IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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お久しぶりです。


変態紳士、怒られる

<IS学園・格納庫>

 

 

 俺達は全員無事にIS学園へ帰還し、各々の機体を格納庫に格納する。

一呼吸ついたと同時に、会長が俺の肩を掴んだ。

 

「……草薙君。どうしてあんな無茶したの? 」

「それは……」

「理由を聞かせてくれ。答えないのなら、俺はお前を殴らなきゃいけない」

 

一夏の顔が俺に迫る。

 

「……小木曽さんを殺した機体が、あの場にいたんだ。自分を抑えなきゃいけないと思ったけど、それ以上に感情が勝ってしまった。すいませんでした、皆さん」

 

俺はこの場にいる全員に頭を下げた。

自分の行動が作戦を無視したものだと一番理解しているが、俺の恩人を殺した機体が悠然と立っている事を許す事など到底できない。

 

「彰久……そうだったのか……」

「……それでも、作戦外行動を許す事は出来ません。もし陣形が崩れて混乱に陥ったらどうするの? 」

 

会長の言葉が俺に突き刺さる。

だが、それを良しとしない人物が一人、彼女の両肩を掴んだ。

 

「そんな言い方って無いでしょうが! 少なくとも彰久は自制しようとしたんだ、咎めるべきじゃありませんよ会長! 」

「じゃあ今回の作戦の責任を君が取るの? 一夏君」

「そ、それは……」

 

会長の正論の前に、一夏はたじろぐ。

そんな中、彼の背後に見覚えのあるキャリアスーツが俺の視界に入った。

 

「千冬……姉……? 」

「草薙。たった今、お前に1週間の謹慎処分が言い渡された。理由は分かるな? 」

 

俺は千冬さんの言葉に頷く。

直後一夏や簪ちゃんの目が見開き、摩耶先生が心配そうにこちらに視線を向けた。

 

「……分かり、ました。失礼します」

「……あぁ。ご苦労だった」

 

軽く会釈をして、俺はその場を振り返らずに後を去る。

ラウラや一夏が俺を呼ぼうとするも、千冬さんによって制されたのか、それを成す事は叶わなかった。

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<自室>

 

 ISスーツをぶっきらぼうに脱ぎ捨て、俺は汗を洗い流すと、パンツ一丁のままベッドに寝転ぶ。

 

『……大丈夫? 』

「そういう風に見えるかい? 」

 

『そうよね……ごめんなさい。あの時私が意地でもあなたを止めていれば、ああいう結果は生まなかったはず。本当に、ごめんなさい』

 

隣にホログラムのエマさんがしおらしい表情を見せる。

 

「エマさんのせいじゃないさ。俺が冷静にならずに感情的になってしまったのが原因だ。千冬さんも、相当抗議してくれたんだろうな」

 

俺が格納庫を去る時、彼女の表情が少しだけ悔しさに歪むのを俺は見逃さなかった。

 

「嫌な役を押しつけちまったな……会長にも、千冬さんにも。淑女諸君に嫌な思いをさせるとは、俺も変態紳士として落ちぶれたもんだ」

 

その時、部屋の扉からノックの音が聞こえる。

こんな時に誰も来て欲しくはなかったが、追い返すのも後味が悪い。

 

「……セシリア」

「入っても、よろしいですか? 彰久さん」

 

おう、と言って俺は彼女を部屋に招く。

幸い部屋は綺麗に片付けてあり、エロゲのソフトも事前に仕舞ってある。

 

「お茶、持って来ようか? せっかく来たんだし」

「お構いなく、ですわ。私はあなたに聞きたい事があってここに来ましたの」

「……謹慎の事か? 噂が広まるのは早いな」

 

セシリアは頷いた。

俺は茶葉を詰めたポットをキッチンに置き、彼女の前に座る。

 

「簡単な話だ。作戦外行動をした、作戦中にな」

「……彰久さんが無闇にそういう事をする人に思えません。何か理由があったのは知っていますわ」

 

