双星の雫   作:千両花火

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Act.134 「Dreadnought」

 シャルロットは機体調整を行いながら戦場を俯瞰していた。

 既に戦闘は始まっており、敵の第一波はセシリアとアイズによって落とされている。モニター越しに見ていただけだが、何時見ても恐ろしい狙撃技術だ。セシリアはどんな銃器でも、引き金を引いて弾が飛ぶなら大抵のものは撃ち落としてしまう。拠点砲撃用のアルキオネで平然と狙撃を狙うセシリアはいったいどうなっているのだろうか。本人に聞けば「狙い撃つだけですわ」と言っていたが、あれはもう呪いの類ではないだろうか。

 少なくとも、シャルロットにはできないし、それ以前にセシリア以外にあんな神業をぽんぽん披露するスナイパーが存在するかも怪しい。おまけに槍の投擲も徹甲弾レベルだ。射撃が得意であって接近戦が苦手なわけではない、と言いながらそれなりに鈴やアイズともやりあえるというのだから本当におかしい。おそらく“なんでもあり”で戦うならセプテントリオンでの最強は間違いなくセシリアとなるだろう。

 シャルロット個人の技量はセプテントリオンではいいとこ上位十人に入るくらいだろう。しかし、それでもシャルロットとてかつては代表候補生にまで上り詰めた。その肩書きを返上したとはいえ、それまでの努力は確かに今のシャルロットの血肉となっている。そして、この一年で徹底的に基礎から鍛え直したことでその実力にはそれなりの自信と自負がある。規格外の化物が多く身内にいるせいでそれほど大口を叩くつもりもないが、それでも絶対的な自信がある分野がある。

 それこそが、砲撃戦適正だった。もともと多数の重火器を操ることにおいては力を入れて鍛えていたこともあるが、大火力を用いた砲撃においては部隊でも屈指の戦果を上げてきた。

 

 ――そのせいでトリガーハッピーだの乱射系僕っ娘だのと言われていることについては文句も言いたい。特に最近はIS戦の常識を逸脱している武器要らずのドラゴン娘とかに。

 

 あのような一芸を極めている例外はもう比較することすら馬鹿らしいが、シャルロットの強みは重火器の複数同時展開による制圧戦だ。そのために貴重なウェポンジェネレーターを搭載し、大出力エネルギー兵器によるこれまでのISを遥かに超える火力を持つ機体を託されている。

 魔窟と呼ばれるカレイドマテリアル社に所属するようになってから感覚が麻痺していったが、世界の一般常識からすればISが平然とビーム兵器を扱えること自体が今の技術力を隔絶したものなのだ。そんな大出力の熱量兵器を同時展開するシャルロットの機体は尖りすぎた性能のティアーズや甲龍よりも注目される機体だ。現に、カレイドマテリアル社の令嬢という立場となってから対外向けの露出をするようになったシャルロットにはそうしたアピールする意味合いも兼ねていた。

 正直、デュノア社にいたときは裏方どころかただの駒でしかなかったシャルロットにとってこの扱いは戸惑うことも多かった。母となったイリーナからも、平然と「利用させてもらうが、それくらいは我慢しろ。お前は可愛らしい顔立ちだからな、社のマスコットにはちょうどいい」などと喜べない賛辞とともにたくさんの仕事をもらったものだ。これまではセシリアがもっとも顔を出していたが、今ではシャルロットのほうがメディアに出ることが多い。おかげで愛想笑いも腹芸も得意になってしまったことに関しては、少しだけイリーナを恨んだが、それでもまっとうな仕事を与えてくれたことについては感謝している。利用するとは言っているが、その実シャルロットのことを大事に扱ってくれていることもわかっていた。ただ、イリーナは自分にも他人にも厳しいし、身内だからこそ妥協を許さない。そんな不器用な愛情も今ではよくわかっている。確かに暴君と呼ばれるに相応しい苛烈さを持っているが、意外と身内には甘い。そしてその分敵には容赦は一切ない。

 シャルロットを引き取ったのは本当に気まぐれだったのだろう。その気まぐれを起こした理由も、シャルロットはつい先日本人から聞いていた。

 ああ、本当に不器用な人なんだな……と、その時は納得し、そして彼女の娘として戦うことを決意した。

 

 それはイリーナに対する愛情だったのだろうか。もしくは同情だったのだろうか。それはわからないが、それでもシャルロットにとってそんな彼女の力になることが自分のやるべきことだと感じたのだ。形では母娘となった関係でも、本当にそうなるにはイリーナの目的を果たさなければならない。それだけははっきりわかる。

