僕とウチと恋路っ!   作:mam

28 / 111
僕とみんなとBクラス戦part04

 

「上へ行くぞ」

 雄二を先頭に僕たちは階段を駆け上り、四階の空き教室へ。

 

 空き教室の前には数学の木内先生と世界史の田中先生が待っていてくれてた。

 

「俺が合図したら木内先生の数学から田中先生の世界史へフィールドを変更したいのでお願いします」

 雄二が説明すると先生達は「わかりました」と頷いてくれた。

 

 僕たちは教室へ入り、唯一開いている扉の前に美波と姫路さんの二人と木内先生がその近くに居る。

 教室中央付近に僕と雄二とムッツリーニと木下さんが居て少し離れた所で田中先生に待機してもらう。

 

 三分も立たないうちに外が賑やかになる。Bクラスが来たのかな?

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 美波と姫路さんが()び声を上げると見慣れた魔法陣が足元に現れて

 二人の姿をデフォルメした姿に立派な鎧や武器を装備した召喚獣が現れる。

 僕や雄二みたいなチンピラ風じゃなくて、二人とも強そうな召喚獣で良いなぁ……

 

『Fクラス   島田美波   &   Fクラス   姫路瑞希

  数学     193点   &   442点         』

 

 二人の点数が表示される。

 さすが学年次席を争う姫路さん。特殊能力を使える腕輪が装備できる400点を軽く超えている。

 美波の点数は姫路さんの半分もないけど、数字だけ見ればAクラスに入れるくらい立派なものだ。

 でも満遍なく点数の高い姫路さんと違って、美波は古典とかが僕と一緒くらいだからなぁ。

 

「ここを通りたければ、ウチらを倒してから行くことねっ」

 美波が外に居るBクラスの生徒に向かって啖呵を切っている。

 いつもこんな調子だから、ごく一部の熱狂的なファンを含めて女子に人気が出ちゃうんだろうな。

 男の僕から見ても格好良いって思う時が良くあるし。

 

 

「「試獣召喚(サモン)!」」

 外に居るBクラスの二人が召喚獣を喚び出して教室の中へ……

 美波と姫路さんが割りと入り口近くに居るから、あまり人数は入ってこれない。

 

『Bクラス   入江真美   &   Bクラス   金田一香

  数学     163点   &   158点          』

 

 Bクラスの二人の点数が表示される。

 さすがBクラス。僕の二倍以上の点数だけど、美波や姫路さんと比べると低く感じてしまう。

 

 一人が美波に向かって真っ直ぐ突っ込んでくる。

 横に大きく振りかぶって剣を真横に振る……フリをして、方向を変えて姫路さんめがけて突っ込んで行く。

 その後ろから、もう一人が剣の切っ先を美波に向けて突っ込んでくる。

 

 しかし、最初のおとりの方の召喚獣はあっさり姫路さんに真っ二つにされる。

 点数差が3倍近いからなぁ……召喚獣のスピードもパワーも比べ物にならないだろう。

 おそらく本命であろう美波を狙った方はと言うと

 美波もその動きを読んでいたのか、軽く横に避けて胴に一撃。

 そして相手が美波の方を向いたところを姫路さんに後ろから一刀両断にされていた。

 

「すごいね。あの二人が負ける所が想像出来ないよ」

「常に正面から来てくれるならな」

「雄二なら、どうやってあの二人のところを抜ける?」

 僕が質問をすると雄二はあごに手を当てて少し考え込むと

 

「そうだな……二ヶ月前なら簡単に抜けられるんだがな」

「ずいぶん簡単に言うけど、どうやるのさ?」

「あの二人の目の前で明久をボコる」

「それ、反則だよねっ!?」

 召喚獣じゃなくて召喚者本人に危害を加えるのはルール違反だった気がするんだけど……

 雄二なら誰も見てなければオッケーとか言いそうだ。

 

「そうか?俺は別に痛くも痒くもないからな。確実にあの二人は中から出てくるぞ」

 二ヶ月前なら、まだ付き合い始める前だけど美波はきっと僕のことが心配で駆けつけてくれると思う。

 姫路さんも優しいから、クラスメイトである僕を助けるために出てきてくれるだろう。

 二人の優しさにつけ込むなんて、こいつはなんて卑劣な男なんだ。

 

「たしかにあの二人は強いけど、それだけじゃAクラス(うち)には勝てないわよ」

 二人を見ていた木下さんが退屈だったのか、僕たちの会話に加わってきた。

 

「ああ、そうだな」

「どうやってうちに勝つつもりなのかしらね」

「正直、学年全部を見回しても翔子に確実に勝てるのはムッツリーニの保健体育しかない」

「それが判ってて、あんな条件を飲んだの?」

「正面から堂々と、とは言ったが正攻法で行くとは言ってないぞ」

 そう言うと、チラッと僕の方を見て

 

「うちには常識で計れないバカが一人居るからな」

「そんな自分の事をバカって認めなくても」

 僕が雄二の肩をポンポン叩いていると

 

「たしかにそうね」

 木下さんが僕の事をバカを見る様な目で見ている。

 

 そんなバカなっ!?

