死神達の恋歌   作:yatenyue

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閑話  誇りを守る戦いと命を守る戦い


≪side 風≫



 ――6月 17日――

 
 姉とその友人の命日が過ぎて数日。

 大切な親友が死んで、やっと1年。

 姉様が死神として過ごしていると知って2年以上経つ。

 
 ”逢いに来る”

 その約束は未だ果たされていない。

 

 命日前後は本当に気がめいる。

 いくら、亡くした痛みを乗り越えても

 

 この日周辺は、恋人の留依ともあまりあわない。

 いくら、カッコ悪いところを見せたといっても、やはり見られたくない。

 それとなく気を使ってくれて
 こういう弱いところを何でも見せられた

 親友の明良。


 彼も イナイんだな、もう。





 その足は自然と姉の死んだ場所へと向かう。

 その近くの墓地から大きな物音が耳に届いた。

 

 「この気配・・虚?

 それにその近くに死神?

 本当に気が利かないよな。」


 姉を知る人かもしれない。

 というか目立つし知っている可能性高いよね、うん。

 そう考え、そちらに向かう。


 そこで見たのは、鬼を失っている橙頭の青年死神と、白ベースのワンピースの少女それに、
死神の中年のおじさんの姿だった。



 「‥虚は倒し切れず逃げたね」



      「誰だ?」

 風の、彼の気配に気づいた死神は言う。(中年の方)

 
 「‥人間ですよ。」

     

 普通に姿を現す。

 「ただのか?」

 「いえ? 僕は、風術師です。

 あの、ある死神の方に伝言があるんですが…」

 「話によるが…」

 「如月 海依さんに。」


 

      死神にとってそれは零番隊副隊長を示す名。


 「なぜその名を知っている」


 中年死神隠密機動 西堂 榮吉郎が、殺気を放つ。

 







  「僕の名前は 如月 風。

 如月海依は、約4年前に死んだ僕の姉ですが‥?」

 
 

 「あの・・如月副隊長に弟が・・?」

 

 「伝言ですが


    約束を守ってください、待ってます。

 伝えてください。」

 と。







――そこにいたのは、

 痛みを伴う哀しみを乗り越えた少年だった。







太陽の導き 一章 閑話 と二話 多量虚襲来 ≪前≫

織姫の兄虚襲来。

 

 

改造魂魄侵入。

 

胸糞悪い、犯罪者虚。

 

 

 

 

いきなりたくさんの虚が空間を突き破ってでてきた。

 

 

 

第二話 多量虚襲来 ≪前≫

 

 

 

 第一学年一学期期末考査上位成績者

 

―――――――――――――――――――――――

 

順位   氏名       クラス 得点

1     雛桜卯月     3   900

2     石田雨竜     3    896

3     国枝 鈴      3   892

4     井上織姫     3    887

5     南部研一郎    8    841

6     寺澤 敬    5    829

7      草間 笑子    1   816

8     永瀬 仁平   6   786    

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 みんな、1、2位は自分に全く関係ないので見ていない

 

 

 「ほぉ――っ4位か。相変わらずやるねぇあんた。」

 

 たつきに褒められる織姫。

 

「えへへー」

 

 

 「すごーい。織姫ってこんな頭よかったの?!」

 

 「とてもそうは見えないでしょ。けどこの子中学の時から勉強できるのよ。」

 

 「鈴は3位かぁ」

 

 「文武両道とはこのことだね。」

 

 「入学式の時新入生総代もあの子だったでしょ。」

 

 「そうなの?! そりゃ先生たちも頭上がらないわけだわ。あの子陸上部でインハイにも出るんでしょ。」

 

 「そうなんだ? すごいなー・・」

 

 「まーインハイならあたしも出るけどさ」

 

 たつきが言った途端に一瞬二人が止まった。

 

  「「えぇーーッ!!?」」

 

 「あれ 言ってなかったっけ?5月の都大で優勝したんだよ。あたし。今年はすごいよ。

 

 うちの空手部!

