IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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お久しぶりです。


鎧武者推参

<翌日・IS学園>

 

 

 そうして、俺はIS学園に帰ってきた。

小木曽さんの葬式で休んでいた事はクラスのみんなに伝わっていたらしく、俺が教室に入ってきた瞬間に心配そうな表情を見せる。

 

「彰久さん……大丈夫ですか? 」

「あぁ、勿論だ。女の子を心配させてしまっては、変態紳士の名が泣くからな」

 

「そ、そうか……良かった……」

「あ、でも元気ちょっとだけないからおっぱい揉ませてくれると元気出る」

 

「調子乗んなよオラ」

 

久々にセシリアに胸倉を掴まれた気がする。

ふふん、やはり俺は女の子に尻に敷かれるのが似合っているぜ。

 

「しかし彰久、もう専用機持ちのエキシビションマッチは明日だぞ。お前と私はあまり訓練を重ねていないが……」

「ふっ、この草薙彰久はきちんと秘策を練ってあるぜ! 何せ俺は新兵器を今回は積んで来たからな」

 

「おお! 本当か彰久! それで、その秘策とは何なんだ? 」

「聞いて驚け、なんと俺は人型の状態でも高機動を維持できるようになったのだ! これで変形してもしなくても、相手を翻弄する事ができる! 」

 

「なっ、なんだと!? 素晴らしいじゃないか彰久! これで私たち勝ったも同然じゃないか! 」

「思ったんですけれど、秘策って全員に言ってはダメなのではないかしら? 」

 

「あっ」

 

セシリアの一言に、その場の空気が凍り付く。

ラウラの方は未だに分からずじまいであり、呆気に取られる俺の頬を指でつついてきた。

 

「……わ、私は聞いてないぞ? なんて言ったって今木刀の素振りをしていたからな! 」

「ぼ、僕もだよ! 丁度今父さんから連絡来ててそっちに集中してたし! 」

 

「え、でも皆さん今思いっきり聞いて……」

「そこは合わせてよセシリア!? 」

 

「あ、あははは! 実は今言った秘策とは嘘だったのだー! ど、どうだ驚いたか! 」

(あっ、彰久ぁーっ!! なんとか持ち直したーっ! )

 

更なるセシリアの追撃と箒ちゃんとシャルの心遣いに思わず心が折れそうになる。

だが変態紳士は屈しない。

 

「もう、彰久さん嘘はやめてくださいまし。どう見たって取り繕えてませんわよ? 」

「パキン」

 

「ああっ! 彰久の心が折れた! 」

「なんでお前は死体にボディブローを打つような真似をした!? 」

 

「わたくしのせいですの!? 」

 

その場でうずくまるような形で俺は地面に倒れる。

来て早々俺の心を折るとはセシリアはやっぱり天然のSだ。

 

「ホームルームを始めるぞ。席につけお前ら」

「ち、千冬さぁぁぁぁん!! 今一度貴女の胸で泣かせてぇぇぇぇ!! 」

 

「席につけ」

「きんつばっ!! 」

 

千冬さんに泣きつこうとしたのに出席簿で殴られるのは本当に納得がいかない。

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<大会当日・ISピット内>

 

 

 『さあやって参りました、今年も恒例の専用機持ちエキシビションマッチ! 司会進行は生徒会長の更識楯無さん、実況は新聞部副部長の黛薫子がお送りしまーすっ! 』

『今年は専用機持ちの一年生がたーくさん集まってくれたから、お姉さんも楽しみだわ。人数が多いので今回チームで戦ってもらうことになったの』

 

『たっちゃんは今回のエキシビションマッチ、誰に注目してるの? 』

『もちろんみんなのアイドル、織斑一夏くんよ。後うちの役員の彰久君も楽しみねぇ』

 

仲睦まじい実況がピット内に響く中、俺とラウラは各々の機体の最終調整を済ませていた。

相手は一夏・簪ちゃんペア。

まさか初戦から彼と当たるとは思わなかったけど、これも運命ってやつなのだろう。

 

「むっきー! 一夏ばっかり注目しおって! この超絶イケメンスーパー万能紳士たる俺にだって注目が集まってもいいじゃないか! 」

「超絶イケメン……? すまん彰久、どこがそうなのか言ってくれないか? 」

 

「ああっ! また彰久の心が折れる音が聞こえるっ! 」

「今回どんだけ折れれば気が済むのよ……」

 

二回戦目を控えている鈴ちゃんとシャルが俺の肩を叩いて慰めてくれた。

そのまま俺の股間をその麗しい太ももでついでに慰めてくれるともっと元気が出るんだが。

 

「ふふん、だがまあ俺達には秘策がある。ラウラ、前にいったワイヤーブレードのやつは出来るか? 」

「任せておけ。お前がいない間、ワイヤーブレードの操作の訓練を重点的にこなした。稼働については問題ない」

 

