もうすぐネタ回突入です。
<放課後、第二アリーナ>
「これより、訓練を開始します。お手柔らかにね、彰久君、オルコットさん」
「よ、よろしくお願いしますわ! 」
「手加減頼みますよ、会長」
夕暮れ時のIS学園。
第二アリーナに来てほしいと会長に呼び出され、何事かと思ったらどうやら前にしてくれた訓練を今日この場で行うようで、セシリアも呼び出されていた。
告白ですかと意気込んだところ真顔で否定されてちょっと俺は落ち込む。
水色のIS"ミステリアス・レイディ"を装着し、会長は不敵に笑いながら俺達を見据えた。
素人の目でも分かる。
会長は強い。それも、かなりの実力者だ。
セシリアもそれを理解しているのか、常に会長から視線を離さない。
視線を離したらすぐにも攻撃を加えられると思っているのだろう。
「うふふ。そう固くならなくてもいいのよ? 」
「口ではそう言ってるけど、殺気が物語ってませんって」
「あら、お姉さん一応殺気は消してるんだけどね? 」
「嘘か本当か分かりませんわ……」
会長は今両手に何も展開させてはいない。
完璧に舐められているが、不意打ちを狙うことすら難しいのは言わずもがなである。
俺はセシリアにアイコンタクトを送った。
彼女もそれに気付いたようで、俺は会長に視線を戻す。
だが、会長の姿はない。
まずいぜ、このままじゃ――――。
「オルコットさんに分かるのに私にもバレてないと思った? 」
「ッ!? セシリ――――」
「遅い」
俺が蹴られたと気付く頃には、既に空中へと蹴飛ばされていた。
微かに見えたのはセシリアが"スターライトMK-Ⅲ"を構える姿である。
グレイスが"型にはまらない強さ"なら、会長はまさしく"正統な最強"。
徹底的に基礎を突き詰め、実力のみで頂点にのし上がった。
「それと。オルコットさん、この至近距離でそんな直進的なレーザーが当たるとでも? 偏光するならまだしも、未熟な貴女はまだ使いこなせていないようね」
「……それでもッ!! 」
「その意気や良し。お姉さんに倒されて――」
「まだまだ足掻かせて貰いますよぉっ! 」
しかしそのままやられるだけの俺ではない。
女の子を守ることこそが変態紳士の宿命であり、定め。
地面に着く瞬間になんとか体制を立て直し、俺は空中変形を行う。
二門のムーバブルシールドバインダーと腰部にマウントしてあるロングブレードライフルから放たれる弾幕により、会長の攻撃は一時的に中断させた。
「Come On! セシリア! 」
「はいっ! 」
飛行形態のフライルーの上に"ブルー・ティアーズ"を纏ったセシリアが乗る。
以前学年別トーナメントで行った俺達の戦法だ。
アイコンタクトのみで察した彼女もさすがだが、それを予測していた会長が特に恐ろしい。
「エマさん! 戦術の指揮は!? 」
『急速変形で不意を突くか……それとも……彰久! その状態を維持して! 』
「……なるほど、セシリア! 動いたままビットは何機動かせる!? 」
「2機が限界ですわ! どうするおつもりで!? 」
「まあ見てなって! 」
言われるがまま彼女はビットを二機展開させ、俺達の周りに浮遊させる。
エマさんが発案したのはこのまま飛行形態の弾幕にセシリアの射撃武装を加えた編成で、同じ第三世代ならばいくら会長と言えど追いつくことは難しいだろう。
しかしあの人だから攻撃は当ててきそうだけどな……。
「へぇ、あれが噂の変形機構ね。ISを装備した人一人を乗せられるなんてなかなかいい機体じゃない。それじゃあ――――」
会長はその場から動かない。
絶好の機会を逃さないように俺は3門のライフルを、セシリアは二機のビットとスナイパーライフルの系6門のビームを放つ。
しかし、当たらない。
不審に思った俺達はもう一度ビームを放つが、同じように会長の体から狙いは逸れた。
会長のISの能力だろうか?
