僕とウチと恋路っ!   作:mam

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今回の番外編は……
IF物語の中の一つのIFの未来のお話だと思って頂ければ幸いです。

タイトルからも判るように瑞希×秀吉で書いていこうと思っています。

なお、姫路さんの職業についてきちんと調べた訳ではないので
間違っている可能性が大いにありますが
そこは作者がバカなんだな、と思うくらいでご容赦頂けると助かります。


番外編:私とワシと数年後
私とワシと数年後part01


「明久君、美波ちゃん……今日は本当におめでとうございます」

 

 私がお辞儀をすると……

 

「わわっ、今日は姫路さんのおかげで一生忘れられない素敵な式を挙げられたんだから」

「そうよ。瑞希が素晴らしい料理を選んでくれたから、みんな笑顔で幸せそうだったわ」

 

 明久君は両手を前に突き出して慌てていて

 美波ちゃんは嬉しそうに微笑んでいる……美波ちゃん、幸せそうで良いなぁ。

 

「ふふっ。みんなが幸せそうだったのは二人の幸せを分けてもらっていたからですよ」

 

 私がそう言うと二人仲良く手を繋いで

 

「今日は本当にありがとう」

「瑞希、本当にありがとう」

 

 私は今、高校の時に好きだった人と親友からお礼を言われています。

 

 

 

 今日は…………この二人の結婚式だったんです。

 

 なんで『だった』なのかと言うと……ここは二次会の会場だから。

 

 

 

「主役がそんな端っこに居たらダメだろ」

 そう言いながら明久君の頭をゴン、と叩いている坂本君。

「……雄二。私たちももう一回結婚式を挙げよう」

 坂本君の袖を引っ張っている翔子ちゃん。

 

 この二人はずっと前に結婚式を挙げていました。

 私たちの中では一番最初でしたね。

 

「バカ言うな。結婚式なんて何回もするもんじゃないだろっ!?」

「……だって子供が出来ないのはきっと結婚式のタイミングが悪かったせい」

 そう言ってお腹をさする翔子ちゃん。

 そう言えば翔子ちゃんはたくさん子供が欲しいって言ってましたね。

 そんな翔子ちゃんを見て坂本君は顔を真っ赤にして……

 

「そのうち出来るから、そんなに慌てなくても大丈夫だ。それに……」

「……それに?」

 翔子ちゃんが首を傾げて坂本君を見ています。

 

「もう少し二人っきりで暮らすのも悪くないだろ」

「……うん」

 二人とも耳まで真っ赤になっちゃいました。

 

 

「…………明久と島田。目線、こっちへ」

「あっ、康太君。美波ちゃんは今日から『吉井さん』なんだよっ」

 カメラを構えている土屋君と、頭にチョップをしている愛子ちゃん。

 

「…………どっちでも良い」

「どっちでも良くないよっ。そこは重要なんだから間違えちゃダメだよっ」

「…………俺の撮った写真に名前まで写らない」

「そんな事言うんなら、こうだよっ(ピラッ)」

 

 プシャァァァァ

 

 愛子ちゃんが胸元をはだけさせると土屋君が鼻血を噴いて倒れちゃった。

 高校の時に何度も見た光景で懐かしいなぁ。

 そう言えば、この二人は確か高校三年の頃から付き合い始めたんだっけ。

 

 

「なんじゃ、皆で集まって……ワシだけ除け者みたいでさみしいのぅ」

 そして最後に木下君が来て……高校の時、よく一緒に何かをしていたメンバーが揃いました。

 みんなで海に行ったり、闇鍋をしたり……そう言えば、おせちや七草粥を作ったりもしたなぁ。

 

 高校を卒業してから、この中で一番見た目が変わったのは木下君。

 昔は私と身長はあまり変わらなかった気がしますけど

 今は私よりだいぶ高くなって身体つきも昔より、がっしりした感じがします。

 高校を卒業してから成長期が来たんでしょうか。

 

 昔は木下君や美波ちゃんのスリムな体型がすごく羨ましかったのは忘れる事にしましょう。

 木下君の顔は昔の面影はあるんだけど、今は可愛いと言うよりは……今もやっぱり可愛いです。

 

