IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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久々に更新。
あんまり進みません。


一夏、(人生が)デストロイモード

<夕方、IS学園・保健室>

 

 

 

「どけどけぇーッ!! 変態紳士と金髪美少女のお通りだぁぁぁぁぁぁッ!! 」

「ひぃっ!? 無駄に筋肉質!? 」

 

保健室までの廊下を俺は倒れたシャルを抱え、全力で走っている。

なぜ上半身が裸で筋肉を見せびらかしているのかというのは聞いて欲しくはないが、一言だけ言うと俺は着やせするタイプなんだ。

 

俺の勢いに思わず悲鳴を上げる女子生徒。

ふっ、俺の魅力的すぎる筋肉につい悲鳴を上げてしまったんだろうな。

 

そんなことはさておき、保健室にたどり着くと俺は扉を思いっ切り開けた。

驚いたように保健室の先生は俺を見ると、状況を察したのかシャルをベッドへ寝かせる。

 

 

「一体デュノアさんはどうしたの? 」

「一緒にISの訓練をしてたら急に倒れちゃって……。俺もどうにかしようと保健室まで走ってきたんですよ。あとどさくさに紛れて胸触りました」

 

「なんで自白してるの君は」

「俺が変態紳士だからです」

 

 

意味不明な返しを無視して先生はシャルの胸に耳を当て、彼女の心臓の音を確認した。

どうやら呼吸は止まっていないようで、先生は寝ているシャルに布団を掛ける。

 

ひとまず安心といったところか。

しかし訓練中にいきなり気絶とは彼女が珍しいな。

 

 

「おそらく疲労が溜まり過ぎていたみたいね。しばらく安静にしていれば目覚めるはずよ」

「そうですか……。良かったぁ……。もしや俺がなんかしてしまったせいかと」

 

「それはないだろうけど。私が見ておくから貴方は着替えてきたらどう? 」

「いえ、ISスーツがあるのでこのままで平気です。それに俺の素敵な筋肉たちを先生とシャルに見られてるなんてすごくエクスタシーじゃないですか」

 

「いいからとっとと服着ろ」

「ごめんなさい」

 

 

肩を掴まれて凄まれたので渋々俺は白いISスーツの上着を着た。

こうしてみるとISスーツってシンプルなデザインが多いよなぁ。

自分専用のロゴでも作ってみようか、ユニクロ的なやつ。

 

というか最近みんな俺への当たりが強くなってない?

変態紳士は悲しいぞ。

 

 

「シャル……。一体どうしちまったんだ……」

『……戦闘スタイルにも変化が出ていたわ。以前は堅実に攻めるようなスタイルだったのにも関わらず、今回は近接戦を仕掛けることが多かった。……嫌な予感が的中したわね、彰久』

 

「あぁ。ゼータのデータは? 」

『しっかり取れているわ。……皮肉なことに、ね』

 

 

俺はため息を吐く。

"もう守られるだけの私じゃない"、彼女はそう言っていた。

似ているな。

昔の俺と、似ている。

 

 

小学校と中学時代の頃を思い出すと、ベッドの方から呻き声が聞こえた。

 

 

「うっ……うぅん? ここは……? 」

「シャル! 気がついたか! 」

 

「彰久……? 私は一体……」

「テストの最中に気絶したんだ。それで俺が保健室に運んで今に至る」

 

「そっか……。ごめんね、彰久……」

「いいよ、気にすんな。それよりも大丈夫か? 」

 

 

弱弱しい彼女の返事に思わず俺はシャルの手を握る。

僅かにシャルの顔が紅潮するが、構わず俺は話しかけた。

 

またシャルが何かを抱えているなら、俺がその相談役となろう。

前に一夏がそうしてくれたから。

 

 

「うん、なんとかね。データの方は? 」

「そんなことは後でいい。俺とエマさんに任せとけばな。シャル、正直に答えてくれ。……何があった? 」

 

