すいません、先ほどの回が間違えて投稿されていました。
即刻削除し、新たに書き直したのでご理解のほどよろしくお願いします。
<IS学園、格納庫>
俺達は夕食を差し置いて簪ちゃんの後を追う。
泣いている子を放っておけるほど俺達は非常な人間じゃない。
「いた、あそこだ」
格納庫で一人ISを整備する彼女を見つけ、俺達は声を掛けた。
「あ……」
「よっ、簪ちゃん」
「こんにちは、二人とも。どうしたの? 」
どうやら先程の事は敢えて言わないようにしているらしい。
一人で抱え込むつもりだろうか。
「……さっきの事でお話しがあります。詳しくは聞きませんが、大丈夫ですか? 」
「……大丈夫、だよ。心配して来てくれたんだよね、ありがとう」
「何かあったのか? 」
「うん……ちょっと姉さんと喧嘩しちゃって……」
彼女の表情は悲しげだ。
「姉妹に喧嘩なんてものは付き物です。むしろお互いがお互いを大切に思っているからこそぶつかってしまうのですわ。あなたの家族なんでしょう? 」
「分かってる……分かってるけど……」
「落ち着けよ、セシリア。何のことで言い争っちゃったんだ? 」
「それは……織斑君のことで……」
「一夏のこと……? 」
俺は首を傾げる。
一夏と簪ちゃんが関わっているところなんてあまり見かけた覚えがないからだ。
「織斑君のISを急造した事が反映されて、この打鉄弐式の製造が遅れているの。私がこうして格納庫に通っているのはこの子を自分の手で創り上げる為。織斑君がいい人なのは分かっているんだけど、自分が蹴落とされた気がして……」
「……複雑だな」
どうにも一夏に苦手意識が湧いてしまっているという事か。
まあ一夏の出現が急すぎたってのが痛手だったんだろうな。
「それで、その事を見かねた姉さんが私に言及してきたの。理解してるのに更に言われちゃったら誰だって怒っちゃう……よね」
「より不仲なお姉さんに言われてしまうと、どうしても反発してしまいますわよね。分かります」
簪ちゃんは頷いた。
葛藤の中で彼女は俺達に話してくれている事を理解しなければならない。
「よーし、決めた! 簪ちゃん、良ければ俺達も手伝わせてくれないか? 俺はISの整備に関してからっきしだけど、何か手伝えるはずだ」
「えっ……でも……悪いよ」
「お話しを伺った以上、見過ごす訳にはいきませんわ。それにわたくし、ISの整備なら多少心得がありますし。ね? 簪さん」
「え、ええっと……。私は……」
彼女は困ったように俺とセシリアの顔を見比べている。
散々悩んだ挙句、簪ちゃんは答えを出した。
「じゃあ……よろしくお願いします。彰久、オルコットさん」
「よしきた! 任せてくれよ、簪ちゃん! 」
「わたくしの事はセシリア、で構いませんわ。それで、何を手伝えばよろしいですか? 」
「あ、早速始めるんだね……。ここは、こうして……」
彼女の表情に笑顔が戻った瞬間、俺達も笑顔になる。
気を取り直して"打鉄弐式"の整備を始めると、あっという間に夕食の時間は過ぎてしまった。
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<IS学園・地下>
簪ちゃん達と夜通しで"打鉄弐式"の整備を行った後、俺の携帯に着信が入る。
千冬さんからで、"ウーンドウォート"の事で話があるらしい。
無論のことセシリアや簪ちゃんには知られていけない為、俺は「千冬さんに呼び出された」と二人に断りを入れてから格納庫を後にした。
なんとかバレずに済んだが、隠し通すことはできないだろう。
「すいません、遅くなりました」
「いい。私が呼び出したんだ」
「珍しくデレてますね、千冬さん」
「調子に乗ってると普段通りにいくがな」
「殴るならケツをお願いします」
普通にゲンコツが飛んできたので俺は迷わずそれを受け入れる。
うーん、気持ちいい。
「それで、ウーンドウォートの件とは? 」
「あぁ、お前がもし良ければいいんだが……奴と話してみるか? 」
「……マジで言ってます? 」
「嫌ならいい。こちらの方で話を進め――」
「俺あの子と話したかったんですよー! あんな機体を扱う割にはめっちゃ可愛いからぶっちゃけいつ会えないかと心待ちにしてたんです! ちょっと漏らしかけましたけど」
千冬さんの視線が途端にジト目となり、俺は内心ビクンビクンしながら彼女の答えを待った。
「……はぁ。なんだか心配していた私がアホみたいだ。じゃあついて来てくれ。この部屋の階段を降りた先に独房がある。そこに奴はいるぞ」
「はーい! 待っていろウーンドウォート! セクハラの限りを尽くしてやるぜ! 」
そう意気込みつつ俺は階段を降りていく。
あの綺麗な紫色の長髪、そしてちょっと幼さの残る美しい顔……。
あぁ、エロゲみたいな展開にしたい!
