死神達の恋歌   作:yatenyue

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うちの子は基本一護は、単細胞で恋愛対象としてありえない存在です。

手のかかる弟みたいな幼馴染 な感じ。

たつきは親友。

水色は話しやすい男友達


太陽の導き 第二章 第一話  兕丹坊(じだんぼう)/空鶴/・・・

 

 

 

 

 

皆に合わせて走って(それでも余裕で一番前)たどり着いたそこは、江戸時代とかっぽい集落だった。

 

 

 

 

 

第一話   兕丹坊(じだんぼう)/空鶴/・・・

    花火師と大男と言霊使い

 

(人の気配はするのに、なぁ。

 霊圧はほぼないけど見られているし、すんごい。)

 

 と私は冷静に周りを分析していたのだが、

 

 

 

 

 

 

 

 

             

 

 

          考え知らずのバカがいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも馬鹿すぎて現実逃避してたわ。かなり強そうな霊圧が1つ。

 

 あれ?  もう一つ、これは逆の私の後ろの方?

 

 まぁ、いっか、そっちは後で。

 

 敵意や殺気は感じないし

 

 

 

 開けられた門の向こう側にいたのは 、

 

 銀色の髪に狐顔な、まぁ美形に入るのだろうけれど

 

 どこか寒気のする笑いをする男だった。

 

 (今の一護じゃ逆立ちしたって勝てないってあの相手)

 

 夜一さんが下がれと怒鳴る。もう、見たくない。

 

 実力のわからない馬鹿の面倒を見るのは本気で大変だ。

 

 もう私はこのバカの面倒を放棄する。

 

 「・・射殺せ、神槍」

 

 

 ・・殺気がない。覇気もない。相手に何の思いもあの男は抱いていない。

 

 でも、彼が冷たいんじゃない。まるで誰か以外を心に住まさない

 

 みたいなそんな気がする。

 

 殺す気はないが間違いなく当たったら今の一護は死ぬ。

 

 が、これも受け止めれないならこの先やっていけないし

 

 

 

―― ――  ――  ――   ――  ――  ――

 

 

 

座り込んでギンにブツブツと文句を言っている。

この元気なら、どうやら一護(このバカ)は無傷ですんだようだ。

 

 

 

「無事で何よりじゃ、一護」

 

「夜一さん…悪い、俺のせいで門が…」

 

「いや、おぬしを責めても始まらぬ」

 

 

 

一護に怪我がないだけでも良しとせねば、と優しい言葉をかける夜一。

 

夜一が言い終わると、背後から人の気配がして、一護達は振り返る。そこには民家の中に隠れていただろう住人が、次々と出てきていた。

 

 

 

「人だ…」

 

「何だ、こいつら?今までかくれてたのか?」

 

「あれ、気付いてなかった?家の中から息遣いがしてたじゃない」

 

「普通…気付かないと思う‥‥」

 

 

 

卯月以外の現世組は、こんなに人が隠れていたのに驚いている。

 

"なんで…"と織姫が呟くと、夜一が説明を始める。

 

 

ここでは、死神の導き無しに尸魂界に来た魂魄は"旅禍"と呼ばれ、災厄の元凶とされているらしい。

 

 

 

「災厄ね…ま、確かに混乱をもたらす存在ではあるけど」

 

「…敵なのか?」

 

「さあな。じゃが、こうして姿を見せたということは、儂等に対していくらか心を許したということ一一一一…」

 

 

 

夜一が話していると、何やら人込みが騒がしくなる。"すいません"という幼い声が近づいてきたかと思うと、その声の持ち主が人込みから顔を覗かせる。

 

 

 

「おじちゃん!!ひさしぶり!

ぼくだよ!インコのシバタだよっ!!」

 

「し…シバタ!?」

 

 

 

人込みから出てきた男の子は、昔インコに入れられていたシバタユウイチ君だった。

 

 

 インコの時少しだけあっただけだけど、たしかにあの魂の色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「織姫、もう2時間ぶっ続けだけど、大丈夫?

 

 治療系得意じゃないけど平均はできるから代わろうか?」

 

 

 織姫の術は普通の人間の持つべき力じゃない。

 

 私たちの場合は契約があるからだし。

 

 何かの複雑な術式もなしに言霊と霊力だけで

“事象の拒絶”。

 

 何かあるかもな。まぁ、美月なら使えるけどさ。

 

 美月のは、時間・空間回帰だけど。

 

 

 

 ――・・・・・・・――

 

 今一瞬何かのシーンが脳裏に浮かんだ。

 

 何?

 

 私の名前のオトじゃないのに私を呼ばれた気がした。

 

 「うん、じゃあ、10分だけ」

 

 「無理したら本末転倒だよ。」

 

 死神姿で術符を取り出す。

 

 「“空間を乖離し、回帰せよ

   

   この手は神の手、我が手であらず

   

   この声は神の声、自然の声、我が声にあらず

   

   自然の息吹よ 神の息吹よ

   

   今ここへ舞い降りろ!!”」

 

 

 私は美月に比べて、こういう細かい術を頭で考えるのは苦手だ。

 

 だから体で覚えたまま出す(=応用が利かない)

 

 

 卯月の藍色の霊力の光でおられたクリスタルのような壁に見えるそれはそこだけを回帰させる。

 

 傷を負う前の状態へと、織姫とは段違いの速さで

 

(余計だったかも。

 

 織姫のやってること取っちゃったしそれに・・・

 

 あの子 あの鈍感一護が好きだし

 

 いいとこっていうか役に立つところ見せたかったよなぁ)

 

 

一護のことが恋愛感情で好きな気持ちは全くわからないけど。

 

 私誰かをそういう感情で好きになったことないし

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「揃ったな。」

 

 

 

一護と織姫が家の中に入れば、夜一がそれを確認して言った。

 

 

 

「座れ。これから我々のとるべき行動を話して聞かせる。」

 

 

 

夜一の前に座るこの町の長老も、何処か神妙な面持ちだった。

 

 

「一度門を開けてしまった以上…警戒されて門の内側の警備は今回の何倍にもなっているだろう…と。」

 

 

話を聞き終えた石田が簡潔にまとめる。

 

 

 

「ということは、もう直接門を突破する方法は得策じゃないってことですね。」

 

「…というか元々儂はそんな方法が得策だなどとはこれっぽっちも思っとらんかったがな!」

 

 

このバカさえあんなことしなければ…

 

とぼやく隣では、一護が何とも間抜けな顔をしていた。

 

馬鹿っていうのは、あんただよあんた

 

「…案ずるな。

門がダメなら門以外から入れば良いだけのこと。」

 

