死神達の恋歌   作:yatenyue

14 / 74
月の導き  第一章  第三話 4つの隊の3席体験1 輝の救い

 

 

第三話 4つの隊の3席体験 輝の救い

 

 

 

イン六番隊

 

 

 

「今日明日だけ3席としてお世話になります

雛桜 美月です。

分からないことが多いかもしれないが、

よろしくお願いします。」

 

穏やかに

彼女は笑った。

 

さりげない動作

一昼夜ではできない振る舞い。

 

それは貴族出身の多い死神でむめったにみられないものだった。

 

 

「あの 朽木隊長。今日は何をすれば宜しいですか?」

 

 

(なんだー あの変わりよう昨日との違い

同一人物かー!!?)

 

と思うのは 恋次だ。

 

 

「そうだな。この書類をやって貰えるか?

今日中だ」

 

そう言って渡されたのは、5㎝ほどの書類の束

 

 

 

(た隊長新人にそれは……あんまりだと…)by恋次

 

(なんだこれだけかぁ)by美月

 

 

 

「はいっ

わかりました」

 

ニコッ

 

 

隊員全員が見惚れた。

それこそ老若男女問わず

 

 

それほど愛らしく綺麗な若干13歳とは思えない微笑みだった。

 

「そうか。よろしく頼む(←実は結構気に入ってる)」

 

 

すらすらすらすら

 

 

 

あの量を僅か1時間半で終わらし

 

 

(でも筆って書きにくいね

まあ普通の子よりは慣れてるけどね

呪符とか書いてた時代(トキ)もあるし)

 

 

「あ終わりました。

朽木隊長 確認お願いします。」

 

 

しばらくして

 

「誤字脱字も間違いもない。これを四番隊へ

こちらを十番隊へ持って行ってくれ。」

 

 

(げっ

暴言隊長のとこっ)

 

 

 

 

あーあ

 

昨日の今日でいくの気まずいよなー

 

 

うん

 

悪い人じゃないのは分かるんだよね

 

 

 

ってことでズルズル先延ばしにして先に4番隊に……

 

 

 

 

ところ変わって4番隊・・・

 

 

「(たしか・・・

 

 隊長が卯の花烈 さんって女の人で・・・

 

 温和そうな人だったな。

 

で、副隊長は 名前は聞いてないけど

 

 背のすごく高い人だったよね・・)

 

失礼します

 

 六番隊3席(空席だったらしい)の

 雛桜 美月です。

 

書類を届けに来ました」

 

卯「入ってください」

 

「この書類どこに置けばいいですか?」

 

卯「勇音」

 

副隊長の人が 書類を受け取る

 

 

「では 失礼  卯「ちょっと待ってくれるかしら?」 はい・・

 

(あれなんか一瞬寒気がしたような・・・)」

 

信じたくありません

 

こんな 優しそうな人がどす黒いなんて

 

    

卯「あなた 治癒霊力は使えます?」

 

「あー たぶん使えます

 

3本の斬魄刀のうち1本は治癒系ですし」

 

 

卯「そう それじゃ 明日だけでもいいのでうちの隊の手伝いをしてくれないかしら?」

 

あれ? 疑問形なのに有無を言わさない雰囲気が・・

 

 

「く 朽木隊長にお願いしておきます・・・

 

(話せば 朽木隊長は分かってくれるよ うん

 帰ったら 明日分も終わらそう・・・)」

 

 

卯「よろしくお願いしますね」

 

極端に黒属性に弱い 美月であった。

 

 

 

 

 

 

(あーあ

 

次は…十番隊か

 

行きたくないなー

 

あの時は私むきになりすぎたし

 

ていうか 霊圧からして 卯月と同じ水とか氷に関係ありそうよね

 

副隊長はたしか 巨乳美人さん だったよね)

 

とか考えているうちに十番隊隊首室前まで来てしまった・・・

 

はぁ

 

「(副隊長だけだといいなぁ――――――)

 

六番隊3席の雛桜 美月です。

書類を届けに来ました」

 

 

「入れ」

 

うわぁ

いるし 

 

 

「失礼します。書類はどこに置けば?」

 

さっきも思ったけど

 

 

悪い人じゃないのも

怖い人じゃないのも

冷たい人じゃないのも

 

分かってる。

 

彼の霊圧は、どこまでも冷たいと感じるけど、

 

 普通はそうかもしれないけど

 

 

どこまでも 廣くて広くて そういうなら冬の蒼穹(ソラ)で氷空(ソラ)。

 

優しくて、 どこか温かい

 

そんな 内面が感じられる。

 

まぁ これは 永い永い活きてきた時間があるから分析できるっていうのもあるんだけど・・・

 

 

だから ムキになってしまった私が恥ずかしい

 

 

「ここに置いてくれるか?」

 

「はい」

 

ここ というのは、隊長の机の上

 

今言わなきゃ さらにいいづらくなる

 

そう思った私は

 

 

 「ああのっ 

 昨日は すいませんでしたっ

 失礼な態度をとってしまって・・・」

 

