IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

83 / 91


ずいぶんと更新の間か空いてしまいました。
すいません。


変態紳士、結成する

<翌日・一年一組教室、昼休み>

 

 

 

 「いやぁ、今日も食堂のメシは美味かったなぁ~。日本人に生まれてきて本当によかったよ」

「和食は無形文化財にも登録されているからな。侮ってもらっては困る」

 

俺と一夏と箒ちゃんで昼食を済ませた後、俺達は一夏の席に集まる。

まだまだ昼休みの時間も余ってるので、暇つぶしがてら話でもしようという魂胆だ。

 

「そういや、箒ちゃんから俺と一夏を飯に誘うなんて珍しいじゃないか。なんか話でもあるの? 告白? 」

「違う、私が話したかったのは例の襲撃者の件だ」

 

「……あ、そういや箒ちゃんも戦ったんだってね。悪いけど口外厳禁だよ、これは」

「分かっている。だからこそ同じ情報を持っているお前達と話したかった」

 

珍しく3人の間に真面目な空気が流れる。

 

「なるほどねぇ。ま、その一夏達を襲った襲撃者に関しては詳しくは知らない。だが、奴らは単体じゃないことは明らかだ」

「ふむ、というと? 」

 

「学園祭の劇の後、俺と彰久は分散して応援を要請しに行った。けどもう一人の襲撃者にその道を阻まれてな。連中の脱出を助けてた奴がいたんだ」

 

連中、というのは白式の強奪に失敗したオータムの事だ。

唸るように箒ちゃんはアゴに手を当てる。

 

「とりあえず、当分襲撃が来ないのは確かだろう。それまでに備えておかなれけばな」

 

彼女の言葉に俺達は頷いた。

エリアの事は俺と千冬さんしか学園内で知っている人間がいない為、無闇に口外するとパニックになってしまう恐れがある。

俺はそれを防ぐため敢えてエリアの事は言わないでおいた。

 

「あ、3人ともー。ちょっといい? 」

「黛先輩、どうかしたんですか? 」

 

「ちょっと3人に頼みがあってね」

「頼み? 」

 

「まあ、これを見てくれれば分かるよ」

 

黛先輩が差し出したのは全国で発行されてる有名な情報雑誌。

ISのことやファッションの事が事細かに記されているもので、俺も何度か買った覚えがある。

 

「雑誌、ですか? 」

「うん。あのね、私の姉って出版社で働いてるんだけど専用機持ちとしてインタビューさせてほしいの」

 

「何ィ!? この俺の美しくもバランスのとれたこの肉体とイケメンフェイスを独占インタビューしたい!? しょうがないですねぇ、特別ですよ? 」

「あ、彰久君はまだ公表されてない操縦者だからダメだよ。というかさほど絵になる外見じゃないしね」

 

「そこまでトドメ刺さなくても良くない? 」

 

本当に黛先輩ははっきりとものを言う人だ。

俺の心をここまで結合崩壊させるなんてやるな。

 

「この雑誌……。ISとはあまり関係のないものじゃありません? 」

「あれ? 二人はこういう仕事初めて? 専用機持ちってタレント活動みたいな事もするんだよ? 主にモデル活動がメインだけどね」

 

「なら! この俺も是非モデルにッ!! 」

「あー、うん。ギャプランなら大丈夫だと思うよ」

 

「もうそれ俺じゃないじゃん……」

 

落ち込む俺を押しのけていきなり鈴ちゃんが一夏の元へやって来た。

 

「モデル業なら、あたしの写真見せたあげる! 」

「鈴ちゃんモデル出来るようなプロポーションないじゃん。強いて言えばまな板の宣で――」

 

「ショァッ!! 」

「ぶべらっ!! 」

 

彼女の鋭いハイキックが俺の頬にクリーンヒットする。

今日の下着は黄色か、いい色だ。

 

「えぇ、いいよ。どうせお前かっこつけてるんだろ~? 」

「なんですって!? じゃあ今見なさい、すぐ見なさい! 」

 

鈴ちゃんは一夏の顔にスマホの画面を押し付けた。

 

「…………へぇ、いいじゃん」

「へへん、でしょでしょ? あたしだってちゃーんと成長してるんだから! 」

 

「ふむふむ……。これは大きさ的にBだな」

「ドッセーイッラァッ!! 」

 

「女の子がブレーンバスターなんてするもんじゃn……げぶぁっ!! 」

 

