IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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遅れてしまいました。
すいません。


変態紳士、学園祭

<明朝、束の移動ラボ・グレイス視点>

 

 

 

「私が学園祭に? 」

「そうそう。おそらく亡国機業がいっくんのISを強奪しに来るかもしれないからね。それにあっくんのフライルーも視野に入れてるかもしれないし」

 

「まあ行くのはいいが……。どう入るつもりだ? 確かIS学園の学園祭はチケットが必要だと聞いたぞ」

「ふっふっふ……。聞いて驚け、なんとチケットを偽装しちゃったのだー! 」

 

「最早なんでもありですね、グレイスさん」

「それは言わない約束だ。クロエ」

 

 

日本時間の午前5時。

先週の地下レストランの一件があったせいか疲れが溜まっており、珍しく私は寝ぼけ眼を擦りながら束に叩き起こされた。

こうも任務が立て続けに起きるとさすがの私も疲れを感じる。

 

しかし学園祭に織斑一夏と草薙彰久を保護するために潜入するとはな。

これもまた数奇な因果ということか。

 

 

 

「グーちゃんはこれから"早乙女 アルト"という名前で潜入してもらうよ! ほらほら、これに着替えて! 」

「"民間軍事企業S.M.S"、か。確か実在する企業ではなかったか? 」

 

「そうそう。んでまあ新入りが見学ついでに派遣に行かされたみたいな感じかなー」

「束さん、ここで人気アイドルと駆け落ちしてるって設定も付け足そうよ」

 

「非常に既視感のある設定だな。だがこの青いポニーテールのウィッグは外れてしまうのではないか? 」

「この束さんに不可能はないよ! ちゃーんとくっつくし本人の遺伝子反応とマッチするように作られているのだー! 」

 

 

束が豊満な胸を張ると彼女の背後からドーンというエフェクト音が聞こえ、その隣でクロエがどこからともなく取り出した紙吹雪を舞わせている。

思えばクロエも十分に感情が豊かになったものだ。

二人の様子を見て笑いながらも私は用意された衣装を着る。

 

妙に体になじむ造りだ。

言うなれば最高に「ハイ! 」ってやつだろうか。

 

 

「これでいいだろうか? まるで男のようだが」

「おぉ……! これは百合好きの人にはたまらない格好です……! 」

 

「ちょっと待てクロエどこでそんな言葉を覚えた」

「束さんが教えちゃった☆」

 

 

生憎私は同性愛者ではないので、そういったものの良さはわからない。

もっともそう言う風に思われがちではあるが私もれっきとした女だ。

……まあ、生まれてこの方ボーイフレンドは出来た試しがないのだがな。

 

舌を出して謝る束を見て、私はため息を吐いた。

偽装チケットによると学園祭は9時から開催するらしく、現在の時刻は朝の6時である。

 

いつでもISを展開できるようにスーツの下にはISスーツを着込んでいるわけだが、如何せんこの青天では黒い機体は目立ってしまうだろう。

 

 

「束。すまないが移動ラボをIS学園周辺まで向かわせてくれないか? オーバーフラッグでは些か目立ちすぎてしまうのでな」

「おっけー! あとでクーちゃんも学園に入ることになるからよろしくね! 」

 

「そうなのか、了解した。それまで寝ているとしよう」

「はい。よろしくお願いしますね、グレイスさん」

 

 

束が移動ラボの針路をIS学園周辺に向けると、到着までの時間が表示される。

おおよそ二時間、十分に仮眠を取れる時間だ。

そう思った私はスーツの上着だけを脱ぎ、自室へと戻る。

 

先ほどの元気が嘘のように、私の意識は睡魔へと持っていかれた。

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<朝8時、IS学園・一年一組教室>

 

 

 

いよいよ、この時がやって来た。

この日のために放課後に残って装飾を作ったり、売る品物を仕入れたり、はたまた衣装を準備したりと俺達は精一杯頑張ってきたわけである。

 

まず俺が向かったのは更衣室。

先に衣装を着てしまった方が楽だろうという先生たちの計らいで特別に空いている教室を貸してもらい、男女別に更衣室を分けたのだという。

 

しかし案内されたのは俺だけ。

一夏の衣装は別の方の更衣室にあるらしく、別々に行動することになったのである。

 

その時点で疑うべきだった。

意気揚々と自分にあてがわれたロッカーのドアを開けると、そこにあったのは――――。

 

 

 

 

 

 

「バニースーツじゃねぇか!! 」

 

 

 

 

 

一応衣装なのでそれを着て教室へと殴りこむ俺。

普通に怒るよ? なんで俺だけ女装でしかもきわどい感じのバニースーツなんだよ。

更衣室から教室に来るまでどれだけ恥ずかしかったと思うの?