「「「「!!」」」」

 

「門以外から…中へ入る方法…!?」

 

「長老殿。」

 

 

そんな方法があるのか、と驚く4人を余所に、夜一は4人ではなく、正面の長老を見た。

 

 

 

「志波空鶴という者の所在をご存じか。」

 

「!」

 

 

夜一の言葉に驚愕の表情を見せる。

 

 

その様子からして長老が志波空鶴という人物を知っているのは一目瞭然だった。

 

 

 

 

「あんたがた…まさかあれで壁の中へ入るつもりかね…!?」

 

「?何だ?あれって…」

 

 

 

 

 

「「「「(アレってなんだ!?)」」」」

 

 

 

夜一や長老の態度に、卯月達は心の中でツッコム。

 

そこで一護が"アレ"について聴こうとすると、大きな音と共に何かが転がり込んでくる。

 

 

 

 

 

 

何か獣がすごい勢いで走ってくるような音で。

 

一緒に霊圧も一緒にあるけど、弱いな。

 

 

 

ガターーン

 

 

「ギャーーー!!!」

 

 

 

 

 

扉を打った押して人間が家の中へ転がるように(投げ飛ばされたように見える)して入ってきた。

 

 

そしてそれに続いてイノシシまで。

 

 

 

 

「イノシシだー!!イノシシも入ってきたー!!!」

 

 

 

 

一同プチパニックです、私以外。

 

 

 

 

「やれやれ…また俺のボニーちゃんに振り落とされちまったぜ…」

 

 

転がるようにして入ってきた男が呟く。

 

 

 

「よっ!久しぶりだな、おっちゃん!!」

 

 

 

くるりと腰を回して長老を振り返ったその男。

 

腰に手を当ててカッコつけているが全然かっこよくないその人物を見て、長老が顔色を変えた。

 

 

「貴様…岩鷲!!な…何しに来た!帰れっ!!」

 

「久しぶりに顔見せたってのに、帰れたあゴアイサツだな。見ろよ、お客人達もビックリしてるじゃ…「お前のせいじゃっ!!」ねぇ…か…」

 

 

 

長老がツッコムが、岩鷲と呼ばれた男は何かに気を取られたように固まった。

 

 

 

 

「…おんやァ!?」

 

 

我に返ったのか、着けていたゴーグルを取る。

 

 

 

 

「なんでこんなトコにクソ死神サマがいやがんだァ!?」

 

 

 

 

ゴーグルを取ったその目は一護を捉えており、額には青筋が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、

 

何故か自称『西流魂街一の死神嫌い』が一護に喧嘩を吹っ掛け、

 

 

一護と岩鷲は家から外へ。

 

 

 

それを追って外に出ようとした織姫達は岩鷲の手下に食い止められる。

 

 

 

 

「…すごい…、ぜ…全員…」

 

 

「「(全員………イノシシに乗ってる……!!)」」

 

 

 

…イノシシに乗った手下に。

 

 

 

 

 

「死神さんよ。どうやらテメーと俺様は…」

 

 

 

言葉を切った岩鷲は、自分の刀を鞘から抜いた。

 

 

 

「戦う運命にあるらしいな!!」

 

「や…やめるんじゃ岩鷲!!」

 

 

それを見た長老は止めようとする。

 

 

 

「その人は悪い死神ではないじゃ!」

 

「うるせぇ!!」

 

 

が、怒鳴り声で長老に言った岩鷲を見れば、真剣な面持ち。

 

 

 

「死神は死神。いいも悪いもねェんだよ!」

 

 

 

それを見れば、彼に昔、死神に関する何かがあったのは明白だった。

 

 

 なんでも一緒にする馬鹿な男の思考というか子どもの思考はどうかと思うけれど、

 

 

 めんどくさいし、勝手にやってって

 

 

 

 

 

あっ。

この人、何でか知らないけど大きい時計背負ってる。

 

 

 

 

 

ジリジリジリジリジリ!!

 

 

 

彼が背負っていた時計のアラームが鳴った。

 

 

その音の大きさにビックリして、後退り。

 

 

 

「大変だアニキ!!9時だーーーー!!!」

 

「何ィ!?9時!?」

 

 

慌てるイノシシ原人達を前に、唖然としてしまう私達。

 

 

だって、状況がわかんないからさ…

 

 

 

「カモォン、ボニーちゃん!!」

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

一護の後ろから、リボンを付けたイノシシが現れて、

 

 

そのまま下睫毛(一護と戦ってた人)に突撃。

 

 

 

……えっ

突撃…??

 

 

 

 

「フ…いつも通りやるな、ボニーちゃん…」

 

「いつも通りなんだ…あんなの喰らって死なないとかタフだな、あの人…」

 

 

 

毎回吹っ飛ばされてんのか…

 

と、妙な所で感心。

 

 

 

 

「ま…待てこらぁ!!逃げんのか!!」

 

「誰が逃げるかこのタンポポ!!!

テメーとの決着はまた今度つけてやらァ!!それまでここで大人しく待ってやがれ!!」

 

 

そこまで言って、下睫毛は一護を指差す。

 

 

 

「綿毛みてーにフワフワ飛んで逃げんじゃねーぞ!!」

 

「…な…、ふざけんな!!そりゃこっちの…「いくぞテメーら!!モタモタすんな!!」

 

「「「「ヘイ!!!」」」」

 

ドドドドドド

 

 

 

「セリ…」

 

 

ドドドドドド

 

 

 

 

「…フ…」

 

 

 

 

セリフを最後まで言わせずに去ってしまったイノシシ原人達。

 

 

 

「…災難だったな黒崎。」と、石田君には珍しく一護を励ますような言葉を言って、肩をポンっと叩いた。

 

チャドと織姫は唖然。

 

 

私はというと、

 

 

 

「クッ…か、かわ…ぃそ…ッ!!」

 

 

 

必死で笑いを堪えていた。

(いや、漏れてたけど。)

 

 

 

 

 

「…う…ちくしょーーー!!!

何なんだあいつはァッ!!?」

 

 

 

 

一護が叫んだの聞いて、

 

 

 

 

「プッ……アハハハハハッ!!」

 

 

 

耐えきれずに、笑い転げた。

 

 

 

 

辺りに私の笑い声と一護の怒鳴り声が響き、

 

 

 

数分後に

 

 

 

 ゴ ン ッ

 

 

 

という鈍い音と、苦痛に呻く私の声が響いたのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

こんにちは!!

 

「ここであのヤロー(下睫毛)を待つ!!」と言って聞かない一護(バカ)の頭を殴って無理矢理引きずり出してきた、雛桜 卯月ですっ!

