僕とウチと恋路っ!   作:mam

42 / 111
僕&ウチと俺&私と召喚獣バトルpart02

 

 僕たちはレストランでお昼を御馳走になり、その後イベントが始まるまで

 僕と美波、雄二と霧島さんでそれぞれの控え室に分かれて待たされている。

 

--雄二Side--

 

「……雄二」

「ん?どうかしたのか?」

「……うまく言えないけど……」

「なんだ?何でも言ってみろ」

「……うん。この対戦が終わったら私と結婚しよう」

「ごほっ、げほっ……何でもとは言ったが、何をいきなり言ってるんだっ!?」

「……冗談」

「お前の場合、冗談に聞こえない」

「……緊張していたみたいだから……少しはリラックス出来た?」

「そうか。見て判るくらい緊張していたのか……ありがとな」

 俺は翔子の頭を軽く撫でる。

 

 明久と対戦するのはゲームでは良くやっているけど、召喚獣だと初めてか。

 そう言えば明久と最後に本気で殴り合いの喧嘩をしたのはいつだったっけな。

 

 たしか……島田の教科書の一件以来か。

 あの頃の島田は明久の事を親の敵のように睨んでいたよな。

 絶対に好意を持ってるようには見えなかったのに

 それがいつの間にか俺たちとも仲良くなって今はあいつの彼女だもんな。

 

 あいつはすばしっこくてなかなか捕らえるのが大変だったけど……

 喧嘩慣れしてる俺には敵わなかったのに何度も何度も立ち上がってきて

 ムッツリーニや秀吉の手を借りたとは言え、最後は俺に認めさせやがったな。

 

 あいつは俺みたいに変にこねる理屈も思いつかなくて

 諦めるタイミングも判らない大バカなんだろう。

 あいつのバカが、ほんのちょっとだが羨ましかったっけ。

 

「……雄二」

「どうした?」

「……頭。いつまで撫でてくれるの?」

「ああ、悪い。ちょっと考え事をしていたんだ」

 

 そういや文月学園の入学式の時、あいつは俺と翔子の事で絡んできたな。

 何をトチ狂ってたのか、上はセーラー服だったが……昔からあいつのする事はよく判らなかった。

 でも、やろうとしている事は丸わかりだったな。何せ、バカだから。

 きっとあいつは俺が翔子とちゃんと付き合うまで……絡んでくるんだろうな。バカだから。

 

 翔子が勘違いを始めてから6年か……

 それはそのまま俺が勘違いだと思おうとして翔子に無駄にさせてしまった時間か。

 

「……雄二。ちょっと痛い」

「あ…すまん」

 まだ翔子の頭を撫でていた俺は手をどけて……

 

「なぁ、翔子」

「……?」

「さっきのチケットなんだがな」

「……うん」

「あれ、明久たちにあげても良いか?」

「……うん。雄二がそうしたいなら」

「……反対しないのか?」

「……うん」

「なんだ、てっきり顔面つかまれて『許さない』とか言われるかと思ったんだがな」

「……雄二がして欲しいならいつでもしてあげる」

「ちょっと待て。俺はやって欲しいとは言ってない」

「……そう」

「残念そうな顔をするな。代わりと言っては何だがな」

「……うん」

「これが終わった後……きちんと言いたい事があるんだ」

「……何?」

「……すまん、察してくれるとありがたい」

「……判った」

「ありがとな。チケットはあいつらに御礼としてくれてやるけどな。勝負となったら話は別だ。勝ちに行くぞ」

「……うん」

 

「俺たち四人の中で召喚獣の操作に一番慣れているのは明久だ。おそらく俺たち二人掛かりでやっと互角だろう」

「……うん。そして一番下手なのは私」

「判ってはいるんだな。たしかに戦争を一番行っているのはFクラスだから島田もそれなりに扱う事は出来る」

「……うん」

「ただ弱点が無いという訳でもない」

「……弱点?」

「明久の召喚獣は特別だからな」

「……物理干渉能力とフィードバック?」

「ああ。フィードバックがあるからあいつは召喚獣が攻撃を食らう時に一瞬だが身体が硬直するんだ」

「……ダメージを耐えるため?」

「そうだ。俺たちに勝機があるとしたらその一瞬をつくしかない」

「……判った」

「さっき明久の召喚獣を殴った時、フィードバックが無い筈なのに一瞬硬直してたからな」

「……それで殴ったの」

「島田も操作に慣れているとは言え、俺たち二人掛かりに対抗出来るほどじゃない」

「……うん」

「長引けば長引くだけ俺たちは不利になるからな。短期決戦で明久を沈めるぞ」

 

 

 

 

