僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチと奇妙な三角関係part02

 

----放課後

 

 美波と姫路さんは話があると言う事で早々に帰ってしまった。

 

「明久、今日は一人か」

「うん、久しぶりに一人で帰る気がする」

「じゃあ、たまにはゲーセンでも寄って行くか?」

「そうだね」

 雄二と寄り道の話をしていると

 

 ……ガラッ

 

 教室の扉が勢いよく開き……

 

「お姉さまっ!美春と一緒に帰って寝ま……お姉さまが居ませんっ!?」

「美波なら今日は用事があるから早く帰ったよ?」

「恋人より用事の方が大事なんて……お姉さまと付き合っているのは本当なんですか?」

「う……」

「例え、お姉さまが貴様のような奴を何か勘違いして恋人と認めていても美春は認めていませんっ!」

「美波が認めたなら良いのでは……」

「黙りなさい、豚野郎。お姉さまの近くに居ると言うだけで7回殺しても殺し足りません」

 すまない、六代先までの僕の子孫。

 僕を含めて君達の死因は、清水さんが起こす殺人事件の被害者だ。

 

「まぁ貴方が居ただけでも無駄足にならなかった事にしましょう」

「僕に何か用があるの?」

 僕の抹殺以外で。

 

「貴方とお姉さまに話があって来たのですが……」

 教室に入ってきて、いきなり帰って寝ようとか言ってた気がするけど……

 

「お姉さまが居ないのなら仕方ありません。明日の放課後、屋上にお姉さまと一緒に来てください」

「僕は良いけど……美波には明日会った時に話しておくよ」

「貴方は来る途中で死んでも構いませんが、お姉さまだけは来てくれる様にお願いします」

「僕は別に居なくても良いのか……」

「当然です。お姉さまだけだと恥ずかしがって来てくれないので仕方なく、貴方にも来て貰うだけです」

「判ったよ。ちゃんと美波には伝えとくね」

「よろしくお願いします。では」

 そう言って清水さんは教室を出て行った。

 

「お前も大変だな。また変に(こじ)らせて試召戦争にするなよ?」

「大丈夫だと思うけど……」

 僕が聞いてても良い話って何だろう?

 でも清水さんは大概(たいがい)の事は僕なんか気にしないで話をしているか。

 

「さっさと帰ろうぜ」

「そうだね」

 下手に残ってて鉄人に補習とか言われると嫌だし。

 

 

 

 

「畜生っ、あそこでボタンを押し間違えなければ……一生の不覚だっ!」

「何を言っても敗者の戯言(たわごと)だね」

「くっ……明久に(おご)るのは良いが、この顔に(おご)るのが許せねぇ」

「どっちも僕なんだけどっ!?」

 雄二と久しぶりに対戦型の格闘ゲームをやって、なんとか僕の勝ち。

 勝った方が負けた方からハンバーガーセットを(おご)ってもらう約束をしていたので

 ゲーセンから最寄のファーストフードのお店で約束を守ってもらっているところだった。

 

 それぞれセットを乗せたトレーを持って二階へ……

 観葉植物などの仕切りがあって全席がハッキリ見える訳ではないけど

 結構、文月学園の制服が見える。

 とりあえず階段の近くの席が空いていたので、そこに座る。

 

 そう言えば、さっき清水さんに美波への伝言頼まれてたんだっけ。

 思い出した時に話をしておかないと忘れる気がする。

 明日だと覚えている自信が無いな。

 

「雄二、悪い。ちょっと、さっきの清水さんの伝言を美波に電話してくる」

「メールで良いんじゃないのか?」

「メールだと、また違う人に送ったりすると面倒な事になるからね」

 僕には物凄い前科があるからなぁ。メールを間違って送信して

 今度は逆にそれで美波に振られでもしたら……想像出来ない、と言うより考えたくない。

 雄二が傍に居ると携帯壊されそうだし。

 

 さすがに店内で電話をするのは色々とマズいのでお店の外に出て、と。

 

  Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr

 

 あれ?結構長いな……ひょっとしたら姫路さんと話している最中かもしれない。

 どうしようかな……大切な話をしていたら悪いし、と思っていたら

 

「おまたせ、アキ」

「いきなりごめんね。今少し話しても大丈夫かな?」

「「ええ、大丈夫よ。ちょうどウチも話があるし」」

 あれ?なんか声が近い気がする。

 

「話って?」

「「アキの方からで良いわよ」」

「ありがとう。明日の放課後なんだけど清水さんが話があるって」

「「美春が?何の話かな……念のためアキも一緒に来てくれる?」」

「うん。僕も一緒にって言われてるんだ」

「「アキも一緒に?珍しいわね」」

「そうだね。僕の方はこれだけなんだけど美波の話って?」

「「うん、一回携帯切るわね」」

 切られちゃった。何か急ぎの用でも出来たのだろうか。

 でも不思議だな。携帯からと、すぐ後ろから美波の声が聞こえていた気がする。

 

