IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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やっとシリアス成分が抜けてきていい感じです。
今回は全然進みません。


変態紳士、おでんを食べる

<翌日・学園祭二日目>

 

 

真琴ちゃんにこっぴどく叱られた次の日、俺は疲れた体を無理やり起こして一年一組のクラスへと向かう。

真耶先生曰く襲撃かあったものの二日目を中止するわけにはいかない、ということらしいので学園祭二日目を続行することになった。

 

どうやら千冬さんが理事長に直談判してくれたらしく、そのおかげもあって今日も出し物が出来るという事なので、彼女には感謝の念が尽きない。

 

警備はさらに厳重になり、アメリカ軍の"ジム・クゥエル隊"とドイツ軍の"黒ウサギ部隊"も協力してくれるとの事。

まさか再びハンナさんやメリルさんに出会えるとは思ってもみなかったぜ。

 

 

「うーっす、おはよー」

「あぁ、彰久おはよう……ってどうしたのその包帯!? 」

 

「えーと……実はあの劇の後に一人ですっ転んでさ、頭思いっ切り打って怪我しちゃったんだ。まあ大事には至らなかったけど、血も出てたしこんな包帯してるわけ」

「大丈夫? 今日のシフト私が変わろうか? 」

 

 

俺の頭の怪我を見るなりシャルが心配そうに駆け寄ってきた。

ほんとはウーンドウォートと戦ってこの傷を負ったわけだが、千冬さんには口外厳禁と念を押されているので嘘をつくことしか俺にはできない。

 

一夏の話を聞くなりシャル達も他の侵入者と戦っていたようだが、俺の場合はグレイスという異例すぎる第三者が介入している為容易には話せないのである。

 

まあ、さすがに二人っきりとかになったら話すんだろうけど。

おそらくシャルの事だからそれも見抜いていると思う。

 

 

「俺は丈夫だけが取り柄だからな、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとなシャル」

「な、ならいいけど……。気分とか具合が悪くなったらすぐに言ってね? 」

 

「わわっ、あっきーが頭に包帯巻いてる!? 大丈夫あっきー? 人生を掛けたギャンブルをして耳をガラスで切ったの? 」

「俺そんな物騒なことしてねーって」

 

 

他のみんなもシャルの様子を見るなり心配して俺に言葉を掛けてくれた。

なんだろう、この小学生が包帯巻く怪我をして一躍人気者になる感じ。

普段優しくされてないから次第に調子に乗りそうだよ。

 

 

「しかし、彰久とあろう者が転んで怪我をするなんて珍しいな。いつもはセクハラをしてボコボコにやられて帰って来るのが定番のオチだったが」

「た、たまにはこういう怪我もあるんだよ。ほら、今流行りのギャップ萌えってやつ? 」

 

「怪我に萌えもクソもないと思うんですが……。もう、彰久さん無茶しないで下さいね? 」

「分かってるよ。今日は真面目にやれっていうんだろう? 任せておけよ」

 

「そ、それならいいんですけど……」

 

 

セシリアも同じように心配そうな表情を見せるが、俺は親指を立てて微笑む。

そんな中、一夏がげっそりした顔で教室へと入ってきた。

一体何があったのだろうか。

 

 

「お、おい一夏。そんな顔して一体どうしたんだ? なんかすごい頬がこけてるぞ」

「あ、あぁ……彰久……。実は昨日の夜……俺が先生に呼び出されてさ、地下室に行ったんだよ」

 

俺が彼の話を聞いている最中、他のシャルたちは気まずそうに目を逸らす。

 

 

「んで待ち合わせの部屋に行ったら……ううっ……。なぜか椅子にしばりつけられて……箒たちがなんか際どいコスプレしてて俺を言葉責めしてきてさ……」

「お前それなんてご褒美だ!? えぇ!? 」

 

「それでその後……真耶先生と千冬姉も出てきて……。うぅ、パイロットスーツの千冬姉が……"あなたのハートを狙い撃ちっ☆"とか言い出すし……もうとにかく昨日は何が起こったかよく分からなかったよ」

「なんだかんでいい思いしてんじゃねぇか! このアホ! スカポンタン! ヘタレ童貞! 」

 

「どっ、どどどど童貞ちゃうわ!! 」

 

 

童貞というワードを聞いてどもり出す一夏を見て普段通りだと俺は確信する。

まあ昨日はセシリアのおっぱい(仮)を散々揉めたので割といい思いをしている気がするが、大天使真耶先生までを引き込むのは納得がいかない。

俺だってあのダブルエアーズロックを目の前にして言葉責めされたいわ。

 

