死神達の恋歌   作:yatenyue

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バレンタイン 当日  version ルキア(イチルキ)と後日談

紫紺の髪は揺れる

 

 

 

 バレンタイン

 

   

           ルキア(イチルキ)

 

 

 

 大道寺三席に教えてもらって作ったチョコレートお菓子。

 

 

 橙色の袋と黒のリボンで結ったそれを持って義骸に入る。

 

 

 

 あやつに会うにはこうするしかもうない・・・

 

 

 

 あやつに全ての責任がかかってしまった。

 

 

 でも、生きている人間としてのあやつのことを考えるとこれが一番いい。

 

 そう思ってしまう。

 

 生きているあいつのことを考えるならこれを渡さないほうがいいんじゃないかと考えてしまう

 

 

 本当に私らしくない。

 

 あやつの前では私はひとりの女になる。

 

 そう、一護の家の前に立ち尽くしていた私。

 

 それに声をかけたのは、私が死神だと知っている双子の片割れだった。

 

 「ルキアちゃんじゃん。

 

 一兄に会いに来たんでしょ。入りなよ。」

 

 「う。うむ」

 

 

 

 

 

          《side 一護》

 

 俺の霊力が失われてもうひと月が経つ。

 

 最初は死神代行なんて冗談じゃねぇって思ってた。

 

 でも母さんの死の真相を知って、俺のような存在を増やしたくないと思った。

 

 

 俺にとってルキアはいるのが自然な相棒だった。

 

 ルキアも女なんだ。

 

 そう感じたのは皮肉にもあいつが連れされるのを黙って見ているしかなかったの時

 

 涙をこらえて、顔をしかめて、必死に俺を守る言葉を紡いだあいつ。

 

 その時ほのかな小さな思いが形を作らずにそこにあった。

 

 戦いを乗り越え、双極の丘であいつを抱えたとき

 

 こいつこんなに軽かったんだ、華奢だったのか

 

 そう思った。

 

 いつもどおり相棒として接しつつ、女であるあいつが心を占めていった。

 

 華奢で

 

 小柄で

 

 口が悪いけど照れ屋で

 

 素直じゃなくて

 

 笑顔がとても眩しくて

 

 

 

 

 あいつの姿が見えなくなってその思いははっきりしてしまった。

 

 俺はあいつが好きだったんだ。

 

 いや今でも好きだ。

 

 見えない俺はあいつが危険な目にあってもわからない。それがたとえ目の前だろうと

 

 今の俺はあしでまといでしかない、死神であるあいつには

 

 

 

 

 

 玄関でひとつ月前まで見るのが当たり前だった靴を見たとき

 

   期待してしまった。

 

 

その予感は、いくつかの証拠を以って現実のものになる。

まずは、いつもは2つしか並んでいない玄関に3つ目の靴が並べられていること。

もう一つは、リビングへ通じる扉から、3人の賑やかな声が聞こえてくること。

 

 

「・・・」

 

その途端、じわり、と上がる体温。

靴を脱ぐ動作と一緒に、なぜか玄関の姿見の鏡で身なりの確認してしまう。

これから出かけるわけではなく、いま家に帰ってきたのに、だ。

何やってんだか、と高鳴る心拍数を容赦なく黙らせて部屋の奥へと向かう。

 

 

 

 

 俺が入ったとたん、お邪魔だろうからと、毎年くれるチョコレートを渡して去っていった妹たち。

 

 聞くのが照れくさくて

 

 

「・・・で、お前はなんでここにいるんだ?」

 

「む、なんだその言い方は。まるで私がここにいてはいけないような言い方だな?」

 

「そこまで勝手に解釈するなっつの。だいたい、お前はホイホイとこっちには来れないんだろ?それなのに、こっちの服着て、遊子と夏梨と一緒に賑やかに騒いでたら、そりゃなんでって思うぜ」

 

「いや・・・楽しくて、な。つい騒いでしまった」

 

何かを噛みしめるかのようなその表情が、以前ルキアがこっちで暮らしてた時の表情を思い出させた。

 

妬みとか思慕とか、そんなんじゃなくて、ただ、この時間をこうして過ごせることに対する喜びを含めた、優しい表情。

 

 

「お前の用って、なんだったんだよ?遊子や夏梨と遊ぶことか?」

 

・・・これじゃまるで誘導尋問のようだ。

今日この日が、何の日かなんて、学校で大量の義理という気持ちを押し付けられたら、さすがに俺だって分かっている。それでもさっきすっとぼけたのは、ちょっとした抵抗。と、動揺を隠すため。

玄関に入った瞬間から期待をしていた、なんて悟られたら。笑いものになるのがオチだから。

 

 

 

赤い顔をして押し付けられたのは

橙色の袋と黒のリボンで結ったプレゼント。

 

 

 

「大道寺三席に教わって作ったのだ。

 

 チョコレートというのを料理で扱うのは初めてだったものでな、

 

 見た目はともかく味は大道寺三席に及第点をもらったので保証する。」

 

 

 

中に入ってたのはクッキーだった。

 

 「絞り出しチョコレートクッキーとチョコチップパンプキンクッキーだ。」

 

 

恋人未満友人以上。

 

 

      今はこれで十分だ。

 

 

 

 

 

 

(うん、うまいな)

       (だろう【超笑顔】)

 

 (///(かわいすぎだろう))

 

 

(力尽きたBYユエ)

 

http://www.choco-recipe.jp/milk/recipe/187.html?ref=level_low(絞り出しチョコレートクッキー)

 

http://www.choco-recipe.jp/milk/recipe/183.html?ref=level_low(チョコチップパンプキンクッキー)

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バレンタイン 後日談


一日遅れで(当日はそれぞれ渡すだろうから)もらった皐月のチョコお菓子。

 
 うん、美味しい。

 自分のより皐月のを先に食べられたら絶対敵わない・・

 生前プロの料理人だった皐月には叶うはずないけどね・・


 「須王ー」

 「なんですか?」

  「魅から、チョコもらった?」

 「義理ですが、チョコキャラメルを」

 「(まだ告白できずか・・無意識カップルもいい加減にしろよ・・)(人のこと言えなかったからね BYユエ )」

 「由宇は、吉良さんに渡したんですの?」

 「もっち、大切な人だからね。皐月は檜佐木副隊長に渡したの?」

  「みんなと同じ義理ですわ」

 「(ふーん、先は長そうだな)そういや、皐月砕蜂にもレシピ教えたのか?」

 「?いえ知りませんけど。」

 「(つーことは自分で調べたってことか。かわいいやつ)」





 招集つかなくなるのでこれで脱色編終了







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