死神達の恋歌   作:yatenyue

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(日恋2章開始から2話あたりの自軸)


月の導き  第二章   第三話 旅禍侵入、揺れる尸魂界

 

 情報系処理が得意な海依が集めた情報によると、

 

 

 浦原喜助というのは

 

 

 

 

110年前、二番隊第三席だったが、

 

当時の護廷十三隊・十二番隊隊長であった曳舟桐生が王属特務「零(ぜろ)番隊」【零(れい)ではいない】に選ばれたのを機に、

 

瞬神と呼ばれた、当時の二番隊隊長の四楓院 夜一の推薦・元柳斎含む3名の隊長の立会いで行われた隊首試験合格を経て、後任の十二番隊隊長になる

 

 

 

また技術開発局を設立した初代局長でもある。

 

 

 

が、その9年後

 

 流魂街の魂魄消失事件が起こった際、それが虚化の実験であり、その容疑者として追放されている。

 

 その時四楓院 夜一も逃亡。

 

 

 「なんか、違和感ないこの記録?」

 

 「でも、この犯人を藍染とするには無理がありますわよ。」

 

 「そうよねーー。

 

  裁判記録に、藍染がしたと被疑者も供述したとあるけど、アリバイがあったらしいし。

 

 そのうち一人は、京楽隊長だし。」

 

 「アリバイ承認全員が共謀者という説もありえないぞ。」

 

 

 「ねぇ、藍染の斬魄刀って水系って言ってたよね。」

 

 

 「ああ、でもあれも何か違和感があるんだよな。

 

   もしかして、幻覚か?

 

 いや、それとは違う感じだよな。」

 

 

 「今までどおり、藍染は警戒するわよ。」

 

 「「「オッケー」」」

 

 

 「須王や魅、葵には私から伝えておくわ。」

 

 

 そう私は言うのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話 旅禍侵入、揺れる尸魂界、

 

 

 

 瀞霊廷内に響いた警鐘。

 

 それが長い長い戦いのはじまりだった。

 

 旅禍ーー

 

 尸魂界内に死神の許可なく不法侵入を果たした、“災いを呼ぶ者”。

 

 

 それが流魂街で確認されたのだ。

 

 

 数は六。その内の一人は、身の丈ほどの大刀を持ったオレンジ色の髪の死神

 

 「間違いなく、一護ね。

 

 あとはわからないけど、

 

 

   たぶん・・・」

 

 

 

「卯月は間違いなく入ってるだろうな。」

 

 「輝の知らせは?」

 

 「尸魂界に入ってきた記録があるので、おそらく卯月が入ってきたのは間違いないでしょう。

 

 まったくあの子は無茶するんですから。」

 

 

 「あははは」

 

 

 よく私もそういうムチャをしてたので笑えない。文句を言えない。

 

 

 と他の隊と比べて、あまり緊張感がない零番隊の皆さんであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日 

 

 

 

青野輝の監視を気づかれ、旅禍一行が空鶴邸が入った頃

 

            

 

瀞霊廷では朽木ルキアが六番隊から懺罪宮に移されていた。

 

処刑の日取りまで14日、罪人は懺罪宮で残りの生を過ごすのだ。

 

ルキアの護送には、縛道に長けた者が数名と、付添人として阿散井恋次がきた。

 

恋次はルキアとは親しかったが、六番隊が捕縛の任に就いたので付き添うことになったのだろう。

 

           《side ルキア》

 

「…見えるか、ルキア?そこの窓から。

"双極"、オマエを処刑する二つの道具だ。」

 

「…………」

 

 

 

真っ白な懺罪宮の外には、巨大な矛と処刑台が悠然とそびえ立っていた。

 

ルキアの処刑に使われる双極だ。

 

罪人は処刑台を観ながら過ごすことにより、自分の罪を悔やむのだそうだ。

 

しかし、ルキアは周囲の言葉には全く反応せず、ぼんやりと双極を眺めていた。

 

護送するときの戒めが解かれても、静かに外を眺めるだけだった。

 

その姿からは、現世で卯月や一護と過ごしていたときの、生き生きとしたルキアなど想像もできない。

 

 

 

「…阿散井副隊長殿、移送の先導お疲れ様です」

 

「さあ、まいりましょう」

 

「ん?ああ…」

 

 

 

今まで元気のないルキアを見ていた恋次だったが、声をかけられて出口に体を向ける。

 

しかし、何を思ったのか、恋次は懺罪宮から出る間際にルキアの方に駆け寄り、肩を掴む。

 

 

 

「一つ、未確認情報を教えてやる。

昨日、尸魂界に旅禍が入ったのは知ってるな?数は6。

 

…その内の一人は、身の丈ほどの大刀を持った…

オレンジ色の髪の死神だそうだ。」

 

 

 

肩を掴まれても話し掛けられても、反応を見せなかったルキアが、その言葉に目を見開いて振り返る。

それは、ルキアが久しぶりに見せた生きた表情だった。

 

 

恋次達も出て行き、懺罪宮で一人になったルキアは、目を閉じて静かに拳をにぎりしめる。

 

 

 

一護が…尸魂界に来ている‥‥?