 

「ちくしょう! 俺も千冬さんにご奉仕されたかった……ッ! 」

「ほう、誰が誰に奉仕するんだ? 」

 

「げぇっ!? 妖怪首置いてけっ!? 」

「誰が島津豊久だ」

 

 

いつもの出席簿とは違って、今日はアームロックだった。

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<IS学園教室・昼>

 

 

 

右腕に残る痛みをひしひしと感じつつ、俺は学園祭のユニフォームであるバニースーツに用意された更衣室で着替え、筋肉をクラスのみんなに見せつける。

ふっ、今日の筋肉たちも素晴らしくいい筋肉だ。

 

 

「相変わらずすげえ筋肉だな彰久……。制服着てる時はそんなんじゃないのに」

「俺、着痩せするタイプなんだよね」

 

「着痩せってレベルじゃないだろその太さは……。そういや今日は知り合い来るのか? 」

「うーんと……あっ、母ちゃんと父ちゃん来る」

 

「……その格好はヤバくないか? おばさんの前じゃ」

「ま、まぁ大丈夫だろ! 多分一回くらいふざけてもさすがに母ちゃん許してくれるって! 」

 

 

今日は執事服の一夏を見て、内心俺は彼に嫉妬する。

なんでお前だけそんなかっこいい衣装なんだよ……。

来た女の子ほぼメロメロにしやがって……。

 

 

「すいませーん! オーダーお願いしますー! 」

「はい、ただいまーっ! 」

 

 

どうやらお呼び出しのようだ。

俺は荒ぶる鷹のポーズをしながら目的のテーブルへと平行移動し、辺りの席を湧かせる。

もはや"一年一組の筋肉隆々バニーボーイ"として名が広まっているらしく、興味津々で俺の筋肉を触って来る子とかいるくらいだ。

 

 

「ご注文どうぞー」

「えーとこの……"筋肉隆々オムライス"を一つ」

 

「筋肉隆々オムライス入りましたーっ! 」

「ヒューッ! 」

 

 

このクラスには勢いが足りないと千冬さんや静寐ちゃんの指摘もあったせいか、昨日の夜に携帯のグループチャットでクラスのみんなと一緒に掛け声的なものを決めておいた。

なんか雰囲気的に居酒屋みたいになっているが、発案者はなんとあの箒ちゃんである。

 

 

「い、いらっしゃいませーっ! とぅっとぅるー! 」

「いらっしゃいませお客様、この私の筋肉によるご奉仕を――――」

 

「……アンタ、何やってるの? 」

「アキ……俺はそんな風に育てた覚えは……」

 

「あっ」

 

 

バニースーツを着て決めポーズと共に来たお客さんを歓迎するが、どうにも聞き覚えのある声と身に覚えのある威圧感に全身が震えだした。

隣でシャルが恥ずかしそうに顔を隠しているのが可愛いが、今は正直言ってそれどころではない。

 

両親、襲来。

 

 

(どっ、どうすればいいっ!? この窮地を脱するには……! ええい、一体俺は二日連続で何回窮地に陥ったらいいんだ! 波乱万丈ってレベルじゃねーぞ! そろそろ日〇レから出演のオファー来るかも! )

 

「彰久……この状況を説明してもらいましょうか……」

「…………」

 

「あっ、彰久が無言で土下座した……ッ!? 」

「ごめんね皆さん。ちょーっとこの異様な光景は無視して貰って他の業務続けてくださいねー」

 

 

"私の戦闘力は53万です"と聞いた時のような絶望感が俺を襲い、自然と俺は床に頭を着けていた。

隣に立っている父ちゃんがすかさずフォローに入るが、皆母ちゃんの威圧感にビビッている。

米軍一個中隊とほぼ同等に一人で戦う戦闘力は伊達じゃないという事か。

その内変な光を出してでかい岩とか押し返しそうだよね。

 

 

「違うんだ母ちゃん! このスーツはクラスの衣装みたいなものでさ、みんな各々用意されたコスプレをして喫茶店を開いてるんだよ! 」

「それは分かるわ。みんな頑張ってるみたいだし、彰久も頑張ってると思う。しかし我が息子よ、その筋肉を剥き出しにする必要はあるのか? 」

 

「全く以てございませんっ! 然るべき罰を与えてくださいませっ! 」

「あんたの部屋にあるいかがわしい本を捨てとくわ」

 

