死神達の恋歌   作:yatenyue

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サイドストーリー  「二」という字を背負う者 その3

 

 

  「二」という字を背負う者

 

 

     ‐3‐

 

  ≪海依side≫

 

 

俺が副隊長という地位について約7、8カ月という月日がたった頃にそれは起こったんだ。

 

 

砕蜂隊長は想像した通り強い覚悟をもって力を使う意志を持った人だとこの間に見て取った。

 

だがそれと同時に、弱さをやはり持っていると感じた。

 

 

弱さは誰でも持つものだと俺は思うんだが、彼女はそうは思っていないらしく、特に立派に見せないといけない部下の前では弱音一つ吐かない。

 

 

それがすごくもどかしかった。

 

 

俺は、こいつの砕蜂の補佐なのになにもできていない

 

力がいくらあっても俺は無力だと思うんだ。

 

 

そう思うんだ。

 

 

解説【いまだにこのふたりは理想の部下と上司に見えますが、

まだ本当の意味での支えあう関係ではありません。

 

 海依は、砕蜂に頼ってほしいと思いつつそれを部下が先に口にすると砕蜂が気にすると思い口にしない。

 

 そして、過去の記憶からなにか辛い記憶が彼女を頑なにしているのではないかということには気づいている。

 

本人が話してくれることを待ち続けている。

 

 砕蜂は過去の離別から深く人と接することを拒んでいるが、海依のことは信じたいと思い始めている】

 

      ≪side海依と第三者≫

 

 

それが起こったのは

 

 

   ある一枚の書類がきっかけであった。

 

 

「な、この書類っ

 

  遅すぎなんだよっ来るのが」

 

 

半場切れつつ俺はいった。

 

 

その書類にはこう記されていた

 

 

 

『今日未明出現虚の訂正』

 

 

 

と。

 

 

 

 

 

 

 数刻前、大前田3席を筆頭とし、残りを下級席官4名の小隊にある任務が課せられた。

 

 

それは、

 

 今日未明出現虚の滅却・昇華。

 

 

その時の情報によれば、

 

  霊圧分析により、だいたい低級(海依にとってB~D級)虚十数体

 

 

一人2~3体くらい平気だろうと思い、派遣したのだった。

 

 

 

そして今に至る

 

 

海依の手に握られた書類は少しくしゃくしゃになり、

 

 他隊からの書類に混ざっていたそれ。

 

 

 

「大前田のやつっ!!

 

   ここ片づけてないからか

 

 ちっ 」

 

 

 

それを見つけたのは本当に偶然だった。

 

 

大前田の未処理の書類を親切にも海依が片づけてくれたから気づいたことだ。

 

 

   自業自得といえばそれまでなのだが

 

 

その書類にはこう記されていた

 

  一部自分の言葉に直すが

 

 

『今日未明 出現虚の訂正

 

   中、低級虚数十体

 

   及び巨大虚(ヒュージホロウ)数体

 

 

 安全のため、副隊長もしくは隊長に命ずる』

 

 

   と。

 

 

 

急いで隣部屋の隊主室へと向かう。

 

隊により副隊長と隊長が同じ部屋だとか、隊長のみとか、副隊長、隊長、3席で使用など

さまざまであるが、

 

 

今現在、

 

海依が副隊長の二番隊では、副隊長、隊長の同室で、隣が3席他である。

 

 

解説【今現在:由宇、皐月、美月はいずれも隊長から3席まで使用です。

 

  また原作イメージで原作の時は彼女らではないので、二番隊は隊長のみ、三、四、十のいずれも副隊長、隊長のみです。】

 

 

「砕蜂隊長っ

 

  大前田のやつこんな書類埋まらせてたんだけど!!」

 

「なんだ?」

 

 

書類を読み、砕蜂の顔色が変わる。

 あくまで、海依が気づく程度だが

 

「あの、阿呆が

 

   行くぞ、ついてこい、殺されるなよ」

 

「わかってるって」

 

 

 

 

 

 

 

 

   ≪side海依≫

 

そして、俺たちは現世に降り立った。

 

もちろん限定をして。

 

俺をはじめ、由宇と皐月は普段から霊圧制御装置を付けている。

 

俺の場合、この左手人差し指についたアクアマリンの指輪である。

 

 

見た目も科学的にもアクアマリンではあるが、これ最初は霊石となった真珠なのだがそれはおいといて、

 

 

俺達の場合これで8割の霊圧を封印している。

 

というのも肉体、魂魄的に常に霊圧を出しているのは危険だからで

 

体の負荷を減らすためだ。

 

 

解説【のため封印+限定ということで

 