いや全然恥ずかしくなかったけどさ。

 

 

「落ち着いてくださいリd……彰久少尉! あなたはそんな人じゃない! 」

「衣装が変わっただけでなんで性格も変わってんだよ! しかもリ〇ィって言おうとしたでしょ今! 」

 

「あははー、あっきーが女装してるー! 似合ってなーい! 」

「仕込んだの本音ちゃんたちでしょ!? 」

 

 

白を基調としたパイロットスーツを着込む一夏は、人が変わったように俺の肩を掴む。

お前形から入る奴なんだな……。

 

 

「……彰久、私は何も言わんぞ」

「止めてよそんな視線! 初めてそんな目されて傷付いたよ! というか箒ちゃんも制服変えただけじゃん! あんま変わってないじゃん! 」

「うるさい!キャラが被っているんだから仕方ないだろう! 」

 

 

最初に視界に入ったのは箒ちゃん。

彼女は紺色のブレザーを着込んで前髪をそろえたウイッグを付けている。

言わずもがなベースが似合いそうな衣装だ。

 

キャラ被ってるとかは言っちゃダメだろ。

俺結構あの人の演じるキャラ好きななんだよ?

 

 

 

「うふふ、彰久さん。ずいぶんとセクシーなお格好で」

「せ、セシリアとなんか強面の大佐! どうしたのその格好? 」

 

「チェルシーが特殊メイクしてくれました」

「チェルシィィィィィィィィ!!! 」

 

 

箒ちゃんと言い争っている俺に声を掛けてきたのはセシリアである。

茶色の軍服と共に視界に入ったのはなんか同じ背くらいのカリ〇ニン大佐で、彼女の話によると実はチェルシーが特殊メイクした姿だという。

チェルシー身体張りすぎだよ……。

 

 

「ぐすっ……お嬢様の為なら……。ひっぐ……このようなことも……」

「泣いてるじゃねーか!? 今すぐやめさせろセシリア! 」

 

「ち、チェルシー!? どこが嫌だったのですか!? やっぱりク〇ツ辺りにしとくべきでしたか!? 」

「いやそこじゃねーよ! まず男装させることから離れろよ! 」

 

 

まあおじさんのコスプレなんて好き好んでやる人なんてそうそういないよね。

幼馴染であるチェルシーにそんなことさせるなんてやっぱりセシリアはSの素質はあるなコレ。

静かに涙を流すチェルシーを慰めて普通の服装に着替えさせた後、始業を告げるチャイムが鳴ったので俺は席に着くことにした。

 

いくら学園祭と言えどちゃんとホームルームの時間には席に座っていなければならない。

少なくとも千冬さんはそういう人間だ、これで出席簿で叩かれずに済むだろう。

 

 

そう思っていた時期が、俺にもあった。

 

 

 

「よし、ホームルームを始めるぞ」

「みなさーん! 早く座ってくださいね! 」

 

 

一同沈黙。

それもそのはず、あんなに頑なに拒んだコスプレを千冬さんと真耶先生がしているのだ。

よりによって真耶先生でじこの衣装かよ……。

千冬さんに至っては黒いタンクトップにショートパンツとかきわど過ぎて一夏が鼻血を出している始末である。

俺が言うのもなんだけどこれはひどい。

 

 

 

「ち、千冬様がレヴ〇に……。更にドSになってる……」

「キャーッ! 踏んでくださーいっ! 」

 

「静かにしろ。(自主規制)にするぞ」

「一応先生としての立場なのに発言がえげつねぇ」

 

「ら……ララァ……。刻が見えるよ……」

「よ、嫁! しっかりしろ! よめーっ! 」

 

 

最早収集が付かなくなるレベルまで騒がしくなっていく教室。

ついに堪忍袋の緒が切れたのか千冬さんはバンと教壇を叩いた。

一瞬で静寂が教室を占めると、彼女は喋り出す。

 

 