 

「………お母さん」

 

 今は亡き、シャルロットを産んだ母は多くの愛情を注いでくれた。それはゆりかごのような安らぎを持った愛情だ。そして、今の母となったイリーナはシャルロットに苛烈で苦難に立ち向かう力を与えてくれた。それは確かに今シャルロットが戦うための力と立場を与え、そこにシャルロットは立っている。対極とも言える二人の母を持つことになった奇妙な人生に、しかし、それでも感謝の念を忘れたことはない。

 どちらも今のシャルロットという人間を形作る欠かせないものだ。

 愛情と力をくれた二人の母のために、今持てるすべてを懸けてこの戦いに勝利する。それが、今のシャルロットの恩返しであり、願いであり、役目だ。

 

「イリーナさんの邪魔はさせない……だから、僕も戦うよ」

 

 この戦いが終われば、そのときはイリーナを母と呼ぼう。そう決心したシャルロットは、そのときのことを想像して笑い、そしてモニターに映る戦場を睨んだ。

 機体調整は完了。これまで幾度となく試験機動をしてきたこの規格外機も、今ではシャルロットの手足となって動いてくれる。この機体を十全に扱えば、それこそ群れを成しただけの無人機などたとえVTシステムを使っていようが有象無象に成り果てる。ただただ敵を殲滅することだけを目的に造られた、戦いでしか役に立たない機体。それは束の夢から外れたものだろう。しかし、その夢へと至る道を切り拓くために必要となるもの。それをシャルロットは託されたのだ。

 その意味を、重責を、忘れたことはない。それをずっと背負ってきたセシリアやアイズは本当に尊敬する。

 そして、今は自分もそれを背負う者の一人だ。だが、これは自分が選んだこと。あのとき、IS学園で女を偽っていたときから、彼女たちに道を示されたことはあれど、なにかを強制されたことはない。今、こうしてここにいることもすべてはシャルロットの選択の結果だ。

 だからこそ、逃げない。そんなことしたって意味はない。

 これから向かうのは命を懸けるべき戦場。IS学園から続く数多の戦いを経て、既に戦場の現実を、無常さを嫌というほど知った。仲間たちも何度も死ぬ危険に遭い、そして自らもその危険と隣り合わせとなる。恐怖はある。しかし、それ以上にすべてを失うことになる未来を忌避した。

 自分が戦うことでなにかを得られるのなら、襲い来る脅威に抗えるのなら、自分はその道を選ぶとはっきりわかる。

 だから、シャルロットは今、ここにいるのだから。

 

「ラファール………思えば、僕たちもいつの間にかとんでもない場所に来てしまった気がするね」

 

 物言わぬ相棒に語りかける。シャルロットは未だアイズやセシリアたちと違いISの声を聞くことはできない。あの境地に到れるかもわからない。しかし、それでもこれまでともに戦ってきた相棒であるこのラファール・リヴァイヴには並々ならぬ思い入れがある。はじめは代表候補生という立場である以上、それなりのものをと用意された量産機のカスタム機だった。このときはまだ思い入れもなにもなかった。

 しかし、束によってほぼ別物と言えるまでに改造されたtype.R.C.を経て、今では世界でも唯一無二と言える機体に変貌している。

 

「行こう、ラファール。僕の、僕たちの戦うときは、――――今だから」

 

 そんな声に応えるかのように機体出力が上昇。巨大な、これまでのISの常識を覆すほどの大型パッケージが起動する。

 搭載された呆れるほどの数の火器すべてに火がくべられる。破壊する、ただそれだけに特化した愛機がゆっくりと浮遊する。最終ロックの解除コードを入力。破壊の化身となったラファールが解き放たれる。

 

「抜錨」

 

 ガコン、と重々しい音とともに機体を拘束していたユニットが解除される。同時に機体出力を戦闘レベルへ――――地下から地上へと続く進路を見据え、シャルロットは機体を発進させる。

 

「ラファール・リヴァイヴ・ドレッドノート、出撃します!」 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 ドレッドノート級パッケージ。

 それは既存のIS用パッケージとは一線を画する、否、もはやまったくの別物、完全上位互換ともいえる規格外パッケージである。

 その特徴は、なんといってもそのサイズにある。

 ISの何倍もの巨躯を誇り、パワードスーツではなく、もはや巨大ロボットとしかいえないほどに巨大な機体。本体となるISを覆う鎧というより、ISが座する玉座といったほうがいい。複座式となるセシリアとアイズが乗るジェノサイドガンナーと違い、シャルロット単機で操るラファールはそのすべての操作を一人で行わなくてはならない。