「いや いい あの時は俺も大人げなかった」

 

大人げなかったって・・・・(呆れ)

 

この見た目で言われても

 

言わないけど

 

 

 

よかった   彼に許してもらえて

 

  “私”は決して赦されない十字架を背負っていると忘れそうになる。

 

   前世の“私”が犯してしまった罪を

 

 

 

 

「あのっ それで 「ちょっとお茶して行きなさいよぉ」‥えっと 副隊長の「松本乱菊よ よろしくね」ははい」

 

 

明るすぎる気がする。

 

嫌いじゃないんだよ

 

苦手でも ただ少し弱いだけで

 

そういう間に 引きずられていく私

 

 

「美月 って名前だったわよねぇ。

 

茶菓子はいる?」

 

「ははい(ないに比べたら)」

 

「いいのよぉ 敬語なんて」

 

「う うん」

 

 

約1時間は足止めされてしまった

 

 

日番谷隊長も忍耐強いよな

 

 

 

 

 

 

 

「すいませんっ朽木隊長。

 

あの乱菊さん 松本副隊長につかまってしまって………

 

それで 卯ノ花隊長が 明日私を借りたいといっていたのですけど・・・」

 

「かまわん  行け」

 

「あ ありがとうございましたっ

 

じゃあ 明日の分もやっておきますね」

 

 

感じのいい笑顔を 美月はしていた。

 

 

 

かなり 朽木隊長は美月を気に入ったようだ

 

本人は気づいていないが・・・・

 

 仕事ができる

 

 早い

 

 気遣いができる

 

まぁ 関係ないが容姿端麗で驕らないので、

 

隊員たちにも好かれている

 

 

 

 ・・ 

 本当の副隊長が、意識不明で今現在

 阿散井恋次が代理を務めているが

 

彼は あまり書類作業が得意でない

 

 

そのため すこし たまりがちで

 定時過ぎまでかかっていたのだが

 

今日は 早く終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「やっぱり 朽木隊長許可してくださったのね。」

 

「(やっぱり?)はい 今日一日頑張りますのでよろしくお願いします」

 

「今日は3席が休みの日ですから

私か 勇音に聞きたいことはいってください」

 

 

『患者が多数来ました

 

 虚により、負傷。

 

 すべて 十一番隊です。』

 

まわりの 隊員が嫌がっているのがわかる

 

なんでだろう?

 

「11番隊……なら美月一緒に来てください」

 

 

「はいっ」

 

 

怪我をした隊員の前で言う

 

 

「やってみなさい

11番隊だからかまわないわ」

 

 

黒い

 

黒い

 

まぁ いっか。

 

めんどくさいから 霊力でなくあれで

 

 

「《キュア》」

 

傷は跡形もなく消えた・・・・・

 

「今のは…治癒霊力ではありませんね

 

何をしたのですか?」

 

「うん?

 

 ここまで 略式なのは私だけだけど、

 傷の周りの空間を隔離して、時間を戻しただけですよ」

 

「すごいですわね」

 

別次元だ

 

彼女の使う能力はそんな簡単で容易なものではない

 

同じような一族でも術式はある

 

だが、時間や空間に関するものは複雑怪奇

 

みっちりそれについて研究した者でさえ、数分戻すのがやっと

 

また空間を隔離するなんて神業なのです。

 

使えるとしても陣や複数人数もしくは道具は必須なのです。

 

 

「そうだわ

 こちらに来てくれますか?

 貴女ならあの患者を助けることができるかもしれませんわ」

 

 

私が・・・?

 

私が誰かの助けになるなら何でもする

 

だから

 

ついて行った。

 

 

 

 

 

 

連れてこられたのは、姿形は自分より数歳上に見える女性が横たわる部屋。

 

「あの・・この女性は?」

 

見たところ、外傷は適切に治療され、もう治りかけている。

 

 

「この人は今あなたが体験している六番隊の本当の副隊長

 青木 輝です。

 

 約半年前、誰かとの諍いで腹を刺されてヤマはめけましたが、

精神的な傷が深いようで眠ったままなんです。」

 

「そうなんですか」

 

閉ざした心

 

私にはいや“私”は知っている。

 

実際に 心が軋んだことも、閉ざすことも知っている。

 

だから・・・・

 

 

「私倒れると思いますけど・・・

 何の問題もありませんので・・・」

 

 

「なにをするつもりです」

 

私は、そういいながら輝に近づき、

額に手を置きながら

「こうするの 《インナーハート(心の中)へ》」

 

人の精神世界へ入るための言霊

 

まぁそれと同時に連鎖して頭に様々な術式を頭に描きださなければならない。

 

そして、他人の精神を受け入れるだけの器も必要だ。

 

ドサッ

 

私は 彼女の精神世界へと降りて行った。

 

 

斬魄刀がいる世界は精神世界の一部である

 

それだけがすべてではない

 

そこは真っ暗な暗闇であった。

 

あたりは歪み、1点の光もない

 

「ついた

 ここが輝さんのインナーハート

 輝さん 聞こえる?」

 

 

 

 

 

『誰っ!?