何もかも見透かされているようで、俺は頭を掻いた。

俺のことを見てくれているのは変態紳士として嬉しい限りだが、こんな大勢に話していいものだろうか。

 

「……小木曽さんを殺した機体が、あの場にいたんだ。エリアを拐い、あろう事か逃げようとまでしやがった。その光景を見た瞬間、俺の頭が真っ白になってね。気付いたら連中に斬りかかってた」

 

セシリアは申し訳なさそうに俯く。

俺にとって、その表情は何よりも辛いものだった。

 

「仇も討ち損ねて、エリアも……ウーンドウォートも拐われた。謹慎で済んだのが有難いくらいさ。馬鹿だよなぁ……本当に……俺って奴はさ」

 

直後、セシリアは俺を優しく抱きしめる。

彼女の行動に正直驚いたが、安心感が勝ったせいかセシリアを受け入れた。

 

「もう……それ以上自分の身を貶すのは止めてください。見てるこっちが辛くなりますわ」

「ははは、悪いなセシリア。どうにもネガティブ思考なもんでね」

 

「それに……泣きたいのなら今は私の胸をお貸ししますわ」

「えっ? 」

 

俺は自分の頬に手をやると、何か湿ったものが指に触れる。

それが涙だと気付く頃には、涙は溢れていた。

 

「……情けないな、セシリアみたいな女の子に泣き顔を見られると」

「そんな事ありませんわ。それに……好きな人がそんな姿でいられるのは辛いですから」

 

沈黙が俺たちを襲う。

い、今なんて言った?

好きって言った?

 

「えっちょっ、セシリアさん? 今なんて仰られたの? 」

「こういう事、ですわよ」

 

瞬間、俺の唇にセシリアの唇が触れる。

甘酸っぱい香りが口の中に広がり、思わず俺の顔が真っ赤に染まった。

 

「なっ、ななななななぁ!? 」

「ふふっ。臨海学校の時のお返し、ですわ」

 

そう言って彼女は悪戯に笑って俺の部屋を出て行く。

まさかあの臨海学校の時のキス、バレてたのか……。

って俺のファーストキス奪われちゃったんだけど!? 

 

「これって……まさか……」

 

俺は立ち上がる。

 

「フラグが立ったァァァァァァァァッ!!! 」

 

喜びのあまり俺は部屋を出ると、廊下を歩いていた千冬さんにぶつかった。

自然と押し倒す形となった俺は、急いで彼女から離れる。

あっ……黒スト越しのピンクの桃源郷が見えた……。

 

「……くぅさぁなぎぃ? 貴様ぁ、自室謹慎と言った傍から破るとはいい度胸だなぁ……? 」

「す、すいません織斑先生! 今すぐ戻ります! 」

 

「今ならまだ許してやる、早く戻れ」

「はい! あと……意外とかわいい下着穿いてるんですね」

 

瞬間、千冬さんの目から光が消える。

 

「待てや草薙ぃィィィィィィィィッ!! 」

「いやぁぁぁぁっ!! 勘弁してぇぇぇぇぇぇっ!! 」

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<休日・IS学園自室>

 

 

 「あーもしもし? 弾か? 」

『お、どうした彰久。お前から電話を掛けてくるなんて珍しいじゃねえか』

 

謹慎処分を受けてから約3日後。

千冬さんとの生死を分かつ鬼ごっこの後、なんとか逃げ切った俺はたんまりと宿題を出されて悲鳴を上げていた。

確実に俺を殺しに来ている事は理解しているが、なんともやり方が汚いと思うのは俺だけだろうか。

 

「いやぁ、なんか暇でさ。謹慎処分も食らって宿題も終わんないし」

『謹慎処分? お前授業中にでも全裸になったのか? 』

 

「いや、それはいつもしてるから大丈夫」

『何が大丈夫なんだよ』

 

