一夏とシャルロットとの戦いを明日に控えたアイズだが、特に変わったことはせずにいつものようにセシリアや鈴と模擬戦と機体調整を行っていた。そしてそれ以外の時間は簪と二人で整備室で作業をする毎日を送っている。夜遅くまで簪の部屋で一緒に機体の情報整理や機体性能を活かす戦術や連携の確認を行っていたため、最近は簪の部屋に泊まることもよくあった。
簪は二人部屋を一人で使っているらしく、アイズが泊まる分には特に問題もなかった。もっとも、本来は寮の規則で禁止されていることだが、トーナメント前で出場選手がよく相談をしているためにこの時期は多少は黙認されているらしい。問題を起こさなければ多目に見るということらしい。
「簪ちゃんの機体は全距離対応型って感じか。とはいえ、中距離メインだからやっぱりボクが前衛での攪乱で、簪ちゃんが後衛からの射撃がオーソドックスかな」
「アイズの機体は射撃武器がないんだね……本当に近接特化なんだ」
「ん、ボクって射撃苦手なんだ。普段の鍛錬でも見えないから銃の練習なんてできなくて」
「IS操縦以外にはどんなことをしてたの?」
「ひたすら剣を降ってたよ。目が見えなくても、剣さえ握れれば振るうことはできたからね。だからISもひたすら剣を使えるようにしてってお願いして作ってもらったの」
その結果があの「レッドティアーズtype-Ⅲ」であった。大型実体剣の「ハイペリオン」、小型近接刀「イアペトス」、脚部展開刃「ティテュス」を装備し、ティアーズの代名詞であるビットも二機のみであるが、近接仕様にアレンジしてある。そして各部に仕込んだ隠し武器の数々は予測不可能。正統派の近接仕様にみせかけた邪道。そんな機体だ。
「コンセプトは『面白ドッキリ武器満載のビックリ箱』らしいから、ボクの機体」
「よくそんなコンセプトで作られたね……」
「まぁ、作った人がそういうの好きだから。それにボクもけっこう好きだし」
セシリアはアイズが持たないものをもっている欠けた半身みたいな存在だが、束は逆にこうした無邪気で楽しむ遊び心がアイズとよく似ている。そのため、アイズと一番趣味嗜好が合うのは束だ。だから束とはよくいろいろなことを一緒になって遊んだものだ。そして調子に乗りすぎてセシリアやイリーナから怒られたりしたものだが、それも今となってはいい思い出だった。
「でも、相手の意表を突くというのはそれだけで武器になる」
「まぁボクはけっこう初見殺しの手を持ってるからね。奇襲はボクの得意分野だし」
「アイズは、本当に意外性がすごい。ISも、本人も」
「あれ、本人もってどういうこと? ボクってそんな突拍子もない子だっけ?」
「アイズは自分のことをもっと自覚するべき」
「むぅ………セシィにもたまに言われるんだよなぁ。ボクはこれでも常に一生懸命に生きてるんだよ?」
「うん。わかってる。わかってるよ、アイズ」
簪はちょっとだけ怒ったように胸を張って威嚇する姿を見せる微笑ましいアイズの頭を優しく撫でる。そうすると次第にアイズの表情が弛緩してやがて猫みたいな気持ちよさそうな表情に変わり、最終的にはもっと触れていたいというように簪の手に這わされている。その姿はまさに飼い主に構って欲しい猫そのものだ。そんなアイズの愛らしさにますます頬を緩ませる簪。
簪はこのアイズの姿を「猫アイズ」と呼称して脳内フォルダへと保存した。
「そういえば、明日だっけ……あの二人との模擬戦」
「そういえば、そうだったね」
「セシリアさんと訓練はしなくていいの?」
ここ最近はずっとアイズと一緒にいた簪はそれが心配だった。大事な模擬戦前の打ち合わせや確認はしなくていいのだろうか、と簪のほうが不安になっていた。
「ん、大丈夫。ボクとセシィはずっと一緒だったから、息を合わせることなんて、それこそ呼吸するくらい簡単なことだよ」
「そうなんだ………いつから二人は一緒に?」
