USOくえ   作:生甘蕉

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12話   痕

 嫁や仲間たちと相談し、とりあえずの目標を城下町づくりと定めた俺たち。

 だが、俺にはもっと悩ましい案件が残っていたわけで。

 

「デート?」

「ぜひ相談に乗っていただきたく」

「わたくしに聞いてよろしいんですの?」

「他に頼れる方がいませんので。あ、ちゃんと嫁さんたちには許可をもらっています」

 キメラの翼でショートラムに舞い戻り、勇者ちゃんとの約束のためにチョルラに泣きついていた。

 

 勇者ちゃんを仲間にする条件が「デートして」という、元魔法使いにとって超難問。

 ハウトゥー本などない状況でこんなことを相談できるのは経験豊富そうなチョルラしかいなかった。

 ……不倫経験のあるシルヴィアという選択肢もないわけではないが、それを知っている嫁さんに疑われたら嫌なので。まあ、年上のマッチョ好きなシルヴィアにとって俺はもはや眼中になさそうだけど。

 

 決して安くない酒を献上した結果、城下町をそれなりに完成させてそこでデートすれば多少のアラは見逃してもらえるのでは? との結論に達した。

 動物園や遊園地でなくてもよかったのか。目からウロコだった。

 そんな所がないのが当たり前の世界だし、各国の城や高い塔等、凄い景色ならたくさん見てきた娘だもんなあ。

 どこへ連れていけばと悩みまくったが、なんとかなりそうだ。

 その他色々とアドバイスを頂いた。俺も酔っていたのであんまり覚えていないが、なんとかなるだろう。

 

 

 町づくりのために人を集めなければならないので、俺たちはドラクエ4の世界となった現実世界の調査を続けることにした。

 コーミズ村で情報を集めた結果、どうやらドラクエ4本編よりも何年も前の世界らしいことが判明する。

「せっかくのお誘いだけど、俺はこっちでまだ調べたいことがあるんだ」

「そうか、残念だよエド」

 俺が狭間の世界へと誘い、断れた相手はエドガン。職業は錬金術師。

 そう、ドラクエ4の主要キャラ、モンバーバラの姉妹の父である。

 

 そんな名前の錬金術師だから、ついエドって呼んじゃっている。

「さまよう鎧になっちゃった弟さんとかいない?」

「なんだよそれ?」

 さすがにそれはないか。

 でも、髪は金髪だったりするんだよなあ。

 ……娘たちとは血の繋がりはないようだ。

 事故だかモンスターに襲われたかで全滅した旅のジプシーの生き残りを引き取ったとのことらしい。

 

 そのマーニャとミネアはまだ小さかった。とても可愛らしい。

 本編開始の何年前なんだろう?

 

 

 DALK世界での俺や、恋姫†無双世界の皇一はその知識を使って主人公が行った行動の少しを代わりにすることでそれなりに過ごすことができた。

 でも、今ならそれ以上のことができるかもしれない。

 ドラクエ4での不幸を未然に防ぐことが。

 偽善かもしれないが、防げることなら防ぎたい。

 ……本編のイベントが始まってから対処するより楽だろうし。

 

 これから起きるであろうドラクエ4での不幸。

 勇者の住んでいた村の壊滅。

 サントハイムの城の人間の神隠し。

 アッテムトの毒ガス。

 ロザリー殺害。

 エドガン殺害。

 あたりだろうか。

 

 勇者の村とサントハイムはピサロの仕業だろうから、ピサロを見つけなきゃいけない。

 ピサロ、リメイク版では仲間になっているけど、そのせいもあって最終的になにがやりたかったのかよくわからないんだよな。

 エスターク復活させたかっただけ?

 エスターク復活してたら手下になって人類の敵になったはずだよね。話してわかってもらえなかったら戦うしかなさそうだ。

 ……ピサロと会うのはもっと強くなってからだな、うん。

 

 アッテムトは鉱山の運営をストップさせなきゃいけないけど、エスタークの復活の邪魔もできるしなんとかしたい。

 

 エドガンは弟子のバルザックに殺されちゃうんだけど、用心するように言っておいた。

 できれば狭間の世界にきてくれれば安心だったけれどそれは嫌らしい。

 研究所になっている洞窟から離れたくないんだろう。

 

 あ、勇者の村を探し出して、村ごと狭間の世界に引っ越してもらおうか?