「上出来。俺もそっちに合わせて動くぜ」

 

俺の言葉にラウラは頷く。

出撃カタパルトの準備が出来たという報せを受け、俺は追加ユニット"フルドドⅡ"を搭載した"ギャプラン[TR-5]フライルー"をカタパルトにセットした。

 

肩部に黒いスラスターが追加され、徐々に熱を帯びていく。

そしてカタパルトが駆動した瞬間、俺は一気にスラスターを噴かした。

 

「うぉっ!? 速ぇっ! 」

 

想像以上の速度に身体が反応しきれなかったのか、反動が俺の全身に襲いかかる。

だが歯を食いしばり、空中で体制を立て直した。

 

アリーナには既に"白式・雪羅"を纏った一夏と"打鉄弐式"を展開した簪ちゃんがその風格を露わにしている。

言うなれば戦を待つ戦国武将のようで、観客席の生徒達の視線を釘付けにしていた。

 

「ほう、それが簪のISか」

 

後からやって来た"シュヴァルツェア・レーゲン"を展開したラウラが、簪ちゃんのISを見て呟く。

彼女は頷き、黙ったまま両手に超振動薙刀"夢現(ゆめうつつ)"を構えた。

 

「おもしれえ、前から一夏とは戦り合ってみたかったんだ」

「奇遇だな、俺もだぜ彰久」

 

ロングブレードライフルの銃口と、"雪片弐型"の切っ先が火花を散らす。

ラウラも右肩にリボルバーカノンを展開し、簪ちゃんに構える。

 

『それではっ! ISファイト、レディーゴーッ!! 』

 

先手を打ったのは俺のロングブレードライフルから放たれたピンク色のレーザー。

一夏に向けて放つも、即座に"雪羅"を展開され吸収される。

 

それを読んでいた俺は、立て続けに両手のムーバブルシールドバインダーから二門のレーザーを放つ。

左腕のビームは一夏に、右腕のビームは簪ちゃんにそれぞれ殺到した。

 

「簪! 来るぞ! 」

「分かってる……! 」

 

俺が変形すると読んだのか、簪ちゃんは背中に搭載された二門の荷電粒子砲"春雷(しゅんらい)"を俺とラウラに向ける。

 

「エマさん! ロックを! 」

『了解』

 

だが敢えて俺はその粒子砲を右腕のシールドで防ぎ、左腕のシールドバインダーをある方向へ放つ。

一瞬だけ不審に思ったのか二人はその場を動くが、避ける事も想定済みだ。

 

「ラウラ! 」

「もうやっている」

「ナイス! 」

 

俺が二人に攻撃を加えている間にラウラがワイヤーブレードを二人の背後に射出していた。

エマさんにロックを頼んだのは粒子砲を防いだ煙の中で正確に狙い撃つため。

 

放たれたビームはブレード部分に直撃して反射し、一夏の右肩部を掠める。

いきなり背後から攻撃を食らったのか彼はひどく困惑していた。

 

「そうか……背後……」

 

素早く順応し簪ちゃんは背後へと"夢現"を振り回す。

ワイヤー部分を斬り落とし、彼女は攻撃を食らった一夏のカバーへと移行した。

直後両脚に取り付けられたミサイルポッドから幾多ものミサイルが射出され、俺たちに殺到する。

 

「乗れっ! 」

「了解! 」

 

フルドドを量子化しつつ変形し、可変機形態となった俺の上にラウラは乗った。

迫り来るミサイルを大口径のリボルバーカノンで撃ち落しつつ、縦横無尽にアリーナを駆け巡る。

 

「くそっ! 変形された! 」

「一夏、ミサイルを牽制で撃つからその後にお願い」

「お、おう! 分かった! 」

 

"フライルー"の画面にロックオン警告が鳴り響き、再び簪ちゃんの放ったミサイルが殺到した。

俺は敢えて乗せたラウラをその場で降ろし、変形を解除してフルドドを展開しつつミサイルから逃れる。

 

おそらくこのミサイルは牽制。

俺は右手にロングブレードライフルを展開しながら振り向き、左手でムーバブルシールドバインダーでミサイルを撃ち落とす。

 

その後爆煙と共に一夏が突出し、俺と鍔競り合った。

 

「読まれた!? ……けど、脇が甘いぜ! 」

「うおっ! 」

 

剣術に関しては俺は素人だ。

更に剣の腕を上げた彼にとっては、俺と競り勝つなんて造作もない。

 

一番やってはいけない、"近接特化型に近づく"という事。

少なからず、俺に焦りが生まれる。

 

「ラウラ! 無事か! 」

「なんとか、な」

 

簪ちゃんの方へ向かっていた彼女に目をやると、ラウラも反撃を食らったのか背中を合わせる形となった。

もうワイヤーブレードの秘策は使えない。

となれば……。

 

「ラウラ! 一夏は任せた! 」

「分かった。無理はするなよ」

 

