IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

70 / 91


今回ちょっと少な目です。


変態紳士、妄想する

<翌日、IS学園・整備庫>

 

 

代悟から衣装を借りた翌日の放課後のこと。

まだ1週間強あるのにも関わらず借りてしまったので一旦衣装は俺の寮部屋のクローゼットに仕舞う事になった。

 

調子こいてコスプレ衣装を着て遊んでいたら一夏に目撃されてドン引きされたのが今日の俺のハイライトである。

一度は着てみたくなるだろ、プリキュアの服とかさ。

 

まあそんなわけで俺は真琴ちゃんと簪ちゃんの所へフライルーを整備に出していたので、現在整備庫へと向かっているわけだ。

簪ちゃんと会うのは久しぶりなので些かエロい妄想でもしておこうか。

 

 

「おーい! 真琴ちゃーん! 簪ちゃーん! 」

「来た来た。おっそいで彰久ー」

「あ、草薙くん」

 

 

「いやぁー、ごめんごめん。遅れたのは海よりも深い事情があってだな」

「どんな事情……なの? 」

「借りてきた衣装を着て遊んでたら一夏に見られてドン引きされた」

「ろくでもねぇ事情やないかい」

 

 

相変わらずの爆乳といい感じのミニスカートを見せつけてくる真琴ちゃんとは裏腹に、簪ちゃんの方は清楚らしい格好をしていた。

ちなみに今俺は妄想の中で簪ちゃんのスカートをめくっている。

妄想では彼女はピンク色だ。

 

 

「……? 草薙君、どうしたの? 」

「ピン……あはは、どうもしないよ簪ちゃん」

 

「……また鼻の下伸びてるで。変な妄想でもしてたんとちゃうの? 」

「いや、かんちゃんのパンツがピンク色だと妄想しちゃった」

 

「闇の炎に抱かれて消えろ! 」

「ジューダスッ!! 」

 

 

某ニヒル仮面の技をスパナとドライバーで繰り出す真琴ちゃんに俺は戦慄する。

あの決め台詞の後って大抵戦闘不能になるよね。

整備庫で怪我するのは何回目なのか知ったこっちゃないが、既に整備科の子たちが日常茶飯事的な視線を向けているのには少し残念である。

 

 

「草薙君……。それは引く」

「かんちゃんに見下されたんでトイレ行って来ていいかな? 」

「こいつ全然反省してねぇ」

 

 

最早本題から逸れていることは言わずもがな。

こんな事ばっかしてるから彼女が出来ないのは既知の事実なのだが、止められないのが変態紳士の性。

うっひょう、二人のジト目最高。

 

 

「はっはっは、では本題に入ろうか二人とも。フライルーの調子はどうなんだ? 」

「自分から話逸らしといて何言うとんねん……。まあええわ、こないだ損傷した箇所の修復やっといたで。ほいこれ」

 

「おっ、サンキュー真琴ちゃん。これで愛しのエマさんに会えるってもんだぜ! 」

「はいはい。そういや全体的に爆発を受けたような跡があったけどどうかしたん? 」

 

「それってもしかして……」

「あ、あぁ! セシリアと訓練してたらミサイルビット食らっちゃってさ! それでこんな風になっちゃったわけよ! 」

 

 

かんちゃんの目の前で「会長と戦った話」をするのはさすがにちょっと気まずい。

まあ元々会長と訓練した話は口外厳禁なので話すつもりもないのだが、かんちゃんがいる以上彼女の嫌がることは言いたくないのである。

 

ふっ、変態紳士は空気を読む事が得意なのさ。

 

 

「ま、どんな事情があるにせよウチらは直すだけや。相談ごとならいつでも乗るんやけどね」

「そりゃ有難いな。いつもありがと、真琴ちゃん」

 

「へへっ、どういたしまして! ほな、ウチはそろそろ次の作業に取り掛からんといけんから。またなー」

「おう、じゃあな真琴ちゃん」

 

 

なんとなく雰囲気を察したのか彼女は話を切り上げて俺にウィンクをしつつ立ち去る。

思わずウィンクをされてドキッとしたのは秘密だ。

そして残されたかんちゃんに対して俺は別れを告げようとすると、なんと彼女は驚きの行動に出る。

 

 

「待って……草薙君。私は、あなたに話したいことがあるの」

「か、簪ちゃん!? い、いきなり俺の手を……!? わ、わかった。とりあえず人気が少ない場所に行こう。な? 」

 

「うん、最初からそうするつもりだった。付いて来て、草薙君」

「お、おう……」

 

 

なんと彼女は俺の手を掴むなり「話がしたい」と言うのだ。

そりゃあもうあれしかないでしょ、告白だろコレ。

少し簪ちゃんの頬も赤くなってるし。

ついに……ついに変態紳士にも春が来たのか……!

 

 

『彰久、貴方の思ってることはだいたい違ってるから気をつけてね』

「エマさん、俺の脳内見ないで」

 

相変わらず失礼なエマさんであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<IS学園・中庭>

 

 

 

普段こんな大胆なことをしない簪ちゃんが俺を連れてきたのは学園の中庭。

確かに夕方じゃここはあまり人が来ないし、二人きりで話をするのには絶好の場所だ。

むふふ……やはりかんちゃんは俺の溢れ出る魅力に気づいてしまったようだな……。

カップルになったらなんて呼ぼう?

かんちゃんかな? それとも簪って呼ぼうかな?