「お姉さんも行かせてもらおうかな? 」
「ッ!? 」
俺たちに向けられたのは水を螺旋状に纏ったランスに取り付けられた四門のガトリングガン。
会長の背部には左右対称に浮いているひし形のナノマシンが展開され、そこから水のベールが彼女の身体を包み込む。
水を装甲にして戦う……。なるほど、だから比較的に普通のISと比べて装甲が無い訳だ。
おそらくビームが逸れたのもその水のおかげだろう。
なんとも対処しにくい機体である。
「セシリア! 分離するぞ! キミは後方から援護を! 」
「了解ですわ! 」
迫り来るガトリングガンの嵐をなんとか避けきり、俺はIS状態に空中変形した勢いで会長との距離を一気に詰める。
接近してくると分かっていたのかガトリングによる迎撃を止め、水を纏ったランス"蒼流旋"と俺のロングブレードライフルが火花を散らした。
向こうの方がリーチが長い為、中距離では会長の方が有利なのは確実。
ならば少しでも手数が上の近接戦なら……!
「ランスの弱点は懐に入られると対処が不可能で、しかも彰久君は取り回しがいいロングブレードとビームサーベルを装備しているから近接戦闘を挑む……。いい判断ね。でも、彰久君? 」
生憎、それも既に読んでいるの。
そう言わんばかりに両手で握っていたランスを右手のみに持ち替え、左手に剣を展開させる。
即座に離脱した後、セシリアからの狙撃援護が行われるが、それすらもランスで弾いてみせた。
驚異的な反射速度に思わずセシリアは声を上げて驚き、その隙を突かんばかりにガトリングが火を噴く。
ロングブレードライフルを銃形態に戻してから会長に向けて数発放ちつつ、俺は再びビームサーベル片手に彼女へと突っ込んだ。
「ッ!? これは……!? 」
「"蛇腹剣"という類の武器よ。その名の通り、蛇のように分離するの」
「言われなくても分かってますよ!? 」
「ふふ、そうね」
軽い表情で蛇腹剣を操る会長を見て、俺は更に戦慄する。
完全に中距離戦に持ち込まれている、このままではジリ貧で負けてしまうぜ。
セシリアの方も応戦はしているようだが、俺への援護を出している暇もなさそうだ。
「なら……"逃げる"! 」
「そう来ると思ったわ」
完全に読まれているようだが、それでもシールドエネルギーを減らされるよりかはマシである。
そう思った瞬間、会長がある言葉を呟いた。
「ねぇ彰久君。夕方なのに、何か湿っぽいと思わない? 」
「なにを……? 」
『彰久!! 急いでそこから逃げなさい!! 』
「え、エマさんまでなに言ってるんだ!? 」
いきなり天気のことを口走るだなんて、一体なにが狙いなんだろうか。
答えはすぐに分かった。
辺りは霧のような水蒸気に包まれ、会長とセシリアの姿は見えなくなる。
本能的に俺の脳裏に答えが浮かんだ。
"水蒸気爆発"。
会長のISはそれを単機で引き起こすことができるのか。
離脱しようとしてももう間に合わない。
俺の身体は衝撃と熱に巻き込まれ、一気にシールドエネルギーを0に減らした。
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<IS学園・ロッカールーム>
訓練後のことである。
俺はシャワーを浴びた後制服には着替えず、髪を乾かしてから上半身裸でベンチにもたれかかっている。
見事に完封され、俺とセシリアは会長一人にボロ負けした。
学園最強と謳われる会長の腕前はさすがである。
だが、同時に悔しくもあった。
あそこまでやられると変態紳士でさえも悔しい。
「彰久さん、お疲れさまです」
「あ、セシリア……。お疲れ」
「どうしましたの? いつもの元気がありませんけど……」
「いやぁ、ちょっと疲れちゃってさ。久々にIS動かしたもんだから」
「……悔しい、と顔に出ていますわよ? 彰久さん」
「あはは、バレてた? 」
そう一人で耽っていると制服に着替えたセシリアが俺にスポーツドリンクを差し出し、彼女は俺のすぐ隣に座った。
どうやらセシリアにはバレバレみたいだな、面目ない。
重い雰囲気にはしないように軽く笑っておくが、彼女の表情は真剣そのものだ。
「……貴方はいつも、そうなの。そうやって、自分の事を後にして……」
「優しいな、セシリアは。ありがとう、君なりに俺のことを気遣ってくれてるんだよな」
「と、友達として当然のことですわ! だから彰久さんももっと自分のことを優先して下さい! 」
「あ、じゃあ今いいかな? 」
「え、その……今って? 」
「こういう事さ」
そう言うと俺は彼女の膝の上に頭を乗せる。
正直言って結構恥ずかしいのだが、たまにはおいしい思いをしてもいいだろう?