「やれやれ。あまり浮かれすぎて来場客には迷惑をかけるなよ? しかし今日は学園祭だ、節度を持って楽しむように」

「羽目を外してはいけませんよー? 」

 

 

先生たちがコスプレしているのには羽目を外す部類に入るんだろうか。

多分二人の中じゃ入っていないんだろうけど。

一夏の方は完全に二人に見とれている。

まあ千冬さんの衣装がきわど過ぎて俺のソードカトラスもブラック〇グーンだ。

 

 

「連絡事項は以上だ。事前に決めてあるシフトに従って行動するように。では号令! 」

「き、きりーつ! 気をつけ―! 礼! 」

 

 

号令係の子は少し戸惑いながらも自分の役割を果たす。

コスプレしている学生がお辞儀をするのはなんとも奇妙な光景だが、まあ学園祭だし良しとしよう。

先生たちが教室を出た途端、再び教室は騒がしくなった。

 

 

「よっしゃ! 取り敢えず目標は品物を全部売ることだ! Are you ready? 」

「year! 」

「レッツパーリィィィィィィィィィ!!! 」

 

 

一夏がノリノリで黒板の前に立ち、拳を掲げる。

こうして、俺達の学園祭は始まりを告げた。

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<同刻、IS学園校門前・弾視点>

 

 

 

休日の朝だというのにも関わらず、学園の校門前には大勢の人が詰めかけている。

まあ俺と熊吉もその大勢の中に入っているわけだが、俺達のような学生ばかりではなくなんだが企業の人も多いようでスーツ姿の人がちらほらいた。

 

このIS学園の学園祭は招待制となっており、俺は一夏から、熊吉は彰久からそれぞれチケットを郵送されている。

変態紳士にとっての楽園に入れるチャンスだ、逃すわけにはいかない。

 

 

「み、見ろ熊吉! あの入場受付の人、可愛くないか!? 」

「大声出さないでよ。まあ確かに可愛いけど、僕の性癖知ってるでしょ? 」

 

「一見眼鏡を掛けていて地味そうには見えるが、隠し切れないその美貌! そして出るところは出てるという最高のスタイルの良さ! しかもなんかお姉ちゃんっぽそうだぞ! 」

「聞いてないし。ほら、もうすぐ入場出来るからね」

 

 

まるで熊吉は興味がないと言ったように素っ気ない反応だ。

けっ、そんなこと言ってられるのも入場するまでよ。

きっと学園に入ったらもう興奮しっぱなしだろうな。

 

カチューシャをかけ、長い髪を後ろで結んだ姿に見とれていると俺は偶然その人と目が合ってしまう。

思わずドキッとした俺は顔を赤くしてしまった。

 

ほ、微笑みながら手を振ってくれたぞ……!

 

 

「……失礼。少年、もう君の番だぞ」

「え、あ、すいません! 」

 

「まったく申し訳ない、こいつここに来てからずっとこの調子で」

「気にしなくていい。早くしたまえ、私は我慢弱い」

 

 

後ろにいたスーツ姿の青いポニーテールの女性が呆気にとられていた俺の目を覚ます。

妙に中性的だな、男装しているのだろうか。

まあこの人の事は置いておき、俺達は言われるがまま入場ゲートまで進む。

しかもちょうどさっき目が合った女の子のところだ。

今日はツイてるぜ。

 

 

「入場チケットをご提示ください」

「はい! これですよね! 」

 

「……確認できました。ようこそIS学園へ。今日は楽しんでいってくださいね」

「もちろん! あ、後でどっか一緒に――」

 

「ほら、行くよ弾、後ろ詰まってるから」

 

 

さっそくその受付の人を誘おうとすると熊吉に止められ、俺はズルズルと学園の仲へ無理やり引きずり込まれていく。

離してくれ!

俺のモテ期がやっと来たんだ!

 

 

「くぅぅ……。せっかく一緒に行こうって誘おうとしたのに……」

「……弾。後で卍固めね」

「何故っ!? 」

 

 

優しい声音で言いつつも熊吉は俺を威圧した。

いい加減に観念した俺は、大人しく彰久と一夏の待つ教室へ行くことにした。

 

 

 

 

「五反田弾くん……ね。ちょっと、気になるかな」





学園祭編は彰久がツッコミ役という珍しい配役。
次回でシャルとかラウラのコスプレも出ます。

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