 

つまり、本来の力の4パーセント、

 

  封印状態の2割ということである。

 

  2割でも、他隊の副隊長レベルはあるのだが。

 

  ちなみに封印しただけの本来の20%だと総隊長の1.2倍。(強)】

 

 

なんでもユエいわく

 

『男にしては華奢で細い、女としてもほっそりしたその指にはまる指輪は、

 

 シルバーで目立ちにくいが、繊細な意匠が刻まれ、アクアマリンの淡い透明な水色が海依の雰囲気にあっている』

 

          らしい。

 

 

 

 

俺は全くそういうのに興味はないんだが…

 

 

とりあえずそんなわけで霊圧の無駄遣いは避けたい。

 

 

とりあえず感覚として降り立った時死神5人分の霊圧と気配がまだ感じられた。

 

まだ、虚の霊圧はしない。

 

どうやら間に合ったみたいだな。

 

 

だがどこか違和感があった。

 

 

(霊力もなにも感じないのに、

 

  気配がもう一つ?

 

  人間や霊の気配じゃないし)

 

 

霊圧の下で見たのは、巨大虚と戦う3人とけがをして横たわる2人だった。

 

 

 

 

 

 

 「霊圧を消せるタイプ、か。くそっ厄介だな」

 

そういうのは砕蜂。

 

 「てめぇら

  

  さっさと後ろへ行けっ

 

  最小限守ってやるが自分の身は自分で護れ」

 

 

言葉づかいを気にする余裕はない。

 

副隊長になってからは一応気をつけていた言葉遣いのかけらももうない。

 

 

  「は、はい」

 

しかもけがしてるふたりは下位席官。

 

  大前田のやつ上なら下を守れよな

 

  あとであいつは減給だなこりゃ

 

 あいつはそんなの痛くもかゆくもないだろうが

 

  ボンボンは

 

  だから嫌いなんだよ

 

 倒れてるほうも命に別条はなさそうだ。

 

 

 ま、逃げなかったことだけでもほめてやるか 大前田

 

 俺はな砕蜂(二人の時はいいと言われた)がどういうかは知らないが…

 

 中、低級虚は数減ってるからやられっぱなしじゃなかったようだしな。

 

そう考えやはり俺は“風華”の方を取り出した。

 

“風華”の方を信頼してるのもあるが、もう一つは地系である“地生”は現世では特に使いにくいからである。

 

同じ地系でも、皐月の“花音”とは使い勝手の良さには大きな差がある。

 

だって同じ地系でも“地生”は土。

 

たとえば土の壁を作りだしたり、地殻変動を起こしたり、

 

と更地ならともかくここは町のど真ん中の公園近く。

 

というわけで

 

“風華”を始解した。

 

 

「“風よ、我が声に応えよ、風華”」

 

 

その始解で次々と雑魚を一掃していく。

 

一応周りの被害を最低限にしつつ、

 

(だってそうでもなくても

 

 絶対始末書書かなきゃだめそうだしな

 

  あんま増やしたくないっていうか)

 

その途中、巨大虚がある一点を目指そうとしているのが見えた。

 

 その先を風で確かめると霊圧の高い人間の少年。

 

 巨大虚がその少年に攻撃しようとするのを察し、小規模の竜巻で周りの雑魚を吹き飛ばしその勢いで飛び込み、

 

 

自らを盾にしてその子を抱きしめてかばった。

 

(だってとても懐かしい霊圧がしたから。

 

    大切な 子の)

 

 

 

始解していたため“風華”で、その子を念入りに風の結界で守り、

 

俺自身は最低限“風華”が護りの風で衝撃を緩和してくれたようだ。

 

 

それでも、肋骨2、3本折れたな、こりゃ。

 

「おい、海依(彼女も二人の時は名前呼び、海依が頼んだ)。

 

  大丈夫か?」

 

そう尋ねた砕蜂に、

 

「大丈夫だよ。 砕蜂。

 

  それよりこの子をお願いします

 

  俺は、一気に残りを昇華します」

 

 

残りには、雑魚もまだ残っているが、巨大虚も3、4体以外まだ残っている。

 

 

「そんな怪我で無茶なこと

 

「大丈夫。 俺を信じて」

 

 ・・・約束は守れよ」

 

 

 

ー殺されるなよー

 

   その言葉での約束

 

   現世に来る前に言われた言葉

 

 

 「わかってるって」

 

 

俺は一気に側にあったビルの上に飛び上がった。

 

隠していたし

 

 これからもできればここにずっといたかった

 

 

だけど

 

 

    護れないのはそれ以上に嫌だから

 