心で通じ合っているような二人の姿を見ていた簪は少し質問をしてみようと思った。アイズの目のことがあるから、よくないことでもあったのかもしれないと思っていたが、それでもアイズの昔話は気になる。
そんな簪の心の機敏をなんとなく察したアイズは苦笑して口を開く。
「ボクとセシィがはじめて会ったのは、……もう五年以上も前になるかな。ボクは路上生活してたんだけど、そこに声をかけてくれたのがセシィなんだ」
今にして思えば、そのときのアイズは今みたいに前向きではなく、常に下を向いて生きていた。いや、生きることをやめたがっていた。それくらい苦しいときだった。
「そのときは名前すらなくて………そもそも、名前っていうこと自体がよくわかってなかった」
「………ご両親とか、は?」
「さぁ? ………意味ないし」
「え?」
簪は驚いた。アイズの言葉の意味じゃない、その言葉を口にしたアイズの雰囲気がガラッと変わってしまったことに驚いた。穏やかなものから一転、まるで興味がないと言わんばかりの無関心な声に、そんな風に誰かのことを断じるアイズが少し怖かった。
「ボクには、両親なんてどうでもいいんだよ」
簪は、いつか聞いた言葉を思い出す。
『好意の反対は無関心』。
アイズは、親にまったく好意を抱いていない。少なくとも、肉親には差異はあれど親愛の念を抱くものだ。簪とて、姉の楯無には複雑な感情を持っているが、しかしそれでも嫌ってはいない。むしろ尊敬しているからこそのコンプレックスを抱いているが、アイズのような無関心になることなど考えられない。
「………つまらないこと言っちゃった。さ、作業を続けよう?」
どこかごまかすように言うアイズに、簪の疑念は深まるばかりだった。いったい、なぜアイズはこうも自分の身内に無関心なのか。それを聞く勇気のない簪は、ただただアイズを心配そうに見つめるしかなかった。
***
「心配かけちゃったなぁ」
簪と別れて部屋へと戻る道すがら、アイズは反省するように呟いた。さすがに親なんてどうでもいい、なんて発言は不謹慎だったと自身の発言を恥じていた。
それが、たとえ紛れもない本音だったとしても、だ。
簪はずっと心配そうにアイズを気にかけていた。そんな心遣いに涙が出そうになる。でも、アイズには本当に自分を生んだ存在に未練もなかった。アイズにとって身内と呼べるのはセシリアや束、イリーナをはじめとしたカレイドマテリアル社だけだ。それがアイズにとっての家だった。もっとも、それは今までずっと表に出ることのなかった境遇の弊害かもしれないが、それでもアイズには、自身の出生に関してそれほど重要視はしていなかった。
それはきっといけないことだろう、とはアイズも思っていた。
「ん?」
ふと、目の前に感じた気配にアイズは足を止める。この気配は覚えがある。アイズは即座に判断してその目の前にいるであろう人物に声をかけた。
「こんにちは、箒ちゃん」
「………おまえは本当に見えていないのか?」
「よく言われるよ」
部活帰りなのか、竹刀を入れた袋を持った箒が呆れと感心を半々にしたように言った。
思えば、箒とアイズが二人きりで会話するというのは初めてであった。クラスメートとはいえ、なんとなく接点のなかった二人だ。箒にとってアイズ・ファミリアという存在は、なにか不思議なものとして映っていたし、アイズにとっても篠ノ之箒は特別といえる存在だ。
アイズが慕っている束の実妹。それだけでアイズにとっては箒のことは気になる存在だ。しかし、現状として貶められ、逃亡を余儀なくされた束と、その事情を知らずに姉のせいで苦しめられてきたと思っている箒。この二人の姉妹関係はアイズにとってもなんとかしたいと思っているものだったが、アイズはなにもできない。
「箒ちゃんは剣道部、だっけ? すごく強いって聞いたよ」
「ああ。おまえは部活はしないのか?」
「んー、ほら、ボクってこんなだから」
そう言いつつ、目隠布を指でなぞる。
「だが、ISであれほど強いではないか。特に剣の腕は私より上なのではないか?」
