死神達の恋歌   作:yatenyue

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注意!微エロ表現があります、できるだけあっさりにしてるはず




風の結んだ絆 炎の笑顔 7.夢の中の悪夢、闇の終わり 

清らかな墨で、風の周りと額に陣を描く。

 

 美月姉様や卯月姉様なら陣がなくても、言霊だけで出来るのだが私達はまだまだ彼女達に比べれば未熟なので、陣は不可欠だ。

 

 

 私にも、明良にも

 

 

 「じゃあ、おれはこのバカをたたき起こすため、夢魔を倒してくるから」

 

 

 地面に書いた方の陣に自らの血を垂らし、片手で印を結ぶ。

 

 すると、明良も風の上に意識を失い倒れこんだのであった。

 

 

 

 

 

 一人残された留依は、感情の全てを吐き出すように、言葉を紡いだ。

 

 

 「なんで、私ばっかり置いていきぼりなのよ。

 

 一人は独りは怖い。待つことの方が辛いことだってあるのに…。

 

 もう、頭にきた

 

 もう堪忍袋の緒が切れましたー-

 

 もーいい!!!

 

 勝手に私も行ってやるっ」

 

 半場癖になってしまっている敬語も、勘ぐり捨てて言う。

 

 儀式用にみんなが一つ持っている小刀で自分の指を指し、血がポタポタ落ち、彼女も倒れこんだのだ。

 

 

 

 ―  -  ―  -  ―  -

 

  ここは精神世界、夢の世界の中。

 

  明良とは別の・・風に近い場所に落ちた留依。

 

 まだ癒えていない留依の心的外傷(トラウマ)に反応するものがまた1つ。

 

 

 

 

 【あら、あきらめた獲物までかかったわーん、あれだけのトラウマねぇ、治りかけでも美味しそう。

 

 でも、それを背負ってでも来たっていうことはこの風って子が大切なのねぇ。

 

 なら…

 

 その子の前で、汚されてみたら

 

  それはそれは

 

 美味しそうな悪夢になりそうよねぇ】

 

 

 クスクスクスくすくすくす 

 

 残酷で、淫卑で、妖艶で邪気を含む笑みを浮かべる闇音。

 

 彼女のような夢魔はサキュパスとも言われるのだから。(すべての夢魔が淫乱なわけではないが、前回の説明の後者の場合は、全部こちらである、男性型の場合はインキュパスと呼ぶ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー ‐ ―  ‐  ―

 

 

 歩きにくい着物と足袋のまま走る留依。

 

 

 

  誰にも会わない

 

 

 「どこよぉー

 

   風さん、明良ぁ

 

  ていうか、夢魔に侵された世界なんだよね、真っ黒じゃないんだ

 

  でも、 鮮やかな色のものないんだな、ここには」

 

 

 

  他人の夢や精神世界の中では、感知能力が全く役に立たない。

 

 

 

 

 

 

      【こっちよ】

 

 

 何かに留依は誘われたような気がした。

 

 

 「罠? …でも罠があろうと行くしかないうよね」

 

 そして、 

 

 

  悪夢の一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 真っ黒な闇の中、手の平に浮かぶ火球を頼りに探す。

 

 

「やっぱ気のせいだったのかしら?」

 

 

    近くに結界を感じた。

 

    魔の力により織りなされたそれのもとに走る。

 

 

 

 見えたのは、呆然と涙を流す風さんそして聞こえたのはその傍で嗤う女の夢魔の声

 

 

 

 

 「風さん、風さん、風さん」

 

 

 隔たるのは見えない壁。

 

 

 それは中からは外を見ることはできない一種のマジックミラーのような魔法壁である。

 

 

 その結界を崩す炎を作ろうと目を閉じ、集中する留依。

 

その手に集まり始める、他人の精神世界では操りにくい精霊術

 

金色の淡い白にも見える炎。

 

でも、それが“悪夢”が始める合図だった。

 

無防備な留依の後ろから拘束するモノ

 

 

 いきなりのことに驚き、その炎は無散する。

 

 「ほぇ…?

