つっても製作段階ですけどね。
<土曜日、民間企業"ラーク・メカニクス"前>
暖かい日差しが照り付け、俺は大きくそびえ立ったビルを見上げた。
隣には可愛い私服姿の真耶先生がおり、出来ることならこのまま駆け落ちでもしたい気分である。
「草薙くん? どうかしましたか? 」
「ああ、いや。風が泣いてるなと思って」
「うわぁ」
「冗談ですよ! そんなゴミを見るような目で見下さないでください! 凄いエクスタシーを感じますけどね! 」
そりゃこんなとこで先生可愛いから見とれてましたなんて言ったら後が怖い。
迷わず千冬さんい出席簿で無駄無駄ラッシュされるだけである。
さて、話は変わるがなぜ俺と真耶先生がこの"ラーク・メカニクス"の本社を訪れているか説明しようと思う。
昨日の特別授業(意味深)にて製作段階の専用機を一度見に行く事を千冬さんに勧められ、俺は真耶先生と、一夏は千冬さんと共にそれぞれの企業を見学する事になった。
「ふふ、楽しみだなぁ」
「自分の専用機ですものね。楽しみに思う気持ちは先生も分かりますよ」
俺の専用機はこの"ラーク・メカニクス"、一夏の専用機は"倉持技研"という企業が製作を行い、現在二基とも製作段階にあるという。
やはり製作段階であってもこれから自分の専用機となるISだ、自分が一番理解しないと最大限の性能が発揮出来ないと踏んだ俺たちは、その話を快諾したのである。
「いらっしゃいませ。今日はどのような御用で? 」
「草薙彰久くんの専用ISの見学に来ました」
会社の中に入ると真耶先生が受付の女性に見学の旨を伝え、数回の応対を繰り返した後こちらへと戻ってきた。
さすが真耶先生、唯一の常識人だけあって応対など朝飯前なのだろう。
あとで求婚リベンジと洒落込もうじゃないか。
「しかしギャプランとかマジでオラワクワクすっぞ! テンション上がって五体投地とかしそうな勢いだぜ」
「五体投地までは行かないけど私もなんだか楽しみです! 羨ましいですよ、草薙くん」
「先生って可変機好きそうですもんね」
「変形シーンでご飯3杯は軽いです」
その食べたご飯の栄養は全てダブルビックキャニオンにいくんですね、揉ませてください。
ちなみに俺は量産機の戦闘シーンでご飯10杯を余裕でいけた。
和気あいあいと会話を続けていると、奥のエレベーターからポニーテールの男性がこちらへと向かってくる。
おそらく俺の専用機を製作している技術者とかそんな辺りの人物だろう。
「申し訳ない、待たせてしまいました。僕は片桐恭弥(かたぎり きょうや)、彼の"ギャプラン"を開発する技術主任です」
「あ、どうも。草薙彰久です。よろしくお願いします、片桐さん」
「副担任の山田真耶です、彼の付添人で見学させて頂きます」
ってこの人どう見てもビ〇ー・カタギリにしか見えないんだけど。
絶対金髪天然パーマの友達いるだろ。
どうやら真耶先生もそう思ったのか、俺に力強い視線を向けてしきりに頷いていた。
そうアイコンタクトを取りつつ、片桐さんの後ろについて行く。
「どうぞこちらです」
彼の案内されるがままエレベーターに乗り込み、地下4階まで進むとそこには本格的な機材が並んでいる広い研究室に辿り着いた。
未だに多くの研究者がケーブルに繋がれている「ギャプラン」の前に群れを為しており、その光景は圧巻である。
「ようこそ、僕たちの研究室へ。まずはこの"ギャプラン"の機能や装備とかを説明するので、彰久くんだけお借りしても宜しいですか? 山田先生は研究室を自由に見学して貰って構いませんから」
「え、いいんですか? 企業秘密とかあるんじゃ……」
「あくまで一般公開する目的でいますから。先に知られたところで、後々発表しますしね」
「そ、それじゃあお言葉に甘えて! 草薙くん、出来るだけ色んな質問してくださいね! 」
「はーい、んじゃあとでー」
興奮する様子を隠せない真耶先生は一度別れを告げたあと、目を輝かせながら走っていく。