 あそこなら手出しできないだろうし。

 ロザリーも連れてって保護しようか?

 ……人質みたいでまずいかな?

 アッテムトの人間も狭間の世界に連れて行こうかな?

 ……鉱夫さんたちは出稼ぎとかもいるから意味ないか。

 

 攻略本を読みがら悩む。

 名づけて、本編開始前にドラクエ4クリア計画!

 導かれる必要がない者たち作戦!! もいいかもしれない。

 みんなに相談するには作戦名を決めないとな。

 

 

「町の名前?」

「はい」

 作戦名どころか、まだ町名が決まってなかった。

「城下町じゃ駄目なの?」

「プリンス・オブ・コーイチというのが第一候補になっています」

「勘弁して下さい」

 なにその羞恥プレイ。

「では第二候補のコーイチバークで」

「俺の名前から離れて!」

 サリジェの中じゃ人名を町に使うのが決定事項なんだろうか?

 なにか代案を出さないといけなさそうなので捻り出してみる。

 町……町……モリオウの町とか?

 いや待て。俺の名前だと四部の実質的ヒロインポジションじゃないか? ヤンデレさんも出てきそうだし、パスにしとこう。

 

「え、ええと、タカヤマでどう?」

 俺の名前繋がりでそんな猟奇殺人が起きそうな町名案が浮かんでしまった。

 そういえば新しいのには『りっか』って名前のメイドさんもいたっけ。

 まあ、俺が鬼じゃないんで大丈夫だろう。

 ……第二形態にはなれるらしいけどさ。

 

「……わかりました。町の名前はタカヤマに決定します」

 通ってしまった。意味や由来を聞かれなかったのは少し残念だ。

 皇一に頼んで漫画版でも入手してもらおうかな。

 

 

 町名が決まると、サリジェちゃんの行動は早かった。

 数日で城の周りの土地が整地され始める。

「畑とか牧場の方が先じゃないの?」

「防衛上の観点から考えても、城の周りに畑や牧場等の開けた施設は避けた方がいい」

 大軍が一気に攻めにくくはなるだろうけどね。この城は元大魔王の城なんだし、攻めてくるのは少数精鋭なんじゃないの?

 最終ダンジョンの隣に城下町があったら勇者さんたちは楽になるだろうなあ。

 

「せっかく、『あばれうしどり』を捕まえてきたんだけど飼育はまだ無理か」

 仲間にしたわけではない。

 食材にもなるモンスターを仲間にすると精神的によくない気がするからね。

 

 コーミズ村で牛を売ってくれと頼んだけど断られて、かわりに勧められたのが暴れ牛鳥だった。

 キングレオ付近まで遠征しフィールドで遭遇した暴れ牛鳥をラリホーで眠らせて捕獲したのだ。

 寝返りが攻撃になるようなやつだけど、皇一から投網を貰っていたので楽勝だった。最強武将である呂布を捕獲するために開発されたというそれは、モンスターといえども破ることなどできなかった。

 

 それにしてもラリホーがよく効いた。嫁さんたちがまず魔法使いに転職していてよかった。……さすがに全員一度に魔法使いは危険なので、ミコちゃんとシグルーンに僧侶になってもらっている。

 実験した結果、やはり馬車がないと四人までしかうまく経験値がもらえないようなので、四人ずつのパーティで行動することにした。

 現在は二組がドラクエ4の世界で行動、残りは町づくりやDALK世界で町人の募集を行っている。

 俺がいなくても嫁さんたちだけでちゃんと異世界へ転移できている。タムさんの言っていたことは本当だったようだ。

 転移が使えるおかげで基本的に夜は城に戻ってきているけど、次の村等につきそうな時は帰らずに到達を優先させる。一度行ったことがあればキメラの翼が使えるようになるからだ。

 