 

 

 悪いな、由宇、皐月お前らもばれるかもしんない・・・

 

 

 

そして、

溢れでる言の霊を唱える。

 

 

「“卍解、黄龍迅風華遠(コウリュウジンプウカエン)”」

 

 

 

刀身にはくっきりと龍の形が浮かび上がり、

 

水色で銀の光を放つ龍‐黄龍‐が現れる。

 

由宇の“雷覇”も龍だが、あちらは青龍で青白い電気をまとい金の光を放つ由宇の“雷覇”に比べ、

 

俺の“風華”は体が少し短めで、体は透明に水色や碧がかっている。

 

そして纏うのは金ではなく銀の光。

 

冷たい銀ではなく、やわらかい少し水色や碧、紫がかった銀の光。

 

 

「“風華”、思う存分やれ。

  

  いくら俺でも、ぶち切れた」

 

 

龍‐“風華”‐の手からつむじ風が出たかと思うとどんどん大きくなりそこにいる巨大虚は吹き飛ばされ、

 

「いまだ」

 

上に浮きあがった虚の頭を的確に打ち抜く。

 

そして、それは粒子となり昇華された。

 

 

 

 

 そして戻るとやはり驚いた顔の砕蜂の姿。

 

「海依、お前・・・

 

  「すごいです、あの精霊の数」」

 

 

 精霊?

 

  ってこいつ精霊術師かよ

 

その声の発信源は俺がさっき助けた10をいくらか過ぎたくらいの少年。

 

 

その瞳で本当はわかってた

 

  わかってたんだ

 

 

その少年の瞳は、海依と同じ透き通った水色をしていた。

 

 

 

 

漆黒の髪に俺と同じ水色の瞳

 

女の子と見間違いそうな愛らしい顔

 

視るとその膨大な精霊は≪風≫。

 

つまりー風術師。

 

「お前、如月の分家?」

 

本当は信じたくなかったのかもしれない

 

 

その少年のどこか哀が漂うその少年が大切なあの子だということに

 

だってそうなら

 

あの子を悲しみに落としたのは  俺 。

 

護りたかったあの子を

 

 

「それ、本気で言ってるんですか?

 

   【姉様】。」

 

 

【姉様】

 

  砕蜂や他の死神達の顔に驚愕が走った。

 

ああ あの子 なんだ

 

 

  やっぱり

 

 

 「ああ、 風(フウ)か。」

 

俺は今年12のはずの弟の名前を呼んだ。

 

死んで一年半忘れたことのなかった最愛の弟の名前を。

 

 

 「そうです。海依姉様の弟の風です。

 

  姉様が死んで1年半どうして会いに来てくれなかったんですか?

 

   死神になったのに」

 

死人と生者はかかわるべきじゃない

 

そう思ったのに

 

 

 「大きくなったわね。

 

  でも俺は変わらない俺の時は止まっているから、俺は死んでいるから

 

  お前を死人の俺が縛るわけにはいかなしだろう」

 

 

 「それでも、!!

   

   姉様は姉様ですっ

 

   僕の大切な姉様ですっ」

 

涙目になりながらそういう

 

「ああ、そうか。俺にとってもお前は大切な弟だよ。

 

  ところで、ここ家から離れてるよな

 

  どうしてここにいるんだ?」

 

俺は一度もこいつの涙に勝てたことがない。

 

今回もそうなってしまった。

 

「他家との合同任務で、雛桜家の留依さんとですよ」

 

 

なんだ。知らない名前。

 

とっとと考えるのを辞めた。

 

 

「じゃあ、合流してやりな

 

  今度休みに会いに行ってやるから、な」

 

 その決意をするには時間はかかるだろうけどな

 

 「はい・・・・」

 

うちの家に記憶置換は無意味なので

 

砕蜂がそれを出した時

 

「うちの家ってか精霊術師には無駄だよ。記憶置換」

 

そういい

 

今の俺の場所へ  還って行った。

 

 

         ≪side海依end≫

 

 

 

 

 

 

 

 

     ≪side砕蜂≫

 

 

海依は、本当にいいやつだと思う。

 

私のことをいつも気にして、

 

補佐して、信用してくれて、

 

いろいろ気を使ってくれて

 

 

あいつがある一線を絶対に超えようとはしない

 

私がそれを超えるのを待っているのだと思う

 

無表情無感情を言われる私ですらわかる

 

でも、怖いのだ

 

 

  だれかを作るのが

 

 

  気を張っていないと誰かに寄りかかってしまいそうで

 

 

 

 

 

 

側にいなくなるを思った時

 

 

  手遅れだとおもった。

 