 私の世界に踏み込まないで

 どうせ 私なんか必要ないんだからーー』

 

 

「(おちついて 彼女の心を感じるんだ…)」

 

 

 

〈〈〈〈

 

いつもいつも私を殴り蹴り暴力をふるった両親

 気味の悪い オレンジ色の瞳

 気味の悪い、力 

 

 

 私の体に残った煙草の焼痕

 残ってしまった青あざ

 

それでも私は死にたいとは望まなかった

 

だって 大切な大切な 私の妹

 

私が守って守って守り続けたもの

 

 持ってしまった

私と同じ異能

 

それを隠し続けて 妹使ったのを私が使ったことにして

 

 いとしい愛しい私の妹

 

最後に私は両親に殺された

 

守ったことを後悔なんてしてない

 

でも私が堕とされたのは

    南流魂街80地区 荒神

 

 そこは 地獄だった

 

 血濡れで、赫にまみれた世界

 

私は世界に必要とされてなんかいなかったんだ

 

ひっしにひっしに 私は這い上がった

 

そして死神になった

 

私が生前から持っていたのは霊能力の一種と知って私は安心したんだ

 

ああ 私は“化け物”なんかじゃなかった

 

そう思った

 

大切な人ができて

 

私なんかを好きだと言ってくれる人ができて

 

幸せだと感じたの

 

でも それは仮初の幸せだった

 

私を襲った絶望

 

彼がほしかったのは 肩書き

 

副隊長の恋人という肩書

 

愛してなんかいなかったんだ

 

 

要らない

 

いらない

 

イラナイ

 

こんな世界要らない

 

   〉〉〉〉

 

哀しい

悲しい

憎い

痛い

イタイ

カナシイ

 

世界がいらないなんて思いなんて私はいや

“私”はよく識っている

 

大切な“妹”を殺されたとき

 

大切な“朋”を亡くした時

 

両親が“私”達双子を殺したとき

 

世界が神が“私”たちを見捨てたとき

 

この手が赤く染まったとき

 

世界は、綺麗なだけじゃない

 

景色がきれいじゃないなんていうつもりはない

 

世界は醜く汚く穢れている

 

それは “私”が“私”達はよく識っている

 

人間は 醜く、欲深く、傲慢で、嫉妬深く、弱い 

 

だからこそ 自分と違うものを排除しようとする

 

ヨーロッパでの魔女狩りしかり

学校でのいじめしかり

 

 

それは 仕方がない

 

でも それだけではないことも識っている

 

人の情、愛を

 

時にそれは権力に押しつぶされてしまうものであるけれど

 

 

 

 

 

「輝さん・・・

いつか、あなたのことを思ってくれる人とも会えるわ (“私”でも出会えたのだから)

 

淋しかったんだよね寂しかったんだよね

 

苦しくて憎くて悲しくて

 

でもね 貴女だって私だってこの世にたった一人しかいない大切な人

 

【私なんか】なんて言っちゃダメ

 

屑なのは貴女を利用して捨てたその男

 

ねぇ、殻を割って外を見てみなよ、おいてごらんよ

 

貴女は一人じゃない

 

憎しみで支配されそうな自分が醜いなんてそんなこと思っちゃダメ

 

いいの 憎しみを持ってたって 

 

人は 自分の中の昏い感情と闘って

 

そこにあるんだからね

 

貴女はひとりじゃない

 

私がひとりにしない

 

私は味方だから

 

それに 朽木隊長も貴女を少なくとも副官として信頼してると思うわ」

 

 

『なんで なんで

 

あんたはそんなこといえるの!!?』

 

「昨日ね一日だけど六番隊の3席をさせてもらったの

 

阿散井恋次 という人が副隊長の代理をしていたわ

 

でもね 正式な副隊長はあなただと聞いたわ

 

意識不明になって半年たつのにね

 

 ふつう 信頼してない人をそのままにしておかないわ

 

 朽木隊長はそんな人よ」

 

『そう・・・ね

  朽木隊長はそんなことを』

 

「必要なのは 一歩ね

 勇気をもって・・・・・・

さぁ 私の手をとって」

 

 

そして

 

 二つの手が重ねられた

 

 

『ありがとう』

 

 

別に記憶を改竄することもできた

 

でも、経験はすべて 心の力だ

 

普通の一世分の人生程度は

 

 

――――――――――――――

私は目を覚ました

 

「っ」

 

少し頭が痛い

倒れた時に倒れたかな

 

「ん 卯ノ花隊長?

 ここは・・・」

 

輝さんも目を覚ました

 

「おはようございます

    青木副隊長

 ありがとう 

    雛桜3席」

 

 

「おは・・ん? 雛桜3席??」

 

「【はじめまして】

   今、体験で六番隊3席をさせてもらってる 雛桜 美月です。」

 

「この声・・・

 

  あの時の・・・

  ありがとう 美月ちゃん」

 

 

「いえ 私の経験が豊富なだけですから‥ね」

 

 

オレンジ色の瞳を輝かせて

  やわらかく笑った。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。