 そんな事を考えていると……いきなり後ろから

 

「だぁ~れだ?」

 

 耳元に息を吹き掛けられる様に(ささや)かれる。

 ちょっとぞくぞくする。

 仄かに香るシャンプーの良い匂い。

 そして、この声は……僕が聞き間違える訳が無い。

 僕の世界中で誰よりも大切な……

 

 でも……僕は、すぐに答える事は、しなかった。

 しばらく僕が黙っていると……

 

「あ……アキ?ひょっとしてウチの声忘れちゃったのっ!?」

 悲痛な声がする。

 ちっ、違うんだ……違うんだよ、美波。

 僕は…僕は……

 

「あっ、アキが……アキがウチのことっ……」

 僕を押さえる美波の両手の力が……弱くなってくるのを感じる。

 おかげで僕は……

 

「ぷっはぁぁぁぁぁぁ」

 やっと呼吸が出来た。

 ずっと美波が両手で僕の口と鼻を塞いでいたので呼吸も返事も出来なかった。

 すぅぅぅ、はぁぁぁ、と、二度、三度と深呼吸をし、息を整えてから

 

「あのね、美波?普通は目を押さえるんだよ?」

「こう?」

 

 ぷちゅっ……目潰しをされた。

 

「いだぁぁぁぁぁぁぁ」

 地面をのた打ち回る僕。

 

「アキ、大丈夫?」

 全然大丈夫じゃない。

 

 何とか立ち上がり、目を擦りながら

 

「あのね、美波?…『だぁ~れだ?』をする時は普通は後ろから両手で目を隠すんだよ」

「そうなの?」

「そうなの……決して、鼻と口を押さえたり正面から目潰しをしたりしないんだよ?」

 それは普通の恋人同士がする『だぁ~れだ』ではなくて、犯人を捕まえる為の『だぁ~れだ』だろう。

 

「ふーん、そうなんだ……今度やる時は気を付けるわね」

「判ってくれたなら良いかな……ところで美波の話って?」

「ああ、そうそう。ウチと一緒に瑞希と話をして欲しいのよ」

「ほぇ?僕も一緒で良いの?」

 女の子同士じゃなければ話せない話は終わったのだろうか?

 

「瑞希が、出来ればアキも一緒にって言うから……本当は明日にしようと思ってたんだけど」

「そっか。僕なら全然構わないよ」

「ところでアキ?アンタなんでこんな所に居るのよ?」

「雄二とちょっと賭けをして僕が勝ったから(おご)ってもらってたんだ」

「坂本も来てるんだ……さすがに坂本もって訳には、いかないかな?」

「それもそうだね。雄二には説明すれば大丈夫じゃないかな?」

「そうね、じゃあ坂本に事情を説明してから瑞希の所へ行きましょ」

「うん」

 僕たちは店内の二階へ……

 

 そして僕が居た席には……霧島さんが居た。

 

「……雄二。相手は誰なの?」

「あっ、明久だ。それは明久の分だっ」

「……浮気は許さない」

 いつものようにアイアンクローが雄二の顔に食い込んでいた。

 

「ちょうどいいんじゃない?」

「そうだね。ちょっと一声かけてくるよ」

「うん」

 

 雄二たちのところに近付き

 

「雄二?悪いけど美波と姫路さんに呼ばれたから、僕もう行くね」

「そっ、その前にっ!おっ、俺を助けようって気は無いのかっ!?」

「うん、無いよ。霧島さん?そのセット、まだ手をつけてないから良かったら上げるよ」

「……ありがとう、吉井」

 ぱぁっと笑顔になる霧島さん。

 どうやら雄二もアイアンクローから解放されたみたいだ。

 

「助かった。明久、礼を言うぜ」

「じゃあね、雄二。霧島さん」

 そう言って席を離れる。

 

「……雄二」

 そう言ってセットの中でも、ちょっと長めのフライドポテトを手に取る霧島さん。

 あーんでもするんだろうか?

 そう思っていると……

 

「……二人で一緒に食べる」

 霧島さんがポテトの端をくわえて雄二の方に顔を突き出した。

 

「お前っ!ポッキーか何かと勘違いしてないかっ!?」

 結構時間が経ったフライドポテトだから、かなり(しな)びている。

 あれだと一口(ひとくち)二口(ふたくち)でキスしちゃう事になるのでは……

 

 美波のところに戻ると

 

「ねぇ、アキ?ウチらも負けていられないわよねっ!?」

 妙にやる気が溢れている美波が居た。

 さすがに同じ学校の人達も多い場所では恥ずかしいな。

 

 

 

 そして同じ店内に姫路さんは居た。

 

「明久君、心配掛けてごめんなさい」

 僕の顔を見るや、いきなり立ち上がって頭を下げる姫路さん。

 上がったり下がったり忙しそうだ。

 

「わぁっ、姫路さんが謝る事なんて何も無いよっ。むしろ僕の方こそ、ごめんなさい」

 姫路さんに負けじと頭を下げる。

 勉強だと絶対に勝てないけど、これなら……勝ってどうするんだ?