それぞれの反対側にいる敵へ向かう事であった。

俺は簪ちゃんに変形しながら近付き、薙刀を彼女が構えた瞬間に人型へ再び戻る。

 

「……! 」

 

冷静な表情から一転、驚愕した顔が見れて俺は満足だ。

美少女はどんな顔をしてもかわいい。

 

「"急速変形"……! なんで彰久はそんな無茶を……! 」

「なんたって俺は、変態紳士だからな」

 

ロングブレードライフルのトリガーを数回引き、全弾命中した事を確認すると追撃として両手のムーバブルシールドバインダーを構える。

二門のビームと荷電粒子砲がスパークを起こし、中規模の爆発を起こした。

さすが現日本の代表候補生、反応速度が並の速さではない。

 

ラウラの方へ視線をやると、AICを駆使しながら彼と近接戦を行っているようだ。

両手のプラズマ手刀で雪片弐型を弾きつつ、雪羅のエネルギー砲を凌ぐ。

 

「よそ見してちゃ……ダメだよ」

「さすがに、まだダウンはしちゃくれねーか……! 」

 

簪ちゃんの声が聞こえたと同時に眼前に迫る薙刀"夢現"。

ロングブレードライフルを剣形態へ移行させ、二撃目をなんとか防ぎきる。

 

「遅い」

 

唸るような速さと共に夢現で防御を崩し、袈裟斬りを俺にお見舞いした。

間違いない、簪ちゃんは専用機持ちの中で近接戦は最強に近い。

 

なら俺が取るべき行動は一つ。

"逃げる"。

 

「逃がさない」

 

フルドドによって加速する俺を、簪ちゃんが追いかける。

俺は前方にビームサーベルを投げ、空中で回転させた。

 

ビームサーベルを越した所で再び急速停止を行い、左手のムーバブルシールドバインダーを回転するビームサーベルに向けて放つ。

オレンジ色の刀身にビームが反射し、簪ちゃんの左脇腹を掠めた。

 

「この程度、問題ない」

「なにぃっ!? 」

 

渾身の突きが、俺の胸部を直撃する。

一気にシールドエネルギーが減少し、絶対防御が発動したおかげで俺は戦闘不能となった。

 

「彰久!? ちぃっ!! 」

 

結果的にラウラは2対1で戦う事となり、AICで拘束していた一夏を離して高速で向かう簪へと死線を向ける。

ワイヤーブレードを6本射出した後、リボルバーカノンを彼女に構えつつプラズマ手刀で一夏の雪片弐型を捌く。

 

彼女でなければ出来ない芸当だった。

3人が戦う様子を悔しく思いつつも、俺はラウラを見守る。

 

「一夏! そのまま! 」

「おう! 」

 

迫り来るワイヤーブレードを斬り落とし、肝心のリボルバーカノンも外れた。

ラウラに焦りが見え始め、一夏の方へ一瞬防御を怠る。

 

その隙を逃さんとばかりに"零落白夜"を起動し、一気にラウラのシールドエネルギーをかっさらう。

追撃として簪ちゃんの夢現がラウラの胴体に突き刺さり、彼女も俺と同じように地面に叩きつけられる。

 

『勝者! 織斑・更識ペア! 』

 

結果として、俺達は二人に敗北を喫したのであった。

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<ピット内>

 

 

ラウラを抱きかかえながら先に降ろし、俺達はISを解除する。

彼女は笑顔で頷きつつ俺の肩を叩き、俺の彼女の頭に手を置いた。

 

「すまん、俺が簪ちゃんの能力を侮っていた」

「仕方がない。私たちは全力を出せたんだ、悔いはないさ」

 

「お疲れ、二人とも」

「惜しかったね、あとちょっとだったのに」

 

そうだな、と俺はシャルの肩を叩く。

 

「次はお前達だろう? 空いては箒とセシリアだ、十分に注意しろ」

「言われなくてもね。あの巨乳二人組はなんとしても勝たないと」

 

「鈴ちゃん胸で負けてるから何としても勝たないとな」

「余計なお世話よ」

 

軽めのチョップを俺に食らわした。

いつもなら蹴りが飛んでくるのに、今回は優し目のチョップとは彼女なりに気を使っているのだろう。

 

「シャル、急速変形は多用するなよ。君は武装の量で二人には勝っているからな、なんとかなるぜ」

「ありがと、彰久。試合見ててよね」

「当たり前だ」

 

直後、二人の名前がアナウンスによって告げられる。

鈴ちゃんは"甲龍"を、シャルは"Z"を展開してカタパルトにセットされた。

 

「シャルロット・デュノア、ゼータ、行きます! 」

「凰鈴音、甲龍、出るわよ! 」

 

その声と共に、二人はアリーナへと投げ出される。

俺達はそれを見届けると、観客席へ向かった。





次回は彰久視点メインです。

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