 

 

 

 

そして、そんなこんなでやって来たのはだだっ広い村外れの草原。

 

 

私は雨竜君を先頭に歩いて行く一行の一番後ろを歩いてる。

 

 

 

「奴は住む場所はコロコロ変えるが家だけはいつも同じものを作る。

儂が見れば一目でそれとわかるやつだ。」

 

「一目で…?」

 

「ああ…おっ、見えてきたぞ。

あれじゃよ。」

 

 

 

夜一さんが示した先を見る皆。

 

 

 

「…こ…これは……!!」

 

 

 

それを見た皆は凄い顔で引いていた。

 

特に一護と石田君が。

 

「「(これは…特徴的とかいうレベルじゃない一一一一!!!

人気のないとこが好きとかいうのも多分ウソだ!!いくら言ってもあんな家建てちゃうもんだから、街中に住まわせてもらえないだけだ!!)」」

 

 

 

夜一の発言に心の中でツッコム一護と雨竜。

 

一護など先程まで不機嫌だったはずなのに、空鶴の家が凄すぎてそれを忘れている。

 

家の前なある巨大な左右の腕の石像が、"志波空鶴"と書かれた旗を持っているのが痛々しい。

 

 

 

「…今回の旗持ちオブジェは人の腕か…。」

 

 

と夜一が呟けば、一護と雨竜君が何か言いたそうな顔をした。

 

 

なになに…≪毎回モチーフ違うのアレーーー!?≫

(読心術を使いましたvv)

 

どうやら、引っ越すたびに石像のモチーフは変わっているらしい

 

 

「ほれ、どうした。早く来ぬか。」

 

 

 

夜一さんに促されて歩き出す二人。

 

 

あぁ…恥ずかしいんだろうな…

 

なんて思いながら、皆の後を着いて行く。

 

 

 

 

が、

 

 

   「その前に、いつまで後ろを付いてきとるのかの?」

 

 

 「そうだよね。さっさと出てきてくれない?」

 

 私と夜一さんが言う。

 

 

 

 

 

 「何言ってるんだ?夜一さんに卯月。」

 

 「どうもこうも、ここまで私たちをつけてきてる人がいるのよ。

 

 霊圧は消せてるけど、気配はあまり消せてないよ。」

 

 といっても、神経を研ぎ澄ましてやっとわかる程度。

 

 夜一さんもわかっていたのか

 

 

 

 不自然に草むらが動く。

 

 何もないように見えるそこが・・・

 

 

 そしてひとりの女性が現れた。

 

 肩ほどの癖のある黒い髪に、メガネ。

 

 ニコニコとした微笑み。

 

 年の頃は10代前半から20代前半ごろ。

 

 そしてその身につけているものは、死神の黒い死覇装。

 

 

 その腕には銀でつくられた証のようなものを身につけている。

 

 それには、五という文字と薔薇が描かれていた。

 

 

 「やっぱり、死神か。

 

 私たちのことを知らせる気?」

 

 私が言うと

 

 その顔を見た織姫が

 

 

 「輝ちゃん!?」

 

 

 「え? 織姫彼女のこと知ってるの?」

 

 「何言ってるの?

 

 クラスメイトじゃない。」

 

 え、あんな子いたっけ。

 

 顔が覚えるのが苦手な一護じゃあるまいし

 

 一応覚えてるんだけど。

 

 

 「気づかれたら意味ないし。

 

 私、あなたの卯月さんの監視任務についてたのに」

 

 「私の・?」

 

 「ほんとあなたのお姉さん過保護ね。」

 

 また姉の知り合い。

 

 私の知らない姉の知り合いが増えていることが悲しくなった。

 

 

 私と姉の時間が異なっていた証拠だから。

 

 

 「知られたら終わりだし、さっさと帰りましょう、

 

 一応、あなたたちを売る気はないわ。

 

 同じクラスのよしみでね」

 

 

 そして彼女は消えた。

 

 

 「織姫、同じクラスって?」

 

 「えっと目立たない子だったけど、朽木さんが転校してくる前、入学の時から居たよ。

 

 青木 輝さん。」

 

 

 青木 輝。

 

 それが彼女の名前。

 

 とりあえずどうすることもできないので、空鶴さん宅にそのまま尋ねることにした。

 

 

 

 

「待てい!!」

 

 

 

ゴツイいかついむさくるしい門番の二人が私達の行く手を阻んだ。

 

 

 

 

「何者だ貴様ら!」

 

「奇っ怪な出で立ちをしておるな!」

 

「怪しい奴らめ!この金彦と銀彦が貴様らを決して通しはせぬ!」

 

「去れ!さもなくばここで死ぬこととなろう!」

 

 

などといっていたが夜一さんの姿を見たとたん

 

 

 

「夜一殿!?」

 

 

と声を上げる。

 

 やっぱり只者じゃないか

 

 

 

「夜一殿とそのお供とはつゆ知らず!ご無礼お許しくだされ!」

 

「よい。先んじて連絡を入れなかった儂にも非はある。」

 

 

金彦に案内をしてもらって、中に入った私達。

 

 

 

「こちらで少々お待ちを。」

 

「…金彦か。」

 

「はっ…はい!」

 

 

障子の中から聞こえた声に慌てて振り返る金彦。

 

 

 

「…珍しい奴がいるなァ…!

 

 

開けろ。モタモタすんな!」

 

「!はい!ただいま!」

 

 

そして金彦によって障子が開かれた。

 

 

 

 

 

 

「よう、久しぶりじゃァねぇか。夜一。」

 

「「…く…空鶴って…女ァ!!?」」

 

 

 

 

 

男だと思ってたんだな…

 

先入観はダメだよ、全く。

 

 

 

 

「実は空鶴、今日はお主に頼みがあって来たのじゃ。」

 

「だろうな。お前がウチに来る時は大概そうじゃねぇか。」

 

 

 

 

「面倒事か。」

 

「恐らくは。」

 

 

神妙な面持ちの二人。

 

 

 

「ハッ、久しぶりだな、このやりとりも…」

 

 

けど、次の瞬間には空鶴さんの神妙な顔付きは、何か企んでいるような顔になった。

 

 

 

「いいぜ、話せよ。面倒事は大好きだぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…成程。話は大体わかった。」

 

 

そう言って、話を引き受けてくれた空鶴さん。

 

 

ただし、条件が一つ。

 

 

 

 

「見張りの意味も込めて俺の手下を一人つけさせてもらう。

依存はねぇな?」

 

「無論だ。」

 

 

手下と言っても、空鶴さんの弟らしい。

 

 

 

 

出てきたのはつい先日見たばかりの人。

 

 

 

 

 

 

「は…初めまして!志波岩鷲と申します!