 

「とりあえず座らない?」

「そうだね」

「そうですね」

 美波の提案で僕たちは着席しようとした時

 

「そう言えばアキ飲み物どうするの?」

 雄二に(おご)ってもらったセットは全部霧島さんに上げちゃったんだっけ。

 

「あ、僕買って来るよ。美波と姫路さんは何か飲む?」

「ウチが買ってくるわ。アキは何にするの?」

「ありがとう、じゃあ僕はコーラで」

「わかったわ、瑞希は?」

「ありがとうございます、美波ちゃん。私はカフェオレでお願いします」

「ちゃちゃっと行ってくるわね」

 そう言って美波は下のお店へ……

 僕は姫路さんの向かいの席へ座った。

 

「姫路さん、ここのところ具合が悪いみたいだけど……身体の調子が悪いの?」

「心配を掛けてごめんなさい……身体の方は大丈夫です」

 身体は大丈夫と言う事は……やっぱり僕が変な事言って気分を悪くしたんだろうか。

 

「率直に言ってね?僕、姫路さんの何か気に障るような事、言っちゃったのかな?」

「そんな事無いですよ」

 にっこり微笑む姫路さん。

 こうして見ていると何も問題が無さそうな気はするけど……

 そこへ美波が戻ってきた。

 

「お待たせ。アキはコーラで瑞希はカフェオレよね?」

 美波が僕たちにそれぞれ飲み物を渡してくれて姫路さんの隣に座ろうとした時

 

「美波ちゃん?座る場所が違いますよ?」

「えっ?瑞希……」

「美波ちゃんが居る場所は……明久君の隣、だと思います」

「そっか、そうだよね。ありがと、瑞希」

 そして僕の横に美波が座った。

 

「そう言えば美波は姫路さんの事、何か聞いてる?」

「えっと……」

 そう言うと姫路さんの顔を見る美波。

 

「心配掛けて本当にごめんなさい。でも、ここだけの秘密にしてくださいね?」

 姫路さんは、そう言いながら人差し指を唇に当てて……

 

「私、今ダイエットしてるから時々ぼうっとしてるんです」

「ええっ!?姫路さんは別にダイエットしなくても十分可愛いと思うけど」

「アキっ!?」

 美波に頬を(つね)られた。

 

「いひゃいれふ」

「美波ちゃん?あまり引っ張ると明久君が瘤取り(こぶとり)おじいさんになっちゃいますよ?」

 くすくす笑う姫路さん。

 良かった。いつもの姫路さんに戻ってくれた。

 

「仕方ないわね。瑞希がそう言うなら許してあげるわ」

「ありがとう、姫路さん」

「なんで瑞希だけにお礼言うのよっ!?」

 今度は耳を引っ張られた。

 

「みっ、美波?僕の耳が取れちゃうよ?」

「いつまでも二人で仲良く居てくださいね」

「ありがとう、瑞希」

「あっ、ありがとう。姫路さん……美波、そろそろ耳が取れそう」

「もぅ仕方ないわね」

 仏様みたいに耳が伸びちゃったんじゃないだろうか。

 

「でも姫路さんは、そんなに太ってないからダイエットしなくても良いのでは……」

「そんな事無いですよ?もうすぐクリスマスもお正月も来るので……危険な時期です」

 そう言ってお腹に手をやる姫路さん。

 

 全然太っているようには見えないんだけどなぁ。

 このボリュームがあれば、他の部分に多少、非があっても無くても……

 無くても……チラッと美波を見る。

 

 ヤバい。美波と目が合っちゃった。

 

「ア~~キ~~~?何を見ているのカシラ?」

「いやっ、ほらっ……美波って手足が長くてスタイル良いし、顔は可愛いし」

「もぅアキったら……瑞希の前なんだから少しは控えてよねっ」

 頬を染めて両手を当ててもじもじする美波。

 

「それに裏表の無い性格で付き合いやすいし、胸も裏表ないし……」

 僕って本当にバカが100個くらい付く正直者だなぁ…… 

 

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」

 あ、少し離れた席から、先に雄二の叫び声が聞こえた。

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」

 まぁ僕も、こうなる運命だったんだ……

 

 

 

 

 大きな川の傍の綺麗なお花畑で雄二と再会した。

 

 


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