「……ゼータを慣らすために、少し頑張り過ぎちゃったみたい。えへへ、私もまだまだ未熟だね」

「頑張りすぎたって……。女の子がそんなに無茶をするんじゃない」

 

 

そう言うと、彼女は俯いた。

少し言い過ぎてしまったみたいだな。

 

けど無茶をして欲しくないのは本当である。

一夏のように傷付いてしまってからでは、遅いんだ。

 

 

「ねぇ、彰久? なんで私がゼータのテストパイロットに志願したか分かる? 」

「……アルフレッドさんに頼まれたからか? 」

 

「違うよ。私が君を守る為」

「! 」

 

「戦っている時に言ったよね? "もう守られるだけの私じゃない"、って。前の福音戦の時、私は何も出来なかった。彰久は、身を挺して私たちを逃がしてくれたのに……」

「シャル……」

 

「彰久のIS反応がロストした時、本当にどうにかなってしまいそうだったの。また母さんのように大切な人がいなくなるって考えたら……私……もうどうしたらいいか……」

 

 

"俺を守る為"、そう言うとシャルは目に涙を浮かべる。

そうか、彼女は一度家族を失っているんだったな。

人一倍死に敏感なのも頷ける。

 

だが、俺は変態紳士だ。

そんな簡単には死なない。

 

 

「……シャル、俺がそう簡単に死ぬと思うか? 千冬さんや母ちゃんに毎度毎度殺人技食らってるのにピンピンしてる男だぜ? 」

「でも…… 」

 

「だから、俺を信じろ。俺もシャルのことを信じる。不安なんてもんは、信じてれば自然に消えてくもんだからさ」

「彰久を、信じる……」

 

「そうだ。変態紳士は女の子との約束がある限り死なないんだぜ? 」

 

 

不安で涙を流すシャルの頭を、俺は優しくなでる。

合法的に女の子の頭を撫でられるのはこういった時だけなのだ、エマさんも許してくれるだろう。

 

安心させるようににかっと笑うと、シャルも釣られたように笑顔になった。

そうそう、女の子は笑顔じゃなくちゃな。

 

 

「……うん。そうする。私も彰久の事、信じるね」

「おう。ま、今のうちに休んどけよ。明後日からまた学校始まるからな」

 

「わざわざありがとうね。お言葉に甘えて休むことにするよ」

「気にすんなって。んじゃあな」

 

 

俺はシャルに別れを告げ、保健室の先生に一言挨拶してから俺は保健室を出る。

いやー、今のは確実に聞かれてたな。

先生ニヤニヤしてたもん。

 

 

「……エマさん、なんでニヤニヤしてんの? 」

『うふふ、"俺を信じろ"だなんて意外と男らしい所あるのね』

 

「むきーっ! うるせぇ! 思い出すだけで恥ずかしいじゃねーか! 」

『あ、ちなみに録音してあるからいつでも放出可能よ』

 

「また俺の黒歴史が生産されてる!? 」

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<IS学園・寮部屋>

 

 

どうにかしてエマさんを説得しつつ、俺は制服に着替えてから自分の寮の部屋へ帰ろうとしていた。

くそ、高校では絶対に黒歴史を作らないと決めていたのにも関わらずまたこうして生産してしまうとは俺はあと何回同じ過ちを犯せば気が済むんだろうか。

とりあえず鈴ちゃん辺りにばれるとまずいな、エマさんにはしっかりと口封じをしておかなければ。

 

 

そんなことを考えているとあっという間に俺は寮の扉の前にたどり着き、ポケットからカードキーを取り出す。

何やら扉の向こうが騒がしいが、誰か来ているのだろうか。

 

 

「おーい、誰かいる……」

 

「あ、彰久!? こ、これは違うんだ! ら、ラウラが――――」

「おお、お帰り彰久。すまないが私は嫁と組み手をしている最中でな」

 

 

 

扉を開けると寝間着姿の一夏の上に半裸のラウラが文字通り乗っており、他人から見てしまっては完全にアレをしているようにしか見えない。

そんな光景を見てしまった俺は思わず唖然とした。

 

お、俺は……とんでもないものを見てしまった……。

あ、あの一夏がついに大人の階段を……ッ!