「あるてまッ!! 」

 

 

俺の穴と言う穴から悲しみの涙と血が溢れ返り、床一面を血の海に沈める。

すかさず奥にいた本音ちゃんとセシリアが父ちゃんと母ちゃんに挨拶しながら血を掃除していく様子はなんともシュールかつ悲しい。

 

「あはは、どうもおばさん。夏休み以来ですね」

「あらあら一夏くんじゃないの。その執事服、似合ってるわよ」

 

「俺とは違い一夏にはこの態度……母親とはいったい……うごご」

「大丈夫だアキ、父さんもお前くらいの歳はこんな扱いだったぞ」

 

全くフォローになってないのは置いておき、俺達は二人を空いている席へ案内した。

先程の威圧的な空気は嘘のようで、和やかに進行している。

……このまま何もなきゃいいんだけどね。

 

 

「ご注文はどうされるだろうか、ご夫妻」

「あら、可愛らしいメイドさんね。じゃあこのアイスティーを貰おうかしら」

 

「では僕は君を頂こうかな。女体盛りって知ってる? 分からないならおじさんが教えてあげよう」

「頭を潰されるのとタマを潰されるのどっちがいい? 」

 

「生きててすいませんでした」

 

 

俺より素早い動作で地面に頭を叩きつける父ちゃん。

最早父親の威厳と言うものが全く感じられないのは言わずもがな、既に親子二代での土下座スタイルが確立してきている。

だが負けないぞ父ちゃん。

 

 

「ごめんなラウラ、こんな糞親父で」

「い、いや大丈夫だ。というか女体盛りとは? 」

 

「まだ知らなくていい。というか知っちゃダメだラウラ」

「むー……。まあいい、今度クラリッサに教えてもらうとしよう」

 

「それはもっとまずいから止めておけ」

 

 

鼻血を出しながら"その身体に教えて差し上げますハァハァ"とか言いながらラウラに詰め寄ってぶっ飛ばされるクラさんが容易に想像できるので敢えて止めておく。

紳士抑制スイッチが俺の目の前にいる赤い鬼神(元レディース総長兼現最強主婦)によって全開になっているためである。

 

 

「お待たせしました、ご注文のアイスティーとケーキです」

「あれ? あの女の子の女体盛りは? 」

 

「追加注文で俺の拳も追加してやろうか? 」

「はっはっは、紳士ジョークだよアキ」

 

背後で頭を掴まれながら笑顔で親指を立てる父ちゃんを見て、俺は少し引いた。

 

「すまない、注文いいだろうか」

「はーい! ごめんな父ちゃん母ちゃん、呼ばれたから俺行くわ」

 

「頑張ってらっしゃいね、彰久」

「父さんと母さんはしばらくここにいるからなー」

 

 

さすがにこの混みようでは家族と話せる時間も少ない。

俺の背後から注文を呼ぶ声がしたので、早速俺は声の主の元へ向かう事にした。

 

 

「お待たせいたしました、ご注文はいかが致しますかお嬢様? 」

「ははは、私はお嬢様という質ではないさ。さしずめ女騎士と言ったところかな、草薙彰久」

 

「…………おいグレイス、なんであんたがここにいるんだ? つーかハンナさんとかメリルさんがいるのにいいのかよ、会った瞬間に拘束されるぞアンタ」

「ふっ、私を普通の拘束で縛りつけられるとでも思っているのか? 」

 

「いやそりゃ無理だろうけどさ」

 

 

なんと俺を呼んだ声の主は変装したグレイス。

青いポニーテールに黒スーツという風貌で中性的な顔をしているせいか男性と間違われやすく、現に今ここのクラスの子たちが熱い視線を送っている。

 

 

「まあ折角休暇を貰ったのだ、ここで時間を潰そうと思ってね。なにぶんこの身体じゃ君しか知り合いがいなくて来てしまった訳だ。敢えて言うならば"来ちゃった☆"だろうか」

「俺16年間生きてて彼女出来たことないから分かんないけど今相当ウザいぞ」

 

「ふっ、褒めてくれるな」

「褒めてねーよ! 」」

 

 

やはりこの人はどこか感覚がズレているな。

なんだか大人になったラウラを見ている様だ。

 

 

「それは置いておき、まずは注文をお願いする。この"萌え萌えおでん"というのを頼む」

「他にご注文は? 」

「一口目を食べさせてもらう事を所望するッ! 」

「……はいはい」

 

 

