僕とウチと恋路っ!   作:mam

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僕とウチと私part02

 

 

「ふぁぁ」

 うーん、眠い。

 昨日は連休明けすぐなのに補習がたくさんあって

 その後、美波の家で夕飯を御馳走になり

 自分の家に帰って姉さんが居ないから日付が変わるまでゲームしてたからなぁ。

 そろそろ期末試験も近いから勉強しないといけないんだけど。

 

 そんな事を考えながら校門を抜けて校舎の方へ歩いていると

 

「明久ぁっ、半分頼むっ!」

 正面から雄二が走ってきた。

 

「雄二、朝から頑張ってるね」

暢気(のんき)な事言ってるんじゃねぇっ!お前も追われる方だろうがっ!」

 何の事を言ってるんだろう?

 

「吉井もいるぞっ!」

「まとめて裁きに掛けろっ!」

 雄二の後ろから黒装束の塊が走ってきていた。

 仕方なく雄二と一緒に走り出す。

 

「なんでこっちに逃げてくるのさっ!?」

「知るかっ!逃げ道の多い方へ走っていたら、お前がバカ面下げて歩いてたんだろうがっ!」

 追ってくるのはざっと十人ってところか。

 昨日の福村君だけでは、いけにえが足りなかったようだ。

 

「雄二、どうするのさ?」

「そうだな……こういうのはどうだ?明久がここで立ち止まる」

「うん」

「そしてそのまま捕まってる間に俺が逃げる」

「貴様が止まれっ……息の根ごとっ!!」

 雄二に蹴りを繰り出したが、かわされた。

 

「あぶねぇっ、何しやがるっ!」

「もっとまともな作戦考えろよっ!」

「ちっ、しかたねぇな……ん、あれは……」

 雄二が見ている方向には……あのボーイッシュな感じは工藤さんかな?

 

「おーい、工藤」

「あ、吉井君に坂本君、朝から頑張ってるねっ」

 普通に走っているだけならね……後ろから変な集団が追いかけてこなければ。

 

「すまんがちょっとスパッツ見せてくれないか?」

(ちょっ、ちょっと雄二何言ってるのさっ!?)

(スパッツ程度なら問題ないだろ。それよりお前鼻血とか出すなよ?)

 

「吉井君も見たいのカナ?」

「是非お願いします」

 即答する僕。

 

「うん、いいよ……(ピラッ)」

 しかも良いのっ!?

(これであのバカどもが立ち止まってる間に俺たちは逃げるぞ)

 

 しかし……工藤さんがスカートをめくると……健康的な太ももしか見えなかった。

 

「きゃあぁぁぁぁぁっ、ボク今日朝練無かったからスパッツ履いてきてなかったんだっ」

 

 とりあえず追いかけて来ている黒装束の集団はその場でフリーズしていたけど

 僕と雄二も鼻血を出して、その場で止まってしまった。

 工藤さんの近くの茂みの中からも大量の血が吹き出てきて

 ……ムッツリーニが倒れていた。

 

 その後、校舎の中から出てきたFFF団10名により僕ら三人は連行された。

 

 

『これより……二-F異端審問会を開催する!』

 

 僕と雄二とムッツリーニは手足が縛られて芋虫のようにFクラスの畳の上に転がっていた。

 

「罪状を……簡潔に結論だけを述べたまえ」

「はっ……吉井と坂本は昨日結婚式を行っていたので羨ましいであります」

「土屋は昨日如月ハイランドにてAクラス工藤愛子とデートをしていました」

「ふむ……三名とも異論は無いな?」

「異論も何も僕たちはタキシードを着てステージの上に立っていただけだよ」

「そうだ。別に何もしていないぞ」

「…………写真を撮っていただけ」

 

 須川君が福村君の方を見て

 

「本当か、福村?」

「そう言えば、そうかな……確かに結婚式は割りと早い段階で人が倒れて終わりになったし」

「ふむ……ならば一番罪が重いのは妹とはいえ異性と手を繋いでいた福村だな」

「ちょっ、ちょっと待てっ。俺は昨日もっ!?」

「追加だ……吉井たちの冤罪は全て福村のせいとし、ジャーマン五回にする」

「うぎゃぁぁぁぁ」

 福村君には悪いけど……

 そのうち飼ってるペットがメスとか言う理由でも処刑されそうだ。

 

 姫路さんは今日も身体の調子が悪くて休みと言う事だった。

 

 

 

----お昼休み

 

 今日は姫路さんが居ないので、いつもの五人と……

 珍しく霧島さんと工藤さんもお昼を食べに来ていた。

 

 美波とおかずの取替えっこをしながら……

 

「姫路さん大丈夫かな?……身体もあんまり丈夫な方じゃないし」

「そうね、心配は心配なんだけど……」

 僕の顔をチラッと見ながら美波が、僕のシューマイと自分の唐揚げを交換していた。

 

「……瑞希は強い子。きっと大丈夫」

「なんだ、翔子。何か確信でもあるのか?」

「……ない。そんな気がしただけ」

 

「やっぱりメールして今日にでもお見舞いとか行った方が良いんじゃないのかな?」

「待て、明久。お前と島田が行くのは逆効果だ」

「なんでさ、雄二?」

 僕が昨日姫路さんに何か変な事を言って身体の具合がおかしくなったのなら

 なおさら謝りに行きたいんだけど……

 

「そうね、坂本の言うとおりよ。ウチも逆の立場だったらと思うと……」

 あれ?昨日姫路さんも逆がどうのって言ってた気がする。

 

「そうじゃな……姫路には酷かも知れぬが他人が口を出せば出すだけ姫路を苦しめる事になりかねん」

「…………(コクコク)」

「ボクもそう思うよ」

 とりあえず、みんなの意見をまとめると様子を見ていろと言う事かな?