 可愛い中に少し精悍さと言うか……昔の明久君みたいな感じでしょうか。

 でも、きっと今も女装が似合うんでしょうね。

 ……ちょっと見てみたいかも?なんて思っちゃいます。

 

「何じゃ、姫路よ。ワシの顔に何か付いておるのか?」

「いっ、いえ……相変わらず木下君は可愛いくて良いなぁと思っていたんです」

「昔から何度も言っておるが可愛いと言うのは男ではなく女子(おなご)に言うものじゃと……」

 木下君が困った表情で私を見ています。

 

「ん?秀吉が困った顔をしているが……姫路にフラれでもしたのか?」

「なっ……雄二よ。そんな訳なかろう」

 坂本君にからかわれて木下君が真っ赤になって否定するのを見ていると……

 高校の時もこうやってみんなで話をしていたんだなぁって思い出しちゃいます。

 私が昔の事を思い出していると明久君が真剣な表情で

 

「でもさ……」

「どうした、明久?結婚式当日に浮気の相談か?」

「ばっ……そんな訳無いだろっ!バカ雄二っ!」

 明久君が坂本君の胸倉をつかもうとした時……

 

「あっ、アキっ!まさか坂本とっ!?」

「……雄二。私の前で吉井と……」

 明久君は美波ちゃんに、坂本君は翔子ちゃんに顔面をつかまれてしまいました。

 これも高校の時によく見た光景です。

 

「ちっ、違うよっ」

「じゃあ、何よっ!」

「ひっ、秀吉と姫路さんの事を言おうと思ったんだよっ」

「ほんと?」

「ほんとだよっ!僕は美波に嘘なんてつかないよっ」

「じゃあじゃあ……ウチのこと、どう想ってるの?」

「えっ……今、ここで言わないとダメ?」

「ダメよ。今すぐ答えなさい」

「愛してますっ!世界中の誰よりも美波が一番大切ですっ」

 明久君がそう言うと……

 

「もぅ、アキったら……みんなの前で言われると照れるじゃない」

 美波ちゃんが赤く染めた頬に両手を当てて身体を捻っています。

 良いなぁ……私も好きな人にあんなことを言ってもらえたらなぁ。

 

「おぬしらは相変わらずじゃのう」

 木下君が少し呆れ顔でそう言うと

 美波ちゃんから解放された明久君は真っ赤な顔で私と木下君を見て……

 

「秀吉も姫路さんも僕の大切な友達だから……もし二人が付き合うって事になったらすごく嬉しいよ」

 屈託のない笑顔でそう言ってくれた明久君の顔には……

 

 ……美波ちゃんの手形がくっきりと付いていました。

 

 ちなみに坂本君は、まだ翔子ちゃんに顔をつかまれています。

 

 

…………

………

……

 

 

「そう言えば、姫路よ。今日の結婚式の料理は全部おぬしが選んだそうじゃな」

「えっ?……あ、はい」

 木下君にいきなり聞かれたので少しビックリしてしまいました。

 

「姫路さん。今日は僕たちの結婚式の料理をコーディネイトしてくれて心の底からありがとう」

「そうね。すごく美味しくて心に残る料理ばかりだったわ。本当にありがとう」

 

 二人揃って頭を下げられちゃいました。

 私も本業を出来たって事だけでも嬉しいのに……

 しかも、この二人のために一生懸命取り組めたのがすごく嬉しくて

 楽しくお仕事が出来たから、お礼を言いたいのは私のほうなんだけどなぁ。

 

 私の職業はフードコーディネーター。

 料理全般に携わるお仕事です。

 

 高校の時、明久君たちが私の料理を喜んで食べてくれていたのが嬉しくて……

 気のせいか、明久君たち四人は喜んでくれていたはずなんですが

 少し腰が引けているところがあった気もしますけど……

 

 そして明久君が私に言ってくれた言葉が忘れられなくて

 このお仕事を選んだつもりだったんですが、最近は……

 

「そう言えば姫路は最近TVでもよく見るよな」

「そうでしょうか」

「そうじゃのう……なにやら、この間写真集も出したようじゃな」

「…………俺も持っている(キラーン)」

「キラーン、じゃないよっ!康太君のバカぁっ!」

 愛子ちゃんが土屋君の手を自分の胸に……

 