その光景に苦笑いしつつも、俺と片桐さんは応接室へ入室した。
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<"ラーク・メカニクス"研究室内、応接室>
「さて、まずは僕たちの条件を呑んでくれて本当にありがとう。IS自体の開発はこれが初めてだから、正直引き受けてくれるか心配だったんだ」
「ふっ、あれを見せられたら誰だって引き受けますよ。ましてや"ギャプラン"なんてロマンの塊ではありませんか」
「そう言って貰えると助かるよ。"世界で第二の男性IS操縦者"が"IS初の可変機体"の試験を行なったなんて聞いたら、世界中が驚くだろうね」
「でしょうなぁ。で、早速機能の話を……」
「そうだね、話を移そうか」
応接室に入るなり、突然片桐さんが頭を下げてお礼を言うもんだから俺もついかしこまってしまう。
彼の話によると、どうやら幾つか候補者はいたようだけどほとんどが話を一蹴されたようである。
確かに論理的なことは大事だがロマンを疎かにするとは……。
「これを見てほしい」
そんな事を会話してると、片桐さんが俺の手元に纏められた紙束を手渡す。
表紙には"ギャプラン計画書"とあり、中のページにはより詳しく「ギャプラン」の機能や装備が纏められていた。
その資料を読んでいると、ふとある装備が目に入る。
「ん、これって人工知能も搭載しているんですか? 相当な容量がいるはずじゃ……」
「うん。だからこそ武装が限定されたギャプランに白羽の矢が立ったんだ。男性IS操縦者、と言っても操縦に不慣れだと思ってね。人工知能"EMA-3"、通称"エマさん"さ」
「エマさん!? あの特徴的な髪型な!? 」
「そうそう、あの(自主規制)頭の人だよ」
「アンタ前髪引っこ抜かれるぞ」
しかし本当にエマさんが支援してくれるとはなんとも豪華な人選だ。
彰久的にはハマーン様辺りが良かったが、薔薇の騎士にプレッシャーで巻き込まれそうなので遠慮しておく。
「世代で言うと"ギャプラン"は第三世代になるけど、可変機構や人工知能を搭載しているとなると開発段階の第四世代も凌ぐ性能になり得る。あくまで使いこなせれば、の話だけどね」
「なるほど、武装が少ない上でどう立ち回るかが重要なんですね」
「遠距離から近距離までの幅広い戦闘は可能にしてあるけど、やはり特化した機体には劣るね。あんまり過信しない方がいい」
「分かりました、ご説明ありがとうございます」
立ち上がって頭を下げると、片桐さんは笑顔で応対してくれた。
きっとこの片桐さんはモテているに違いない。
「武装はシールド内蔵ビームライフル、それと二本のビームサーベルだけだ。セカンドシフトはまだ判明してないけど、おそらく全体的に性能が上がり、形状も変化するはずさ。詳しい説明は専属のスタッフからあると思うから、思う存分見学していくといい」
「はい、では失礼します」
再び頭を下げて応接室を出ると、相変わらずギャプランの作業が進められていた。
そこには目を輝かせた真耶先生も居合わせ、スタッフも苦笑いである。
「真耶先生、終わりましたよ」
「あ、草薙くん! 見てください、"ギャプラン"のプラモ買っちゃいました! 」
「何しに来たんですか先生……」
「え、付き添いついでに"ギャプラン"の見学ですけど」
「付き添いがついでかよ!? 」
ビニール袋を手首に下げた真耶先生が俺の元へ戻ってきた。
そうはツッコんでいるが可愛いので許している自分がいるのには変わりない。
というかここガンプラ売ってんのか、あとで買いに行こう。
こうして研究室を存分に見学したあと、俺は"アンクシャ"のプラモを購入して真耶先生とともに帰路につく。
案の定プラモを買ってきたせいか千冬さんに出席簿で叩かれた。
というわけでエマさんの参戦確定です。
完全にネタキャラにさせるつもりです。