「『うしどりにく』は高級食材だと聞きます。繁殖させたいところですが、今日のところは食材になってもらいましょう」

「それしかないか」

 名前をつけないでよかった。

「どんな味がするんだろう? 楽しみだね!」

 元気娘たちのテンションが高い。

 ビーフとチキンどっち寄りなんだか、俺も気になる。

 

 

 リッカちゃんの手でステーキにクラスチェンジした暴れ牛鳥は大変美味でした。

 次は捕獲に失敗して倒しちゃったのも、異次元倉庫に放り込んでおこう。

「胡椒や他の調味料が手に入りやすいのは助かります」

「黒胡椒ってこんなに美味しかったんだね」

 感動するロッテちゃんにサリジェちゃんが頷いている。

 ドラクエ3だと船と交換するイベントアイテムだったっけ。黒胡椒って。

 

 それなりに大きなモンスターだったけど、この人数だとすぐになくなってしまった。

 嫁さんたちに説得されて城下町の町人になりにきた人たちにもふるまったから当然か。ちなみに俺はまだ説得に成功していない……。

 嫁さんたちが連れてきた人たちは、城の一部を解放してリッカちゃんが宿屋をやっている。

 まさにタカヤマの老舗旅館だな。

 せっかくなので、城の名前も変えることにしよう。魔王子城とかいい加減恥ずかしすぎるからさ。ムーアの城のままだったらまだよかったんだけどね。

 

「ツルギ城ですか?」

「カッコいい名前だね」

 剣って意味じゃないけどね。それは説明しない。

「魔王子城のままじゃイメージ悪そうだから、変えようよ」

 現にスカウトされた町人候補さんたちも最初は気味悪がったし。

「まあいいじゃろ」

 タムさんも納得したことで城の名前が変更された。

 よかった。これでキメラの翼で転移先を選ぶ時の恥ずかしいというか、いたたまれない気持ちからやっと解放される。

 

 

 今は城に泊まっている町人候補さんたちも町に家が完成したら、城を出てそこで暮らす予定だ。彼らもだいぶ慣れてきたとはいえ、やはりモンスターといっしょに寝泊りするのは落ち着かないらしい。

 

 今のところモンスターを仲間にできるのが俺だけなので少しづつではあるが、モンスターも増えてきている。

 コーミズ村の周辺ではももんじゃを仲間にすることができた。

 短いが腕があるのでそれなりに道具を使えるようだ。主に城の掃除をまかされているが、口から出す液体で水ぶきするのは禁止した。

 

 できれば整地に役立ちそうなスコップ使いの『いたずらもぐら』系や、建築の時に活躍するかもしれない『おおきづち』系のモンスターを仲間にしたいが、現在いける範囲には生息していなかったり、そもそもドラクエ4には登場しなかったりと不可能な状況。

 地道に町人を集めた方が早そうではある。

 

 食料やその他の物資はドラクエ4の世界でレベル上げのついでに稼いだゴールドで購入してきている。

 美味しいモンスターがいることも判明したから肉は狩猟するとして、野菜とか小麦も栽培したい。できれば田んぼを作ってお米も。水田の経験者どこかにいないかな?

 ロッテちゃん、サリジェちゃんのドラクエ3の世界に行ければ、ジパングでスカウトできるのに。

 

 あと、ロッテちゃんがカンスト付近だった自分の所持金も城下町開発の資金に回してくれた。

 財布も小さい『ふくろ』のようなものなんだけど上限があるらしい。異次元収納でもしてなきゃ貨幣をたくさん持ち歩くのはしんどいのは確かだ。重量的にね。

「いいの?」

「どうせ使い道なかったし。……アリアハンに戻れている間に、母さんに仕送りしとくんだったなあ」

 悔しそうなロッテちゃん。

「会いたい?」

「うん。ずっとボクを男として育ててくれた母さんに、女らしくなったボクを見せてあげたい!」

 なんだか複雑な感情がありそうだな。

 それができないことに絶望して、狭間の世界にきちゃったんだろうか?

 ……ゾーマを倒して、もう強い敵がいなくなっちゃったことに絶望した、じゃなきゃいいけど。

 

「では、コーイチさんの妻になりますか?」

「え?」

 サリジェちゃん、なにを言ってるの?

