更新が遅れて申し訳ありませんでした。
<IS学園第一アリーナ、観客席>
制服に着替えた俺たちは待ち合わせた一夏と簪ちゃんと合流し、観客席に着いて試合を観戦する。
セシリアたちの方が若干有利ではあるが、動きの速さでは鈴ちゃんとシャルの方が上であった。
「そういや、こうしてあいつらの動きを客観的に見るのって久しぶりかもな。こう見ると、やっぱあいつらISの扱い方慣れてる気がするよ」
「俺はいつも覗いてるぜ。揺れる乳を激写せねばならないからな」
「早速箒たちの携帯にメール送っておいたぞ、彰久が盗撮してるって」
「ついでに織斑先生にも知らせておいた。これでもう彰久が盗撮する事は不可能」
「わぁ、一気に八方塞がり」
絶望したように俺は地面に膝を着く。
さすが簪ちゃん、仕事が早いと言わざるを得ない。
「あっ、みんなー! 」
「おお、真琴か。遅いぞ、何をしていた? 」
「ごめんごめん、4人のISの調整しておいたんよ。シールドエネルギーも無くなってたし、充填装置に預けておいたで」
「ありがと真琴。いつもごめんね? 」
「気にせんでええよ。ウチもみんなのIS見れて万々歳や! 」
真琴ちゃんは簪ちゃんとラウラの肩を叩き、俺の隣に座った。
動作の度に揺れるその爆乳にマイサンが反応したのか、俺の脳内に声が響く。
『父上! 拙者、あの爆乳を我が物にしたいでござる! 揉みたいでござる! 』
「落ち着くんだマイサン! 今この場で手を出してしまっては紳士ではなくただの変態だ! ぶっちゃけ揉めるのならそれでいいが、刑務所行きでホモになるのは嫌だろう? 」
『はっ!? 拙者もまだまだ未熟者でござる! かたじけない父上!』
「何、気にすることは無い」
「ねえ、あれは何してるの一夏」
「キモいから無視安定だ」
確かに股間に喋りかけてる絵面は確かにドイヒーだが、俺ほどのイケメンになれば何ともない。
けどおかしいな、頬に何か液体が伝っている。
あぁ! きっとこれは我慢汁だ!
「おっ、シャルのISが変形したぞ!? 彰久と同じタイプなのか? 」
「あぁ、そうなんだよ。デュノア社とラーク・メカニクスが共同開発したIS、"Zガンダム"だ」
「へぇ……俺可変形態を初めて見るんだよな。学園祭の時は人型形態でしか見たことなかったから」
「ふむ……彰久のギャプランと劣らない機動力を保持し、尚且つデュノア社の専売特許である"高速切替(ラピッドスイッチ)"を導入した訳か。シャルロットだからこそ出来る芸当だな」
可変したゼータの上に鈴ちゃんが乗り、先程の試合のラウラと俺のような戦法で箒ちゃんに迫る。
ブルー・ティアーズの猛攻も追いつけず、鈴ちゃんと箒ちゃんは鍔競り合った。
その間箒ちゃんは"紅椿"の機動装甲を展開し、二つのエネルギービットを周囲に浮遊させる。
鍔競り合う鈴ちゃんの背後にそれを向かわせるが、シャルの手によって落とされた。
「凄い攻防……お互いがカバーしあってる……」
「ビット持ちの二人にあそこまで渡り合うとは……末恐ろしいな」
ラウラと簪ちゃんが各々の意見を口にすると、その場にいた5人の携帯が鳴り響く。
連絡の主は千冬さんで、一斉に全員は携帯のメール欄をチェックした。
『ウーンドウォートが何者かにより奪還された。今先生方が侵入者を追跡しているが、お前たちにも協力を仰ぎたい。既に全員のISの整備は済ませた。急ぎ格納庫に来てくれ』
俺を含めた4人は頷き、その場を離れる。
「ど、どこ行くんや? 」
「すまん、千冬さんに呼び出された。真琴ちゃんは他の友達と見ててくれるか? 」
「そ、そっか……」
「本当にごめん、真琴。絶対帰って来るから」
簪ちゃんの言葉に、彼女は俯いた顔を上げる。
「分かった。そう言われたら、ウチも待ってるよ」
「悪い。じゃ、また」
笑顔の真琴ちゃんに別れを告げ、俺たちは一斉に走り出す。
時間がない、何としても急がなければ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<IS格納庫>
呼び出された俺達は息を切らしながら千冬さんの元へたどり着く。
彼女の隣には会長も扇を口元に当てながら立っており、本格的に状況がまずいものだと実感する。
「試合で疲れているのにすまないな。概要を早速説明するぞ。今回の作戦はウーンドウォートを連れ戻す事。奴を連れ去った侵入者はステルス機能を使って学園に侵入した為、発見が難しかった」
「ステルス機能……。追跡が難しいのでは? 」
「それを使用するのにはシールドエネルギーを消費する為、常に発動は出来ない。現在山田先生が率いる教員部隊が追跡を行なっているが、それも時間の問題だ」