綺麗に技が決まった鈴ちゃんは武藤○司のように決めポーズをする。

教室はなぜか湧きあがり、颯爽と彼女は二組へと帰って行った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<放課後・生徒会室>

 

 

 俺が首を痛めつつも授業を終えると、会長に校内アナウンスで一年生の専用機持ちは生徒会室に全員集まるよう指示される。

この指示をシカトすると中学時代の俺の作ったポエムが大暴露されてしまうので勿論俺は行く事にした。

 

「会長! 一番乗りですよ! これで俺の黒歴史ポエム大暴露はやめてください! 」

「残念だったな。私が一番だ彰久」

 

「げぇっ!? 今の言葉聞いてたラウラ!? 」

「一番乗りのとこからな」

 

「もう全部聞いたって言えよ! 」

 

部屋の隅に置いてあった段ボールからラウラがひょっこりと顔を出す。

最近ラウラ段ボール好きすぎだろ。

 

「た、頼むラウラ! 後生だ! この事にはみんなに黙っておいてくれ! 」

「大丈夫だ彰久、お前のポエムとやらは我ら黒ウサギ部隊がしっかりと保管してある。ついでに会長のPCにも送信済みだ」

 

俺が膝から崩れ落ちた瞬間、一夏達が生徒会室に入ってきた。

不思議な事に会長や簪ちゃんまで一緒におり、何故か新鮮な光景である。

 

「あら、彰久君にラウラちゃん。先に来てたのね」

「はい。生徒会室に不審者や不審物がないかクリアリングしていました」

 

「さすが、ドイツ特殊部隊隊長ね。ほら、彰久君早く立ってよ。話が始められないじゃない」

「既にみんなの足を見て俺の股間は立っていますがね。見ますか? 」

 

「捥ぐよ? 」

「ごめんなさい」

 

会長なら本当にやりかねないので怖い。

気を取り直して一列に並ぶと、会長は机から書類を取り出した。

 

「今日貴方たちを呼び出したのは、学園内である催しをする為です。今企画書を渡すわ」

「なになに……? "専用機持ちタッグマッチ"? 」

 

「そう。そのタッグを発表する為、貴方たちに来てもらったの」

「なるほど……。それで、各々のパートナーとは? 」

 

「それはこの企画書に提示されているわ。見てちょうだい」

 

言われるがまま全員はプリントをめくる。

見開きに各コンビの構成が記されており、俺のパートナーはラウラだった。

 

「おお、彰久がパートナーか。よろしく頼む」

「こちらこそ。ラウラがパートナーで心強いね」

 

「むむむ……。彰久さんとパートナーになりたかったですわ……」

「僕だってそうしたかったよ……」

 

「まあまあ、そう落ち込むな。私はセシリアとパートナーになれてうれしいぞ」

「あたしもシャルと組めて心強い部分はあるしね」

 

うむ、箒ちゃんも鈴ちゃんも大人になったなぁ。

 

「よろしくな、簪さん」

「う、うん……。よろしく……」

 

和やかな雰囲気の一方で、一夏と簪ちゃんは微妙な空気である。

特に心配なのは簪ちゃんだ。

まさか会長、このコンビは狙って組ませた訳じゃないだろうな……。

 

「専用機持ちタッグマッチは、2週間後の金曜日に行ないます。一年生全員が観客として観戦するので、結構緊張すると思うけど頑張ってね。ここまでで、何か質問はある? 」

「はい、なぜ会長や先輩の2、3年生の専用機持ちは参加しないのでしょうか? 」

 

「今回のこのイベントの目的はあなた達の訓練の成果を見るために企画されたの。その上で一年生に貴方たちの試合を見せ、より全員の技術の向上を図るから、今回2,3年生は不参加よ」

 

「えーっと、あたしのルームメイトでティナって子もいるんですけど、彼女も一応専用機持ちにカテゴリーされるのでは……」

 

思い出したかのように会長は企画書から顔を上げた。

 

「あぁ、彼女も呼んでみたのだけれど、ティナさんの"ジム"は元々アメリカの第二世代型を譲り受けたそうで、量産機の部類に入るらしいの。彼女は辞退すると言っていたわ」

「そ、そうなんですか……」

 

「……残念だな。彼女自身が一番悔しいだろう」

「あたし、後で話してみるわ」

 

「えぇ、お姉さんからもお願い。生徒の悩みは、私の悩みでもあるからね」

 

鈴ちゃんは頷く。

 

