弾「俺も」
蘭「おじいちゃん助けて」
今日の変態紳士:五反田一家の猛攻に遭い戦死
<IS学園・一年一組教室>
1週間の謹慎処分が晴れて終わりを告げ、いよいよ俺も今日から授業に参加できる事ととなった。
流石の変態紳士も長い間クラスのみんなに会っていないと不安になる。
だがこれで屈する俺ではない、不安を快感に変えて今日も頑張るぞい。
「やあおはようみんな! 記念すべき変態紳士謹慎明けの登校だ! 」
「お、おう彰久。おっ、おはよう! 今日もいい天気だな! 」
妙にぎこちない箒ちゃんの挨拶に、俺は不信感を覚える。
あれ、もしかして本当にセシリアとの噂流れちゃってるの?
「そのー……やけに声が上ずってるけどどうしたん? 謹慎中に俺何かやらかしちゃった? 」
「なっ、何でもないぞ! たとえお前がどんな理由で謹慎処分にされようと私はお前の友人だからな! 」
「……俺がどんな理由で謹慎されたか箒ちゃん知ってるの? 」
気まずそうに彼女は俺の耳元に顔を近づけた。
思わずゾクゾクしてしまうと同時に俺の愚息もメイクアップである。
「お前……全裸で学園内を駆けまわったら先生に見つかって謹慎処分になってしまったんだろう? 」
俺はつい呆然としてしまう。
確かに俺がやりそうな事ではあるが、幾らなんでも全裸で学園を走って謹慎って無理矢理すぎるだろ。
何より俺は全裸で走っても捕まらない自信があるぜ。
よし、かくなる上は変態紳士の十八番である情報操作だ。
「それは違うぜ箒ちゃん。俺が謹慎処分になった理由は没収されたエロゲをスニーキングして取り返そうと思ったら千冬さんに見つかったんだぜ」
「えぇ……なんだその理由……」
「第一俺が全裸で学園を出歩いて捕まると思うのか? 」
「あぁ。何だかんだ捕まる」
「せめて否定してよ! なんか悲しくなるでしょ! 」
ご察しの通り変態紳士という生き物はお巡りさんや警備員さんに弱い。
逃げ足こそあるものの彼らの行動力というのは凄まじいものだ。
必死に逃げたのに目を充血させながら追いかけてきたというトラウマが俺の脳裏から呼び起される。
「おはようみんな……って彰久! やっと謹慎が解けたのだな! もう刑務所にぶち込まれていたのかと思ったぞ」
「俺が刑務所如きで収まる男だと思っているのかラウラ」
「あぁ。そして刑務所にいる男と幸せなキスをして終了だ」
「どうしてそうホモに持っていきたがるんだよ!? 」
既にクラさんの魔の手がラウラにまで行き届いてしまっているのか……。
これは変態紳士として許すわけにはいかないぜ。
「まあ、お前が今までのように戻って来てくれて有難いよ。彰久がいなかった時のシャルロットと真琴は目に見えて元気が無さそうだったからな」
「うっ……それは後で謝っておいた方がいいなぁ」
まさかとは思うがセシリアとの噂が流れているのだろうか。
先週弾に言われた言葉が重々しく俺の心を突き刺し、少しだけ胸が痛くなる。
「彰久ーっ! 久しぶりーっ! 」
「やっと戻ってきたな! 久々にギャプランちゃん見せてーや! 」
「噂をすれば真琴ちゃんにシャル。あれからどうだい? 俺に会えなくて寂しかった? 」
「当たり前だよ! 僕結構心にキテたんだからね! 」
「べ、別に彰久がいようがいまいが関係ないで! 勘違いせんといてや! 」
絵に描いたようなツンデレとデレっぷりに思わず俺の顔が綻んだ。
ぐへへへ、このまま夜の操縦ごっこへと洒落込みたいぜ。
「全員席に着け。草薙、謹慎明けだというのに何をそんな気持ち悪い顔をしている」
「このイケメン紳士を捕まえておいてキモいとは! 先週の先生の下着の色バラしてもいいんですか? 」