 

 男子も団体でインハイいくし、何つっても〝インハイ3連覇する女”のあたしが入部したんだしね。」

 

  

 

 たつきが空手部の話が終わったのとほぼ同じくらいに

 

 「たつきー!!おっはよー。」

 

 「やっと来たか。馬鹿卯月。」

 

 「あ。テスト結果貼り出されたんだ。」

 

 「あんたそういや何位だったの?(個人には昨日配られてる)」

 

 

 

 

「言ってなかったけ?」

 

 全員「いってない」

 

 「あれ、」

 

 指した先は一番上

 

 

順位   氏名       クラス 得点

1       雛桜卯月     3   900

 

 

 

 

 

 「一位ー!!?しかも全部満点っ?」

 

 たつきを除いて全員が驚きの声をあげる。

 

 「あんた、吹っ切れたんだ。

 

 いままでわざと間違ったりして、二十位くらいにいたのに・・・」

 

 「ま、ね。」

 

 「吹っ切れたって何が?卯月ちゃん。」

 

 「あー、まっいっか。噂に流されず友達になってくれたあなたたちなら話しても。

 

 ただしあとで屋上でね。

 

 水色たちにもはなさなきゃ不公平だしね。」

 

 

 

 「おい、本当に言うのか」

 

 「うん」

 

 ほとんど、かというのと同時にはっきりと私は返事をした。

 

 「ところでよ、石田・・ウ・・ウィリー?「誰それ。中国人かよ。

 

ほんと名前覚えるの苦手だよね。あんた。一応同じクラスに石田雨竜って子はいるけど?ほら(滅却師の子だよね)」

 

 

 

順位   氏名       クラス 得点

1     雛桜卯月     3   900

2     石田雨竜     3    896

 

 

 

 (2、2位!!)

 

 (なんか一護の思考ってわかりやすいやらわかりにくいやらわからないな。

 

 

美月も言ってたけど)

 

 

 「そーだよ、黒崎くん」

 

 「井上」「織姫」

 

 

 

「あいつのこと知ってるのか?」

 

 「知り合い?」

 

 

 「だって私と同じ手芸部だもん、ほら」

 

 

 

 本当にいるよ

 

 黙々となんか書いてるし(洋服のデザインだったり)

 

 でも、一人で周りに誰も近づきたがってないし・・

 

 

 

 あ、みちるが破れたぬいぐるみ持っていった

 

 学校に持って言っていいのか

 

 まぁ、先公のいうことなんて聞きゃしないけど

 

 石田君がペンケースのような細長い箱を取り出す。

 

 「織姫あれ何?」

 

 「石田君の裁縫セットだよ。」

 

 ほーう。

てか   早っ

 

 私なら無理。

 

 普通の学校スキルしかないし!!

 

 美月でもあんなに早くないよ。

 

 

 

 まるで人間ミシンだな。

 

 「ありがとう、石田君」

 

 みちるってば可愛い。

 

 

 「別に・・・大したことじゃないよ」

 

 何アレ? 照れ屋さん?

 

 一護とは相性悪そうだな。

 

 

 

**

 

 屋上  昼休み

 

 

 「じゃあ、話を始めようか」

 

 

 

 私は一息置いて話し始めた。

 

 

 

      ・・

 私には姉がいたんだ、双子の姉が・・・

 

 

 

 「へぇ、今どこのガッコ「ドガッ」ってー」

 

 圭吾がたつきに殴られた。

 

 私今更それくらいで気にしないんだけどな

 

 

 

 

 

 

 「名前は美月。

 

 すっごく頭良くてさ私なんかと違って

 

 IQなんて300もあったんだよ。

 

 そのくせ運動神経もめちゃくちゃいいしさ。

 

 私はIQは200で

 

 比べたら運動神経も私の方が良かったんだけどね。

 

 私はどういう能力かは言えないけれど

 

 その才能がなかった(と思われていた)んだ。」

 

 

 

 

 ルキアちゃんはなんとなくその才能がなにかわかったようで

 

 複雑な顔をしていた

 

 

 

 

 