6ということは、卯月も…?

 

………

 

私は最低だな…

"来てほしくない"と言いつつ、一瞬でも、一護や卯月が来てくれて‥喜びを感じてしまった。

 

 

……何故、尸魂界に来たのだ?

 

 

私が…

 

どんな気持ちで、

お前の手を払ったと思っているのだ、一護? 卯月

 

 

「‥……莫迦者…」

 

 

 

懺罪宮に小さな呟きが響く。しかし、その言葉は呟いた本人にさえ気付かれることはなかった。

目を開けて、再び双極を見上げるルキアの顔は歪んでいた。その瞳は濡れていたが、涙が零れることはなかった。

 

 

処刑まで、残り14日

 

 

 

      《sideend》

 

 

           《side 恋次》

 

 

罪宮からの帰り道。

 

恋次はそんな事を思いながら廊下を歩いていた。

 

そこへ声をかける人物が一人…

 

 

「おーい! 久しぶり、阿散井君」

 

「藍染さん…」

 

 

ちょっと話をしようと言われ、二人が来たのは資料庫のような部屋。

 

 

「いやあ、こうやって話すのは本当に久しぶりだね」

 

「はい」

 

「単刀直入に聞こうか。君の目から見て…彼女は死ぬべきか」

 

「!?」

 

 

思ってもみない質問に、恋次は戸惑う。

 

 

「妙だとは思わないか?」

 

 

ルキアの罪状は霊力の無断貸与及び喪失、そして滞在超過。

 

確かに重罪だが、事の運び方が異例ずくめ。

 

 

「僕にはこれが全て、一つの意志によって動いているような気がしてならない」

 

「待ってくれよ、藍染隊長! それってどういう─」

 

「嫌な予感がするんだ…阿散井君、もしかしたら僕は─」

 

 

カンカンカン

 

 

「「!!」」

 

 

《隊長各位に通達! 隊長各位に通達! 只今より緊急隊首会を招集!》

 

 

藍染の言葉を遮るように、瀞霊廷内に召集の声が響いた。

 

 

***

 

「初めてっスよ、俺。副官章なんか着けんの」

 

「あたぼうよ。こんとに強制されてはめるんは、ワシも初めてなんじゃけぇの」

 

 

そんな会話をしながら廊下を進んでいく恋次と射場の二人。

 

射場 鉄左衛門、七番隊の副隊長である。

 

召集を受け待機場所である二番側臣室の扉を開くと、そこには桃の姿があった。

 

 

「阿散井君、射場さん」

 

「雛森…まだお前だけか」

 

 

 「違うぜ、俺もいる。」

 

 

 そういうのは、長い銀色の髪をなびかせた海依。

 

「副隊長なんてのは、尸魂界中に散らばって忙しくしてるような連中ばっかだからねぇ。

 

全員集まるのには、半日ぐらいかかるんじゃない?

 

ウチの隊長さんも、サッパリ連絡つかないのよ」

 

 

気だるげに言いながら入ってきた乱菊は、恋次の方に顔を向け言った。

 

 

 

 

 

「そうですね。あ、阿散井君。」

 

「ん?」

 

「ウチの藍染隊長、見てない?」

 

「…! い、いや…見てねぇ…」

 

 

恋次の答えに顔を曇らせる桃。

 

 

 「(阿散井のやつ様子がおかしいな。

 

     藍染のやつなんか仕掛けてきたか?)」

 

「ずっと…様子がおかしいの。今朝もずっとおかしくて…でも、聞いても何も答えてくれなくて…あたし、どうしたらいいか…」

 

 

うっすらと涙を浮かべる桃の隣で、恋次は背を壁に預け心配すんなと声をかけてやる。

 

 

「何もねーよ。この召集だって、すぐに解かれるに決まってるぜ」

 

(クソッ…)

 

 

表面で桃を元気づける一方で、内心舌打ちする。

 

 

 

 

 

(何なんだ…一体何が起きてるってんだよ、藍染隊長…!?)

