IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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マドカの新機体登場です。


変態紳士、裏で動く

<IS学園・食堂>

 

 

 俺とラウラは用事を済ませた後、作戦会議の為食堂へ向かう事にした。

適当に食事を注文して席に運び、彼女はポケットからスマホを取り出す。

 

「彰久。私たちが組んで戦う場合、デメリットとメリットはなんだと思う? 」

「うーん、そうだな……。俺とラウラのISは中距離型で、どんなISとでも臨機応変に戦える事がメリットじゃね? 」

 

俺は眼鏡を掛け、ラウラのスマホを覗き込んだ。

 

「うむ、確かにそうだ。ではデメリットは? 」

 

「デメリットは相手の得意な距離や間合いに持ち込まれたら必ず劣ってしまう事だろうなぁ。鈴ちゃんとか一夏が接近してきた時が一番こえーわ」

 

「流石だな、よく周りや自分の立ち回り方を理解している。これを見てくれ」

 

彼女はスマホを横にして画面が俺にも見えるようにしてくれた。

その後俺達の目の前に小さめな立体のホログラムが表示される。

 

「この黒い駒が私で、灰色を彰久としよう。事前に作戦プログラムを考えておいたんだ、どんなISを使う奴がコンビになっても順応できるようにな」

「準備いいね、ラウラに惚れるわ」

 

「ふっ、伊達に特殊部隊の隊長はしてないぞ」

「ドヤ顔かわいい」

 

ラウラがホログラムに触れて俺と彼女の駒を動かした。

 

「まず一つ目は私と彰久で試合開始と同時に近接戦を仕掛ける作戦だ。普段ビームライフルやカノン砲を使ってる私たちが格闘を仕掛けるとすればまず相手の虚をつけるだろう。だが、これは相手に近接特化型ISがいない場合だ」

 

「一夏や箒ちゃん、鈴ちゃんには通用しないな。シャルかセシリアくらいか」

 

「あぁ。だがいくらセシリアの機体が遠距離型とはいえ、反撃を食らうのは必須だろう。これはあまり推奨できない」

 

俺は頷く。

 

「次に考えたのが"ギャプラン"の可変機構を利用して、速さで翻弄しつつヒット&アウェイを狙う作戦だな。私を上に乗せて動くことは可能か? 」

 

「多分な。福音の時の装備じゃ速度が落ちるけど。というかさっきの"上に乗せて動く"ってもっかい言ってくれない? 」

「上に乗せて動く」

 

「もっと喘ぐように!! 」

「上にっ……乗せてっ……! 動くっ……! 」

 

「最近カ○ジ読んだでしょ」

「シャルロットが貸してくれた」

 

シャル、あの漫画持ってるんだな。

今度貸してもらおう。

 

「けどまあ、戦法としては二つ目じゃね? 近接戦仕掛けるのはリスク高いだろ」

「うむ、私もそう思う。それでだな、私と彰久で合体技みたいなものを造ろうと考えているんだ」

 

「ほー、前の時はセシリアとやったけど上に乗せて動いて狙撃するだけだったからな。面白そうじゃん。それで、どんな感じにする? 」

 

ラウラは考え込むように顎に手を当てた。

 

「……ワイヤーブレード、使ってみるか」

「どう使うよ? 」

 

「ブレード部分に彰久がビームを撃ち、それを反射させて攻撃を当てる。ワイヤーブレードも動かせるから、所謂疑似ビットのような形になるだろう」

「へぇ、いいじゃんそれ。採用だよ」

 

「おお、本当か」

 

俺は彼女の手を握る。

 

「流石ラウラだ。一緒に組めて良かったぜ」

「そ、そう面と向かって言われると照れるな……」

 

「照れ顔頂きだぜ! また変態紳士フォルダが潤ってしまうな 」

『安心して頂戴。私が消しておいたから』

 

「あぁぁぁぁぁ!? というかエマさん久しぶり! 」

『そうね、久しぶり』

 

エマさんはホログラムとして俺の肩の上に座った。

彼女はラウラのスマホを見やると、急に顎に手を当てている。

 