 

  何 このヌルヌル。」

 

 

 ゆっくり前に降りてくる、スライム状のモノ。

 

 ソレからは何本もの触手が生える。

 

 

 「っ…やぁ」

 

 それは嫌悪だった。

 

 女としての、人間としての

 

 醜悪で、得体のしれない者に対しての

 

 

 

 

 その触手が触った部分の着物が溶かされていく。

 

 

 対抗するため術を使おうとすると、

 

 まだ未熟で、性的知識も欠如した幼い少女の

 

 まだ、成長途中のしこりの残る胸を触手でつつく。

 

 その羞恥で、集中力が乱れる。

 

 「・・やぁ・・あっ…

 

 

  助け…

 

 

 やぁ、きもちわる…」

 

 もう着物は意味を成していなかった。

 

 

 溶かされ、申し訳程度にしか残っていない白の単衣も、

 

 至る所が溶けてしまっている。

 

 

 

 幼い肢体がはっきりと映し出されていた。

 

 

 

 

 それにとってはそんな生々しく

 

 初々しく  艶めかしいそんな肢体も

 

 関係なかった。

 

 それの目的は彼女を絶望させるただそれだけだったから……

 

 

 

 だから前戯などなしに、

 

 まだ、誰も見たことも触ったこともない蕾みへと

 

 太い触手を一気に挿入する。

 

 

 

 

 

 処女膜をあっさりと破り、

 

 どんなに留依が苦痛の声をあげても、

 

 それもお構いなしに出し入れを繰り返す。

 

 

 結合部位からは、赫い鮮血が流れ出る。

 

 

 

 気絶できたほうが幸せだったに違いない。

 

 でも、痛みに対する耐性をつけた彼女のような術師にはそれすらできなかった。

 

 それにさらに後ろの菊門の処女も簡単に奪い去った。

 

 

 少しずつ少しずつ

 

     堕ち始める少女の瞳。

 

 恐怖という闇で心をマヒさせる。

 

 

 「…ぁ…」

 

 彼女にとっては不本意で理不尽な快感へと変わっていく。

 

 

 痛みから心を守るために………

 

 

 「や…」

 

 その時、留依の瞳は風の瞳がこちらに向いていることを見た。

 

 向こうからはこちらは見えない、それを忘れ、壊れかけた理性で彼女は言った。

 

 

 「・・見ないで

 

   見ないでぇーー」

 

 

 

 それとともにその理性は

 

 けがれた自分をも嫌悪し、自らを巻き込み、炎を放った

 

 

大きな金の炎・・浄化の炎を

 

 

 

 

 

 

  「ああああーーーーー」

 

 

 炎を放ち続ける彼女

 

  

     常人には近づくことは不可能

 

 

 同じ炎術師を除いて

 

 

 

   留依の上げた黄金の炎のかがり火で留依がこの世界に来て

 

  また暴走したことを知り急ぐ明良。

 

 側に来て、炎の中心の彼女を見て言う。

 

 「あんのバカっ」

 

 

 

 

 

 「留依っ!!落ち着けっ」

 

   炎へと割り込む。

 

 ところどころに裂傷に軽い火傷ができる

 

 炎術師が火傷をする例は二つ

 

 1つは、自分よりも格上の術者の炎

 

 もう1つは、あまりにも炎として変質したもの

 

 

 この場合、前者。

 

 明良のほうが年嵩であろうと

 

 これが分家と本家の差。

 

 といっても、明良は分家NO.1なのでこの程度で済むのであって

 

 

 そして、正面から抱き締める。

 

 留依は、ヌルヌルした触手じゃない温かな感触で正気に戻った。

 

 「あ・・き・・ら?」

 

 炎は集束する。

 

 明良はところどころ焼けてしまっている。

 

 自分の学ランを留依にかぶせる。

 

 

 「こんのバカっ

 

 何やってんの。考えなしにもほどがあるよね。

 

 待ってろって言ったの聞いてなかったわけ?」

 

 1つの良かったこと

 

 留依の炎で結界がぶち壊されたこと

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ・・っ…て

 

   独り…は・・や…だから。

 

   だから、あ…そ…こ」

 

 

 

  留依が力を振り絞って指を上げた先には、

 

  見えるのは、一人でうつろな目で突っ立っている風の姿

 

 

 留依を置いて、明良は風のところに行き、思いっ切りその顔を殴る

 

 しかもグーで

 

 

 

「なーに  夢魔(ナイトメア)に囚われてんだよ。

 

 そんなに姉様が大事なわけか?

