有り得るのだろうか。
その爆炎が徐々に晴れていく中、なにかの影が見え始める。それは『甲龍』とは似て非なるシルエットをしていた。
そして、その炎の中から声が聞こえる。
「………はじめて、あなたの声を聞いたわ。明確な言葉じゃなかったけど、確かにあたしは聞いたわ。『甲龍』、あなたの声が……!」
「なに……!?」
その声から察するに、撃墜どころか、さしてダメージすら受けていないようにも感じられた。オータムは警戒して、そこにいるであろう機体が現れるのを待つ。
「………『負けたくない』。あなたの意思、確かに受け取ったわ」
黒い煙の中から、その機体が姿を現す。
背部のアンロックユニットはそのままだが、他の装甲は以前にも増して流動的な形状へと変化していた。それらが合わさっている様はまるで鱗が連なるようで、しなやかな動きができるように可動域が増えているように見える。それは機械的なものではなく、より人間的な印象を感じさせる。人の形となった龍、それを体現したかのような姿であった。
シャープだった脚部装甲は一部が肥大化し、より強靭なものへと変化しており、メインカラーは赤色ではなく、黒と赤のツートンカラーとなっている。そして各部にはまるで雷を思わせる淡く光る黄色のラインが走っている。それはまるで夜の闇を炎と稲妻が照らしているようであった。
そして、一番目に付くのは、炎のような真紅色をしたマフラーが首に巻かれており、異様に長いそれの両端が足元にまで伸ばされている。ゆらゆらと揺れる二つのそれが、風になびくマントのようにも見える。そのマフラーに口元を隠した鈴は、その上から覗かせる両の瞳に戦意を滾らせながら力強い視線を向けた。
「先生が言ってたっけ………虎が龍を纏うと、どうなるか……。そんなの決まってるわ」
両手に持つのは『双天牙月』。それをつなぎ合わせて大きく振り回してから切っ先をオータムに突きつけるように構える。
「虎が龍を纏えば、最強に決まってるでしょうが!」
鈴の叫びに共鳴するように、『甲龍』が唸るように出力を上げて大きく駆動音を響かせる。真にひとつとなった虎と龍の咆哮が響き、大気を震わせた。
***
「第二形態に移行したのか!?」
オータムが驚愕の声を上げる。しかし、あの変化した姿は間違いない。この土壇場でシフトした『甲龍』に舌打ちしながらも、オータムは無人機に包囲させる。見たところ、近接特化機であることには違いないようだ。ならば同じように包囲して砲撃による殲滅が一番効果的だと判断する。いくら機体が進化しても、操縦者の空戦適正が低いことはもうわかっている。宝の持ち腐れのまま消してやると、イヤラシイ笑みを浮かべて攻撃指令を出した。
無人機がビームによる波状攻撃を仕掛ける。
鈴はその場から飛び上がるように上昇して回避、しかし第二、第三のビームが連続して放たれる。今までの鈴ならそれだけでも倒されてしまう危険があった攻撃だ。
「もう、そんなものは効かない」
鈴はすべてを回避。オータムはそれを見て眉をしかめる。いったいなにをしたのかわからない。特別なにかをしたようにも見えないし、機体の出力も上がってはいるが、特別ずば抜けて上がったわけではない。なのに、当たらない。
「なんだ、いったいなにが……?」
軽快に跳ねるような機動。しかし、空中機動は変わらず適正が低い。だが、時折信じられないような神がかり的な回避を見せる。拙さと巧さが混在するような機動だ。
その機動の正体に最初に気付いたのは、雨蘭であった。
「空踏か」
「あれが発現した単一仕様能力……なるほど、そうきたか……」
火凛がその『甲龍』に宿った力を悟り、嬉しそうに笑う。『甲龍』が得た力は、まさに鈴のためにあるようなものだ。
そしてオータムもそれに気付いたのだろう。忌々しそうに顔を歪める。
「おまえ、空を……!」
「気づいたようね。そうよ、これが『甲龍』の単一仕様能力………名付けるなら、……そう、『龍跳虎臥』ってところかしら」
単一仕様能力『龍跳虎臥』。
その能力は、一言で言うなら“空を踏む”能力。空中にいながら、鈴の任意でその空間を“踏む”ことができるという、ただそれだけの能力であるが、これが鈴にとってどれだけの価値があるか言うまでもないだろう。
