嘆きの牢獄で保護したスク水幼女サリジェちゃんともに、軽く牢獄を調査する。
とはいえ、牢の扉を開けるのに必要な最後の鍵を所持していなかったので、奥へは行けなかった。
「城を探せば、ここの鍵もあるかもしれないか」
この牢獄を管理してたのはデスタムーアかその手下だろうし。
「お城?」
「これから案内するよ。……といっても廃墟っぽいから、あんまり期待しないでね」
サリジェちゃんのこともゆっくり聞きたいし、城へ戻ることにした。
スラオウなら鉄格子の隙間から入って調査できそうだけど、それはまた次回にしよう。
城までの帰り道、敵モンスターと遭遇。
因縁のスライム8匹のグループだったが、スラオウの新技、チラッと見ただけではどうやって蹴ってるのか全くわからないスライムの回し蹴りと、サリジェちゃんの参加もあってリベンジに成功することができた。
俺は普通に攻撃してただけなのであまり感慨はわかなかった。
けれど、サリジェちゃんのことが少しわかった。サリジェちゃんの武器が柄のついた大きな算盤だったのだ。
「そうか。サリジェちゃんは商人だったのか!」
ドラクエ3の女商人。それがサリジェちゃんの正体。
着ているスクール水着は『まほうのビキニ』らしい。
魔法のビキニ。ビキニじゃなくてスクール水着だ、名前と違う! そう思うかもしれないが、この魔法の水着は他の魔法の装備品と同じく着用者によってサイズを変えるだけでなく、その姿までも変えるそうだ。
……うん。覚えている。
女性専用で、3だと装備したキャラのグラフィックを変更させた。職業毎にタイプが違うグラフィックに。
女勇者がビキニだったり、女遊び人が女王様だったり。
そして、女商人はスクール水着。しかも浮き輪付き。
なるほど。水泳の授業中に泳げないことに絶望して、この狭間の世界にきちゃったわけじゃないのね。
「けど、さすがにその格好でうろつくのは……」
オリジナル版だと女武闘家や女商人の最強装備だったり、携帯機版のだったら呪文のダメージを軽減したりしたはずだけどさあ。街中うろつくのは恥ずかしくない?
「着ていると、商品の『あぶないみずぎ』が高く売れる」
サリジェちゃんが着たって勘違いしてお金出しちゃうってこと?
って、危ない水着を売ってるのか。
危ない水着といえば、魔法のビキニの下位バージョン。グラフィックが変わる以外の特殊効果はなく、防御力も鎧の中で最低の1。
しかし、値段は店売りのアイテム中、最も高価な品。
それをさらに高く売ると?
大金持ちの変態さんってのは、本当にいるもんなんだなあ。
俺はそんな高いの、いくら金あっても……買っちゃうかもしれない。嫁さんがどんな水着姿になるか、すごい気になってきた!
「でもさ、そんなことしてたら危ない目に会うよ」
お客さんが俺みたいな紳士ばかりとは限らないんだからさ。
「大丈夫。わたしは強いから」
仲間になるとそのステータスも見ることができるみたいなので、とりあえずだけど仲間扱いのサリジェちゃんのステータスを確認する。
……レベルが30を超えてました。ぅゎょぅ(略)。
「そ、それでもさ、集団で襲われたらさ」
3の商人にはグループに対する攻撃ないからきついでしょ。破壊の鉄球はさすがに持ってないようだし。
俺とスラオウの二人がかり程度じゃ勝てそうにないけどさ。
「その時はきっと勇者様が助けてくれる」
「勇者様?」
「知らないの? 勇者オルテガの子にして、魔王バラモスを倒した勇者様を!」
やっぱり3の世界の娘みたいだ。
もうバラモス倒しちゃってるのか。
急にサリジェちゃんがキラキラした目になったので、知らないなんて言ったら長々と説明されるか、怒られるんだろうな。
「き、聞いたことはあるけど」
「わたしはその勇者様のパーティの一員だった」
まあ、店では売ってない魔法のビキニを装備して、レベルも高いんだからそうだとは思ったけど。
でも、だった、ね。もしかして……。
「わたしはある理由から勇者様のパーティを離れることになってしまった」
「……街を作るためだろ?」
サリジェバーグ……あれ? サリジェバーク……どっちが正しいんだったっけ。
あのイベントは普通、レベル1の商人を連れて行くんじゃないの?