 僕が雄二よりバカだとでも言うのだろうか。

 確かに雄二より成績は悪いかもしれないけど、普段の行動を見たら

 絶対僕より雄二の方がバカだと思うんだけどなぁ。

 霧島さんの事も含めて。

 

 

 

--根本SIDE--

 

 まさか友香の方から連絡が来るとは思わなかったな。

 時間が経って、俺が自分の意思じゃなくて強要されて

 女装写真を撮られたって言う事が判ってもらえたんだろうか。

 

 でも、Fクラスに試召戦争を仕掛けた日に、しかもFクラスの隣の教室に来いとは……

 たしかに昨日Fクラスの奴等がバカやったらしくて誰も近付かないだろうが

 万が一、姫路やムッツリーニが出てきたら……

 坂本たちが何処に居るのか、きちんと確認してからでないと教室からは動けないな。

 たった六人とは言え、俺が勝てそうに無い戦力が残ってる内は、迂闊に出るに出れない。

 

「根本君、伝令が戻ってきたわよ」

「坂本たちは今何処に居る?Fクラスの教室内か?」

「いや、今は四階の空き教室に立て籠もっている……すでに五人ほど補習室送りにされた」

 四階に?なんでFクラスを放棄して四階に居るんだ?

 立て籠もるにしても三階と四階の違いは何なんだ?

 

「教室の扉は二箇所あるはずだが二箇所とも開いているのか?」

「片方は机とか椅子のバリケードみたいなもので塞がれているな」

 そうか、連中の教室だと卓袱台だからバリケードが作れないからか。

 隣の教室は中が使えない状態だろうし……それで四階の空き教室へ移動していたのか。

 あとは姫路とムッツリーニの所在か。坂本たちはそこから出て来れないだろうしな。

 

「四階の教室に全員居るのか?」

「うん。入り口は島田と姫路で固めてて奥の方に坂本たちが居る」

「六人全員が教室内に居るのか?ちゃんと顔は確認したんだろうな?」

「ああ。確かにFクラスの六人居たよ。顔も見たし」

「そうか」

 教室内に閉じ込めておけば、大丈夫だろう。

 ……って、そう言えば負けた時は確か、窓から保健体育の大島と

 一緒に入ってきたムッツリーニにやられたんだっ!!

 

 友香との待ち合わせは坂本たちが立て籠もっている教室の真下か。

 まさか、また上の教室から入る気なんじゃないだろうな。

 

「保健体育の大島は坂本たちと一緒に居たか?」

「いや、中に居た先生は数学の木内と世界史の田中の二人だけだな」

 今日は四階の空き教室でやり過ごして明日ムッツリーニを使うつもりなんだろうか。

 

 くっそー、携帯が使えれば……戦争中は授業と同じ扱いだから使うとカンニング扱いになるけど

 誰も見てなければ友香に連絡取るんだが……

 あ、そう言えば友香の新しい携帯の番号は、まだ知らなかったな。

 やっぱり会いに行かないとダメか。それもあんまり遅くなると怒って帰っちまうんじゃ……

 

「よし、近衛部隊を動かすぞ」

 教室の周りにはBクラスの大半が居る筈だから連中も早々簡単には出てこれないだろ。

 三階の廊下を近衛部隊で固めておけば、俺が離脱する時間稼ぎにはなるだろうし……

 窓からの侵入については空き教室に入った時にすぐ確かめて

 窓が開いていたら、寒いだろとか言って、話をする場所を変えてもらうしかないな。

 

「連中が篭城しているなら姫路も居るし、そう簡単に落とせないのでは」

「今日はダメでも明日あいつらに補給テストを受けさせないために今の場所で確実に動けないようにしておいた方が良いだろ」

「そうか、わかった」

 

 

--Fクラスの前の廊下(三階)

 

 教室の中は友香一人だけかな。

 さすがにクラスの連中と一緒に行くのはまずいか。

 一応、あいつらがまだ四階(うえ)に居るか確認しておくか。

 

「おい、坂本たちがまだ一箇所に居るか確認してきてくれ」

「わかった」

 

 

「坂本たちFクラスの連中は全員、上の空き教室に立て籠もっているよ」

「そうか……俺は、ちょっとこの教室の中がどうなってるのか見てくる」

「根本君、一人で大丈夫?」

 近衛部隊の一人が聞いてきたけど……あんまり心配されてる感じがしないな。

 

「ああ、Fクラスの連中が昨日、この中で何やってたか見るだけだから」

 俺はそう言うとガラッと扉を開けて中へ……

 中は薄暗いな……電気が点かないのか。

 友香は何処に居るんだ……教壇側の窓の方で椅子に座ってる誰かが居るな。

 

「根本君、こっちへ来てくれるかしら」

「ああ、今行く」

 間違いない、友香の声だ。

 とりあえず窓は……全部閉まってるな。保健体育の大島の姿も見えない。

 さすがに上で足止めされてるからムッツリーニも来れないだろ。

 しかし焦げ臭いな。昨日ここで何やってたんだ……Fクラス(バカ)のやる事はわかんねぇな。

 

「友香、話って何だ?」

 椅子に座って向こうを向いてるから判りにくいけど、少し小柄な気がする。

 とりあえず教室の中には彼女一人しか居ないみたいだから近付いてみるか。

 

 そして俺が肩に手を置こうと差し出した時……スッと立ってこちらを向いた顔は……

 

「きっ、木下!?でもスカートをはいているからAクラスの木下か?」

「残念じゃが姉上ではないぞ。木下は木下でも秀吉じゃ」

 そしてウィッグを取り、俺に向かって申し訳無さそうな顔を……

「すまんのぅ。じゃが、おぬしも姦計をめぐらせすぎた報いじゃ」

 そう言うと木下は、すぅ~っと大きく息を吸い込むと

 俺の鼓膜を破ろうと思ってるんじゃないかというくらいの大きな声で

 

『今じゃっ!!』

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。