以後お見知りおきを!」

 

「あ…(下睫毛)」

 

 

 

満面の笑みで出てきた下睫毛…否、岩鷲に一同絶句。

 

 

 

 

 

 

 

後、

 

 

 

 

 

「「あああ~~~~~っ!!!!」」

 

「(うるさッ!!)」

 

 

 

 

 

 

絶叫。

 

 

 

 

 

しかも、私を挟んで。

 

 

 

 

 

 

 

「やめねぇかッ!!!!」

 

 

 

 ゴスッ

 

 ズゴン

 

 

 

という、空鶴さんの怒鳴り声と凄く痛そうな音が部屋に響いた。

 

 

岩鷲が左の拳、一護が右足の踵を落とされた時の音だ。

 

 

 

それを見た織姫達は口をカラスのように大きく開けて冷や汗をかく。

(チャドは冷や汗だけだったけど)

 

 

私は(右手なくても器用だよね)なんてことを考えていた。

 

 

 

 

 

「何なんだテメーらは!?顔合わせるなりイキナリ殴り合い始めやがって!」

 

「だ…だってよ、姉ちゃん!あいつが…」

 

「口答えすんな!」

 

 

 

ガスッ(岩鷲が蹴飛ばされた音)

 

 

 

ドスドスドス ガシッ(一護に近付いて来て頭を鷲掴みにした音)

 

 

 

 

「おい、クソガキ!

ここは俺の家だ。俺のやり方に文句あるなら出ていきな!」

 

 

 

そう言う空鶴さんの後ろからは黒くて怖いオーラが。

 

 

私なら、絶対逆らえない。

 

 

 

 

「…す……すいませんでした…」

 

「オーケ。わかりゃァいいんだ。」

 

 

謝った一護に空鶴さんは手を離す。

 

 

それでもまだ一護には冷や汗が残ってる。

 

 

 

 

「…オマエの姉ちゃん怖ええな…」

 

「…だろ…」

 

 

 

ボソボソと一護と岩鷲が話しているのが聞こえた。

 

 

同じ恐怖体験をして、少し友情が芽生えたみたい。

 

 

 

 

そして、此処に居る皆に恐怖の念をしっかり植え込み、空鶴さんは私達従わせた。

 

 尊敬するよ(☆彡キラキラ)

 

 

「よーし!!全員立て!!」

 

 

「「「はっ…はいっ!!」」」

 

 

 

織姫と雨竜君がビシッとした返事をする。

 

 

私は別に空鶴さんのこと、恐くないけど…

 

その場のノリというやつで、同じようにビシッとした返事を!

 

 

 

その返事に満足したのか、空鶴さんは私達を連れて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして連れて来られたのは、地下の大きな間。

 

 

 

 

「…お…!」

 

「…わ……」

 

 

 

 

その大きな間の真ん中には、天井をも突き破って真っ直ぐ天に向かって伸びている大きな筒。

 

 

 

「な…何だこりゃ…?」

 

 

一護達の間の抜けた声。

 

 

 

「こいつでテメーらを瀞霊廷ん中にブチ込むのさ!」

 

 

答えた空鶴さんの声は何処か自慢げだった。

 

 

そして、ニッと悪戯っ子のような笑顔になる。

 

 

 

 

「空から!」

 

「空ァ!!?」

 

 

 

 

何か、此処に来てから一護のリアクションが大きくなったような……

 

 

否、現世では(普通では)考えられないようなことが多すぎて、リアクションに影響しているだけだよね。

 

 

決して、色々ありすぎて頭のネジが一つ取れたとかじゃないよね。

 

うん、そんなことない。

 

 

うん大丈夫。

 

 

ただ少し関わりたくないかな・・・

 

うるさいし、これが幼馴染なんて思いたくないな

 

 

「俺の名は志波空鶴…」

 

 

 

悶々と一人考えていれば、空鶴さんの声が聞こえた。

 

 

 

 

「流魂街一の花火師だぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私達はどういう仕組みか、どうやって行くかの説明を受ける。

 

 

 

 

 

 

その間にも、処刑の日取りまで14日になったので、ルキアが懺罪宮(せんざいきゅう)へ移されていたとは、私達はまだ知らない――

 

 

 

 

「こっ…こんな時に何の冗談言ってるんです?!

 

花火師だかなんだか知らないがそんなもので僕たちを打ち上げるなんてどうかして」

 

 

 

 

花火の打ち上げに雨竜君は反対らしい。

 

 私はここまで

 

空鶴さんに猛反発するけど、丸い球をぶつけられてやっと黙った。

 

「"霊珠核"だ。そいつに掌を押し当てて霊力込めてみろ。」

 

 

 

その球が渡った先には一護が。

 

空鶴さんに言われて球を持つ手に力を込めてみる。

 

 

…けど。

 

 

 

 

 

 

 

「…って。"霊力を込める"ってどうやるんだ?」

 

 

「?……………」

 

 

グッと力を入れてみたりするが、珠にはなんの変化もない。

 

一護は無意識に霊力を使っているので、意識的に力を込めるやり方を知らないのだ。

 

一護が霊力の込め方を尋ねると、空鶴は当たり前だと言わんばかりに答えた。

 

 

 

「鬼道撃つ時みたいに手先に力込めりゃいいだけじゃねえか!死神なら鬼道ぐらい使えんだろ?」

 

「それが…此奴は先刻話した通りの俄死神でな…

鬼道が全く使えぬのじゃ…」

 

「一護ができるのは我流の斬術と歩法だけだからね」

 

 

 

 

 

苦笑する私の言葉に驚く空鶴さん。

 

そりゃ…鬼道使えない死神なんて、中々いないし。

(苦手って人はいるだろうけど。)

 

私は習ったことないけど霊圧の込め方がわからないなんて

 

 霊能者の初心者でもあるまいしありえないな。

 

 

 

 

 

 

「しょうがねぇな…

岩鷲!手本見してやれ!」

 

 

 

というわけで、岩鷲が見せてくれるはずだったんだけど。

 

 

何故かここでもいがみ合う二人。

(勿論、一護と岩鷲ね)

 

 

 

 

そしてその喧嘩に、

 

 

 

「いい加減にしろ!!」

 

 

 

制裁を下したのは、勿論空鶴さんでした。

 

 

 

 

 

 

「づおおおおおッ!!」

 

 

霊珠核に霊力を込める岩鷲

 

 