というかセシリアの顔見れないんだけど。
「こ、ここここれがジャパニーズ膝枕……! 」
「してもらったはいいもののこれかなり恥ずかしいな……どうしようエマさん」
『既に鈴さんの方に連絡しておいたわ。"面白いものが見れる"ってね』
「いやっ、ちょっ、なにしてくれてんの!? 」
途端にゲス顔なエマさんが現れ、思わず俺は声を上げる。
しかもなんでよりによって鈴ちゃんに連絡しちゃったんだよエマさん。
「えーと、エマさんが言うにはここらへん……あ。いたいた」
「ものの数秒で来やがったこの貧乳! 」
「写真を撮らせてくれるなら今の発言は聞き逃してやるぞ」
「ごめんなさい勘弁してください」
「いよっしゃあっ!! 写真撮りまくりじゃあっ!! 」
「り、鈴さんの動きがかつてないまでにアグレッシブですわ……! 」
なんか良く分からないけど無駄に活き活きしている鈴ちゃんを見て、思わず驚嘆の声を上げた。
というかセシリアは膝枕してるとこ見られて恥ずかしくないの?
俺すげえ恥ずかしいんだけど?
「よーし、これ弾たちに送っとくわねー」
「そ、それだけはやめて!? なにしてんの鈴ちゃん!? 」
「うしゃしゃしゃ、日頃の恨みじゃぁぁぁぁっ!! 」
「あぁ……。終わった……」
日頃の恨みとか俺何もしてないのにね。
大体スカート捲ったりパンツ覗いたりしてるだけなのに。
しかし黛先輩ではなく本当に良かった。
週刊誌並に誇張するから噂を消すの本当に大変なんだよね。
「……なんか、ムードぶち壊してきただけでしたわね……」
「うん……。なんかすごくごめん」
『いやほんとごめんなさいこんなことになるとは思わなくて』
この時エマさんのガチ平謝りを初めてみた俺であった。
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<同刻・弾視点>
学校が終わって熊吉とゲーセンに寄り格ゲーをしたものの負けに負けてス〇バで一息ついている俺に、ある連絡が入る。
鈴からのメールだ、一体どうかしたんだろうか。
「ッ!? こっ、これは……!? 」
「どうしたの弾? なんか顔が劇画風になってて気持ち悪いけど」
「これ見てみろ。お前も劇画風になるぞ」
「どれどれ……。はっ!? 」
変態紳士の表情はコミカルなのだ。
最早コミカルという次元ではないほどバリエーションが豊富なのだが、それはまた後ほど。
俺達が目にしたのは彰久が金髪美少女セシリアたんの膝に上に頭を乗せている画像であった。
そうか彰久……。貴様も一夏のように成り果ててしまったか……。
二人して劇画調になっているから周囲の人が何があったのかと怪訝そうに見てくる。
俺は彰久のように視線で興奮する質ではないので大丈夫だ。
あ、蘭の見下した表情なら一生白飯だけで生きてけるけどな。
「……弾。確かIS学園に学園祭あったよね? 」
「あぁ、あった気がする。生憎一夏から招待券なるものを貰った」
「奇遇だね。僕も彰久からもらったよ」
目が虚ろな熊吉は、何かを思いついたように話しかける。
お前ヤンデレ系男子とか言えばその手の人達にモテるんじゃないんだろうか。
あっこいつロリコンだったわ。
「弾」
「おう、分かってる」
笑顔で親指を首に持ってきた辺り、こいつは恐ろしい。
しかし俺も今回ばかりは許せん。
"変態紳士四天王"として、奴には天誅を下さなければ。
「待ってろよ彰久! 必ずこのキャラメルフラペチーノのようにドロドロにしてやる! 」
「すごくダサい決め台詞だね」
「それは言うな」
弾「野郎ぶっ殺しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ぐらいまで学園祭編は出来てます。
あと変態紳士全員がコスプレしてキラッ☆するのも考えてます。