「草薙くん!! それは是非とも教えてくれない!? 」
「私も!! 」
「ふふん、いいだろう淑女諸君。千冬さんも意外と可愛い柄を穿いていて――」
無論の事俺の頭には彼女の最強武器である出席簿が突き刺さった。
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<ホームルーム>
「彰久の頭に出席簿が刺さった光景久々に見たな」
「奇遇ですわね、わたくしもですわ」
「そこ、私語は慎め」
俺の頭に響いた一撃と共に始まりを告げたホームルーム。
下着の色を言われそうになった当の本人は咳払いをしながら教卓にその身体を落ち着け、現在も俺を睨みつけている。
謹慎明けだというのに何とも不憫なものだ。
もう少し優しくてもいいんじゃねという言葉は胸に仕舞っておき、俺は千冬さんの言葉に耳を傾ける。
「いよいよ来週に我々は修学旅行を迎えた。各自しおりは配られているか? 」
「あ、すいません先生。俺持ってないです」
「ごめんなさい、私もです……」
俺の他にも何人かの女の子が手を挙げたせいか、千冬さんはため息をつきながら頭に手を当てた。
「……職員室まで取りに来い。それと草薙、お前は昼休みに話がある。プリントを渡すついでに来てくれ」
「了解です」
「ホームルームは以上だ。号令」
号令係の声の合図と共に俺達は千冬さんと麻耶先生に挨拶をすると、二人はゆっくりとした足取りで教室を出て行く。
話とはいったい何だろうか。
もしかして告白とか?
「また彰久さんがお呼び出しですの? 」
「フッ、罪作りな男と呼んでくれ。こうして今も俺はこのイケメンフェイスで一人の女の子を落としているのだから」
「は? 」
「ごめんセシリア、普通に真顔で質問されると俺の心が今にも崩れ落ちそうだからやめてくれ。それより、修学旅行ってどこに行くんだ? ソープランド? 」
「お前一人で行けや童貞野郎」
「どっ、どどどどど童貞ちゃうわ! 」
一夏も童貞じゃないかというツッコミはさておき、彼の隣に立っていた箒ちゃんが鞄の中からしおりを取り出した直後俺に手渡す。
受け取った紙を見るなり、今回の修学旅行は京都へ行くようだ。
中学の頃の修学旅行を思い出すな……。
「へぇ、じゃあ荷物とか色々買っておかないとなぁ。あ、そうだ。みんなで買い出し行かないか? 今週の土日にさ」
「いいな、それ。ちょうど俺も暇だったし、俺も行くよ。みんなはどうする? 」
「行きます行きますぜーったい行きます! 」
「し、仕方ない! どうしてもと言うのであれば付き合ってやろう! 」
相変わらず箒ちゃんはツンデレっぷりをひけらかしている様で、隣のセシリアや真琴ちゃんはニヤニヤした表情を彼女に向けている。
そしてこの鈍感クソ一夏は相変わらずの唐変木っぷり。
これは我がマイサンも助走を付けて殴るレベルである。
「よし、ならば今のうちに買い出しリスト作っておかなきゃな。えーと、コン○ームに電○、○イブに猿轡に蝋燭とロープを……」
「ちょっと待って、どう考えても不必要だよねソレ」
「俺の快感を満たすという意味では必要不可欠なんだけど」
「自分に使うの!? 」
無論の事俺はセシリアやシャル、真琴ちゃんと夜な夜なSMプレイに励む予定だ。
もし三人が無理だったとしても一人プレイというのもなかなか興奮する。
「まあ彰久の道具はさて置き、一体どんな物が必要になるんだ? 嫁、教えてくれ」
「そうだなぁ……着替えとか、旅行用の小さいシャンプーとかトリートメントとかかな。タオルとか着替えはあるだろうから大丈夫だと思うけど、念の為の薬と酔い止めもいるかも」
「薬って媚薬? 」
「彰久、お前少し黙ってろ」
変態紳士に黙れというのも中々鬼畜な気がする。