「まぁ、剣しか振ってなかったから。強くなるには、それしかなかった」
セシリアと並ぶほど強くなりたいと思い、アイズが選んだものは剣だった。銃は狙いすらつけられず、徒手空拳は小柄で非力な身では限界もある。だから同じような体格の鈴の技量には本当に感服して尊敬している。アイズは結局剣という武器でしか強くなる可能性を見いだせなかった。しかし、それでも剣術とは程遠い。ただ一念をもって振るうことしかアイズにはできない。IS「レッドティアーズtype-Ⅲ」も正統派近接機体とみせかけているが、実はトリッキーなタイプだ。真正面からの正攻法では鈴には勝てないし、遠距離武装はアイズにとって扱うことも難しい。攪乱と奇襲、小手先の技術を死に物狂いで得たのが今のアイズだ。
「………なぜ、そこまでして強くなろうとする?」
「セシィと一緒にいたいから。はじめの理由はそうだった。箒ちゃんはどうなの?」
「私か…………私は大層な理由などないさ。確かにはじめはただ愉しいから、というありきたりなものだったかもしれないが………今は、ただのストレス発散だ」
そう言い切った箒の顔は自嘲しているように笑っている。その顔こそ見えなくても、アイズにはそんな箒の様子がわかっていた。
「箒ちゃん」
「………?」
「恨んでるの? ………ISを作ったお姉さんのこと」
それは失言にも等しい質問だった。かつてのように感情的ではなく、それを理解してアイズは口にした。
「…………それを聞いてどうする?」
「ボクはね、思うんだ。きっと、お姉さんは箒ちゃんを心配してるんじゃないかって。だってそうでしょう? 自分が作ったものが、妹の境遇を変えてしまった。泣くくらい辛いことなんじゃないかな?」
「……………」
それは今まで箒が考えたことのない考えだった。
箒は、しかしまだそれを認めようと思えるほどの余裕はなかった。だからまだアイズのその言葉を受け入れることはできずに、今はただごまかすようなことを口にするしかなかった。
「………恨んでなどいないさ。ただ、好きではないだけだ」
「………そう」
アイズは悲しそうに眉を落とす。束も可哀想だが、箒も可哀想だ。そう思っても、これ以上なにか言えることはない。
「だから、あまりISに乗る気もないの?」
「……そうだな」
箒は授業以外でISに乗ろうとはしないし、授業中でも最低限のことしかしない。むしろ嫌なことを我慢しているようにまったく乗り気ではない。
そんなにも姉の作ったものが嫌なのか。
「逆に聞こう。おまえにとって、ISとはなんなのだ?」
箒がアイズに問う。箒にとっては複雑な感情をい出してしまうものでも、アイズにとっては違うはずだ。それが箒は知りたかった。自分を苦しめた姉の作ったものは、他の人間にとってはなんなのか。
「ボクにとってISは………この目を奪ったもの」
「なに?」
「ボクの目は、ISに奪われたんだよ」
そっと目隠布越しに目をなぞる。
言い過ぎだ。頭ではわかっていても、アイズは箒の問に嘘偽りなく答えようと思った。
「なのに、なぜ未だにそんなものに乗っているのだ?」
「それだけじゃないから。ボクはね、ISに奪われ、ISに救われたんだよ。それに………ISは、ボクの夢を叶えるものだから。だから、そうだね……いうなれば、ボクにとってISは、夢のあるべき姿なんだよ、箒ちゃん」
ISを嫌う箒と、ISに夢を抱くアイズ。この二人の違いはなんなのか。同じ篠ノ之束という存在と関わりを持ちながらもこうも対になるようになってしまった二人は、真逆ながらもどこか理解できるようななにかを感じることができた。
「夢……?」
「そう、ボクの夢。箒ちゃんはないの?」
「そうだな、昔はあったかもしれないな……」
「一夏くんのお嫁さんじゃないの?」
「なっ! なぜそうなるッ!?」
一転して顔を赤くして叫ぶ箒。乙女な反応をする箒に、アイズも笑ってしまう。クールでやさぐれているように見えても、根は乙女な箒が可愛らしいと思えた。