「どうしたのだ、エマさん」

『いえ、ちょっとあなた達の合体技とやらが気になったの。少し座標と演算処理が間違っているわ。私が直して表示するから待っててね』

 

時折ラウラは表示された画面を操作し、エマさんのアクセスを許可していった。

するとホログラムが次々動かされ、最終的に相手の駒の背後へ向かうようになっていく。

 

『この技をやるタイミングは、ラウラさんのワイヤーブレードの存在に気がついていない時がベストね。彰久がビームを撃って反射させた直後、即座にこれを収束させる』

 

「なるほど、確かにこれは虚を突ける上に気付かれ無さそうだな」

「うむ。このような改善点があったとは、私もまだまだだ」

 

口で簡単に言えること程、実践すると案外難しいものだ。

ワイヤーブレードをしまうタイミングや角度、そして俺の命中精度が正確でないと出来ない芸当だろう。

 

 

「よし! さっそく練習開始だ! アリーナへ行くぞ彰久! 」

「まだ飯食ってないだろ……ってああっ!! 」

 

「ど、どうした? 」

「ラーメン注文してたから延びてた……くそう……ツイてねぇ……」

 

 

俺はその後、のびきったラーメンを啜りながら涙を流した。

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<IS格納庫・一夏視点>

 

 

 俺は簪さんに導かれるまま、"打鉄弐式"の前に立つ。

彼女曰くこの機体はまだ未完成で、しかも俺の白式のせいで製造が遅れてしまったらしい。

 

なんだか申し訳なくなった俺は彼女の手伝いとしてここに来ているわけである。

けど俺に出来る事ってあるのかな……?

 

「あ、簪さん。それに一夏さんも」

「セシリア! どうしてここにいるんだ? 」

 

「IS整備の学習の一環として、簪さんのISの整備を手伝わさせて頂いてるのですわ。ね? 」

「うん。セシリアは筋がいいから、結構仕事を任せちゃう」

 

えっへん、とセシリアは胸を張った。

後ろではのほほんさんと真琴も一緒に作業しているみたいだな。

 

「あ、本音ちゃんも真琴も来てたんだ」

「私はかんちゃんのメイドさんだからね~」

 

「や、やめてよその言い方……。私友達をそんな風に言いたくない」

「ごめんごめん~。昔からの癖でさ~」

 

「ならばわたくしのメイドになってもよくってよ? 」

「えぇ~。せっしーはなんか姑みたいでいやだなぁ~」

 

「し、姑っ!? 」

「あはは、確かにぽいかも」

 

なんか、簪さんってイメージとだいぶ違うなぁ。

苦手意識を持ってた俺が馬鹿みたいだ。

 

「あの子、ああ見えて結構変わったんやで」

「えっ? そうなのか? 」

 

「うん。ああいう風に友達と話して笑顔になる、っていうような光景はあまり見なかったんよ。簪自身、あまり積極的に絡みに行くような子じゃなかったし。正直な話、彰久のおかげで明るくなれたって言ってたなぁ」

 

「彰久が……」

 

昔からあいつは女の子や友達が困っていると真っ先に首を突っ込んでた気がする。

まあやる事が変態だったしモテてはいなかったけど、男女からの評価は高かったな。

 

「……よし! 」

「お、織斑くん? どうしたの? 」

 

「俺も手伝おうって思ってな。せっかくパートナーになったんだ、出来る事はなんでもするぜ」

「えっ、でも……」

 

「いいんだ。元は俺のせいで製造が遅れたんだし。気にしないでくれ」

「わ、分かったよ、織斑くん」

 

渋々彼女は承諾し、そっぽを向いて打鉄二式の方へ集中していった。

 

「……って言っても、何すればいいんだろう? 」

「そ、そこからやねんな……」

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<亡国機業・日本支部>

 

 

 

 大西洋上空で交戦した後、そそくさと自室で寝たMにコールが掛かる。

発信相手はスコールで、急ぎの用事ではなさそうだ。

 

「……それで、呼び出したからにはちゃんとした用事なんだろうな」

「ええ、もちろん。あなたの機体に関して話があったの」

 