その周りには霊子でできた球状のガードができた。

 

 

 

「な…何だ!?」

 

「これが砲弾だ。」

 

 

 

コツッとそのできた砲弾を叩く空鶴さん。

 

その後ろに見える岩鷲のその自慢げな笑みが、ちょっとムカつく…

 

 

 

 

ここで空鶴さんの説明が入った。

 

 

 

 

 

瀞霊壁は"殺気石"という、霊力を完全に遮断する鉱石でできている。

 

だからその壁に穴を開けて入ることは不可能。

 

それに、殺気石はその切断面からも霊力を分解する波動を出す。

 

だから、瀞霊廷はその波動で空から地中まで、球状の障壁が張り巡らせてある。

 

 

そんなところに私達のような霊子が突っ込んでいっても、消滅してしまうのがオチだ。

 

だからあの壁の向こうの気配が全くわからないんだ・・・

 

 

 

「そこでコイツの出番だ!」

 

 

 

ドンッ!と強く砲弾を叩いた。

 

 

 

 

「こいつは俺の開発した特殊硬化霊子隔壁発生装置!」

 

 

それに私達の霊力を込めれば、一時的に瀞霊廷の障壁を突き破るぐらいの砲弾ができるということ。

 

 

 

「そいつをこの花鶴大砲で打ち上げて…一気に内部に突入するって寸法だ!」

 

 

 

若干荒い方法だけど…

 

今はそれしか方法がない。

 

 

 

「何か質問のある奴は!」

 

「…………」

 

「え…えーっと…」

 

「無えなら解散!

地下練武場で霊力集中の練習に入れ!」

 

 

 

というわけで。

 

 

一護達は金彦と銀彦に担がれて連れて行かれた。

 

 

in 練武場

 

 

 

 

「違う!!!違いますぞ、一護殿!」

 

「『うおお!』ではなく、『ぬああ!』ってカンジで!!」

 

「うぬあ!」

 

「違う違う!『ぬああ!!』」

 

「わかんねーよ!もっとわかりやすく説明しろよッ!」

 

 

 

なんとも言えないこの練習。

 

一護が二人に教えを乞うてる間、私は少し離れたところに座禅を組んだ。

 

 

 一回してちゃんとできることを示したのは当たり前だ。

 

 本当不器用だな、一護のやつ。

 

 

「卯月ちゃん。何してるの?」

 

「あ、織姫。」

 

 

 

1本の斬魄刀を組んだ足の上に置いた時、織姫が近付いて来て、前にちょこんと座った。

 

 

 

「ちょっと今から話しようかなって思って。」

 

「話?誰と?」

 

「私の相棒と。」

 

 

 

ニッと笑ってみる。

 

織姫は頭に?マークを浮かべた。

 

 

 

「織姫。私今から何も反応しなくなるから。

無視するってわけじゃないんだけどね。ちょっと集中するから、周り見れないの。」

 

「え…?…うん?」

 

「そのうち戻ってくるけど、それまで一護達よろしくね。

織姫なら、あんなのすぐにできるからさ。」

 

「うん、わかった。」

 

 

 

へらっと笑って頷いてくれた織姫に笑い返して、すぐに集中し始めた。

 

 

 

 

 

 

    内なる世界に入りつつ周りの様子も見る

 

 

 

 「藍殊」

 

 『なんじゃ、』

 

 「藍殊は私の夢の理由知っている?」

 

 『知っているが教える気はないぞ。

 

 それを知るのはお主のためにももっと後で良い。』

 

 「なんか、お母さんみたいだな」

 

 『相棒と言って欲しいのう』

 

 

 私の疑問は解消されなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……数時間後

 

 

 

 

「織姫殿!!」

 

「おお!中々スジがよいですぞ!!」

 

 

 

「石田殿!!」

 

「おお!えらく細いが形にはなってますな!」

 

「なんかこの細さは性格的なものが原因ぽいですな!!」

 

 

 

「チャド殿!!」

 

「お…おおっ!!やや不安定ながらこれはパワフル!!」

 

 

 

「一護殿!!」

 

「……………」

 

 

 

 

霊珠核を持ったはいいものの、霊力が形にならず、まるで雲のように蠢くだけ。

 

 

 

「これは酷い!!」

 

「何ですかな、これは!?見るに堪えませんな!」

 

「いや全く!」

 

「これはもうやる気云々というより、元からの才能がナイとしか思えませんな!!」

 

「酷い!酷過ぎる!!」

 

 

 

二人にボロッカスに言われて、怒りと焦りで肩を震わす一護。

 

そして、最後の「酷過ぎる!!」という言葉にキレた。

 

 

 

「ゴフッ!!!」

 

「銀の字ィ!!」

 

 

 

霊珠核を猛スピードで銀彦に投げつけた。

 

 

 

 

 

「わかんねえっつッてんだろ!!もっと、こー、コツっぽいものとか教えろよッ!!

ちくしょーーー!!!」

 

 

 

 

この二人、教えていたと言っても、それはコツとかそういう実用的なものではなく、

 

ただ、込める時の声の上げ方の「感じ」を言っているばかりだった。

 

 

それなのに、ぼろ糞に言ったのである。

 

 

一護が怒るのも無理はないことだろう。

 

 

 

 

 

落ちていた霊珠核を拾い上げ、またその掌に集中しだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

一護はまだ砲弾作りに励んでいた。

 

 

そして、そこに夕飯の準備ができたと言って、ガンジュの子分がやってきた。

 

 

 

「井上さんも行くでしょ?」

 

「あ…あたしはまだいいや!

黒崎君待ってから行くよ!まだ全然おなかも減ってないし…」

 

 

 

ぐ~~

 

 

なんとも言えないタイミングで鳴り響いた腹の音。

 

その主は織姫で。

 

 

慌てて繕おうとする。

 

 

 

 

「井上」

 

 

 

しかし、一護が口を開いた。

 

 

 

 

「行っててくれ。俺なら大丈夫だから。」

 

「ち…違うよ!あたしももっと練習したいの!