  「今から3年前の私たちが中学一年の5月に

 

 その日さ、私だけ剣道部の祝勝会に出るからって

 

 応援に来てた美月はそのまま帰ったんだよね。」

 

 

 

 

        『仕事しに』という言葉は飲み込んだ。

 

 

 私たちが言う

 

   任務は家の仕事

 

   仕事は、それぞれがしている副業

 

  なんだけど、私たち双子にとって仕事はもう一つ意味がある。

 

 二人が

 

    真咲さんが死んだあの時から決めたこと

 

 毎日一護がいる別方向で、霊圧を撒き餌のごとく発し

 

      それに引き寄せられた

 

  この近辺の虚を滅する

 

 

 それが日課だった。

 

 

 

   「 いつもは二人でしていた。

 

   何をするにも二人一緒だった。

 

 

   その日までは

 

 

   美月はさ、その日死んだの。

  

 殺されたんだ。その冷たくなった体を見つけたのは私。

 

   もちろん、犯人を恨んだよ。

 

 まだ、捕まっていないけどね。

 

 

 

 圭吾なら知ってるかもね

 

  姉にも私と同じように二つ名があってね

 

 微笑の戦姫ってよばれてたの。」

 

 

 虚にとは言わず、口を噤んだ。

 

 

 みんな私の話に無言だった。

 

 普通の子には非日常なことだったかな?

 

 

 

    皆(卯月にそんな辛い過去があったなんて)

 

 

 いつも笑顔という仮面で素顔を隠す

 

 彼女の本当の素顔を見た気がした。

 

 

 

 

 

 「美月さんが死んだなんて同じ町内の私も知らなかった。

 

 え、だって転校したって先生が・・」

 

 

 「あー変死扱いだからね、

 

 我が雛桜家に泥をとかはっきりと言う親戚もいたし。

 

 一応権力者の家だからねうち、もみ消したよ。

 

 そんな外聞の悪くなるようなこと。

 

  

  ほんと胸糞悪い。」

 

 

 

 

 

 

 「悲しくないの?」

 

 

 交通事故で同じ中学生時代兄を亡くした織姫が言う。

 

 

 悲しくない?

 

 そんなはずないじゃない。

 

 

 本当は

 

 

    こんな世界いたくないくらい

 

 

    哀しい

 

       悲しかった。

 

 

 

 叫んでやりたかった

 

 

    でも、

 

 

    そう演じてきたのは自分だから。

 

 

 

 

 織姫の問いに答え用を口を開く前にたつきが答えた。

 

 

 「この子、あいつが死んでから半年位人形のように無理に笑ってたんだよ。

 

 まぁ、幼馴染の私や一護くらいしか気づかないような完璧な笑みだったけどね。

 

 泣きたかっただろうにさ。」

 

 

 

 

 気づかれていないそう思ってたのに。

 

 「立ち直ったと思ったら、

 

 中学2年から3年まですっごい荒れてたし。」

 

 

 あーー

 

 

    それは気づかれても仕方ないかも・・

 

 

 

 

 でも、気にかけてもらえた。

 

 

 そう思ったその時

 

     私の中で張り詰めていた糸が切れたのか

 

 

 私の頬を一筋の雫が伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ありがと、たつき。

 

 でもね、私泣かないの 」

 

 先ほどの涙はもうない。

 

 「なんで 無理するんだ。」

 

 ルキアちゃんが言う。

 

 

 「美月私に歌を残してたの。

 

 私宛の手紙の中にさ。

 

 美月作詞で題名は

 

    《離れても》。」

 

 

 

 そして彼女は音の葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつかこんな日が来ると予感してた

 

 私たちはふたりでひとつだった

 

 雨の日も悲しみの日もどんなときでも

 

 どんなことがあってもねぇこの絆は切れないものと

 

 そう思っていたのねぇ

 

 私たちの道(ウンメイ)は分かれてるそんな気がした

 

 この絆は切れてしまうそんな気が

 

 

 

  だけどね もしも私がいなくなっても

 

 悲しまないでいつかまた逢えるから

 