 もっとも、ジェノサイドガンナーの場合はアイズの観測能力を活かすための複座だ。稼働するだけならセシリアだけでも済む。

 

 もちろん、通常ならこれほどの巨体を動かすにはISコアだけでは出力が足りない。その足りない出力はウェポンジェネレーター八基を連結して運用するという力技で解決している。

 過剰ともいえる供給量を誇るジェネレーターからもたらされる出力はこれほどの巨体でも高機動戦闘を可能とするほどの機動力を実現している。その調整のためにシャルロットやセシリアは何度も試験飛行を繰り返してきた。この決戦までの時間、その大半はこのドレッドノートの調整に費やしてきた。

 その甲斐もあり、実戦でも問題なくドレッドノートは動いてくれた。

 ならば、あとやるべきことは簡単だ。笑えるほどの単純明快なことだけだ。

 

 

 

 ――――戦場を、蹂躙する。

 

 

 

 

「ウェポンシリンダー! 一番から二番! 」

 

 ラファール・リヴァイヴ・ドレッドノートはその機体中央部に大小三つのリング状のユニットが見て取れた。機体全体を包むかのように接続されたそれは武器庫でもある。シリンダー状の武器庫が回転し、本機であるシャルロットの左右から武装が展開される。言ってみれば、この機体は巨大な銃のようなものだ。シリンダーに武器が装填され、それを次々と撃ち尽くしていくという、ただただその圧倒的な火力で制圧する。巨大なサイズゆえに搭載されている火器はひとつひとつが通常ならISが扱えないほどの威力を誇る。

 まず展開されたのは大砲のような巨躯を持つガトリング砲。しかも、実弾ではなく防御が至難なビームガトリングカノン。武装固有名は【プロミネンス・フレア】ただでさえ高威力のビームを連続して放ち、面制圧を行う凶悪兵器。もちろん、通常のIS戦なら使用許可など下りるはずもない、ただ相手を破壊することだけに特化した武装だ。

 それを二門同時に展開。ためらいなく前方の無人機群に向かって発射する。

 そしてその斉射を受けた機体が文字通り木っ端微塵に砕け散った。八基のジェネレーターから供給される潤沢なエネルギーはそのまま火器の威力に反映される。セシリアと違い、とにかく弾幕で押し切るシャルロットは豊富なエネルギーと火器を惜しげもなく使って戦場を蹂躙していく。

 

「続けて五番から八番!」

 

 外周部のシリンダーが回転し、四つのコンテナが解放。現れたのは二十八連装ミサイルユニット。それを同時に四つを解放し、即座に全弾発射。百十二発ものホーミングミサイルが戦域の敵機をくまなく爆撃。

 ワンアクションごとに戦場が炎によって塗りつぶされていく様は異様に見えるだろう。しかし、これこそがシャルロットに課せられた役目だ。たった一機で戦況を変える戦略機。それこそがドレッドノートの力。

 当然、敵機もこれを放置などしておくわけがない。戦場を飛ぶシャルロットに向かって集中砲火が浴びせられる。

 巨体の割には高い機動性を持つとは言え、飛び抜けて回避性能がいいわけではない巨大パッケージにとって被弾は免れない。しかし、被弾するならすべて防げばいいのだ。

 無人機の放つビームは本機へと到達する前に見えない壁に弾かれる。よくよく見れば、なにか粒子のようなものが機体から放出されている。多層的に展開されたオーロラ・カーテンによる防御システム。ビームは当然として、多層展開することでレールガンの直撃すら軽減する防御力を実現。

 効果なしと見て、何機かの機体が死角となる底面からの接近戦を敢行する。確かに真下というのは人が操縦する以上、どうしても意識が薄れる場所だ。そこを狙うのは正しいだろう。

 

「甘いよっ!」

 

 機体下部に装備されていた二本の近接アームが稼働。アームに装備されていた対艦兵装シャルナクが起動。膨大な熱量を発するビームソードを形成。近づいてきた無人機に向けて一閃する。切断されるどころか、融解し、一部は即座に蒸発して一瞬でその存在が消滅する。

 攻守共に付け入る隙もない。まさに鉄壁を誇る要塞だ。単なる事実として、どれだけ無人機が数を揃えようがフルスペックを発揮したドレッドノートを破壊することは不可能だ。数の暴力を超える質の暴虐。ただ単一としての戦力を強化した究極の一。おおよそ同等の機体や、セシリアたちのようなレベルの相手でなければすべてを破壊できるデストロイヤーとなる。