ただでさえ地上戦が得意な鈴が、空中においても同等の動きができるようになるのだ。同じように空間に作用する『オーバー・ザ・クラウド』の単一仕様能力『天衣無縫』の斥力場と引力場を操作する能力とは違い、その場で空間を踏み続けることで、空に立つことすらできる。
文字通りに空を駆けることが可能となった鈴は、その本来持っていた格闘能力を遺憾なく発揮できるようになる。
もとは衝撃砲の空間に圧力をかける機構を学習、取り込んで『甲龍』が編み出した鈴のための力であり、その恩恵を受けた鈴は水を得た魚のように自由自在に空を跳ね、駆ける。それは本来空中機動に必要なブースターの推進力すら必要としない。それが結果的に、セオリー外の空中機動となって無人機の攻撃をいとも簡単に躱している。地上と同じように鈴の反射速度そのままに回避が可能なため、それも回避率の上昇につながっている。
「虫みたいに跳ねやがって! 調子乗ってんじゃねぇぞ!」
オータムも無人機に混ざり射撃を開始する。弾幕が増え、鈴の回避コースを削っていく。だが、それでも今の鈴を止めるには至らない。
「ほっ、と」
「なに!?」
身をかがめてビームの隙間に機体を通して回避。空に伏せる、という常識外れの動きである。この能力がある限り、鈴のイメージするラインが地面となる。地に伏せるように、空中で身をかがめる鈴は、一転して上下左右、あらゆる角度で空を蹴って無人機へと接近する。まったく予測できないタイミングで方向転換を繰り返す鈴を捉えることは、もはや機械には不可能だ。
そしてついに一機が鈴の間合いに入る。鈴はその空中に脚を振り下ろし、震脚。しっかりと踏み込んで、完璧な形で掌打を叩き込んだ。
「せぇいっ!」
当然の如く、発勁効果を付与させたその掌打は、敵機の装甲を凹ませ、そして内部から爆発したように背部装甲を弾けさせる。衝撃が完全に浸透した鈴の掌打は一撃で無人機をスクラップに変える。今までの発勁より遥かに高い威力、いや、これが本来の鈴の発勁の破壊力であった。
それは鈴でさえ、唖然とする威力だった。今まで拙い空中機動で放っていた発勁が如何に不完全な代物であったかよくわかる。
鈴は自身の手を見つめる。これが、今の自分の力。実感するそれは、鈴をどんどん高揚させていく。
「なに余裕かましてんだぁっ!」
動きを止めた鈴を狙ってくるオータム。しかし、それすら今の鈴には微温い。すぐさま虚空を蹴って回避するも、それは読まれていた。
「馬鹿が! そう何度も!」
回避した先に四方から無人機のビームが襲う。回避コースはあるが、タイミングは間に合わない。鈴は冷静にそう判断する。なるほど、オータムとかいう女もでかい口を叩くだけのことはあるようだ、と自身の油断を反省しつつ相手を賞賛する。
しかし、それでも今の凰鈴音と進化した『甲龍』は揺るがない。
「はっ……!」
鈴は首元に巻かれているマフラーに手を伸ばし、それを勢いよく掴み取ると大きくひらめかせる。マントのように全身を覆うそれを波打たせながら、迫り来るビームに向かって大きく振るう。それだけで、ただの布にしか見えないそれが四つのビームを同時に絡め取り、屈折させて遥か上空へと消し去った。
「なにぃ!?」
『甲龍』が第二形態へと移行した際に生み出した完全固有武装『龍鱗帝釈布』。巨大な布のように見えるそれは、ビームなどの熱量兵器をそれ自体が鏡のように屈折、反射させてしまう変幻自在の衣。『甲龍』がこれまで学習した中から、打鉄弐式の『ERF』、レッドティアーズtype-Ⅲカラミティリッパーの『オーロラ・カーテン』など、ビームを弾く装備データから編み出したものであった。そして当然、物理的な防御力も有する“柔”の盾。
第二形態へ移行した際に『甲龍』が生み出したため、『甲龍』以外が扱うことは不可能である完全に固有となる武装だ。
「あんたは本当に最高の相棒よ、『甲龍』!」
纏っていた『龍鱗帝釈布』が意思を持つかのように再びマフラー状となって首に巻かれる。それをなびかせながら再び鈴が駆ける。ビームでは倒せないと判断したオータムは無人機にブレードを抜かせる。怒りで頭に血が上ったオータムが鈴を相手に接近戦を挑むという愚策を選択してしまう。