--明久Side--

 

「ねぇ、美波?お願いがあるんだけど……」

「なによ?そんなにあらたまった顔して」

 美波が、まじまじと僕の顔を見てくる。

 

「もし僕たちが勝ってもプレミアムチケットは雄二と霧島さんにあげても良いかな?」

「ちょっ、どうして翔子たちにあげるのよ?」

 大きな吊り目を吊り上げて僕を睨んでくる。

 

「僕と美波が今こうして一緒に居るのって雄二たちがウェディング体験に誘ってくれたからじゃないかなと思ってさ」

「そう言われれば、そうかもしれないわね」

「だから、恩返しじゃないけど何かしてあげたくて」

「そうね。テストの前とかもお世話になってるし」

 どうやら納得してくれたみたいだ。

 

「ありがとう。美波ならきっと判ってくれると思ってたよ」

「でも……アキはウチの幸せは考えてくれないの?」

 美波は寂しげに俯いてしまった。

 

「うっ……やっぱりCMとか出るのって恥ずかしいかなって」

「アキってなんでこんなに恥ずかしがりやなのかしらね。もっと自分に自信を持ちなさい」

「うん……」

 判ってはいるんだけど……僕は下を向いてしまう。

 

「アキ」

 美波は僕のあごを下から持ち上げて正面から僕を見ている。

 

「アキはウチの事をどう想っているの?」

 美波の顔が近くに……大きな目で僕をジッと見ている。

 

「その……とっても魅力的な女の子」

 何回か言ってるけど、あらためて言うと照れるな。

 僕がそう言うと美波は少し頬を染めて……

 

「ありがと。やっぱり何回聞いてもすごく嬉しい」

 ぱぁっと笑顔になる美波。

 その笑顔は一点の曇りもなく本当に嬉しいんだと言うのが判る。

 

「その魅力的な女の子がアキに恋してるのよ」

 僕の首に手を回して抱きついてきて……頬擦りをしてくる。

 

 やっぱり僕はバカだ。

 こんなに温かくて優しくて魅力的な女の子が好きになってくれる僕を……

 僕が信じられなくてどうするんだ。

 

「どう?少しは自信がついた?」

「うん、ありがとう」

「ふふっ。どういたしまして」

 美波は僕から離れる時に……頬に軽くキスをしてくれた。

 

「ウチはまだアキの格好良いところ見せてもらってないんだからねっ」

「そう言えば、そうだったね」

「今日見せてくれるのよね」

「うん」

「期待してるわよ」

 美波がコツンと僕の胸を叩く。

 

 

「で、作戦なんだけど」

「どうするの?」

「相手は雄二だからね。下手に小細工しても絶対裏をついて来ると思うんだ」

「そうね」

「正面から、ぶつかろうかと」

「正面?」

「うん。たぶん召喚獣の操作が一番苦手なのは霧島さんだと思うんだ」

「そうね。実戦はほとんどないでしょうね」

「普段強いのはテストの点数が他の人と比べ物にならないからで点数が同じだと僕らの方が強い筈なんだ」

「そう言われればそうね。学校だと正面から行っても点数差がすごくて相手にならないものね」

「だから雄二は始めに霧島さんと二人で僕を潰しに来ると思うんだよね」

「そっか。まだ最初の方で坂本たちも点数があるうちにアキを弱らせておけば楽になるのね」

「たぶんね。だから僕たちの作戦としては…………」

 

…………

………

……

 

「それ、本当にするの?」

「うん。もしダメだったら後はお願い出来るかな?」

「なによ、アキ?アンタ、彼女であるウチを一人にするつもりなの?」

「いっ、いや、その……さっきは雄二の前で試せなかったから、ちゃんと出来るか判らないし」

「仕方ないわね」

 

 

 

 そして、しばらくして似非野郎が僕たちの控え室にやってきて

 

「吉井サン、島田サン、そろそろ出場の時間デス」

 

 

 

 控え室から出ると雄二と霧島さんはすでに廊下に出ていた。

 そして僕は雄二と、美波は霧島さんと並んで歩いていく。

 

「雄二」

「なんだ?」

「僕は美波の前で格好良い所を見せてあげたいんだ。悪いけど勝たせてもらうよ」

「はっ、上等。俺も翔子の前で格好悪い所は見せられないからな」

 

 

「……美波」

「何、翔子?」

「……ありがとう。美波と吉井のおかげ」

「良く判らないけど……ウチらも翔子と坂本のおかげで今こうしていられるのよ。本当にありがとう」

 

 

 少し歩くと廊下の先に扉があり、扉を開けると僕たち四人は……

 

 大歓声に迎えられた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。