 

 

「……エマさん。写真撮った? 」

『……えぇ。ばっちりよ』

 

「あ、彰久? おーい、どうし――――」

「大スクープだぁぁぁぁぁぁぁ!!! 黛せんぱぁぁぁぁぁぁぁぁい!!! 」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!? だから誤解だっつーの!? 」

 

 

 

自分でも驚くような速さで寮部屋を出て、俺は真っ直ぐ新聞部の部室へと全速力でダッシュする。

エマさんとの絶妙なコンビネーションにより、証拠も確保することが出来た。

 

ふっ、さすが俺の相棒。

やることが分かっているな。

 

 

 

「待てって彰久! 説明させろ! 誤解なんだって! 」

「うるせぇーっ! 美少女に跨がれて誤解もクソもあるか! 俺とお前の共同の部屋なのにイチャコラしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!! 」

 

「もう既に言いふらしてる!? くそっ、このままじゃ彰久みたいに変態のレッテルをみんなに張り付けられちまう! 」

「うわああああああああん!! まゆずみえもおおおおおおん!! 」

 

 

先輩に対してまゆずみえもんは流石にアレだが、この際致し方はない。

だが運動神経が良い一夏が俺に追いつくのは時間の問題で、運悪く取り押さえられた。

 

馬乗りになり、俺の腕を抑える一夏。

俺の筋肉を以てしても動けないとは……くっ、殺せ!

 

 

「落ち着いて俺の話を聞いてくれ! 本当に誤解なんだって! 眠くて部屋で昼寝してたら急にラウラが俺のベッドに武力介入してきたんだ! 」

「なーにがベッドに武力介入じゃ! またイケメンフェイス使ってラウラをついに連れ込んだんだろ!? えぇ!? お兄さん怒らないから言ってみなさい! 」

 

「んなわけねぇだろ!! もっと言うと俺は姉萌えなんだよ!! 」

「えっ」

 

 

冗談で言ってたことがまさか本当だとは。

つい一夏もカミングアウトしてしまったのか唖然とした顔になっている。

 

い、いいや、いい趣味だと思うよ?

俺もお姉ちゃんキャラ好きだもん、タマ姉とか。

 

 

「あっ、今のは言葉のあやで……! 違うから! 千冬姉とか実姉に興奮とかしたりしないから! 」

「い、いやいや? お、俺もお姉ちゃんはいいと思うぜ? ……義理の姉とか」

 

「やめろ! 何か悟った眼で俺を見るな!! 」

「……一夏、お前……そんなに私のことを……」

 

「あっ」

 

 

そんな風に言い争っていると騒ぎを聞きつけたのかキャリアスーツ姿の千冬さんがそこにはいた。

しかし普段の雰囲気とは違い、なぜか乙女(笑)の顔になっている。

いくら家での千冬さんを知ってるとはいえさすがにまずいだろ……。

 

 

「い、一夏……。私とお前は教師と生徒であり何よりも姉と弟なんだ。本当なら恋なんてしちゃいけないんだが……。どうしてもというのなら考えても……いいぞ? 」

「ち、ちょっと千冬姉!? 引きずらな……うわ話聞いてねぇ!? 力強っ!? 」

 

『彰久、敬礼しましょう』

「あぁ。俺達は今一夏が男になる瞬間を見送るんだな」

 

 

エマさんと俺もノリノリで引きずられていく一夏に敬礼をした。

照れ隠しとはいえ暴れるのは良くないぞ一夏。

あぁ……大人の階段を一夏が昇っていく……。

 

 

 

 

「いやっ、ちょっ……助けてぇぇぇぇぇぇぇッ!!! 」






シャルがヒロイン回なのにどうしてこうなった。

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