「だって好きなんでしょ? ずっと一夏くんのこと気にしてるし、鈴ちゃんにも嫉妬してたりしたじゃん?」
「ち、違っ……!」
「大丈夫だよ箒ちゃん。ボクは箒ちゃんの恋をとっても応援しているよ?」
「う………お、おまえは本当によくわからないやつだ……」
ペースを乱されて慌ててしまっている箒は、そのアイズの純朴な笑みに抗えない。もともとそれほど社交的でない箒は、こうしたコミュニケーションは得意ではないため、どうしたらいいかわからずただアイズの笑みの前に沈黙するしかなかった。
「そ、それより! 一夏とまた戦うと聞いたぞ」
ごまかすように話題を変える箒だが、アイズもその話題については渦中の身であった。
「ああ、ボクとセシィと、一夏くんとシャルロ……シャルルくんのタッグ戦ね。ほら、タッグトーナメントの予行練習だよ」
「それにしては、やたら一夏の気合が入っていたぞ」
「本気になってこそ、愉しいじゃない?」
「そういうものか……」
「箒ちゃんは出ないの? せっかくのトーナメントなのに」
「私は、ISに乗るつもりはない」
「……そっか」
そう言い切る箒に、アイズは何も言わない。アイズにとって夢を為すものでも、箒にとってはそうでない。それを認めないような考えはアイズにはない。人はそれぞれ違うことくらいわかっている。それをどうこういうつもりはない。
でも、いつかは同じ夢をもってつながるときがくるかもしれない。今はただそうなったらいいと願うだけだ。
「では、私はもう行くぞ」
「あ、うん。またね、箒ちゃん。今度一緒にごはん食べようね」
最後に去り際にクスリと笑って箒は去っていった。箒の凛とした気配が遠ざかるのを感じながら、アイズもセシリアの待つ部屋へと戻る。
明日の戦い、セシリアははりきっているし、一夏とシャルロットの二人も気合十分で臨むようだ。なら、自分も精一杯にやろう。どんなときでも、やるべきことを一生懸命にやる。
アイズ・ファミリアはいつだって、そうしてきたのだから。
「箒ちゃん、いつか一緒に飛べるといいな……」
そう呟くアイズはどこか寂しそうに小さく笑った。
……。
「部屋の前でなにを黄昏ているのですか、アイズ」
「あ、セシィ」
いつの間にか自室の前までやってきていたようだ。セシリアが部屋のドアを開けて顔を出していた。
「明日は二人と模擬戦ですよ、大丈夫ですか?」
「大丈夫、問題ないよ。明日にむけて今日は早くシャワー浴びて寝よっか。セシィ、一緒に入ろ」
「まったく甘えん坊ですね、アイズ。さ、髪を洗ってあげますよ」
「わーい!」
***
「さて、用意はいいですか?」
ブルーティアーズtype-Ⅲを纏ったセシリアが対峙する二人に確認をする。
模擬戦当日、アリーナの一角で四人が相対していた。さすがにアリーナすべてを貸し切ることはできなかったが、それでも一夏・シャルロット対セシリア・アイズのタッグ戦をすると聞いてアリーナを使用していた全員が観戦をしたいと言ってアリーナすべてを使って行うことになった。この四人の戦いとあれば、その注目度は高い。観客席では話を聞いて駆けつけてきた多くの生徒がおり、その中には鈴や簪、本音といった顔も見える。
「どっちが勝つのかな~」
「間違いなく、セシリアたちよ」
「そうだね、温情でもかけない限り、あの二人が負ける要素はない……」
「問題はその二人相手にどこまでやれるかってことよ。私でも五分持つ自信はないけど、ね」
もし一対一ならそれなりにいい勝負をする自信は鈴にはある。しかし、あの二人同時に戦うとなると、自身の負ける姿しか想像できない。
何度か模擬戦でそうした経験があるからこそ、わかる。セシリアとアイズは、協力することでその力を何倍にも増してしまう。以心伝心の二人の連携に隙はなく、互いの弱点を補うばかりか、互いの長所を有効に発揮するための状況すら作り出してしまう。この連携を崩す手を、鈴は今でも思いつかない。