「……それは知っているのね」
「もしかして、街の人にクーデターを起こされたことに絶望した?」
つい言ってしまった。聞いてからミスったと思った。落ち込ませちゃうかもしれない。
「クーデター? あれは働きすぎて過労で倒れたわたしを心配して、もう充分だよと街の人がわたしを解任しただけ」
「過労で倒れた?」
「そう。回復するまで療養することを強要された。抜け出して無理をしないように牢のような部屋で」
うーん、その辺はドラクエ3と違うのか。
さすがにこんな幼女が過労で倒れるほど一生懸命に街のために頑張っているのに、クーデターなんかして罪人扱いして牢に押し込んだりはしないか。
牢獄の女商人が陵辱されるっていう18禁同人のような展開はなかったのか。ちょっとほっとした。
「じゃあ、なにに絶望したの?」
「街の開発から解放されたわたしを、勇者様が迎えにきてくれるのを待っていた」
そうそう、リメイク版だと再び仲間にすることができたんだよね。オリジナル版だと二度と仲間にはできなかったけど……。
「でも……勇者はきてはくれなかった」
まさかオリジナル版のドラクエ3の世界? でも、後半だと商人はちょっとキツイから放置したままなのかもしれない。
いくらリメイク版だと商人でも戦えるぐらい強い装備が増えていても、抜けている間に別のメンバーを育てちゃっているんじゃないかな?
「その内に、勇者様は魔王バラモスを倒してしまった」
俯きながらになってしまうサリジェちゃん。
いや、でもまだラスボスもいるから!
「それでも勇者様は旅を続けているらしく、またわたしを必要としてくれるかも知れないと待ち続けた」
ほら。まだ勇者が迎えにきてくれる可能性が……って、こっちの世界にまではちょっと無理か。
なんて声をかけていいか迷っている内にサリジェちゃんの話が進む。
「なのに、勇者様が飛び込んだギアガの大穴が閉じてしまったと聞いた」
……もうゾーマ倒しちゃったのか。
そのせいでアレフガルドから帰ってこれなくなっちゃってるんだろうな。
「きっとそのせいで帰ってこれなくなっちゃっているんだよ」
「だから、その穴を再び開けるため、伝説の黄金のツルハシを探している」
なんて勘の鋭い娘。でも、いくら商人に穴掘りの特技があっても、ギアガの大穴掘り直すのって無理あるんじゃない?
けど、さすがにそうは聞けなくて。
「そのために危ない水着を売りさばいているの?」
「ええ。お金はかなり貯まったのだけど、肝心の黄金のツルハシの情報がまったく手に入らない」
なるほど。それに絶望しちゃったのか。
……『おうごんのつるはし』か。ドルアー……じゃなくて、ドラクエ6のアイテムにもあった。こっちで探せば見つかるかもしれないな。
まあ、見つかったとしても、ギアガの大穴も行くの大変だったはずだけどね。サリジェちゃん、ラーミアに乗れるのかな。勇者の一行だったしその可能性あるのか。
それ以前にこの世界から脱出する方法がまだ確認できてないけどさ。
「勇者様……」
涙を滲ませるサリジェちゃん。……さっきからの様子だと勇者に惚れているのかも。
無事に帰城することができたら、城で待っていた美少女二人と目玉にサリジェちゃんを紹介する。
サリジェちゃんの服装に俺が睨まれてしまった。いや、俺のせいじゃないから。
この世界に囚われてしまったという同じ境遇の二人とサリジェちゃんはすぐに打ち解けたようだった。
俺の方はタムさんに確認。
「この狭間の世界に絶望してやってくるのって止められないの? これ以上こないようにできない?」
食糧供給が不安な状況で人数ばかり増えるのも心配だ。
「そのように調整された世界じゃ。もはや今のわしの力ではのう……じゃが、安心するがよい。それなりの能力を持つ者でなければ、絶望してもここには来れぬように調整しなおしておる」
「調整って、なんでそんなことを」
「強い人間を絶望している内に部下にするためじゃ」
なるほど。絶望している人間ならそんなに危険もなく手下にできるのかな。……ヤケ起こしそうな気もするけど。