そして男として一歩前に進みたい!
「童貞卒業じゃァァァァァァァァァァッ!!! 」
「…………草薙彰久、丸聞こえなんだが」
まさか階段を降りたすぐ近くの独房にいるとは思わず、がに股の体制のまま座る彼女との間に沈黙が生まれた。
「……コホン。どうも、あなたの変態紳士、草薙彰久です」
「いや、知っている」
またもや沈黙。
(ど、ど、どうすりゃいいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!? チクショウあのブラコン、こうなる事が分かってて俺を行かせやがったな!! )
(誰がブラコンだぶち殺すぞ)
(心の中に入ってこないでくださいよ!? )
肝心のウーンドウォートは俯いたまま、俺に表情を見せない。
ヤバいと思った直後、彼女は腹を抱えて笑い始めた。
「ぷっ……くくくく。あははははっ! なんだお前は! まったく表情がコミカルな奴だ! あー、腹が痛い! こんなに笑ったのは久しぶりだ! 」
「お、おう……? 喜んでもらえて何よりだぜ、ウーンドウォート」
「"エリア"だ。そう呼んでくれ」
どうやら彼女の名前は"エリア"というらしい。
差し出された手を俺は警戒しながら握手するが、何にも起こらない。
ふっ、いくら敵と言えど変態紳士は女の子に優しいのだよ。
「俺の名前は……知ってるよな」
「ああ、草薙彰久。しかし、こうして捕らえるはずだった相手とこうして笑い合うというのも奇妙なものだ。あ、思い出したらまた笑いそう」
「え、俺のことぶち殺してひき肉して食うつもりじゃなかったの? 」
「違う違う。あくまでもアレは脅しの一環に過ぎない。本当に殺してしまったらお前の機体のデータやら生体反応やらが得られなくなってしまったからな」
なるほど、要は俺の事を脅したらISを差し出すと思ったんだな。
しかしあそこでグレイスが介入して失敗に終わってしまった。
けど捕らえられてたら色んなエロい事を亡国機業にされてたんじゃ……?
「へ、変な事するつもりだったんでしょ! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに! 」
「……エロ同人、とは? 」
「あ、そこから。こういうやつだよ」
「ふむふむ…………ってこれいかがわしい本ではないか。お前はまだ16ぐらいだろう。どうして所持している? 」
「いや、それは……」
さすがにまじまじと聞かれたら誰だって恥ずかしがるだろう。
「ま、まあそれは置いておき、俺はエリアに聞きたいことがあって来たんだ」
「ほう、何だ? 話してくれ」
「俺の"フライルー"と君の"ウーンドウォート"……どうして俺と同じ機体系統になっていた? 」
「……何の事だが、さっぱりだな」
「とぼけても無駄だぜ? 俺は片桐さんと小木曽さんに確認済みなんだ」
「…………」
彼女の顔をジッと見つめる。
観念したようにため息を吐き、エリアは口を開いた。
「はぁ。分かったよ、言う。"篠ノ之束"が、ウーンドウォートを基礎設計し、そして亡国機業の技術者がこれを創り上げた。そして、もう一つ重要な事がある」
「なんだ? 教えてほしい」
「"ラーク・メカニクス社"と"篠ノ之束"の関連性だ。お前の"ギャプラン"も篠ノ之束の基礎設計によるもの。だからこれと系統が同じものとなった」
つまりは基礎設計した人が一緒だったから系統も同じになったという事ね。
なるほど納得。
「んで、君はどうするつもりだ? このまま拘束され続けるのか、はたまた同じ亡国機業の連中がIS学園に来るのか……どっちなんだ? 」
「それは言えない。私はあくまでも奴らに関与している。ただ言えるのは、"黒い機体"に気を付けろ。それだけだ」
そう言うと彼女は再び塞ぎこんでしまう。
"黒い機体"……。
まさかグレイスの事か?
「……それだけ聞けりゃ十分だ。ありがとう、エリア」
「こちらこそ、久々に笑わせてもらった。またな」
俺はその場を立ち去る。
この事は千冬さんに報告する必要がありそうだ。
「――――次に会った時は、お互い敵同士だろうがな」
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