 

でも、それがなかったら私は今もまだ虚勢を張り続けたのかもしれない

 

 

 

 

 

          -虚戦闘開始時後‐

 

虚と戦っていたはずなのに、いきなり、周りを吹き飛ばして移動した海依。

 

 

ある一点に向かって疾ってそして何かを守るように攻撃を受けた。

 

 

    あれくらいで死んでしまうはずがない

 

   そう思うのに、少し怖くなった

 

 

急いで相手を切り捨て、海依のもとに向かうと傷を腕や背中に受けている海依と無傷の少年の姿がそこにあった。

 

 

「大丈夫か?」

 

    そう聞いた私に

無事そうに言ったが次の言葉には驚きを隠せなかった。

 

 

「それよりこの子をお願いします

 

  俺は、一気に残りを昇華します」

 

 

 

何を馬鹿なことを と思った。

 

でも海依の目は真剣で

 

「大丈夫。 俺を信じて」

 

 

それで先ほどの約束を口にするのがやっとだった。

 

 

でも…もし今回約束を守ってくれたのなら私は前に進めるかもしれない

 

そう思った。

 

ビルに飛び移った海依が唱えた解号にはおどろいた。

 

 

  「“卍解、黄龍迅風華遠(コウリュウジンプウカエン)”」

 

海依の瞳のように透き通ったーいやそれ以上かもしれないー水色の体に銀の光を放つ龍。

 

それはあっという間にすべてを倒してしまう。

 

 

ふつう卍解とは

 

 何年何十年の経験や戦闘の中で見つける斬魄刀の二段解放。

 

 幾人もの死神がそれに挑戦し得られなかったもの。

 

 その威力は始解の数倍数十倍。

 

 そして、隊長になる条件でもある。

 

 海依はまだ死神になって一年もたっていないのに・・・・

 

 

 

 

 

 

 すると、海依の助けた少年が

 

「あの・・・

 

 「お前、私たちが見えるのか・・?」

 

  はい、見えます。あの僕を助けてくれた人は誰なんですか?死神さん」

 

      といった。

 

 

はっきりいって死神が見え、死神のことを知っていることに本当に驚いたのだが、聞かれたことに答えた。

 

 

  「如月 海依。私の信頼する副官だ」

 

 

 

       と。

 

 

 

 

 私が帰ってきた海依に問いただそうとした言葉を、その少年はさえぎり。

 

  「すごいです、あの精霊の数」

 

 

話の流れから海依の生前の弟らしく、

 

  風

 

というらしい。

 

 

 海依に大切と断言された、風がうらやましかった。

 

 

ーーー精霊術師という存在に記憶置換が効かないことも初めて聞いたのだが

 

 

 

私は今回のことで一番隊移動

 

   ーどう考えてもおかしいのだがー

 

になった海依にたいしてやっと

 

 

私が海依に見えないところで支えられたのだと心の底で思った、

 

 

だから・・・・

 

 

 

   もう一度

 

 

 

 

       信じてみようと

 

 

       信じてみたいと

 

 

 

  そう思ったんだ

 

 

 

 

  夜一様の残した心の穴はまだふさがらないけど

 

 

  いつか

 

   海依に話せるだろうか?

 

      ≪side砕蜂end≫

 

 

 

 

 

 

≪side風≫(この前後関係は風炎でやります)風の結んだ絆 炎の笑顔

 

 

 雛桜家の留依さんと来た任務。

 

 今日が初対面でした彼女はとても昏い暗い眼をしていました。

 

 その理由を僕は知っていました。

 

 たしか、半年ほど前に死んだ彼女・留依のいとこ。

 

 僕ははっきりいって姉さまの一件以来雛桜のひいては、あの

 

姉様を殺した双子のことを  

 

憎らしいとまで思っていた

 

  憎むことでしか姉様を失った悲しみは埋められなかった。

 

 だからその双子の片割れが死んだと聞いた時も、 

 

 僕の姉様を見殺しにした報いだと

 

 姉様の足手まといになった報いだと

 

 そう思ったんです。

 

 悲しみに押しつぶされそうになりながら戦う留依の姿がどこか

 

  自分を見ているようで

 

 そんな考えをひと時だろうと忘れてしまっていた。

 

 儚くて弱い年下の少女。

 

 誤ってあの子が傷ついた時に見せた

 

 赫への恐怖。

 

 

 全てが終わった後の彼女の着物の袖は血に濡れていた。

 

 「ちょっとへましてしまいました、すいません」

 

 痛みをこらえていう彼女の体は小さく見えて

 

 「黙って、今手当しますから

 