簪もトーナメントではアイズと組むことになっている。アイズのパートナーとなるべく、セシリアの動きを見本とするように、わずかな動きも見逃さないように凝視している。
そしてそんな二人と対峙している一夏とシャルロットは戦意を高揚させて二人を睨んでいる。どうやらセシリアの狙い通りに本気で勝ちにきているようだ。観客のほとんどがこの戦いの意味を知らないが、この二人にとってはまさに自由を得るかどうかの分岐点。二人にとってセシリアとアイズはまさに壁にも等しい存在として映っているだろう。
「勝たせてもらうぜ、セシリア。アイズ……!」
「ふふ……」
一夏の勝利宣言にセシリアはただ薄く笑う。しかし、その手にもつスナイパーライフルは一夏たちを貫かんと狙いをつけている。
「僕は負けない………僕は、自由になるんだ………!」
「ボクはさながら、ラスボス? よし、……この大魔王アイズが相手だよ! ボクを倒せたら自由をくれてあげちゃうよ!」
アイズはいつものようにマイペースに屈託のない笑みを浮かべながらも、手に「ハイペリオン」と「イアペトス」を構えた。
そして四人は動かないまま戦意をどんどん膨らませていく。いつ破裂するかもわからない緊張感がアリーナ全体を満たしていく。見ているだけの観客もその空気に感化されて固唾を飲んで見守っている。
はじめ、の合図などない。誰がなにを先に仕掛けるか。それも戦闘における駆け引きのひとつだ。
嫌な汗が一夏の頬を伝い始めた、そのときだった。
「じゃ、ボクからいこっかな」
そんなアイズの能天気な言葉とともに、アイズがブーストをかけて一夏とシャルロットへと襲いかかる。主武装「ハイペリオン」を上段から振り下ろし、アリーナの地面を抉る。直前で回避した二人を目掛け、今度はセシリアのレーザーが襲いかかる。ただの牽制だとわかるのに、すべてが直撃コース。相も変わらずにデタラメな技量だ。そんなセシリアの射撃を必死に躱していると今度は再びアイズが強襲を仕掛けてくる。
一夏が反撃するが、それは「イアペトス」に捌かれて「ハイペリオン」のカウンターをくらう。それをシャルロットの援護でなんとか直撃を避けるも、そのシャルロットはセシリアの射撃によってそれ以上の一夏への援護を中断せざるを得なくなる。
射撃と斬撃。その二つが交互に襲い来る。歯車がかち合うようにけっして互いの邪魔はせず、むしろ効果的に相方の攻撃に繋げている。
アイズに近接戦を仕掛けても即座に捌かれてカウンターをもらい、セシリアの射撃は隙を見せれば容赦なくヘッドショットを狙ってくる。どちらにも細心の注意を払いながら突破口を見出そうとする一夏とシャルロット。しかし、そうはさせないのがセシリアとアイズだ。開始してからずっと二人に仕事をさせず、一方的に動きを封殺して追い詰めていく。
一夏はわかっていたが、二人とはじめて戦うシャルロットは二人の持つめちゃくちゃとも思える技量と、その連携の隙の無さに冷や汗が止まらない。一人でさえ実力が劣るというのに、ふたり同時に相手をすることがどれだけ無謀なことなのか再認識させられる。
「でもっ! だとしても……! 僕は負けられないんだっ!」
シャルロットが覚悟を決めてアイズにマシンガンを放ち、一夏が追撃に入る。まさに綱渡りの攻防の始まり。
そしてシャルロットにとって、かつてない決意をして臨む運命の分岐点となる戦い………そんなシャルロットの覚悟を食い尽くすかのように、青と赤の雫はその牙を剥くのだった―――。
この物語ではストーリー上まだまだ空気な箒さんが久々に登場。束さんがラスボスじゃないので専用機すらない箒さんですが、のちのちに束と絡む予定です。
そしてシャルロットにとって運命の一戦が開始。アイズとセシリアは手加減はしても容赦はまったくしません。
次回の主人公はシャルロット。そして彼女の魔改造もここからはじまる、かも?