「フォズちゃんはともかく、リッカちゃんも強いの?」
「あの娘たちは調整中に引っ掛かった者たちじゃ」
「なんて不運な……」
もっとマシな理由があれば説明もしやすいのに。たまたまとか偶然ってのはあんまりでしょ。
「サリジェちゃん、俺たちの仲間になってくれない? 元の世界に戻れるまででいいからさ」
「……あてはあるんですか?」
「サリジェちゃんと会ったあの牢獄の奥にこの世界から出られる穴があったはず。そこからなら移動魔法も使えると思う」
まだおぼえていないけどね。
「このお城に鍵があるかも、と言ってました」
「元々この城は、大魔王デスタムーアの城。今じゃ、こんなになっちゃっているけどさ」
タムさんを指差す。
「これが……元大魔王?」
疑わしげなサリジェちゃん。
「それにデスタムーアなんて聞いたことがありません」
「サリジェちゃんのとこの世界の大魔王はゾーマだったもんなあ。もう倒されているっぽいけど」
「大魔王ゾーマ? もしかして勇者様が?」
「うん。たぶんね。そのせいでギアガの大穴が閉じてしまって、勇者は君たちの世界に帰れなくなったんだと思う」
俺の話を聞いてサリジェちゃんが目を閉じる。勇者の勇姿を思い浮かべているのかな。
「……そうですか。ならばなおさら、ギアガの大穴を再び開けないといけません」
どこか影のあった今までとは違って、決意のこもった眼差しのサリジェちゃん。
あっさり絶望から復活しちゃったっぽい。
「元の世界に戻るためにわたしに力を貸して下さい」
「うん。よろしくね」
サリジェちゃんが仲間になった。
湯船の高さ調整のために風呂場にむかう。
その豪華さにサリジェちゃんも驚いていた。
「おもしろい仕掛けです。お湯が出ている大本は壺でしょうか。見てみたいですね」
さすがに商人ぽいな。
けど、風呂場でスク水ってなんかそういうプレイっぽい。
興奮してきそうな気持ちを堪えて、お湯を抜いた浴槽に入り、異次元倉庫からちょうど良さそうな岩を置いていく。
色々試したので、異次元から指定の場所に直接出せることもわかっている。条件は俺の手の届く範囲。
倉庫に収納する時の条件は、俺が触れていること。持ち上げる必要はない。あと、所有者が俺か、もしくは特にいないってのも条件っぽい。仲間のだったら仕舞えるのかな?
「これでどう?」
美少女三人に仕上がりを確認してもらう。
お湯なしの浴槽に入って、座ったり岩の手触りを確認する三人。
ふち側は浅めにセッティングしたので大丈夫なはずだ。
「いいと思います」
「じゃあ、本当に入って確認してみて」
「それは作業で汗をかいたコーイチさんからでは?」
「俺は手紙を見るから」
作業中に皇一からの手紙が来ていることに気づいた。早く読んでみたい。
「それに、サリジェちゃんもこんなことになっちゃって疲れているでしょ? ここのお風呂、温泉使ってるから疲れとれるよ」
って言ってたら、幼女三人の入浴シーンを妄想しそうになってしまったので、お湯のハンドルをひねって温度を調節して、逃げるように浴場から出た。
妄想素材の場所と人物が目の前に揃ってるんだもんなあ。一人はスク水だし。
皇一からの手紙を倉庫から取り出して確認する。
他に写真が収納されていた。
なんだろうと思ってその写真を見る。
結婚式の写真だった。
「えっ?」
思わず声を出して二度見。
俺によく似た二十代くらいのタキシードの男とウェディングドレスの数名の美少女が……いや、数十名の美少女が写っていた。
恋姫†無双の世界。
それが皇一が送られた世界。
現在はその最終作、萌将伝の主人公のようなポジションで頑張っているとのこと。ちゃんと主人公である北郷一刀も健在で仲良くやっているらしい。
「四十九人とか……」
指差しながら数えるのも疲れる人数と結婚? 俺の嫁さんの七倍の数?
本当に俺と同じ存在?
ヒロイン全員とじゃないのはBBA、いや非処女をディスってるからか。その辺の好みは同じ存在っぽいけど!