 

 

混乱の幕は、まだ上がったばかりだ…─────

 

 

 

 

               《side end》

 

 

 

 

 

私含め、浮竹隊長、市丸を除く隊長が、一番隊隊主室に集まっていた。

 

 

「来たか…」

 

 

威厳のある声が部屋に響いた。

 

 

「…三番隊隊長、市丸 ギン」

 

「何ですの? いきなり呼び出されたかと思たら、こない大げさな。尸魂界を取り仕切る隊長さん方が、ボクなんかのために揃いも揃って…でもないか」

 

 

ふと足を止め、貼りつけたような笑みのまま続ける。

 

 

「十三番隊長さんがいらっしゃいませんなぁ。

 

 どないかされたんですか」

 

「彼は病欠だよ…」

 

 

九番隊隊長、東仙 要の言葉に驚いたような表情をしてみせる。

 

 

「そら、お大事に」

 

「ふざけてんなよ。そんな話で呼ばれたと思ってんのか?

てめぇ、一人で勝手に旅禍と遊んできたそうじゃねーか。

しかも、殺り損ねたってのはどういうワケだ?

 

てめぇほどの奴が旅禍の4、5人わけがないはずだが」

 

「あら? 死んでへんかってんねや、アレ」

 

「何?」

 

「いやあ、てっきり死んだ思ててんけどなぁ。ボクの勘も鈍ったかな」

 

「猿芝居はやめたまえヨ。

 

我々隊長クラスが、相手の魄動が消えたかどうか…察知できないハズはないだろう?」

 

「始まったよ…バカ親父共のバカゲンカが…」

 

冬獅郎は呆れたように言う。

 

 

 

 まぁ、私としては、どんな悪巧みがあるとしても死ななかったのは嬉しいことなのだが・・

 

 

 

 

「いややなぁ。まるでボクがわざと逃がしたみたいな言い方やんか」

 

「そう言ってるんだヨ」

 

「うるせぇぞ、涅! こいつと喋ってたのは俺だ、邪魔すんじゃねぇ」

 

 

元から仲が良いとはとても言えない二人、些細な事で一触即発になるというのも別段珍しくない。

 

それをわかっている他の隊長達はうろたえる事もなく、皆呆れ顔だった。

 

 

「くだらぬ…」

 

 

二番隊隊長、砕蜂が吐き捨てる。

 

 

「やれやれ…血の気が多いねぇ」

 

    ため息をつく、京楽さん

 

「…」

    朽木隊長は無言だ。

 

「ぺいっ! やめんか、みっともない!」

 

 

総隊長の制止により、ようやく本題へと入った。

 

 

 

「今回の単独行動、そして標的を取り逃がすという失態。

 

どうじゃ、何ぞ弁明でもあるかの? 市丸や」

 

 

その言葉と共に、隊長格全員の視線が一斉にギンへと集中する。

 

 

「ありません!」

 

「何じゃと…!?」

 

「弁明なんてありませんよ。ボクの凡ミス、言い訳のしようもないですわ。どんな罰でも受─」

 

「ちょっと待て、市丸」

 

 

ギンの言葉を遮り、前に出たのは藍染。

 

 

「その前に…聞きたい事がある」

 

 

その時だった。

 

 

カン カン カン

 

 

《緊急警報! 緊急警報! 瀞霊廷内に侵入者あり! 各隊、守護配置についてください!》

 

 

ダッ─────

 

 

「! おい、待て剣八!!」

 

 

いち早く部屋を飛び出していった剣八。

 

 

おかしい。この中にまだ侵入者はいない。

 

 まだ、彼らは中に入っていない。

 

 これもあいつの仕業?

 

 

「致し方ない。隊首会はひとまず、解散じゃ。市丸の処置については、追って沙汰する。各隊、即時廷内守護配置についてくれぃ」

 

 

 

「随分都合よく、警鐘が鳴るものだな…」

 

 

藍染とギン。

 

これから先を示唆する、二人の会話を…───

 

 

 

それを聞いたのは、私と冬獅郎。

 

 

 それの捉え方は、恋人でありながら全く異なるものだった。

 

 

 ギンのみを怪しむ冬獅郎。

 

 わざとらしいやりとりに二人のつながりを疑う美月。

 

 

 

 彼女が疑いを話さないのは、

 

 藍染の信頼が高いからである。

 

 

 

 新参の自分よりもずっと・・・・

 

 

 嫌なくらい知っている、信頼の高い相手の信頼を崩すのが難しいか

 

 だから何度も何度も“私”は繰り返したのだから。

 

 ただひとりを救うために、

 

 他を切り捨てて

 

【繰り返す、私は何度も繰り返す。

 

 あなたを絶望の運命から救い出す道を探り続ける】

 

 

         ‐To Be Continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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