 

 

 

「そ、それで簪ちゃん。話って何だい? 」

「……草薙君。私とIS学園の生徒会長、更識楯無さんが姉妹なのは知ってるよね? 」

 

「あ、あぁ。一応知ってはいたけど……。それがどうかしたのかい? 」

「あなたから見て、私とあの人はどう映ってる? 」

 

 

……今まで告白と思ってた自分が恥ずかしいぜ。

どうやら簪ちゃんは俺に相談を持ちかけてきてるみたいだな。

エマさんの予想は見事に的中していたようだ。

しかし実の姉妹なのに"あの人"呼ばわりするなんて、余程の闇があると見た。

 

 

「どう映ってるも何も、俺は"君自身"を見てる。会長と比べるような真似はしないさ」

「――! 」

 

「今までずっと、比べられてきたんだろ? 優秀すぎるお姉ちゃんが故に、簪ちゃんは劣等感を抱いてしまう。だけどな簪ちゃん。"君自身"を、見てる奴だっているんだぜ? 俺や真琴ちゃんのようにな」

「どうして……草薙君は私があの人に劣等感を抱いてることが分かったの? 」

 

「そりゃあ簡単。初体面で会長のことを話したらすごく怒っちゃっただろ。それに、俺もそういう気持ちはなんとなく分かるんだ。俺にもイケメンでモテモテな兄貴がいるからな」

 

 

まさかよく女の子を観察していることがこんな場面で役に立つとは。

簪ちゃんは驚いたように目を見開き、俺をじっと見つめている。

まあ兄貴は高校時代、超が付くほどイケメンでモテモテだったのは事実なんだが、実際に俺は比べられたことはない。

ただ単に俺が嫉妬してただけなんだよね。

 

 

「よく、見てるんだね……。草薙君は、私のこと」

「そりゃ、女の子を観察することが変態紳士だからな。よく俺に相談してくれたよ。頑張ったな」

 

「……そう頭をなでられると、恥ずかしい……」

「はっはっは! 変態紳士は女の子が恥ずかしがる表情が大好物なのさ! 」

 

 

照れたように顔を赤くする簪ちゃん。

頭をなでなでするのはイケメンにのみ許された行為……。

すなわち俺もイケメンの仲間入りをしたと見えるッ!

モテる男は辛いぜ……。

 

 

「けど、相談してよかった。ありがとう、"彰久"」

「どうってことないぜ、簪ちゃん。名前で呼んでくれるとは嬉しいな」

 

「私も、久しぶりに笑った気がする」

「俺も簪ちゃんの笑顔初めて見たよ。女の子は笑ってなきゃ」

 

 

そう言うと彼女は女神のような微笑みを浮かべる。

元々会長の妹だから必然的にかわいいんだよな。

というか一瞬ドキッとしてしまったぞ。

 

 

「まだ私も機体の調整があるから行かなくちゃ。またね、彰久」

「ほいほい、んじゃーね」

 

 

人が変わったように簪ちゃんは整備庫の方へ戻っていく。

まずい、可愛いすぎて惚れそうだ。

普段無表情な女の子が笑顔になるとこんなに可愛いものなのか……。

また一つ俺は変態紳士として成長したみたいだな。

 

 

「さて、と。俺も訓練に向かいますかねー」

 

改めて彼女の可愛さを噛みしめ、柄にもなく独り言をつぶやいた俺は会長に呼ばれていたことを思い出した為にアリーナへと向かうことにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<同刻、都内某所"亡国機業"日本支部>

 

 

その頃、グレイスの手によって中破させられた"ウーンドウォート"が修理を経て改修されている光景がエリアの目には映っている。

丸みを帯びたフォルムは消え、カラーリングも紺色に変わっていたウーンドウォートを見て彼女は驚いた。

 

「これは本当に……"ウーンドウォート"なのか? 」

「えぇ。そうよ。ウーンドウォートに高機動装備を搭載したの。以前のシールドブースターを更に改修してより近接戦闘が行い易くなったわ。それに変形機構も追加しておいたわよ」

 

「変形機構……。草薙彰久の"ギャプラン"のようなものか。果たして私に使いこなせるのか」

「それはあなた次第よ、エリア」

 

 

妖艶に笑うスコールを一瞥すると、一回り小さい女の子と柄が悪そうなロングヘアーの女性が近づいてくる。

侮蔑するようにエリアを見やり、不敵な笑みを浮かべながら彼女の顔を覗き込んだ。

 

 

「よお、落ちこぼれ。あの機体を使いこなせなくてあのアメ公にやられたみてぇじゃねーか? ははっ、笑い者だぜ。あたしが使えばもっとうまく立ち回れたかもなぁ? 」

「オータムが使ってもオチは見えてたけどね。グレイス・エーカーに同じようにやられて死んでいただけだと思うけど」

「うるせーよ糞ガキ。操り人形は黙ってろ」

 

 

安っぽい挑発には乗らない様にしてある為、ことごとく彼女らを無視するエリア。

オータムの隣にいるのは"M"という女の子で、同じ実働部隊に所属している。

だが年下なのにも関わらず実力はトップクラスで、前に2・3機のIS相手に上手に立ち回っている姿を垣間見た覚えがエリアにはあった。

外見はフードを被っているので分からないが、とにかく只者ではないのは確かだ。

 

 

「まあいい。それでこの機体を使うのはいつなんだ? 」

「IS学園の学園祭がある時ね。その時にはMとオータムにも同行してもらうわ」

 

「けっ、ガキのお守りかよ」

「せいぜい生き延びることね」

「わざわざ突っかかってくるとは……やれやれ」

 

 

そんな3人の様子を見てスコールはまた妖艶に笑う。

 

 

今、IS学園に脅威が迫って来ていた。






なんかMとオータムとエリアが種の三馬鹿になってしまってきてる感。
けどなんかいいかもこれ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。