「ロッテ様が妻にならなくても、わたしが妻になればアリアハンに行くことができるようになるはずです」

「サリジェ?」

「ロッテ様がお望みならば、わたしはかまいません」

 いや、確かにアリアハンには行けるようになるだろうけどさ、それじゃ駄目でしょ。

 

「サリジェ、コーイチのこと好きなの? それなら応援するけど、そうじゃないならボクはそんなの望まないよ」

 サリジェちゃんが好きなのは俺じゃなくて、ロッテちゃんのことだもんなあ。

「ロッテ様……ありがとうございます」

「サリジェは大事な仲間だもん。幸せになってほしいから」

 むう。なんか俺とだと幸せになれない、って言われてる気がするのは被害妄想?

 見てろよ! 俺だってちゃんと嫁さんたち幸せにしてみせるから!

 

 

 

 さらに暫く経って、キングレオ城に辿り着いた。……城内に入ることはできなかったけど。

 俺たちとは逆方向に向かったロッテちゃんたちのパーティはモンバーバラについた。

 ルーラやキメラの翼で行けるように、交互に未到達者を連れていき、転移先を登録していく。

 

 ドラクエ4の世界でも職業熟練度のための戦闘回数は積めるようだ。

 しかも、コーミズ村周辺の弱いモンスターとの戦いでも、高レベルなロッテちゃんたちも関係なく熟練度が上がっていく。

 6の世界の延長線上な扱いで、熟練度が稼ぎやすい土地ばかりになっているのかもしれない。

 結果、魔法使いになっている嫁さんたち全員が『おぼえたて』に到達、ルーラをマスターしている。キメラの翼が節約できるのでかなりありがたい。

 ……俺も早くルーラ覚えたいなあ。

 

 俺の方は熟練度星×4のシルバーナイトになって、やっと呪文を覚えた。

 バギクロス……正直この辺りの敵相手では真空波で事足りているので、初めての呪文はしばらく使う機会はなさそうだ。

 パラディンがマスタークラスになったら、次は魔法使いか僧侶になってもっと呪文を覚えようと思う。

 

「次はアッテムトとハバリアか」

 攻略本の地図を広げながら会議。

「その前に町で情報収集と、町人募集だよ」

 ……俺は移民スカウト成功が未だにゼロなので、すっかり忘れていた。

 やっぱり、皇一から貰ったこのフラグクラッシャーヘルムが怖いんだろうか?

 これのおかげで死なずに済んでいるみたいなんだけどなあ。

 

 皇一といえば、最近手加減がない。

 こまめにキメラの翼を補充しているせいか、現代日本からのアイテムがどんどん送られてくる。

 有難いけど、ツルギ城の屋根に太陽電池パネルを設置するのは骨が折れた。バッテリーの接続や配線とかにも苦労したし。工事の人が設置するわけじゃないのを理解してほしい。こっちには皇一のとこと違って、開発や工作担当の人間がいないんだってば。

 発電量が心配だ、とかなりの枚数を送ってくれた。まだほとんど設置できていない。空を飛べるモンスターが仲間になるまで全部設置できないかもしれない。

 まあ、おかげで電化製品が使えるようになったので感謝はしている。

 ノートパソコンとデジカメ、プリンタは攻略に役立つだろう。ノートパソコンにはインターネット上の攻略ページのデータも保存されていた。攻略本には収録されてないクリア後のイベント情報とかもあったので助かる。

 デジカメとビデオカメラは、録画したのをむこうにも送れってことなんだと思う。ビデオメールでも送るとしよう。

 

 

 ……あと他に、エアコンや掃除機、洗濯機に大型テレビ、録画再生装置等までもが異次元倉庫に納品されていた。あいつはこの城をどうしたいんだろう?

 

 




没ネタ 闘神都市2編

 聖刀日光のためにランス世界に行こうとするコーイチ。
 マーティスに導かれ、ついた先はダンジョン内の召喚ドア。
 リレミトでダンジョンから出てみるとそこは闘神都市2の世界だった。



まさかの闘神都市Ⅱコンシューマ化なので没。
プロットのみ後書き連載。
発売日までに終わるかな?

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