 

 1つもあれに相談せずに

 

    ここまで侵食されて

 

 

    ほんと バカだろ。」

 

 まだまだ夢に囚われている 風。

 

    「風っ」

 

 ぼそりと留依は呟く。

 

 

 

 

 

「風さん、風さんは怖いんだよね。

 

認めるのが。

 

お姉さんがもういないことを

 

私も…怖かった。

 

もういないって認めて、自分の中の姉さまの存在が小さくなって消えてしまうことが怖かった。」

 

 

 

 

 風の虚ろな瞳が声の主である留依をとらえる。

 

 溶けたも同然な単衣の上に、彼女にとっては大きめの学ランを羽織る留依を。 

 

 

 

 「姉様を奪った、血の赫が怖くて恐ろしくて。

 

  姉さまを1人にした卯月姉様にあたりそうになって、

 

  何もかも嫌になった。

 

 何を知ってるんだって思うかもしれない。

 

  でも何も知らないあなたは私を救ってくれた。支えてくれた。

 

 あなたにとっては些細なことだったと思う

 

 でも..ありがとう。風さん。

 

 だから私は…救いたいの。」

 

風の額と自分の額を突き合わせる。

 

 そして、言霊を唱えた。

 

 

 「我と彼の者を彼の者が一番大切に思う者の真実(まこと)へ」

 

 

 

 

 悪夢によって歪められたもの(事実)

 

 彼の中で歪められたもの

 

 彼女が伝えなかった真実。

 

 

 

  その真実を知るために……

 

 

 

「本当、あなたは憎らしいわ」

 

 唐突に頭に響いたそれは、母のもの。

 

 「っ うわぁぁ」

 

 痛みで叫ぶ姉様の声。

 

 記憶にあるより少し幼いそれは、苦痛に充ちていた。

 

 鼻の深い傷から流れるのは鮮やかな血。

 

あれは、まだ姉様が小学校に上がる前に

 

  仕事でついたと言っていた傷。

 

 どうして、術を使って治したり痕を消したりしないのか聞いても

 

 曖昧にはぐらかされた

   

           それ。

 

 

 (このキズは、愚かだった私の罰で証。

 

  だから消さない)

 

 見えるその映像の中で聞こえるそれは

 

  口からでた声ではなく、心の聲(コエ)。

 

 

 そのあとも、様々な映像(ピジョン)がうかぶ。

 

 母を恐れ、姉様を無視し、暴力をふるう人々に抵抗しない姉様。

 

 

そして、姉様が死んだときとほぼ同じくらいの姉様。

 

 

 

 それは、母に雇われた一般人に犯される姉様  の姿があった。

 

 

 

 そして・・・

 

 

順調だった任務の中で起こった海依の死の理由だった

 

 

 例の双子の片割れの水術師としての目覚め

 

 それに気を取られての妖魔の一撃。

 

 

 それで姉様の親友は即死。

 

頭の傷からも、腹にある傷からも、血は流れ出る。

 

腹の傷など、皮膚が裂け、肉が赤黒く見える。

 

 そんな中でもまだ意識のあった姉様は息のない二つの遺体を見て

 

 

 

 (  もう、いいや。 私疲れた。

 

 

    死んでも、眠っても、いいよね。)

 

 

そうして、自ら意識を閉ざし、二度と目を開けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

   そして、姉様はこの世から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああっ姉様っ」

 

 

姉が死んだ直接の原因は妖魔だけど、彼女の、姉様の生きる気力を奪ったのは

 

殺したのは

 

 

 

    母だ。

 

 

そしてを母を止められなかった自分のせい…

 

間接的にでも、姉を殺したのは自分でもある、そのことに絶望した。

 

 

おとなしくそれを見ていた留依は思う。

 

 

海依さんはなぜその時まで死のうとしなかったか?

 

 

「風さん、貴方のせいじゃないですよ。

 

海依さんが、どんなに辛くても死ななかったのは死のうとしなかったのは、

 

風さんがいてくれたからだと思います。

 

孤立無援の時たった一人でも大切な人がいてくれるってそれだけでも支えになるんですから。」

 

 

 

 

 

 

事実私もそうだった

 

それからほかの支えに気づいたけれど

 

あの時の私は本当に周りが見えていなかったから…

 

 

 

「友人だった、由宇さんと皐月さんのおかげもあるかもしれません。

 

でも、あの冷たい家で、海依さんが耐えられたのは、まぎれもなく風さんのおかげだと思います。」

 

 

虚ろだった風の瞳に光が宿る

 

 

2人の少女と少年は、

 

  互いの力により

 

自らの闇を打ち消そうとしていた。

 

 

 

・・・少年の悪夢を造りだしたナイトメアが現れる。

 

少女の手は黄金に光り、その手には黄金(キン)の炎が、

 

少年の手には渦巻く竜巻が生み出され

 

 

2つの力は互いに高めあい、

 

 

 

   そして悪夢を打ち消したのだった

 

 

 

   -7 endー

 

 

 

 

 




まだできていませんがもう少しあります。

次の話の更新日は未定。

 先にいよいよ原作沿いの内容に入りますよーー

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