なにか得体の知れない敗北感に打ちひしがれながら、手紙を読む。
こっちの状況も知りたいからと、カメラと取説も倉庫に入れてくれたらしい。
カメラか。あっちの世界は無茶苦茶だなあ。
……カメラか。
みんなは今、入浴中なんだよな……。
よからぬ考えが一瞬、そう、わずかにほんの一瞬だけ頭をよぎるがすぐに思いとどまる。
だってさ、写真撮れたらそのままカメラごと返却してくれってことはさ、現像はむこう頼みってことでしょ。
現像したら女の子の入浴シーンだったなんてことになったら、怒ってもう食料くれなくなるかもしれないよね。
そんなことはできないでしょ。
「元の持ち主?」
手紙から視線を一旦、自分の股間へと移した。
むこうの俺もやっぱり、ムスコがダブルスになったのだが、それは元々は女の子に付いていたものらしい。だから、とりたいけどとりたくない、と複雑な思いもしてたようだ。
けど、俺のこれは道場でクリア特典選んだら増えちゃったもんだし、DALKに付いている女の子なんていなかったよなあ?
恋愛多体神ミラの中にもそんな娘はいなかったはずだし……いや待てよ?
もしかしたら? ……でもあれは神器だし……まさかね。
手紙は長くなったから、と皇一の二周目が始まったあたりで終わった。続きが気になる。
それにしても……術をとくためとはいえ、意識のない女の子を無理矢理とか……本当に俺ですか?
まあ、今は愛し合っているようだし、気にしない方がいいか。
カメラと説明書を確認することにしよう。
スポンサーであるあちらさんが気に入るような写真撮らないとね。
「お風呂、空きましたよ」
そう告げにきた湯上りのフォズちゃんが可愛かったので思わず二、三枚撮ってしまう。ええと、何枚撮りのフィルムだったかな?
俺も風呂に入って、高さの調節や濡れた岩肌を確認した。
うん。いい感じだ。
「あとでタムさんも撮ろうか」
ボウル風呂のタムさんを眺めながらそんなことを考えた。
風呂から出たら、サリジェちゃんがフォズちゃんに6仕様の商人に転職させてもらっているところだった。
ステータスを確認したら元々商人だっただけあって、熟練度は既にマスターレベルの星×8。
……元々パラディンだったのに俺なんて……。
食事の前にみんなにカメラの説明をして、撮影。
あんまり驚いてなかったところを見るとドラクエ世界にもカメラってあるのかな?
そういえば、リメイク版ドラクエ4だとアリーナのブロマイドって出てきたか。しかも隠し撮りの。……あのザラキマニア、実はストーカーじゃね?
美少女やタムさん、スラオウを撮ったら今度は集合写真。
俺やタムさん、スラオウが代わる代わるシャッターを切ったところでフィルムが尽きてしまった。なんだか楽しかった。
みんなも最初は緊張していたけど、途中から笑顔に変わっていたしいい写真が撮れたと思う。焼き増ししてくれるよう手紙で頼もう。
女の子が増えたので、寝室は別になってしまった。
ベッドや布団は城を探索していたら見つかったらしい。
手紙を書いて、カメラとともに倉庫に収納してすぐに寝てしまった。
朝起きたら、スラオウを枕にしていた。大きさといい、感触といい、ピッタリの枕だった。
……顔がスライムの涎に塗れることを除けばだけど。
「いい夢見ただ」
枕にされた割にスラオウは上機嫌だった。どんな夢見たのかな。
今日は城をもっと調査することにする。
あの牢獄の奥にいくために。
「タムさん、鍵があったか覚えていない?」
「ふむ。……思いだせん。すまんのう、この姿になるのに最後の力を使ったせいで記憶もけっこう失ってるようじゃ」
あいかわらず頼りにならない元魔王だ。
「鍵は見つからなかったか……」
一日探しても鍵は発見できなかった。
「人手が足りなすぎ」
サリジェちゃんの指摘ももっともだ。某ドームやなんとかビル数個で例えられそうな城の巨大さに対して、こっちの人数はわずか四名。あと二匹。
やはり、もう少しスライムを仲間にしなければいけないか。
けれども収穫はあった。
「キメラの翼と剣。いや、刀か?」
宝箱の中からキメラの翼と、武器庫の奥の隠し部屋から日本刀っぽい刀。
刀の方は読めない文字や魔方陣の書かれた紙が千社札のようにべたべた張ってある。封印されているっぽい。妖刀だろうか?