「さて、他に質問は? 」

「ありません」

 

「じゃあ、話はこれで以上よ。企画書にルールが記載されているから、よく読んでおいて。解散」

「ありがとうございました」

 

俺達全員は生徒会室を出て行った。

さて、これからラウラと作戦を練らなきゃな。

 

「……一夏君、お願いね」

 

会長の声が聞こえた気がしたが、俺は気にせずラウラと食堂へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<同刻・大西洋上空>

 

 

 

 「…………」

既に夕日が差し掛かっている頃、青と白のツートンカラーの機体が空を駆け抜ける。

"サイレント・ゼフィルス"、この機体の名だ。

 

「こちら"M"、任務完了。これより帰投する」

『了解しました、早急に帰投願います』

 

顔上部を覆うマスクに長い前髪が掛かる。

それを手で払い、彼女はため息を吐いた。

 

「……ちっ。あの男、殺し損ねたな」

 

Mの脳裏に浮かぶのは織斑一夏の顔。

彼女にとって彼は邪魔な存在であり、最も忌むべき存在だ。

舌打ちをし、一夏の顔を取り払う。

 

 

『そこの機体、止まれ! どこの所属だ! 』

「……」

 

パトロールを行っていたどこかの隊からの通信に、Mは苛ついた。

ハイパーセンサーには3機のISが表示されている。

 

イタリアの第二世代の新型"ジェガン"二機と、隊長クラスにのみ支給される"スタークジェガン"。

それらが彼女の後を追っていた。

 

『このまま飛行を続けた場合、本機は貴官を攻撃せねばならない! 応答しろ! 』

「……黙れ」

 

『……何? 』

「黙れ、と言ったんだ」

 

その瞬間、彼女の背部にマウントしてあったビット"エネルギー・アンブレラ"が唸りをあげ、ジェガンたちに襲いかかる。

いきなりの攻撃に反応できなかったのか、一機のジェガンが蜂の巣となり海へと落下した。

 

『隊長! 許可を! 』

『了解! こちらジェガン第4隊、大西洋上空にて交戦開始! 』

 

反撃としてバズーカとビームライフルの弾が同時に襲いかかるが、難なく躱してMはバトルライフル"スターブレイカー"を放つ。

それと同時に四基のビットを展開させ、エネルギーと実弾の嵐が彼女らに降った。

 

『くそっ……! おのれぇぇぇぇぇ! 』

 

躱しきれなかったのか、残るは隊長機のみとなる。

だが恐怖に飲まれずスタークジェガンの動きは冷静で、肩部に取り付けてあったミサイルポッドから3発のミサイルが続けて2回放たれた。

 

「……! 」

 

回避しようとした瞬間、そのミサイルは空中分解し散弾をMに浴びせる。

舌打ちしながら彼女のシールドエネルギーは微量に減少し、四基のビットを撃墜した。

 

スタークジェガンはそれに畳み掛けるように手にしたバズーカの全弾を撃ち切る。

無論の事Mはこれを回避し、残ったビットを放った。

 

「ほう、やるな」

『……』

 

次の瞬間、撃ち切った肩のミサイルポッドを外し、バズーカを投げ捨て、ビームサーベルを展開しつつスタークジェガンはMとの距離を急激に詰める。

 

ビットのビームは外れ、Mは左手に近接ブレードを展開した。

バチィンと、ブレードとビームサーベルが一瞬だけスパークを起こす。

 

『…………』

 

夕日を背にして相手の目を眩ますように、スタークジェガンは斬りかかる。

そのまま鍔競り合いながら両者は回転し、2周半したところでMは押し返した。

 

ビームサーベルを突き立てるように構え、スタークジェガンは再び彼女へと突進する。

だが、既に反対の腕にガトリングガンが展開されており、蜂の巣となった。

 

『"亡国機業"め……! 』

 

追撃としてブレードで胴体部を斬りつけ、止めにキックで海へと落とす。

スタークジェガンは恨めしく手を延ばすが、間もなく水面へ叩きつけられた。

 

 

「……こちらM。敵部隊と交戦、急ぎ帰投する」

 

 

通信の反応はない。

Mは水面を一瞥しながら、再びブーストを噴かす。

 

その後、スタークジェガンの部隊が消息を絶ったのは言うまでもない。





クシャトリヤとスタークジェガンの戦闘シーンは名シーンだと思うんです。
まだMの新機体はお預け。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。