お腹だってホント大丈夫だし…」

 

「織姫。」

 

 

 

 

 

にっこりと笑って、静かに言った卯月に渋々織姫も頷いた。

 

そして、チャドと石田君を連れてさっさと部屋を出て行く。

 

 

 

「卯月…サンキューな。」

 

「いえいえ、どういたしまして。それより…大丈夫なの?」

 

 

 

 

「一護って、本当にそういうの苦手だよねー。」と笑って言う卯月。

 

 

ピキリ、一護の額に青筋ができた。

 

 

 

 

「なんとかするに決まってんだろ!」

 

「へ~…」

 

 

 

ニヤリと笑うのが更に苛立たせた。

 

霊珠核を投げつけようと、片手に構える。

 

 

 

「イヤ~…ちょっとした冗談じゃん!」

 

 

 

アハハと笑って一歩後ずさる。

 

さっきから岩鷲が「オメーら、なにやってんだ…」と言う呆れ顔をしているのも、二人には目に入ってない。

 

 

 

「雛桜さん、君も・・・」

 

 「石田君。私も雨竜って呼ぶから、名前でいいよ。」

 

 「・・卯月さん」

 

 「さん付けもいらない。

 

 そんな気にするほど女らしくもないしねー。」

 

 自虐ネタを口にする卯月であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はひとり空鶴さんと夜一さんが話している場所にいった。

 

 

 「あの、相談があるんですけど。」

 

 「なんじゃ。」

 

 「私、内部の情報を探ったりとかしたいし、ちょうど死神の姿なので

 

 十三隊の隊員として潜入しようとおもうんですけど、

 

 隊の特色とかやっぱりあるんですか?」

 

 

 「あるが、よく気づいたの?」

 

 「教えてもらえます?

 

 隊長が好戦的でなくて、なるべく若輩の人が仕切ってるたいがいいんですけど・・・」

 

 「それなら、十一番隊と一番隊、二番隊はありえぬな。」

 

 「あと古株の四、八、十三もやめておいたほうがいいだろう。」

 

 「六番隊隊長や三番隊隊長とは接触しているしの(五番隊九番隊は絶対不可じゃし)

 

 十二番隊は隊の特色的に無理があるしの

 

 十番隊はどうじゃ?」

 

 「十番隊ですか・・。」

 

 

 「いいんじゃないか?隊長が就任したのはここ20年だし な。それにそれなら隊章もあるしな。」

 

 (なぜあるかというと一心さんの昔のが残っているとしておいてください。 By ユエ)

 

 「隊章ですか?」

 

 「ああ、それぞれの隊のシンボルである隊花が描かれておるんじゃ。

 

 例えば、この間ルキアを連れて行った六番隊の隊花は椿で特色は高潔な理性という具合にな。

 

 ちなみに十番隊は水仙じゃ。」

 

 

 水仙・・・

 

 私花言葉とか覚えないからなーー

 

 必要だったけどさ。

 

 全部 美月任せだったし。

 

 

 「あとでとってくるから、死覇装の衿裏に縫い付けておきな。」

 

 

 「はい」

 

 

 そんな会話がひと段落したとき、

 

 

 

 

 

 

 

 

ズ……ズズゥ…ン

 

 

 

 

 

大きな霊圧に、空気がビリビリと揺れた。

 

 

 

 

 

「この霊圧…一護っ!」

 

「あの野郎…一体何してやがんだ!?」

 

 

 

 

二人して一斉に走り出す。

 

大きな霊圧はまだ感じられたまま…

 

まぁ私の封印状態の霊圧にはとても及ばないけれどね。

 

 

 

練武場に辿り着いた時、

 

 

そこには腰を抜かしたガンジュと織姫達が居た。

 

 

 

「何だ!?どうした、岩鷲!?」

 

「ご…ごめん姉ちゃん…」

 

 

 

震えた声でごめんと言う岩鷲。

 

 

何があったのか、と背に冷や汗が伝う。

 

 

 

「俺…コツ教えてやっただけなんだ…

それが…こんなことになるなんて…思いもしなかったんだ…!」

 

 

 

その言葉を背に、私は練武場の扉に手を掛けた。

 

 

そして、それを思いっ切り引く。

 

 

 

 

開けたと同時に、大きな霊圧が顔面を直撃した。

 

  気のせい?この霊圧に虚のようなものが混ざってるような?

 

 本人気にしてないみたいだしいいっか

 

 

「「!!?」」

 

 

 

 

そこの中心に居た一護。

 

 

その周りには、普通の何倍もある砲弾の輪郭が覆っていた。

 

 

それを見た私と空鶴さんは驚きで一瞬目を見開く。

 

どこまで霊圧の蛇口の調節が苦手なわけ?

 

 

「バカ野郎!!何してんだてめえ!!!」

 

「一護!!その霊力を固めて!!その円を小さくするの!!」

 

 

 

ハッとしたように目を開く一護。

 

次には、霊力を押し固め、歴とした砲弾が作られていた。

 

 

それを見ていた織姫達も、一瞬戸惑うが、歓喜に満ちた顔になる。

 

 

 

 

「できたっ!!!」

 

「や…やったね黒崎くん!!」

 

「お…おォ!!」

 

 

 

織姫の声に一護が振り向く。

 

その瞬間、砲弾がジリッと音を立てた。

 

 

それを見て、空鶴さんが怒鳴り声を上げる

 

 

 

 

「バ…バカ野郎!!急に集中を解くんじゃねぇっ!!」

 

「…え?」

 

 

 

ズ……

 

 

 

 

ズドオォ…ン…

 

 

 

 

 

 

「す…凄い、爆発…。ってかバカ」

 

「あ…ありがとう、茶渡くん…」

 

 

「集中乱したらドカン」というのは、脅しじゃなくて本気だったらしい。

 

本当にやらかした一護を空鶴さんが踏みにじる。

 

 

 

 

「ありゃりゃ…一護、怒られてばっかだ。自業自得だけど」

 

「そうだね。」

 

 

 

笑った織姫の顔は、さっきまでよりずっと明るい顔だった。

 

 

 

 

 

 

 次の日

 

 

「よし!揃ったな!」

 

 

 

上に行けば夜一さん達が待ち構えていた。

 

 

私はその姿を見て、笑ってしまわないように、口元を手で抑えた。

 

 

 

「どうした夜一さん?しっぽがよく曲がる歯ブラシみたいになってんぞ?」

 

 

 

一護の発言に、卯月、織姫、雨竜、茶渡は言葉にならない叫びを上げる。

 

 

 

…折角の努力が一護のせいで無に帰す所だった。

 

しかもしっぽをあんな形にしてしまった張本人の一護が指摘するって…

 

 

 

「一護。あれ、一護がやったんだよ。」

 

「俺!?」

 

 

 

夜一さんに突入の心得を聞かされてる途中で、一護は緊張の糸が切れたのか、いきなり寝てしまった。

 

 

しかも夜一さんのしっぽを鷲掴みにして。

 

 

 

 

「それを本人が指摘するなんて…あんた面白過ぎ!!」

 

「とにかく…極力触れない方が賢明だぞ…!」

 

「わ…わかった…」

 

 

 

 