 

「出し惜しみはしない!」

 

 さらに続けてシリンダーを解放。搭載されている中でも特に大火力・大型火器が内蔵されている最外周部のシリンダーから大口径連射式レールガンを展開。そして背部、下部に対する迎撃用炸裂弾ユニットを起動。近づいてくる敵機に対して簡易型カノープスによるビットマインを散布。範囲爆撃で取り付かせない。

 さらに継続してミサイルとガトリングカノンによる制圧射撃を敢行。敵機の密度が高い戦域を次々と潰して回る。弾薬もエネルギーも湯水のように消費していくが、その分その制圧力は破格。要所は鈴とラウラが守り、危険度の高い個体はセシリアとアイズが接近する前に撃ち落としている。あとはそれでも抑えきれない数で攻めてくる敵機を減らせばいい。シャルロットの役目はその殲滅だ。数で劣っているのだから出し惜しみも容赦もするはずもなかった。

 しかし、それでもこの規模の機体を一人で操作するのはきつい。訓練は積んできたが、完璧には至れなかった。及第点にはなっているはずだが、逆を言えばそれだけだ。セシリアのように並列思考ができれば話は違うのだろうが、シャルロットはあくまで秀才であって天才ではない。

 

「……っ、上ッ!?」

 

 底部に気を配りすぎていた。人体死角のひとつでもる頭上からの接近にアラートが響く。気づくのがわずかに遅れ、迎撃する手がわずかに遅れる。

 

「ちぃっ」

 

 舌打ちしつつも迎撃。機体側面の対空砲で牽制。巨大な機体そのものを回転させて下部から展開していたシャルナクで薙ぎ払う。しかし、どうあってもこの機体では近接格闘は大味にならざるを得ない。取り付かれたら攻撃手段が大きく減ってしまうのは事実。少し焦りながら群がってくる機体をどうにか排除しようとするが、その前に通信から知った声が響いた。

 

 

 

『仕方のないやつだ。フォローしてやる』

 

 

 

 そんな呆れたような通信と同時に接近してきた機体がバラバラに分割されて機能を停止させる。ただの鉄くずとなって落ちていく様子を見ながら、シャルロットは自身の真横に突然現れた反応に目を向ける。

 そこにいたのはやはり、ラウラであった。パッケージは装備していないために今ではそのサイズ差はドレッドノートと比べれば本当に小さく見える。

 

「………ラウラ、そんな言い方はないんじゃないの?」

『なんだ、完全に不意を突かれていたくせによく言う。いいからもっと撃ちまくれ。こんな序盤で本隊を消耗させるわけにはいかん。取り付く敵機は私がなんとかしてやる。私たちだけであと三百機、破壊するぞ』

「わかってるよ」

 

 IS最速の称号は伊達ではなく、あっさりとシャルロットの索敵を掻い潜って隣接しているラウラが敵であれば今頃落とされていただろう。セシリア・アイズのドレッドノートには撃ち落とされたラウラも、シャルロットの操る弾幕型のドレッドノートに対しては相性もいい。シャルロットのドレッドノートの弱点はまさにラウラのようなタイプだ。

 しかし、そんなラウラがシャルロットの直衛に付き、取り付こうとする機体を優先して破壊する。随伴機として文句のつけようもない働きをするラウラの援護を受け、シャルロットは制空権を完全に確保。

 武装を使い切る前になんとしても殲滅せんと、ウェポンシリンダーから次々と武装を展開する。もはや脅威はない。持てる火力を次々と叩きつける。

 

『そろそろ“次”が来るぞ。切り札は残しておけよ?』

「わかってる。それより、ラウラこそ大丈夫なの?」

『こっちの損耗は武装の消耗だけだ。なにも問題……………む、来たか』

 

 海中から近づく巨大な反応を探知。アイズが観測したそれはすぐさま全機に情報が共有される。距離はまだあるが、すぐに目視できるだろう。それくらい“巨大”な反応だった。おそらくはドレッドノート級ほどの大きさは確実にある。もともと都市制圧用の大型機を所持していたのだ。このような大型機の投入ははじめから予想されていた。

 だから対処法も検討されていたし、その装備も当然武器庫ともいえるドレッドノートに搭載されている。

 

『やはりきたな。……シャルロット、狙えるか?』

「できるけど、セシリアたちは?」

『あっちは装備が過剰火力になる。海中を薙ぎ払えば地形変動が起きかねん』

 