近づいてきた一機にすかさず発勁を叩き込んで文字通りに粉砕する。続く二機が挟撃してくるが、その二機に向けて『龍鱗帝釈布』を放つ。ナノマシンが編みこまれたそれはある程度は鈴の意のままに動く。それは蛇のようにうねりながら接近してきた無人機を絡め取った。
「ほいっと!」
そのまま『龍鱗帝釈布』を握りしめて力いっぱいに引き寄せる。
「おやすみ!」
勢いのままに肘打ちによる発勁をぶち込み、二機をスクラップに変える。ガラクタとなって落ちていく無人機の残骸を空に立ちながら一瞥し、最後の一機とオータムを見据える。そして空中にいながら再び震脚で大気を震わせると、静かに構えてオータムを挑発するように嘲笑してやる。
「所詮、ガラクタや蜘蛛ごとき、龍と虎の敵じゃないってことよ」
「この、クソガキがぁっ! もう捕獲なんて知らねぇ! ここでスクラップに……っ!? スコール……!?」
「ん?」
オータムの様子が変わったことに怪訝そうに目を細める。どうやら何者かと通信しているようだ。あの反応からして、おそらく上司か、それに近い立場の者だろう。
「撤退!? 待ってくれ、私はまだ……………わかった。帰投する」
通信を終えたらしいオータムが忌々しそうに鈴を睨む。それを受けて鈴は馬鹿にしたようにべーっと舌を出してやる。面白いようにオータムの顔が真っ赤に染まる。
「今日のところは退いてやる。だが覚えとけ! てめぇの面は覚えたからな!?」
「負け惜しみ台詞ありがと。ついでによく覚えておけよ、この凰鈴音と『甲龍』をな!」
「次はスクラップにしてやる………! 忘れるな! てめぇは私が……!」
そう言いながら撤退していくオータムを見ながら、囮であろう向かってくる最後の無人機を目もくれずにあっさりと裏拳で吹き飛ばす。そのまま地面に墜落した無人機に対し、直上から急降下して踏み潰す。それが要因となり、小さくない爆発が起きるが、『龍鱗帝釈布』を纏った鈴は傷一つ付かない。
爆炎の中に立つ戦神の如き姿は、まさに龍が人の姿となったと思わせるほど勇壮であった。
「………ありがとう、『甲龍』。あたしの気持ちに応えてくれて」
炎の中から歩み出た鈴が礼を言いながらISを解除する。本当ならオータムも逃がさずに撃墜したかったのだが………流石に、鈴も限界であった。
「あたし達は、……まだ、強くなれ、る………」
これまでの疲労が一気に鈴に襲いかかる。抗えないほどの気だるさに、鈴の身体から力が抜けていく。
そのままふっと意識を失った鈴が、雨蘭に受け止められた。
***
鈴音が目を覚ますと、傍に雨蘭がいた。珍しく心配そうな師匠の顔を見て、なんだか不思議な気持ちになりながらゆっくりと身を起こす。
「起きたか。具合はどうだ?」
「はい、もう大丈夫で………あ、でもまだちょっとだるいかも」
ベッドの上で身体を動かしながら状態を確認する。怪我らしい怪我はないが、戦闘による疲労が抜けきっていない。
「お師匠………」
「なんだ?」
「あたし、強くなれましたか?」
「そうだな………その前に聞くが……」
「ん?」
「怖かった、か?」
最近はずっと見ない、優しげな顔の雨蘭の言葉に、なぜかわからないがふと泣きたくなってしまう。涙を我慢しながら、鈴は笑って答える。
「怖かったです。すごく」
それは本心であった。
戦うことが、戦いで生じる結果が、後悔をすることが、真に恐怖としてずっと感じていた。無人機を蹴散らした時でさえ、その恐怖はあった。
「なら、おまえは強くなったよ。それを認められる、というのは確かな強さのひとつだ」
「お師匠……」
「まだ未熟者には違いないが……それでも、殻のひとつは破っただろうさ」
その言葉を受け、鈴は姿勢を正してベッドの上で正座する。ここへ来たときのように、誠意を込めて頭を下げた。
「鍛えてくれて、ありがとうございます」
雨蘭もいつかの光景のように、そんな鈴の頭を乱暴に撫でてやる。それが雨蘭の褒めるという行為でもあった。このときばかりは、鈴も甘えるように雨蘭の手を受け入れていた。
「そういえば火凛先生は?」
「おまえのISを興奮して調べてるぞ。あんなにはしゃいでる妹は私も初めて見るが」
「『甲龍』………解体したりしてないですよね?」
「さぁ?」
鈴はもしものことを考え、顔を青ざめながら慌てて立ち上がった。