 いつも心は共にあるから信じて・・

 

 離れても・・

 

 いつか重なる運命が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「って歌、美月の遺体の内ポケットのメモ帳に挟んでたの。

 

 生きてた時は見ないでって言ってたからたぶんそのときからこれ書いてたんだろうね。」

 

 

 

 

 

 みんな無言だった。

 

 そのくらい雰囲気を打ち消すかのように手を叩き

 

 「はいはい、暗いお話はこれでおしまい

 

     ご飯食べよ。」

 

 

 

 

 

 

 **

 

 1-3  SHR中(ショートホームルーム)

 

 タッタッタッタ

 

 

 軽やかな、軽い音が響く。

 

 音が出ないよう気をつけて走っている音が聞こえた。

 

 これ訓練された動きだし、この霊圧。

 

 

 その足音は少しずつ大きく近づいてくる。

 

 

 

 

   これ、留依?

 

 

 バンっ

 

 

 

 この教室の後ろの扉が勢いよく開けられた。

 

 力加減がうまくできないな、どうしたんだろう

 

 すごく動揺してる?

 

 

 「卯月姉様!!」

 

 姉様!?  周りの奴らはそう思っただろう。

 

 今時そんなふうに姉を呼ぶ人はそうはいない(お金持ちを除き)

 

 「どう「どうしたんだい?何か用事があるの?」」

 

 私の言葉を遮り、越智先生が訊ねた。

 

 

 「急ぎのようなんです。騒がしくてすいません

 

 卯月姉様、雛桜 卯月を連れて帰りたいんですけど。」

 

 

 「留依、どうしたの?こっちこっち」

 

 そばに近づく 留依。

 

 近づくその瞳の下は赤くなっている。

 

 カラコンで視力下げて普通の人並みにしてるから そばに近づくまで気づかなかった。

 

 

 

 私の顔を見て、ついに我慢が切れたのか私に抱きついて泣きだしながら言った。

 

 

 

 「おとうさまが 死んじゃった・」

 

 

 「そうおじ様が。(私に優しくしてくれた人だったのに 異端な私を)

 

 お父様なんて言ってた?(どうせ一族の代言しか言わないだろうけど)」

 

 そう言った瞬間留依の体はビクッと揺れた。

 

 

  「宗主は・・ 次期宗主ということを忘れるなと、といって「もう言わなくてもいいわ」」

 

 思ったとおりのことを言ったのね。お父様は。

 

 私は越智先生の方を向き

 

 「先生 忌引で早退します。

 

 留依行きましょ。」

 

 「はい・・」

 

 

 

 

           《side たつき(竜貴)》

 

 

 バンっ

 

 そんな音を出して入ってきたのは、黒い高そうな着物を身にまとった黒髪の女の子。

 

 その子は卯月を姉様と付けて読んでいる。

 

 卯月に美月以外の姉妹はいないはずだ。

 

 卯月はあの子の父さんのことを〈おじ様〉と読んでいた。

 

 卯月の従姉妹か・・、そう思い、一瞬美月を失った時の瞳に重なった。

 

 

 やっぱりこの子はギリギリまで溜め込むんだろうな と。

 

 

  

 

 もう葬式は終わった。

 

 って言っても形だけだけど。

 

 だって私の家は、火葬も土葬もしないんだから。

 

 

 「さようなら、おじ様。安らかに。」

 

 

  その部屋は赤い部屋。

 

 一瞬血のように思えるが違う。

 

 

 

 朱き紅き朱き炎で覆われた部屋。

 

 

   ここは炎の間。

 

 

 彼女ら 雛桜家が最期に眠る場所。

 

 死んでもなお普通には朽ちない精霊術師の肉体。

 

 自らの仕える神の御元へと還るため

 

それぞれのやり方で遺体は葬られる。

 

 如月家をはじめとする風術師一族は

 

本家地下にある風の力が溢れる微生物の一匹もいない部屋に死体が朽ちるまで(風化)。

 

 

 大道寺家をはじめとする地術師一族は

 

