死神達の恋歌   作:yatenyue

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月の導き 2章 第四話   旅禍 怒涛の快進撃!! 

「───花鶴射法二番!!! “拘咲”!!」

 

 

空へと放たれた砲弾は、瞬く間に消えていった。

 

 

「…気をつけて行ってこいよ…岩鷲…───」

 

 

これが、“数時間前”の事…─────

 

 

 

 

 

 第四話 旅禍 怒涛の快進撃!!

 

 

        《海依、桃、イヅル side》

 

 

「定時報告をいたします!」

 

 

四番隊第三席、伊江村 八十千和の口から尸魂界の状況が語られてゆく。

 

 

「十一番隊第三席、斑目 一角様。同じく、第五席綾瀬川 弓親様。

 

以上二名の上位席官が重傷のため、戦線を離脱なされました。

 

各部隊の詳細な被害状況については、現在調査中です。ただ…」

 

 

ワントーン低くなった声で続ける。

 

 

「十一番隊につきましては、ほぼ壊滅状態であるとの報告が入っています」

 

 

その言葉に副隊長達はザワめいた。

 

動揺しすぎだって。

 

 

「十一番隊が…!?」

 

「そんな…!」

 

「侵入から数時間で、そこまで被害が出るか」

 

「現在確認されている旅禍は三名。内二名は、我が四番隊の隊員一名を人質にとってこちらへ移動中との情報もありますが…───」

 

「…」

 

 

無言のままの恋次。

 

伊江村の報告を聞く傍ら、頭の中では“あの夜”の事を思い出していた。

 

自分を圧倒する勢いで向かってきた少年。

 

ルキアから力を奪った、憎むべき敵。

 

 

 

 

 

 

「何か…大変な事になってきちゃったね…阿散井君…」

 

 

桃が振り返った先に恋次の姿はなく、キィキィと軋んだ音を立てて揺れる扉だけが残されていた。

 

 

 

 

 

またあいつか・・

 

 

 心に迷いのあるものはその刃を鈍らせる。

 

 

 旅禍の覚悟はそれより上なら・・

 

 

 

 負けるな。

 

 

 

 

**

 

 

 「吉良君、これ…」

 

「阿散井君の副官章…?」

 

「さっきの集会の途中で急にいなくなっちゃって…心配で、六番隊の隊舎に行ってみたの。そしたら、副官室の前にこれが…」

 

 

それを聞いたイヅルはほんの少し思案げな表情を見せ、静かに尋ねた。

 

 

「この事、隊長達は?」

 

「ううん、話してない。その後、すぐに吉良君に会ったから…」

 

「…そうか」

 

 

藍染隊長には話そうかと思ったんだけど、と俯く桃。

 

 

「吉良君、どういう事かな? わざわざ副官章を外して行くなんて…」

 

「…よほどの事なんだろうな。阿散井君、朽木女史の事で最近色々と思い詰めていたようだし………それに…」

 

「え?」

 

「あ、いや…とにかく、僕も捜してみるよ」

 

 

それじゃ、とイヅルは桃に背を向け歩きだした。

 

 

(阿散井君…やっぱり、君は…───)

 

 

 

 朽木さんのことを気にしているのだろうか?

 

 

 

「そんな…!!」

 

 

桃は、目の前の光景に思わずそう零した。

 

無理もないだろう。

 

何十年と付き合いのある青年の、無残な姿を目にしてしまったのだから。

 

 

 

 「僕が見つけた時には、もうこの状態だったんだ。もう少し早く見つけて、僕も戦いに加勢していれば…」

 

 

 「ううん、そんなの吉良君のせいじゃないよ」

 

 

 

「ともかく、四番隊に連絡するよ。上級救助班を出してもらおう」

 

「その必要はない」

 

「「!!」」

 

いつの間にか背後に立っていた白哉に三人は驚き振り向いた。

 

 

「牢に入れておけ」

 

 

「で、でも…阿散井君は一人で旅禍と戦ったんです! それなのに─」

 

「言い訳など聞かぬ」

 

 

一人で戦いに臨む。

 

それはすなわち、敗北を許されぬという事。

 

 

「それすらわからぬ愚か者に用はない。目障りだ、さっさと連れて行け」

 

 

冷たく言い放つ彼に桃が反論する。

 

 

「そんな言い方って…!! 阿散井君は─」

 

「よせ!」

 

 

桃の立場を考え、制止の手をかけたイヅル。

 

 

「申し訳ありませんでした!」

 

「っ…申し訳ありませんでした」

 

 

 

そして、その謝罪に答えず、白哉は去っていった。

 

 

「おー、怖」

 

 「「!?」」

 

 

 

 

 再び気配を消して現れた人影。

 

 

「何やろね、あの言い方。相変わらず怖いなぁ、六番隊長さんは」

 

 

心配せんでもええよ そういうのは、市丸ギン。

 

 

 「四番隊やったら、ボクが声かけてきたるで」

 

 

「ほな、ついておいでイヅル」

 

「はい!」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 

 

「おわー。こりゃ、派手にやられやがったなー阿散井の野郎」

 

 

 「(やるねー一護。←残存霊力で判断)

 

 本当・・・でも処置さえしっかりすれば大丈夫そうね、後遺症もなさそう」

 

 

 

「Σきゃあああああ!」

 

 

 

 そこに現れたのが、十番隊隊長日番谷冬獅郎と、

 

 私こと零番隊隊長 雛桜 美月であった。

 

 

 

「日番谷君! 美月ちゃん!」

 

 

 「おいおい。何度も言うが、俺もう隊長だぜ? いいのかよ、そんな呼び方で?」

 

 

 「うるさい! っていうか、どうして隊長さん達はみんな足音立てずに近づいてくるのよ!!

 

  ホントにビックリしたんだから!! 」

 

 

 ちなみに私は、逆にお願いしているのだ。

 

 敬語って普段それを使わない人に使われるとなんか距離を感じるんだ・・

 

 私用と公用は分けてるしね。

 

 

 

 

 「───それで、日番谷君はどうしてここに? 副官さんも連れずに…」

 

「忠告に来たんだ…」

 

 

 「“忠告”?」

 

 

 

 

「三番隊には気をつけな」

 

「三番隊? 吉良君の事?」

 

「俺が言ってるのは市丸だが、吉良もどうだかな。とりあえず、気をつけておいて損はないぜ。特に

 

 

 藍染のやつがひとりで出歩くときにはな」

 

 

 

 

 

 やっぱり冬獅郎は藍染のことひとかけらも疑っていない。

 

 あの光景はともすればどちらも怪しく見えるのに・・・

 

 

 やっぱり、冬獅郎にも私の疑いは話せない。

 

 話して否定されるのが怖い。

 

 やっぱり私って弱いな・・精神面

 

 

 

 でも、あなたが疑っている市丸隊長の幼馴染であなたの副官の乱菊さんより先に、

 

 桃ちゃんにわざわざ伝えるんだね。

 

 

 チクリ

 

 

 心が少し痛んだ気がした

 

 

 

 

 

          To Be Continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.


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