  終わったら待っていてください

 

  車の迎え呼んできますから」

 

 なぜか、守ってあげたいとわずかに思ったんだ。

 

 気のせいだと頭から消したけど

.あとでその自分の気持ちを無視したつけを払うことになるのが

 

か弱い少女だということを誰も知らなかった

 

 

任務が終わって気は緩んでいたのだろう

 

そこである再会を僕はした

 

 

 

 

 

 任務で気が緩んでいたせいで僕は虚の接近に気付かず、気づいた時にはもう回避が難しい状況だった。

 

思わず目をつぶったそのとき

 

「危ないっ」

 

ひどく懐かしく聞き覚えのある声は、切羽詰まっていて、

 

その声の主は僕を庇い抱きしめていた。

 

 どこか懐かしくて

 

 泣きたくなるくらい暖かいその腕。

 

 そっと目をあけると

 

 目に入ったのは夜の闇の中で輝く

 

          

       “銀”

 

 

 

 月光を浴びて輝く銀糸の髪に、透き通るような懐かしい水色の瞳

 

 

 

       嘘だと思った

 

 

 そこにあったのは別れたときそのままの

 

     姉様の姿

 

でも確信してしまった。

 

 

 その“銀”の人が操って見せた天災規模の精霊の数。

 

 そしてその統率力。

 

 間違いない  姉様だと

 

 僕はもう長いことあっていない死んだ姉のことを思い出した。 

 

ーーーーーーーー

 

 姉様こと如月 海依

 

 

 僕の異母姉に当たる彼女は年にして5歳上の生きていたら17歳の姉。

 

 姉様は純血主義が多いここ如月家にとって珍しい術者同士のハーフだった。

 

 今は亡き地術師の本家大道寺家の娘と如月家の現党主の間に生まれた姉様と

 

 その後妻として入りこんだ如月の分家出身の僕の母。

 

 体が弱く、大道寺としての力が弱かったらしい姉様のかあさまは、姉様が2、3歳のころに亡くなったらしい。

 

 そして姉様は容姿こそ如月の色彩の薄い瞳

 

 

 

解説【風術師の本家「如月」他分家では、水色が一番力が強いほうで、より透き通ったほうが力が強い。ほかは薄い灰色や茶色

 

地術師の本家「大道寺」および分家は、濃い茶色やオレンジ、少ないが緑である。

緑が一番強いといわれている 】

 

で、力の強いあかしである水色の極限まで澄み渡った透き通った瞳をしているが、

 

『地』の『土』の力と、『風』の力両方に富みその血を色濃く受け継いでいた。

 

今でも覚えている。

 

姉様がわずか8歳にして操って見せた精霊の量とその力を

 

 

 

 

でも混血を忌み嫌った典型的純血主義である僕の母は、僕を極力引き離そうとした。

 

僕は姉様をすごく慕ってたんだけどね

 

尊敬もしていたんだ

 

   強くて優しくて何でもできる姉様を

 

 

でも 姉様は僕を置いて死んでしまった。

 

昨年の 5月に。

 

 姉様の朋友(とも)である由宇さんと皐月さんと一緒に

 

その死んだ日何が起きたか僕も知らない…

 

あの強かった姉様が、由宇さんたちが自分でへまをするはずがない

 

 

だから、

 

    あの双子のせいにしたんだ

 

      ---------

 

 

 

懐かしいのも当たり前だ

 

姉様なんだから

 

 

「誰?」

 

と言われた時、姉様にとって僕はなんだったんだろうと思った。

 

ぼくは姉様が大好きだったいや今でも大好き。

 

でもそのあとの言葉で僕のことがきらいなわけじゃないとわかったんだ。

 

 

 

 

『でも俺は変わらない俺の時は止まっているから、俺は死んでいるから

 

  お前を死人の俺が縛るわけにはいかなしだろう』

 

 

そういった姉様。

 

 

僕のことを考えてくれたのはわかるでも

 

自分の気持をはっきりと言うと

 

 

俺にとってもお前は大切な弟

 

 

 

 

そう言ってくれてとてもうれしかった。

 

 

今度休みに会いに行ってやるから

 

 

その約束が当分守られることがないことを僕はまだ知らずにいた。

 

 

僕は姉様が強い存在だと思いきっていったんだね。

 

 

 

ーーーーーーーー≪side風end≫--

 

 

   このことがきっかけとなり

 

  如月 海依は零番隊副隊長になったのだ。

 

 

 

 

  「二」の字を背負う者ー完ー

 

風sideの続きや前後は、風炎こと風の結んだ絆 炎の笑顔

 

で。

 

 


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