 一撃必殺を目的としたジェノサイドガンナーの狙撃では威力が高すぎて海中にいる機体を破壊すれば周囲の海水も蒸発させることになる。同時に起こるであろう水蒸気爆発の規模も洒落にならないだろう。下手をすればせっかく有利に働いている鋼の森すら破壊してしまうかもしれない。

 レールガンという手もあるが、海中ということを考えれば威力が減退するため確実性が薄れる。もちろん、いざとなれば狙い撃つことはすぐにでもできる。それを考えればシャルロットの武装のほうがほんの少しはマシだ。

 

「来た……」

 

 そうこうしているうちに目視確認ができる距離まできていた。なるほど確かに大きい。目算でもこれまで交戦した大型機以上の巨躯だ。それほどの大質量が海中から押し寄せ、それによって高波と大渦が生まれて海を荒らす。時折爆発が襲っていることから海中に仕掛けられた機雷も機能しているが、どうやら防御力も相当なものであまり効果は見られない。

 脅威ではあるが、あれだけ大きい的ならシャルロットでもこの距離でも十分狙える。

 

「シリンダー、十一番。プロミネンス展開」

 

 以前のブルーティアーズの切り札でもある超長距離狙撃砲を展開。巨大な砲身がシリンダーユニットから伸びるように展開。ジェネレーターからのエネルギーが供給され、砲身がプラズマを帯びて青白く光り輝く。高機動を行っていた機体に制動をかけ、狙撃態勢を整える。動きが止まったドレッドノートに集まる敵機はラウラが排除することで露払いも完璧だった。

 落ち着いて狙いを遠方の海中へとつける。狙う砲撃範囲はなるべく最小に止め、あくまで接近する超大型機のみに絞る。プロミネンスほどの高威力砲撃を無闇矢鱈と外すわけにはいかない。慎重に、落ち着いて狙いをつける。回避運動をする様子もない。目標の進行上から狙う以上、とにかく真正面のど真ん中を狙う。

 

「捉えた……! プロミネンス、ディスチャージ!!」

 

 放たれた一筋の光条が戦場を貫いた。狙いはほぼ完璧。接近してくる超大型機の中心に命中。その膨大な熱量で周囲の海水が蒸発。水蒸気が爆発的に広がり、同時に水蒸気爆発を引き起こす。空にまで到達するほどの巨大な水蒸気の柱が舞い上がり、中心にいた敵機の姿を覆い隠してしまう。

 常識からすればあのプロミネンスの直撃と水蒸気爆発を受けて無事な機体など存在しない。たとえドレッドノート級でも破壊は免れない。

 

 だから、もしこれで破壊できなかったとすれば―――――。

 

 

 

 

 

 

「―――――嘘でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 水の壁をぶち破るように完全に捉えたはずの超大型機が出現した。表面装甲は多少ダメージを負っているようだが、その行動にはなんの支障も見られない。

 まさか、本当にあれを防いだというか、と戦慄するも、狙っていたときとは若干形状が変化していることに気づく。滑らかな曲面で卵のような形状をしていたはずのそれは、今や完全に別物になっている。見るからに凶悪な形状の腕が稼働し、そんな腕が次々と展開される。それは伝説上の怪物、ヘカトンケイルのようだ。

 その腕のサイズは鋼の森を形成する鉄柱よりも大きい。腕だけでおれならその全体像はどれほど大きいのか、想像もつかない。

 

「リアクティブアーマー……!? 外装を捨てたの!?」

 

 始めに見えた形状はおそらく本機を覆う殻。近接まで持ち込むための盾だろう。その中から出てきたアレこそ本命。多脚と多腕を持つ規格外のサイズを誇る大型機がその勢いのまま吶喊してくる。あれほどの大質量の突撃を止めるほどの武装はドレッドノートをもってしても難しい。現に、何発かセシリアが撃ったであろうレールガンやビーム砲の狙撃が命中するが、一部を破壊しただけでその突撃を止めることはできなかった。

 

「まずッ……! あの方向は……!」

 

 突撃した場所は防衛エリアの要所のひとつ。ゆえにセプテントリオンも防御を固めていた箇所だ。なにより、そこにいたのは――――。

 

 

「鈴! 逃げてぇッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




雪がすごいですね。今はマシですが、先日の大雪では職場に行くだけで大冒険をしたものです。車が動かせなくなるレベルとか本当にやばいです。はしゃいでいた子供の無邪気さが羨ましかったですね。

完結していないくせに次回作ではなにを書こうかと思ったりしていますが、せっかくクリアしたのでFGOでも書いてみたいと思ったり。

それではまた次回に!

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