ドヤ顔で注文する彼女を見て俺は呆れつつも伝票に項目を書き込む。

つーかおでんの一口目をあーんするとか確実にダチ〇ウ倶楽部の方々になるような。

まあ本人が望んでるんだから別にいいか。

 

俺は料理を作っている仮厨房まで向かい、料理を作っている箒ちゃんに伝票を渡した。

無論のことセシリアはオーダーのみを受け取る係となっており、お客さん全員にポイズンクッキングが行き渡るような悲劇を未然に防いでいる。

 

 

「彰久、出来たぞ。おでんだ」

「こういう時鈴ちゃんがいると助かるんだよな、料理上手いし手際いいし。あ、もちろん箒ちゃんも仕事して貰ってるし大丈夫だよ? 」

 

「分かっているさ、しかしおでんを出す模擬店など過去に有ったんだろうか」

「ま、IS学園だし多少はね? 」

 

 

箒ちゃんと会話しながら俺はおでんの入った皿をトレイの上に置く。

鈴ちゃんはおそらくシフトで忙しいのだろう、出来れば母ちゃんに会わせてあげたかったな。

 

 

「お待たせしました、"萌え萌えおでん"ですお嬢様」

「ほう、これが噂に聞くおでんか。さすがに学園祭で置いてあるとは思わなかったが、見事な対応だ。IS学園、私はこの場所に敬意を表する」

 

「多分二言ぐらい多いなグレイス。んじゃほら、口開けて」

「むっ、早速してくれるというのだな。では、お言葉に甘えて」

 

 

グレイスの元へ戻ると彼女は目を輝かせてトレイの上のおでんを見つめた。

なんだろう、戦闘の時とのギャップが激しすぎて可愛いと思ってしまう俺がいる。

俺はグレイスの前にしゃがみ込み卵を箸に取りながら差し出すと、彼女は自身の美しい金髪を耳に掛けながら卵を頬張った。

 

…………エロい…………。

 

 

「むきーっ! 彰久さんに食べさせてもらえるなんて羨ましいですの! 」

「普段はセシリアが食べさせて物理的に落とす構図だもんね」

「物理的にって何ですか物理的にって」

 

 

俺の背後で何やらセシリアがハンカチを噛んでいる表情が浮かぶが、とりあえずは後にしておこう。

物理的に落ちるというのは語弊がある、精神的にも身体的にも落ちてるんだよシャル。

しかしグレイスの仕草は本当にエロい。

俺の股間のちくわぶがアツアツになってきているぜ。

 

 

「熱っ!! いやちょっと熱い熱い!! 無理だこんなの食べれないッ!! 」

「やべっ、できたてのおでんで卵チョイスしちゃったわ。まあいいか」

 

「無理だと言っているのが分からないのか!? ええい、撤退するッ! 」

「だが無意味だ! 既に貴様の身体はこの卵を求めている! 」

 

「むぐっ!? 」

 

 

口元に近づけられてその熱さに気付いたのか、顔を青ざめながらグレイスは首を横に振る。

だがそんな抵抗も無駄に終わり、俺は肥〇ちゃんよろしく彼女の口に無理矢理たまごを突っ込む。

ところで無理矢理何かを口に突っ込むってすごくエロいよね。

 

 

「むーっ!? ふほほほーっ!! あふぅい!! 」

「はーっはっは! 散々天然な行動で俺をムラムラさせた罰だ! 」

 

 

俺はわき目も振らずその場で高笑いする。

後ろで母ちゃんと父ちゃんが引いた眼で見つめてくるが、最早気にしない。

 

しかし。

その時悲劇は起こった。

 

 

「ふんッ!! 」

「なんとっ!? 」

 

 

ちょっと本気を出したグレイスが口に突っ込まれた卵を物凄い勢いで俺に向けて射出し、卵……いや白い弾丸は俺の顔面へトップスピードで迫る。

その間僅か数秒。

 

見事に俺の鼻に命中し、熱さと痛さが同時に俺を襲う。

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁッ!! 」

「クロコ〇イン……じゃなかった、彰久ーっ!! 」

 

 

俺はゆっくりと床に倒れる。

一時は騒然とするが、俺がまた何かを引き起こしたと知ったのかすぐに辺りは落ち着いていた。

 

 

「ふっ、少年よ。食べ物で遊んではいけないことが良く分かったな」

「遊んでたのアンタだろ!! 」






これじゃ完全にグレイスが仲間みたいになってますね、いかんいかん。

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