 プシャァァァァ

 

 土屋君はまた血の海に倒れました。

 

 

 そう、最近はフードコーディネーターとしての仕事より

 TVや雑誌のお仕事の方が多い気がするんです。

 

 もちろんTVや雑誌のお仕事でも料理に関わる事があるんですけど

 料理を作るお仕事より、どちらかと言うと料理の批評が多い気がします。

 私は作る方なのであまり批評は得意ではないのですが……

 それに一回だけですけど、TVで水着を着させられて……すごく恥ずかしかったなぁ。

 

 その後、何故か写真集まで出されて……しかも水着のです。

 それ以降は水着のお仕事は全部断っているんですけどね。

 でも相変わらずTVのお仕事は来ています……もちろん、普通の格好で出ていますよ。

 

 

…………

………

……

 

 

 明久君と美波ちゃんは他の人のところへ挨拶に行って

 坂本君と翔子ちゃんも明久君たちとは違う人たちのところへ挨拶に

 土屋君が他のテーブルの女の子の写真を撮っているのを愛子ちゃんが怒っています。

 

 ……なので、今このテーブルには私と木下君だけ。

 

 そう言えば高校の時からみんなカップルになっていて

 私と木下君は傍から見ていましたね。

 

「あやつら、会うのは久しぶりじゃと言うのに全然変わっておらんのう」

「ふふっ、そうですね」

 変わってないと言えば、木下君も爺言葉は全然変わってません。

 

「ワシは、皆に会うのは雄二と霧島……今は坂本じゃったか。あやつらの結婚式以来じゃが姫路は会っておったのかの?」

「私は明久君と美波ちゃんとは結婚式の料理の打ち合わせで何度か」

 でも明久君も美波ちゃんも、会うのは坂本君たちの結婚式以来だったから

 あまり木下君と変わりませんね。

 

「そう言えば、そうじゃったな」

 木下君は微笑みながら言葉を続けて……

「さっき雄二も言っておったが姫路は最近TVにもよく出ているのう。ワシもたまに見ておる」

「ええっ!?ひょっとして水着の時も……」

 あ、なんか顔が火照っているのが判ります。

 知らない人に見られるのも恥ずかしいのに、知っている人だと尚更です……

 

「そんなに恥ずかしがらんでもいいじゃろう。周りで見ていた奴らもすごい、その……褒めておったくらいじゃからな」

 奥歯に物が挟まったような言い方ですね……何か隠している事でもあるのでしょうか。

 

「周りでって……見ていたのは木下君一人じゃないんですか?」

「うむ。ちょうど休憩の時じゃったからな。劇団の皆で見ていたんじゃ」

「ええっ」

 うう、恥ずかしいなぁ。

 

「うっかり、知り合いだと言ってしまったのじゃが、安心せい。それ以上は何も言っておらぬ」

「あの……皆さん、何か言ってましたか?」

 太ってるとか、ぽっちゃりしてるとか言われたら……

 自分で考えていてすごく凹みます……

 

「綺麗だとか、スタイルが良いとかじゃな……悪い事は誰も言ってなかったのう」

 良かった……ホッと胸を撫で下ろしていると

「紹介してくれとか言う奴もおったくらいじゃ。姫路も自分にもっと自信を持っても良いと思うのじゃが」

「ええっ!?それで木下君はなんて答えたんですか?」

「安心せいと言ったじゃろう。知り合いと言う事以外は何も言っておらぬ」

「良かったです。知らない人を紹介されても困りますし……」

「いくら同じ劇団に居ると言っても姫路(ほんにん)の了解なしに話を進めるわけにはいかんからの」

 木下君が少し寂しそうな顔をしたような……私の気のせいでしょうか。

 

 私は少し離れたテーブルで楽しそうに話している美波ちゃんと明久君を見ながら

 

「でも……今日で完全に吹っ切れました」

「んむ?何がじゃ?」

「明久君と美波ちゃんの結婚式を見て本当に私の初恋は終わったんだなって……」

 