「おい、岩鷲のヤツはどうした?」

 

 

 

そんな一護達のやり取りを気にもせずに話し掛けるのは空鶴である。

その問いに一護が、"下で何か読んでた"と答えると、タイミングを見計らったように岩鷲が現れる。しかも服まで動きやすいものに着替えている。

 

 

 

「…何だ、そのカッコウは?」

 

「岩鷲様専用バトルコスチュームだ!」

 

「(素直に戦闘服って言えばいいのに…何故にカタカナ語?尸魂界って純和風なイメージなのに)」

 

「バトルコスチュームだあ?なんで見送りのてめーがそんなカッコ…」

 

 

 

一護が怪訝そうに聞くと、岩鷲は真顔になり、次の瞬間には一護に詰め寄る。

一瞬、また喧嘩になるのではと思ったが、岩鷲は何もせず、衝撃的な言葉を放った。

 

 

 

「俺の兄貴は!死神に殺された!!」

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

「!!岩鷲、てめえっ…!」

 

「姐ちゃんも黙って聞いててくれ!!」

 

 

 

制止しようとする空鶴の声を遮り、岩鷲は話を進める。

 

 

岩鷲の言葉や声からは

 

尊敬

 

憧れ

 

怒り

 

哀しみ

 

悔しさ

 

様々な感情が伝わってきた

 

 

誰もが岩鷲の話に耳を傾ける。

そうさせるだけの力が言葉にはあり、また、それと同じだけの決意も十分過ぎるほど一護達には感じとれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

突如、間抜けな声を上げたのは、一護だった

 

 

 

「俺らはそれぞれ必死こいて練習して、砲弾作れるようになったけど…夜一さんはできるのか?」

 

 

 

途中、「必死こいて練習してたのは君だけだろ。」と、石田君が突っ込んだけどスルーされた。

 

 

問題を解決すべく、夜一さんが球の上に乗る。

 

 

 

すると、一発で綺麗な砲弾を作った。

 

 

 

それを見て、一護が激しく落ち込んだ。

 

 

 

 

「悔しいか?悔しいのか?

自分があれ程苦労させたものを、儂がいとも容易くできてしまったことが、悔しくてたまらんのか?」

 

 

 

 

夜一さん嬉しそう…

 

多分、しっぽの事、根に持ってたんだな…

 

 

 

織姫の隣でそんな事を思っていると、一護がガバッと顔を上げた。

 

 

「卯月は!?」

 

「は?」

 

「お前、練習サボってたじゃねーか!作れんのかよ!?」

 

 

 

夜一さんが作れてショックだからって、私に回さないで欲しい。

 

 

それに私は断じてサボった訳じゃないぞ!?

 

 

 

「んじゃ、その球貸してよ。」

 

 

 

一護から球を受け取った。

 

 

そして……

 

 

 

 

 キイィィン

 

 

ほとんど間も開けずに

 

綺麗な丸い藍がかった色の砲弾ができた。

 

 

それを見て一護が更に落ち込む。

 

 

 

 

「どーよっ!悔しいでしょ!」

 

 

 

そんな一護をアッハッハと笑い飛ばす。

 

 

なんか、気分良いよ、これ!

 

 

 

 

 

でも、砲弾の準備中それは起こった

 

 

 

 

  「失礼しまーす。空鶴さんー」

 

 玄関先で女性の声がした。

 

 

 「げ、隠れよ。」

 

 卯月の一声でみんながみんなもの影に隠れる。

 

 私と雨竜以外まともに霊圧消せてないけど。

 

 

 

 

 入ってきた人を隠れて観察すると、

 

 薄い茶色の髪を緩く一つに三つ編みをし、こげ茶色の瞳をした、20代前半ほどの女。

 

 温和な雰囲気を漂わせていて、その身につけているのは、

 

すごく改造しているが死覇装だ。

 

 両肩の、布が一部を除き、スリットのようになり、ノースリーブに着物の袖をつけたような死覇装。

 

 

 

  

 

 「何しに来たんだよ、魅」

 

 

 まさか、青野が私たちのことを話した?

 

 

 「空鶴さん。

 

    あの須王来てませんよね?」

 

 「来てないが・・」

 

 「そうですか・・・

 

 じゃあどこなんだろう。

 

 旅禍のことで、隊で方針を隊長が話すのに・・・ん?

 

 結構強い霊圧?

 

 

 そこにいるの誰?もしかして旅禍?」

 

 

 口を封じなきゃ・・・っっ

 

 

 私は彼女の背後から、羽交い絞めにする。

 

 

 「え、全然感じなかったんですけどーー

 

  って、雛桜 卯月さん?」

 

 「ってどいつもこいつもなんで私の名前知ってるのよーーー私に会う死神は?!

 

 倒しにくいったらない・・・。」

 

 基本私は自分本位だ。

 

 自分と関係ない私と敵対する人間が死のうがどうしようが、姉の知り合いをひどい目に合わせるのは、気が進まないというか、

 

 極力避けたい。(ひどい? いやこれくらい普通の思考ですよね)

 

  

 

 「空鶴さん、この人をどうにかしてくださいよーー。」

 

 「空鶴さん。この人誰?」

 

 

 空鶴さんが言う前に

 

 「神代 魅。あなたのお姉さん、美月隊長の部下です。」

 

 

 「え、あの、姉が死んでから3年くらいしか経ってないのですが?」

 

 「雛桜 美月 お姉さんでしょ。

 

 私の隊 零(れい)番隊の隊長だよ。」

 

 

 「零番隊・・?

 

 そんなのなかったよね」

 

 この中では一番信用できる夜一さんが言う。

 

 「零番隊、それが復活しとったのか。

 

 

 

 美月。零番隊は存在するぞ。

 

 一言で言うなら実質護廷最強の隊だ。

 

 隊員も10人足らずの精鋭部隊じゃ。

 

 20年前解散したはずじゃが復活しとったのか。」

 

 「最強の部隊・・・(美月ならありえなくないのが怖い)

 

 あ、もしかして昨日の青野輝さんももしかして・・・」

 

 「青野さん?