本家地下に半分弱埋められて、地に還るまで

 

 今はもう亡き水術師の神名家は

 

同じ一族のものに作られた氷の中へ葬られ

 

 神無月家をはじめとする雷術師一族は

 

 

一族が絶えず、力を注いだ雷の間で

   その体が精霊の力がなくなり朽ちるまで

 

 

 

 そして彼女達雛桜家やそれをはじめとする炎術師一族は

 

 

 この本家地下にある炎の間で

    塵とかすその日まで・・・・・・

 

 

  この炎の間の炎はやはり本家の皆が毎回霊力を補給してほのおを 熾す。 

 

 

     ね。

 

 

 この部屋に残るのは、

 

   

  つい最近や数十年の遺体など

 

 

 命なきもの。

 

 

    「おじ様はどれくらい残るかな?

 

      ねぇ 美月。」

 

 

 

 

  白い青白い肌。

 

  漆黒の長い髪

 

  閉じられた瞼

 

 

  そして素肌に纏う 白の単衣。

 

  これは姉の魂なき遺体だ。

 

 それは死んだ時そのままの姿で残っていた。

 

 

 

  「あんたは3年経つのにそのまんまよね。」

 

  「じゃ、行ってくるね。」

 

 

 

私は家の結界を強化しに行くことにした。

 

 これは、自分の、次期宗主としての役目。

 

 私の家の周りには、虚や妖魔などが寄ってこないように結界を張ってあるのだ。

 

 

 たぶん、風の如月家や、雷の神無月家、大地の大道寺家もだ。

 

 

 

 

 精霊術師の家は広くて、一種の一つの町(3000坪)だ。

 

 中心に本家があり、その周りの近くから上位分家

 

 逆に裏口近くや正門近くの家屋は普通並みの家並みで下位や中位の分家のそれだ。

 

 

 うちの場合は本家が1000坪近くとっていて内部の複雑だ。

 

 奥の方には修練場や、会議室に似た広い部屋、客間とかもあるからね。

 

 しかも、本家は一階建てだし。

 

 

 結界の中心はその敷地の真ん中、中心にある。

 

 

 赤い赤い血の跡がポツポツと残る下に魔法陣(みたいなもの)の書かれた部屋。

 

 いつもの通り私は自分の腕を切り、血を落とし念を込める。

 

 

 結界の強化は週に一回か二回。

 

 その度日を流さないといけないのが一番嫌だ。

 

 透明な結界が一瞬霊的に藍色帯びる。

 

 

 ここは宗主か、次期宗主以外が入ることを掟で禁じている。

 

 だからかその部屋から出ると、

 

 「あの・・卯月様、宗主がこれを。」

 

 ビクビクとした使用人が私にそれを渡す。

 

 渡された封筒の中の紙には、依頼の後払いの金が入っているかを確認しておくようにと書かれていた。

 

 

 共用金庫から、通帳と印を取り出す。

 

 

 

 もちろん傷は治したあと外に出た。

 

 

 ●●銀行。

 

 隣の市の銀行がうちが使う銀行だ。

 

 一般人はおろか、天皇にすら私たち精霊術師の戸籍を見ることはできない。

 

 この銀行に戸籍の一部だけを見せて、口座を作っているのだ。

 

 もちろん私にも、まだ幼い留依にもそれは存在する。

 

 依頼料は今現在100万から1億と様々。

 

 依頼料の2割は、任務を担当した人待ちであとは全て一族の口座に入る。

 

 任務数は変わるが、ひと月に数十から百。

 

 主に任務を担当するのは若者や本家。

 

 次期宗主の彼女は2日に1つから毎日のペースで任務を受けている

 

 

 

 

 ちなみに彼女の口座にはもう数億、を越している。

 

 

 あまり使わないから溜まる一方だ。

 

 

 

 家でよく着る着物ではなくて、藍色の制服を着てそこに彼女はいた。

 

 

 

 彼女が着ている制服は、中学時代から使っているそれである。

 

 一糸一糸に丁寧に防護術をかけ織り上げた一品だ。

 

 デザインが一緒でないのは、このデザインを考えたのが美月で、そのまま使うためサイズを訂正して使っているからだ。

 

 

 学校の許可はとっている。

 

 

 そのそばには 留依が黒の着物で一緒についてきている。

 

 うちの一族の手続きは特殊なところがあるから、今まで自分の父がやっていたのを覚えたいらしい。

 

 

 

 「(えっと昨日の依頼のだから後払いの金は五千万よね。)あの、雛桜家の口座を確かめ

 

    「今、俺たちがこの銀行を乗っ取ったー!!!