「私の機体だと? エリアも奪還出来ていないのにそんな話をするんだな 」

「厳しいお言葉ね。まあ、いずれ彼女も取り返すわ。我々が雇っている以上、エリアも私たちの仲間なんだし」

 

「フン、好きにしろ」

 

しばらくの間無言が続き、二人はIS格納庫へたどり着く。

そこには黒で統一された機体がケーブルに繋がっており、二人の視線を釘付けにした。

 

「"アストレイゴールドフレーム天"、通称"黒騎士"よ」

「……ずいぶんと荘厳な名前だな。この機体は誰が使うんだ? 」

 

「貴方、よ。サイレント・ゼフィルスは改修して新しい機体にするわ」

「ずいぶんと太っ腹なんだな。まあいい、使わせてもらうとしよう。もう完成しているんだな? 」

 

「えぇ。最適化は自分でやってちょうだいね」

 

そう言うとスコールは格納庫を後にする。

そんな彼女を一瞥すると、Mは"黒騎士"に向き合った。

 

(新しいISコアなど早々手に入るはずなどない。どこから入手した? )

「誰が造った、って顔してるね? マドカちゃん? 」

「……貴方は……」

 

兎の耳のようなアタッチメントを頭に付け、胸が露出した水色のメイド服を纏った女性がマドカの背後に立っている。

篠ノ之束、今や世界的権威を誇る人物だ。

 

「やっほ~、あの時の会食以来だね。元気してた? 」

「まあ、元気と言えば元気です。この機体は貴方が? 」

 

「もっちろん! 束さんにかかればこの程度ちょちょいのちょいだよ! 」

「……そうですか」

 

疑問と不信感が頭の中を駆け巡る。

 

「んん~? なんで私が協力してるのか不思議な顔をしてるねぇ~? 」

「いえ、そんなはずは」

 

「でもマドカちゃんには特別に教えてあげよう! 私はね? 君やちーちゃんやいっくんや箒ちゃん、ぐーちゃんやくーちゃん以外はどうでもいいの。その他がどうなろうと、私には関係ない。この世界の人間が、私にとっては石ころに見えるんだよ。全部、全部全部全部全部」

 

狂っている、とマドカは心の中で思った。

全ての人間を敵に回す発言を、この女は笑顔で言って見せたのだから。

束の背後にいるグレイス・エーカーやクロエ・クロニクルも、彼女を見ているだけであった。

 

「……では、草薙彰久はどうなる? なぜ貴方は彼にISを提供した」

「あぁ、あっくん? 彼は全くのイレギュラーなんだ。いっくんの場合は私が小細工をしたけど、彼の場合は別。どうしてISを動かせたのか、なぜ適応しているのかが全く分からない。だから彼は、今後の実験モルモットかもね。泳がせておいたら面白そうだし」

 

心底この女が恐ろしい、とマドカは思う。

草薙彰久の事を聞いたグレイスは少しだけ動揺を見せたが、それだけだった。

 

「……ふふふふ、今分かりました。貴方は敵に回してはいけない人物だとね。だが……織斑一夏は私が殺す」

「……へぇ」

 

束の表情が一変する。

 

「自分が自分である為に……私は彼を否定する。影には影の生き方がある。篠ノ之束、"石ころ"を舐めるなよ」

 

沈黙が格納庫を包み込んだ後、何を思ったか、束は笑い始めた。

 

「いいねぇ、そういう風に刃向かって来る子なんて何年振りだろう? 気に入ったよ。本来なら実験体にしてるところだけど今回は見逃してあげる。ぐーちゃん、くーちゃん、行くよ」

 

彼女の姿が完全に消えると、マドカはため息を吐く。

ハンガーにセットされた黒騎士の元へ向かうと、彼女はそれに背中を預ける。

 

「いいだろう。その挑戦、乗ったぞ。篠ノ之束」

 

今度は恐怖心ではなく、闘争心がマドカの脳内を占めた。




というわけでゴールドフレーム天になりました。
黒騎士というイメージではこの機体がピッタリでした。

スコールの機体はまだ情報が少ないので、原作で露わになってから出演させようと思います。

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