全裸と言っても必ずブーメランパンツは穿いているので問題ない。

筋肉は視線を受けて増長するので、まあトレーニングの一環と言えるだろう。

ついでに股間も増長するのはまた別の話し。

 

「ちょっとまあやらかしちまった。中学時代は食らわなかったのにな」

『確かに謹慎処分食らってもおかしくない事してたよな俺達』

 

例を挙げるならば女子更衣室への侵入、リコーダーをペロペロ、スカート捲りだろうか。

あと夜の学校で全裸で出歩いたことは今も忘れない。

 

あれ? これって普通に起訴されたら負けるんじゃね?

 

「まあ昔話も程々にしよう。今回はちょっとお前に相談がある」

『おう、どうした? 今虚さんからラインの返信来てテンション上がってるからなんでも来い』

「セシリアにファーストキス奪われた」

 

直後電話が切れる。

再び弾に掛け直すと、彼はまた電話に出た。

 

「今切った? 意図的に切ったよな? 」

『うるせぇ電波が悪いんだよハゲ、つーかなんだ? 自慢か? 彼女いない歴=年齢の俺への当て付けか? 』

 

「現に今お前いい感じだろ! 熊吉とかに言ったらマジで殺されかねないんだっつーの! 頼むよ、一緒のオ〇ホで息子を愛でた穴兄弟だろ? 」

『抜いとらんわ! しかも穴兄弟じゃねえし、俺使ったのTE〇GAだからな!? 』

 

使った〇ナホの名前は伏せておくが、受話器越しの弾はため息を吐く。

 

『……で? お前セシリアちゃんとキスしたってマジか? 』

「あぁ、謹慎処分食らって落ち込んでたらセシリアが入って来て、慰めてくれた後にキスしてきた」

 

『へぇ、でお前はどうすんだよ』

「どうするっつったって……。わかんねぇよ」

 

弾は再び深いため息を吐いた。

 

『お前肝心なとこで優柔不断だよなぁ。悪いが率直に聞く。シャルロットちゃんか真琴ちゃんかセシリアちゃん、お前は誰を選ぶんだ? このままキープなんて真似したら俺が学園に乗り込んでブッ飛ばすからな』

「……そうなるよなぁ。まあでも、いずれは答えを出すよ。あの行動がセシリアなりの告白だって事は分かってるからな」

 

『けっ、分かってなきゃ俺はぶん殴ってるよ。ったく、羨ましい限りだぜ。あんま女の子悲しませんなよ、男としてな』

「当たり前だ、俺を誰だと思ってる? 紳士の中の紳士だぜ? 」

 

『はいはい。んじゃ、結果待ってるからな』

 

彼の言葉を最後に、電話は切れる。

一息付こうとベットに寝転んだ瞬間、自室のドアがノックされた。

 

「はい、誰ですかーっと」

 

扉を開けた先にはレコーダーを持った黛先輩とニヤついた表情の一夏と会長が立っている。

俺の全身の血の気がサ―ッと引いていき、3人は口を開いた。

 

「ついに……草薙君にも春が来たのね……」

「中学からの腐れ縁として俺は誇らしいぜ彰久……」

 

「えーっと……どこから聞いてました? 」

「全部」

 

直後、黛先輩はレコーダーの再生ボタンを押す。

俺と弾の会話が辺りに響き、彼女は悪戯な笑みを浮かべた。

 

「じゃあ……私これ新聞部に持ってくわね」

「早っ!? 足早っ!? 」

 

陸上部顔負けの速度で廊下の奥へと消えていく黛先輩を俺は呆然と見送りながら、床に膝を着く。

 

「くそぅ……プライバシーもクソもありゃしねえ……」

 

「大丈夫よ、噂はいずれ消えてくものだわ」

「そうだぜ彰久、お前の中学時代を思い出せ」

 

「ノリノリで録音してた人がそれ言う普通!? 」




セシリアかシャルか真琴か、今すごく迷ってます。

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