 

  中にいる奴らは全員両手を挙げろー」

 

 

 

 ・・・・なんで私ってこういうのに巻き込まれるんだろう

 

 とりあえず、現状把握するか。

 

 全員で3いや4人か。

 

 3人が客を脅して、もうひとりは、裏口の見張りか。

 

 よくこれだけの人数で・・と思うかもしれないが、手には銃が

 

 モデルガンじゃなくて本物ね

 

 トカレフかな。

 

 

 

 

 客は人質のつもりかな。

 

 手に縄がかけられ、口をガムテープで止められている。

 

 もちろん留依にもだ。

 

 仕方ない少し力出すか

 

 

 

 

 

 ほとんどの人間が私のことを知らない

 

 その強さを

 

 裏と関わった人間は少しは名前を聞いたことがあるだろうけど、通り名だけ。

 

 

 私は、指先を見ず僅かに精霊を集める。

 

 藍色の水の精霊を。

 

 それらが作り上げるのは冷気を纏う氷の長い爪。透明なそれ。

 

 それで縄を切る。

 

 横では留依が見えないように炎の精霊を少し集め、橙の小さな炎で縄を瞬時にやく。

 

 

 

 

 

 「ねぇ、おじさんたち。」

 

 「ア、おじさんだ?

 

 お前自分の立場がわかって

 

   「わかってるけど。

 

 あんたらさそんな装備と人数でよく銀行しかもこの銀行を襲おうと思ったね。」

 

 

 周りの人質は何を言っているんだと

 

 刺激するな

 

 

 

  と言いたげな目で私を見る。

 

まぁよく見た目は喧嘩もできないような女に見られるしね。

 

 

 縮地で一人の背後をとり、首筋に絶妙な力加減で手刀をいれる。

 

 縮地というのは、空間から完全に姿を消失させるほどの超神速の移動術とも、空間掌握による瞬間移動に似たものとされている。

 

 後者は空間を歪め、繋げるものだが、こちらを使うのは私は苦手だ。

 

 もともと空間把握能力が姉に比べると劣るからだ。

 

 

 

 

 一人が崩れ落ちるのを見ると、ほかのやつが、

 

 「て、てめぇなにもんだ?!」

 

  「私は雛桜 卯月です。

 

 そしてそちらは」

 

 

 そんなの必要ないけど加勢したそばにいたもうひとりにみぞおちに拳を入れた留依をさし、

 

 「雛桜 留依です。」

 

 

 一応銃と買い付けるときにでも敵に回さないほうがいい人のことを聞いていたのだろう。

 

 私たちの苗字を聞いたとたん

 

 

 

 その瞳には恐怖の色が写った。

 

 うーんそこまで怖がられるとなぁ、

 

 ちょっと嫌だな。

 

 

 

  特に私の方を怖がってるようだ、

 

 そういや私の方の裏の二つ名は、瞬殺の戦姫。

  なんでか、ヤンキーとかにも同じように言われてるんだよね

 

 

 

 

 

 

 見張りの倒した。

 

 あ、力加減間違えた。

 

 耳たぶの後ろ(水月っていう人体急所の1つ)に肘を突き立てたんだけど、

 

 やば、まぁそれでも全治半年くらいだろう。

 

 

 短くて

 

 

 

 まぁ、こういう訳で御用となったわけです。

 

 私たちがこうやって警察の解決をまたずに急いでいたのにはわけがあった。

 

 普通の人では気づかない違和感だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         ーEndー

 

 


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