 私が明久君を諦めたのは良かったのかなって、ずっと思っていたんだけど……

 今日の二人を見てて……私が明久君の隣に居ても

 結婚式の時や今みたいに周りの人がこんなにも幸せそうにしてくれるのかな。

 

 …………なんて考えちゃったから。

 

 

「なんじゃ、姫路もか」

「私もって?」

「なに、ワシも初恋じゃった……」

 木下君が途中まで言いかけて顔を真っ赤にして言うのを止めちゃいました。

 そう言えば本音をしゃべる召喚獣の時、木下君も自分の召喚獣をゴミ箱に投げ入れてました。

 ……と、言う事はあの時から好きな人が居たんですね。

 

「木下君は明久君と美波ちゃんのどっちが好きだったんですか?」

「ワシは男なんじゃが……」

 木下君は真っ赤な顔で困った表情をしているけど……

 美波ちゃんと明久君が付き合い始める前は

 木下君が明久君に一番近いポジションだった気がします。

 

「……寝物語でなら教えよう」

 相変わらず真っ赤な顔でそう答える木下君。

 

「それって……ひょっとして私を誘っているんですか?」

「違うのじゃ。恥ずかしくて教えとうないから断っておるんじゃよ」

 木下君が真っ赤な顔のまま俯いていると、みんなが戻ってきました。

 

「あれ、秀吉。どうしたのさ?」

「何だ、秀吉。姫路にいじめられていたのか?」

「…………何があった?」

 明久君と坂本君、土屋君が尋ねてくると……

 

 ――ゴンッ ×3

 

 それぞれのパートナーに後頭部を思いっきり叩かれています。

 

「「「痛ぇ」」」

 

「「「察してあげ(なさいよ)(ないと)(なよ)」」」

 

「みなさん、考え過ぎですよっ」

「そうじゃ。ワシと姫路が付き合ったら残り物同士がくっ付いたみたいに思われるしのう」

 木下君も顔を上げて反論しています。

 でも残り物同士、と言うのは私にもちょっと効いています……

 すると明久君が真面目な顔になって

 

「違うよ、秀吉」

「何が違うのじゃ?」

「ほら、よく言うじゃないか。残り物は服だったって」

 

 ――ゴンッ

 

「痛ぁっ。何するのさ、雄二っ!?」

「お前は本当にバカだな」

「…………明久。それを言うなら『汚れ物は服だった』が正解」

「ムッツリーニも違う。まぁバカ二人はほっといてだな」

「ううっ……僕は一応、今日の主役なのに……」

「うるさい、黙れ……いいか、秀吉と姫路」

 坂本君が明久君と土屋君を無視するように話を続けます。

 

「俺たちは卒業してバラバラになってから何年も経っているが誰一人として変わっていないと思ってる」

 そして明久君を指さしながら

「こいつのバカみたいにな」

「大きなお世話だよっ!」

 坂本君は明久君の抗議に動じることなく、なおも続けます。

 

「秀吉と姫路の事だから俺たちが口を出していいもんじゃないのは判っているんだが」

 坂本君は私と木下君を交互に見て

「それでも二人が付き合う事になったら素直に嬉しいと思うぞ」

 

「さっき、明久君にも同じ事を言われました」

「なにっ!それは本当かっ!?」

「んむ。まったく同じ事を明久も言っておったのう」

 木下君が私に同意すると坂本君は

 

「やっぱり俺らが口出しする事じゃないよな。お前らはちゃんと自分で相手を見つけた方が良いと思うぞ」

「バカ雄二っ!どういうことなのさっ!?」

「るせーっ!お前と同じ意見だったってのが気にいらねぇんだよっ!」

 明久君と坂本君がお互いに胸倉をつかみあっていると

 

「「まったくアンタ(雄二)たちはっ!」」

「「うぎゃぁぁぁ」」

 美波ちゃんと翔子ちゃんに腕を取られて関節技で引き剥がされる二人。

 

 卒業してから何年も経っているのに……本当にみんな全然変わっていません。

 

 そして……

 

「本当にこやつらはいつまで経っても変わらんのう」

 

 私の隣で笑っている木下君の笑顔も……昔のままでした。

 

 

 


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