「お姉さんを含めた6人で侵入者を叩くわ。作戦目的は侵入者とウーンドウォートの捕縛。既にみんなのISは整備済みだから、急いでちょうだい」
会長の言葉に、俺たちは各々ISを装着した。
「本来なら、私や軍が介入すべき作戦だ。お前たちには……手間を掛けるな、すまない」
「大丈夫だよ、千冬姉。会長やラウラ、簪に彰久だっている。任せてくれ」
一夏は千冬さんの肩をISの腕で撫で、彼女に微笑みかける。
フッ、と笑った直後千冬さんは白式の脚部装甲を踏み台に、彼の頭に軽いチョップを食らわせた。
「織斑先生だ、馬鹿者」
彼女の答えに俺たちは笑い、各々はISをカタパルトにセットする。
けたたましいエンジンギアの音と共に、俺たちは海上へ投げ出された。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<太平洋・作戦空域付近>
「千冬さん、目標の座標は? 」
『このまま西へ直進だ。10km先に目標と先生方が交戦している』
彼女の声を通信で聞き取りつつ、俺たちは最大出力でブーストを噴かした。
約五分の時間を経て、ラウラが一番早く侵入者のISをロックオンする。
「目標視認! リボルバーカノンにて牽制! 」
「一夏! 乗れ! 」
「おう! 」
リボルバーカノンの弾が装填されると同時に俺は変形し、一夏を上に乗せた。
本来なら女の子しか乗せないんだが、この場合は致しかたない。
風を切る音と共に放たれた弾丸は、真っ直ぐ侵入者へと直進していく。
いち早くそれに気付いたのか、ウーンドウォート――エリアがそれを撃ち落す。
「山田先生! ここは俺たちに任せてください! 」
「織斑君に……彰久君!? 」
"ラファール・リヴァイヴ"を纏った山田先生は俺たちの姿に驚き、その豊満な胸を揺らした。
この状況で元気になるマイサンもマイサンだが、やはり流石と言わざるを得ない。
「このビームは……ちぃっ! 」
「よおエリア! 逃げるなんてひでえじゃねえか! 」
エリアの纏う"ウーンドウォート・高機動形態"の右手から延びるコンポジット・シールド・ブースターに備え付けられた実体剣と俺のロングブレードライフルがスパークを起こし、鍔競り合う。
見かねた簪ちゃんが荷電粒子砲"春雷"をエリアに向けて放ち、それを彼女は俺を蹴った反動で避けた。
一度互いに距離を取り、俺たちはエリアと睨み合う形となる。
だがそれを崩すかのように侵入者のISが俺たちの間に介入し、エリアの側に立つ。
「M! 殺す必要はない! 」
「何故だ? 連中は我々にとって必ず邪魔な存在と――」
俺はエリアと"M"と呼ばれたISに向けてロングブレードライフルのビームを放った。
沸々と、俺の怒りの感情が湧き上がる。
「……お前か? 」
何、とMは俺に問いかけた。
ビームサーベルとロングブレードライフルを手に、奴に斬りかかる。
「お前かって……聞いてんだよぉっ!! 」
「ぐっ……! 」
鍔競り合った実体剣を弾き、一足先に腹部目掛けて蹴り上げると、Mは後方へ吹っ飛ぶ。
すかさずムーバブルシールドバインダーを構え、無我夢中でトリガーを引いた。
「彰久君! 落ち着きなさい! 」
「どうしちまったんだよ! 」
一夏と会長の制止を振り切り、俺はロングブレードライフルを構える。
Mの元へ行かせまいとエリアが行先を阻むように立ちふさがるが、即座に変形してMとの距離を詰めた。
「このまま……やられる私ではないッ! 」
「落とす……! お前だけは、お前だけは!! 」
反撃に幾多もの閃光が殺到するが、気に留めず俺は空中変形。
その勢いのままMへとタックルを食らわし、彼女を拘束する。
「この黒い機体で……お前は殺した。小木曽さんを殺した! 」
「っ……! 拘束が……強い!? 」
どす黒い感情が、俺の胸の奥から沸き上がった。
「止せ!! 草薙彰久!! 」
瞬間、膨大なエネルギーがMを掴む俺ごと巻き込み、ムーバブルシールドバインダーが二つ同時に消失する。
エリアの放った粒子砲の圧力に耐えられなかったせいか、俺のシールドエネルギーは激減した。
「簪! 彰久の回収を優先しろ! 」
「だけど……! 」
「この状況下では無理だ! 止むを得ん! 連中は逃す! 」
「……了解! 」
薄れる意識の中、俺は簪ちゃんに身体を受け止められ海に落ちる事は叶わない。
エリアとMの二人はみんなが俺に気を取られている内にいち早く撤退し、既に見えなくなっていた。
「く、くそ……! に、逃がすか……! 」
苦し紛れに手を伸ばすも、掴むのは虚空。
そこで、俺の意識は途切れた。
彰久、ここで最大のミス。