「ごめん、わからない。装備できるのはコーイチ。わたしには装備できないみたい」
サリジェちゃんが鑑定してくれてたけど、くわしいことはわからなかった。呪われているかどうかだけでも知りたかったけど仕方がない。
「キメラの翼、か」
移動魔法ルーラと同じ効果を持つマジックアイテム。行った事のある場所へ瞬時に移動できる道具。
ただし、一度使用するとなくなってしまう消費アイテム。
見つかったキメラの翼はたった一個。
途中まで試してみたら、行き先のウィンドウが表示されたのでそれを確認してからキャンセルする。
「ショートラムはあって、日本がないとか」
表示された行き先は、まおうじじょう、なげきのろうごく。
べつせかい、となっている別ページにショートラム。
それだけ。
日本の地名は表示されなかった。
「そこはほれ、ダークドレアムを倒す前に帰られては困るからのう」
「やっぱりタムさんのせいか」
「わしが受け継がせた力のおかげで、この世界以外の世界にも移動できるのじゃぞ」
喜んでいいんだか……。
ロリっ娘たちに試してもらうも、選択肢が出るどころか使うことができないと、すぐにわかってしまうらしい。
「使えたらいったんむこうに帰ってから、キメラの翼を人数分買ってこっちに戻ってきてもらうのに」
「ごめんなさい」
フォズちゃんが謝る。
「いいよ。タムさんのせいなんだし。ルーラも同じなんでしょ」
こくりと頷くロリ大神官。
「タムさん、この娘たちが俺みたいに移動魔法とかアイテムで別の世界に行くことってできないの?」
「できんこともない」
それを聞いてすぐさま、サリジェちゃんがタムさんを捕まえて顔の前に持ち上げる。
「教えて!」
「か、簡単じゃ。わしの一族になれば、この世界は移動魔法を制限したりはせんわい」
「タムさんの一族?」
「魔物になれと?」
「そんな……」
サリジェちゃんがタムさんを握る手に力を込める。
「他の方法は?」
「ないわい」
落胆を隠せない少女たち。
「なにを落ち込んでおる。簡単じゃぞ、コーイチの妻になればよいのじゃ!」
「え!?」
「我が息子の妻ならばわしの一族じゃろ」
親戚ならばいいの?
けどさ。
「そんなこと言われても、俺妻帯者なんですけど」
「コーイチさん、結婚してたんですか?」
驚きの表情を見せる美少女三人。
「言わなかったっけ? 可愛い嫁さんたちが俺の帰りを待っているんだ」
左手薬指の指輪を見せる。ドラクエ5でも結婚指輪ってあったからわかってもらえると思う。
「お嫁さん……たち?」
「うん。七人の可愛い嫁さん」
早く会いたい。
みんな元気だといいなあ。
「ならば今さら二、三人増えても問題はないじゃろ」
「大有りです!」
みんなになんて説明すればいいのさ。
帰るために嫁を増やしたなんて、怒られるでしょ。
「魔王子ともあろう者がお堅いのう」
「身の守りが強化されてますんで。あと魔王子やめて」
キメラの翼での移動先の表示が魔王子城になっててへこんでるんだからさ。
「なら、コーイチさんが使って下さい」
「そうしたいのは山々なんだけど、むこうの世界にはキメラの翼、売ってないんだ。だから、帰らない」
うん。みんなをほっておいて帰るなんてできないでしょ。
そんなことしたらそれこそ嫁さんたちに怒られる。
みんな黙ってしまった。
重い雰囲気に耐えられなくなったので、刀の方を調べることにする。
たしかタムさんが俺は呪われないとか言ってたし、もし妖刀だったとして俺が暴れても、サリジェちゃんなら余裕で倒せるだろう。フォズちゃんもいることだし。
それで死んじゃったとしても、道場に戻れるから、さっきのことを相談できる。
うん、問題ないな。
俺は丁寧に刀に張られていた御札っぽい紙を剥がしていく。
全部綺麗に剥がせたが、なにも起きなかった。大丈夫なのかな?
「みんな、ちょっと離れてて」
刀を抜こうとした時にそれは起きた。
俺の手にあった刀が消えうせて、目の前に一人の女性が現われたのだ。
長い黒髪の美女。
女侍のようなその姿。
見覚えがあった。
会ったことはない。だがその姿は知っていた。
「もしかして……日光? 聖刀日光?」
なんかやばい代物を見つけてしまったっぽかった。