「むぅ、ならクラリッサに聞くとしよう」
「クラさんに頼んだら色々と危ない気が――」
時既に遅し。
ラウラはポケットから黒いスマートフォンを取り出し既にクラさんこと彼女の部下であるクラリッサに電話を掛けていた。
「もしもし、クラリッサか。修学旅行で必要なものを教えてほしい」
『了解です、隊長。一般的に必要と思われるのは私服と寝間着、それに薄手のカーディガンなどでしょうか。あと念のために酔い止めや風邪薬を常備しておくと万全ですね』
「そうか、ありがとうクラリッサ」
『はっ。では失礼します』
意外と普通な会話を終えた彼女はスマートフォンをポケットに仕舞う。
なんだか期待外れだ、それでも現変態紳士四天王の一人なのだろうか。
そんな事を思っていると俺のポケットにある携帯がメッセージの着信を告げた。
『あと言いそびれましたが隊長にこのコスプレ衣装一式を持っていくことを言ってください、お願いします』
「普通だと思った俺が馬鹿だったよ!! 」
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<IS学園寮>
時は進み放課後。
久しぶりのテニス部で体力がなまっていたせいか俺の身体はだいぶ疲れを感じており、ロッカールームで汗を流した後に自分の部屋へと足を進めていた。
「あぁ……疲れた……死ぬ……助けてエマさん……」
『私は電子で構成されているからどうする事も出来ないわ』
「じゃあせめて罵ってくれ」
『このヘタレ童貞クソ唐変木ゴミクズ変態野郎』
「何もそこまでやれとは言ってない」
変態紳士のハートはガラスで出来ている。
頼むから全力でぶっ壊そうとするのは止めてほしい。
そんな中、俺の視界には偶然前を通りがかった制服姿のシャルが目に入った。
「あっ、彰久。お疲れ様、今部活終わったの? 」
「そうそう。謹慎空けで死ぬほど疲れた。癒してシャル」
「死ぬほど痛いぞ」
「何するつもりだ」
なんだか物騒な構えをとり始めたシャルに恐怖を覚えつつ、俺は彼女と並んで歩き始める。
どうやらシャルは勉強をしていたようで、彼女の手には教科書とノートが握られていた。
「ねぇねぇ彰久? 聞きたい事があるんだけどいいかな? 」
「どうした? 今の俺なら何でも答えるぞ」
「セシリアと……その……キスしたって本当? 」
前言撤回である。
誰から聞いたのか知らないがまさかシャルにまで出回っているとは。
だがここで俺は嘘をつくほどクソ野郎ではない。
「……まあその……うん。本当だ」
「そ、そっか……」
シャルの表情は見るからに元気を失っていく。
俺の脳裏には弾の"キープなんてしたら学園乗り込んでブッ飛ばす"という言葉がよぎった。
「……彰久は……」
シャルの言葉はそこで止まる。
俺は思わずシャルの顔を覗き込んだ。
「ご、ごめん! なんでもないよ! 変な事、聞いちゃってごめんね? わ、私もう行かなくっちゃ! 」
「あっ、おいシャル! 」
俺の制止も無駄に終わり、シャルは一足先に廊下の奥へと消えていく。
何をやっているんだ、俺は。
俺は女の子を笑顔にするどころか悲しませているではないか。
何が変態紳士だ。
「はぁ……どうしたもんか」
『……うまく言えないけど……彰久、落ち込まないで。あなたは自分の気持ちに正直になればいいのよ』
「それができたら簡単なんだけどねぇ……」
いずれにせよ、この関係に終わりを告げなければいけない。
そんな言葉が、夕日の差す学園寮に響いた気がした。
お久しぶりです。
前の投稿からずいぶんと日が空けました。
相変わらずのクソ下ネタですけど頑張ります。
あとセシリアのタイツ被らせてください。