 でも本当に困ってるなら何か手伝える事はないのかな。

 

「アキ……その顔は何かしたいって思ってるでしょ?」

「えっ!?何で判ったの?」

「そりゃ判るわよ。入学してから、ずっとアキを見てるんだから」

「そうなの?」

「そうよ……それなのにアキったら随分ウチを待たせてくれたわね?」

「ごめんなさい」

 よくわかんないけど謝っといた方がいい気がした。

 

「明久。島田との事で俺たちに何か報告する事があるんじゃないのか?」

 ニヤニヤした顔で雄二が聞いてくる。

 

「そうじゃな。話題を変えるためにも一つ聞かせてもらえぬか」

「…………聞くだけ聞こう」

 秀吉とムッツリーニまでニヤニヤしている。

 

「べっ、別に何も無いよっ」

「そっ、そうよ。アキがウチにずっと隣に居てくれって泣いて頼んだくらいで」

 ええっ、それって僕が泣いて頼んだ事になってるのっ!?

 確かに僕から、お願いはしたんだけど……

 

「……雄二も私に泣いて頼むべき」

「うぎゃぁぁぁ、しょっ、翔子っ!俺の顔をつかむなっ!」

 雄二にいつものようにアイアンクローを決めている霧島さん。

 よほど雄二の頭が霧島さんの手にジャストフィットしているんだろう。

 お似合いのカップルだね。

 

「ムッツリーニ君もボクに何か、お願いは無いの?」

「…………無い」

「ムッツリーニ君がお願いしてくれたらボク、スパッツ履くのやめようかな~と思ったのに」

「…………くっ、自分を買いかぶるなっ。工藤」

「えー、今朝三人とも鼻血出していたのに」

 

 ぴくっ……美波の動きが止まる。

 ぴくっ……霧島さんの動きも止まった。

 

 …………ヤバい、久しぶりに僕の危険察知能力が警報を出している。

 

「そっ、そうだ、僕ちょっと用事が……」

「あっ、明久。奇遇だな、俺もちょっと用事が……」

 

 ……ガシッ

 僕は美波に右ひじを決められている。

 

 ……ガシッ

 雄二は霧島さんに左ひじを決められている。

 

「アキ、何処に行くの?ウチの隣にずっと居てくれるんじゃないの?」

「……雄二。愛する妻を置いて何処へ行くの?」

 

 そして……

 

「「愛子、三人って土屋と後の二人は?」」

 

「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」」

 

 

 

 

----次の日

 

 

 ……ガラッ

 

「おはよう」

 教室に入ると美波と……姫路さんが何か話をしていた。

 

「あ、おはようございます。明久君」

「アキ、おはよう」

「美波、姫路さん、おはよう」

 

 姫路さんの目は、すごく腫れている様に見える。

 よほど辛い事でもあったんだろうか。

 

「姫路さん、大丈夫?すごく目が腫れている気がするんだけど……」

「心配掛けてごめんなさい。でも、もう大丈夫です」

 笑顔で答えてくれる姫路さん。

 でも何処か無理してる気が……気のせいだと良いんだけど。

 

「アキ、ちょっといいかしら?」

「うん。いいけど、なに?」

「あの、一緒に屋上まで行ってもらってもいいでしょうか?」

「うん」

 三人で屋上へ……

 

 

「あの……明久君に聞きたいことがあるんです」

「なに、姫路さん?」

「美波ちゃんのこと……一生手離さないって美波ちゃんと私の前で誓えますか?」

「ええっ!?それ、今答えないとダメ?」

「はい、ダメです……じゃないと私、また気持ちが揺らいじゃいます」

 姫路さんの気持ちってなんだろう?

 でも、これはしっかり答えないと美波にも姫路さんにも……

 

「わかったよ…今ここで誓います。僕は絶対に一生美波を手離す事はしないし泣かすような事もしない」

「それでこそ……私が…大好きな明久君、です」

 涙をこぼしながら笑顔で言ってくれる姫路さん。

 

「でも勘違いしちゃダメですよ?幼馴染として…友達として好きなんですから」

「うん」

「勘違いしたら美波ちゃんに悪いですからね」

 そして美波の方に行き……何か小声でささやき……

 

(もし明久君を泣かすような事をしたら……その時、私は本気になりますからね?)

「ありがとう……瑞希」

 

「あと悪いんですけど……明久君を少し借りてもいいですか、美波ちゃん?」

「ええ……ウチは先に教室に戻ってるわ」

「ありがとうございます」

 そう言って美波は門扉の奥へ……

 

「明久君?」

「なに、姫路さん?」

「少し……胸をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「僕ので良ければいくらでも」

 

 姫路さんはしばらくの間……屋上で泣いていた。

 

 

 

 

----放課後

 

 今日も美波の家に夕飯を御馳走になるために一緒に帰る途中で……

 

「アキ?」

「なに?」

「ウチら絶対幸せになろうね」

「うん」

「みんな、ウチらのこと応援してくれてるし」

「そうだね」

 なんだかんだ言っても、みんな僕たちのことを見守ってくれてる気がする。

 

「アキ……ウチのこと絶対離しちゃダメよ?」

「もちろんだよ。絶対離さない、何があっても」

 

 美波がそっと……僕の手を握ってきた。

 

 


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