 

 青野さんならうちの五席だけど。」

 

 「なんだ、5席か。」

 

 なんてバカなことを言う実力も把握できない一護(バカ)

 

 「彼女、前は六番隊副隊長だったんですが?」

 

 「六番隊・・・(ルキアの兄の隊)」

 

 

 「ちなみに私は七席です。

 

 言っておきますが私副隊長レベルはありますからね。」

 

 

 

 「それに、橙色の髪の身の丈ほどの刀を持つ死神・・

 

  あなたか。

 

 黒崎一護。

 

 朽木ルキアが、死神の力を譲渡した人間。

 

 

 美月隊長も、この処刑を阻止すべく動いてるので、

 

 零番隊は一応敵対しませんが表だって味方もしません。

 

 頑張ってください。では、要件は終わったので。」

 

 

 そして彼女は消えた。

 

 

 驚愕の事実ばかりを残して・・・・

 

 

 

 

 

  

 

 

 

驚愕が収まった頃、

 

私達は筒の中に入った。

 

 

「いいか、瀞霊廷に入ったら決してはぐれるな。

隊長格と出会ったら迷わず逃げろ。

 

儂等の目的はルキアの奪還、それのみじゃ。

絶対に、無駄な危険を冒してはならん!」

 

 

 

皆、真剣に夜一の言葉を聞き、心に留める。

 

7人(内1匹)分の霊圧だけあり、砲弾はすごい強度になっていた。

その間も、花鶴大砲の外では空鶴が詠唱を続けている。

 

 

 

 

直に夜が明ける。

 

それを合図に打ち上げの式が始まる。

 

 

 

 

「"彼方"!

"赤銅色の強欲が36度の支配を欲している"!!」

 

 

 

筒の外から聞こえてきた空鶴さんの声。

 

 

それを合図に私達も砲弾を作る。

 

 

 

 

 

「 “72対の幻”“13対の角笛”

 

“猿の右手が星を掴む”!! "25輪の太陽に抱かれて 砂の揺籃は血を流す"

花鶴射法二番!!

"拘咲"!!!」

 

 

 

 

 

最後の言葉と同時に"ドンッ"という大きな音がして、卯月達は空に打ち上げられる

 

 

 

「…気をつけて行ってこいよ……岩鷲…」

 

 

 

 

だから、空鶴さんが心配そうに空を見上げていたのを、私も岩鷲も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

砲弾の中からも外が見えるので、それなりに絶景だ。まぁ高所恐怖症なら地獄だろうが。

 

 

 

 

 

 

「なんか…内部は思った程衝撃はないんだな…」

 

 

 

安定感のある打ち上げに、一護が呟く。

 

 

それを聞いた岩鷲は、軽く冷や汗を流して答えた。

 

 

 

「バカ野郎…これからだぜ!」

 

「え?」

 

 

 

調度その時に砲弾が頂点に着き、次の瞬間には猛スピードで瀞霊廷に向かって飛ぶ。

 

 

その速度はジェットコースターの比ではなく、あっという間に空鶴邸が見えなくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああ!!!」

 

 

 

 

急に進行方向を直角に曲げ、猛スピードで飛びだす。

 

 

 

 

そんなことを考えていると、岩鷲が何かを取り出した。

 

 

 

「何してるわけ!?」

 

 

 

「『継の口上』だ!花鶴射法・二番は二段詠唱なんだ!

打ち上げから方向決定までを「先の口上」で、その後の加速と軸調整を「継の口上」でコントロールする!」

 

 

 

そしてガンジュから無事突入するための注意を受けた。

 

 

 

 

 

「この砲弾の軸を安定させる必要がある!そのためには全員の霊力の放出量を均一に調整しなくちゃならねえ!」

 

 

けど、ガンジュは術式に集中するため、霊力調整に集中できない、とのこと。

 

 

 

 

 

「そこでだ!皆俺の霊力に合わせてほしい!」

 

 

 

球に触れていれば、それぞれの霊力がわかるから、と続ける。

 

 

 

 

 

「ミスッたら終わりだ!頼むぜ!」

 

「はい!」

 

「…わかった。」

 

 

 

ガンジュの言葉に緊張感を漂わせ、それぞれで返事を返す。

 

 

 

 

こういう微微調節苦手なんだよな~~

 

 

私めちゃくちゃ、霊圧強いため、皆に合わせるのに少し苦労する。

 

 

 

 

「く…黒崎君…っ、ちょっと…多い…っ!」

 

「そ…そうか?わ…悪い…」

 

 

 

「黒崎!もう少し落とせ!」

 

「わ…わかってるよ!これでも結構減らしてんだ!!」

 

 

 

「…一護…」

 

「わ…わかってるってば!!」

 

 

 

 

余りに霊圧操作が下手くそな一護に皆から声を掛ける。

 

けど、全然それでも下がらなくて…

 

 

 

 

「……一護って、本当に下手糞。」

 

「だー!!下手糞言うな!!

わかってるって!今減らしてんだ!ちょっと待ってくれよ!」

 

 

 

 

そしてこの状況にイライラしている人が一人。

 

 

 

 

「バカ野郎!!同じ行2回読んじまったじゃねえか!!!」

 

「何だよちくしょう、それも俺のせいかよ!?」

 

「てめーがギャーギャーうるせえから気が散ったんだろうがボケェ!!」

 

 

 

詠唱ミス。

 

後、

 

喧嘩発生。

 

 

それをあははと笑いながら見ていると、不意に下に見覚えのある景色が見えてきた。

 

 

 

 

 

「皆!外、外!!」

 

 

 

私の声に皆が気付いたのか、

 

 

 

「…せ…瀞霊廷だ…!!」

 

 

 

と声が上がった。

 

 

 

 

そう、瀞霊廷は目の前。

 

この不安定な状態で。

 

 

 

 

「こうなっては仕方ない!!全員でありったけの霊力を込めるんじゃ!!少しでも砲弾を堅くしろ!!!」

 

「行ってくれえ!!!」

 

 

一護の願うような声と共に、砲弾は瀞霊廷に突入した。

 

 

 

瞬間、ふわっとした感覚が体を襲う。

 

 

 

どうやらシールドを突破して、中に入れたようだ。

 

 

 

 

 

「じき渦を巻き破裂して消滅する!その時離れておったら衝撃で皆バラバラに飛ばされる…」

 

 

 

 

そう夜一さんが告げた途端襲う浮遊感。

 

どうやら、それが始まるらしい。

 

 

 

 

「夜一さん!!悪いけど私…」

 

「案ずるな!!」

 

 

 

行くなら行け、と。

 

夜一さんの瞳が語っているのを目に、渦に呑まれるのに拒むでもなく、流れに身を任す。

 

 

 

 

「卯月!!」

 

「一護…大丈夫!!心配しないで!」

 

 

 

手を伸ばす一護に手を伸ばすでもなく、私はそのまま真っ先に飛ばされた。

 

 

 

 

砲弾は五つに別れ、四方に飛び散る。

これから、瀞霊廷でそれぞれの戦いが始まる。

 

 

 

         TO BE CONTINUED

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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