***
「あのさぁ、私ってそんなマッドみたいに思われてたの?」
ジト目で睨みつける火凛に鈴がぺこぺこと頭を下げる。結果を言えば、『甲龍』は無事であった。しかも、しっかりと第二形態に移行したことによる機体データの更新とメンテナンスまでやってくれていた。
鈴は謝るしかないが、『甲龍』が進化したときの火凛の狂ったような姿を見ていた雨蘭は複雑そうな顔をして無言を貫いた。
「ま、いいや。鈴音、『甲龍』の第二形態移行、おめでとう」
「あ、はい。ありがとうございます」
「調べてみたけど、完璧に鈴音に合わせて進化してる。単一仕様能力も、固有武装も、今の鈴音に必要なものでしょう?」
「はい」
空を踏む単一仕様能力『龍跳虎臥』。そして攻防一体、射程も用途も変幻自在な武装『龍鱗帝釈布』。『甲龍』が生み出したそれは鈴の足りない要素を補い、そして長所をさらに活かす最適なものであった。
「ISの可能性を見せてもらったよ。ISは決してただの道具じゃない。『甲龍』の進化が、それを証明してる」
「………先生」
「ん?」
「声を、聞いたんです」
「声?」
「明確な言葉じゃなかった。でも、あたしは確かに聞こえた。この子の……『甲龍』の声が」
待機状態であるブレスレットを優しく撫でながら、少し戸惑いがちに口にする鈴。そんな鈴の言葉に、火凛はますます興味をひかれる。
「あたしと同じ、……『負けたくない』という、強い思いのある言葉が、あの時確かに聞こえたんです」
「その言葉、大切にしなよ。忘れたらダメだよ?」
「もちろんです」
「そうすれば………きっと、『甲龍』はこれからもずっとあなたに応えてくれる」
どこか確信の宿った火凛の言葉を受け、鈴はそれがどんな意味があるのか理解はできなくても、それが友との友情のように大切な絆であることを本能で察する。
だから鈴は、力強くしっかりと頷いた。
「それにしても、無駄にならなくてよかったよ」
「え? なんのことです?」
「ちょっと政府のほうから『甲龍』をいじるならその成果を見せろって言われてね。じゃあ他国との候補生の交流試合をセットしてくれって言っておいたの」
「そうなの!? 初耳なんですけど!?」
「まぁ、鈴音が成長できなきゃキャンセルしかなかったけど、その場合はいろんな面目が丸つぶれになってたね。あはははは」
「いやいやいや! それってけっこうヤバイですよね!?」
「私は鈴音を信じてたから」
「そんなキリッと言われてもごまかされませんからね!?」
あっさりととんでもないことをカミングアウトする火凛にすかさず鈴が突っ込む。やっぱりこのひとはマッド属性なんだろうか、と本気で思い始めていた。いろいろとやることが突拍子もないことばかりだ。
「でも、きっと鈴音も喜んでくれると思うよ?」
「え?」
「なんと、相手は…………イギリス代表候補生、セシリア・オルコットさん」
「ッ!?」
「一年くらい前のリベンジマッチ……国としても、鈴としても、したいでしょ?」
鈴の脳裏に浮かぶのは、過去のセシリアと始めて顔を合わせたときの忘れえぬ敗北。『甲龍』にはじめて黒星を与えてしまった戦い。あれから鈴の中で打倒セシリアが刻まれたのは言うまでもあるまい。学園にいたときは手合わせはしても互いに本気でやりあったことはなかったが、まさかこのような形でリベンジの機会が訪れるとは思っていなかった。
鈴が興奮にゾクゾクとする。
進化した『甲龍』の相手として、これ以上ない人物だ。
「ありがとう、先生。この恩は……」
鈴は気づかないうちに獰猛な笑みを浮かべている。戦意はすでに待ちきれないというように高揚していた。そんな自分を抑えるように、静かな口調で闘志を滾らせながら決意を口にする。
「この恩は、セシリアに勝つことで返します」
これで鈴編は終了となります。どうみても鈴ちゃんが熱血系主人公でした。
そしてここで『甲龍』が第二形態へと進化しました。名前は鈴が『甲龍』に愛着を持っているのでそのままですが、めちゃくちゃ強化されています。
最後に鈴ちゃん対セッシーのリベンジマッチフラグが出ました。イギリス編にて対戦する予定です。おそらくかなりのガチ勝負になります。
次回からは久々に主人公のアイズを出しつつ、簪編となる予定です。それではまた次回に!