IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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お待たせしました。
夏休み編も終盤です。


変態紳士、手伝う

<夏休み下旬、草薙家>

 

 

いよいよ夏休みも終盤。

最後の週ぐらいは実家で過ごしたかったので、再び事務所の人に外泊届を出してから実家へ戻ってきた俺は適当にゲームとかガンプラを作ったりしてくつろいでいた。

 

宿題は高校生活初の夏休みをエンジョイする為に7月中に全て終わらせてあり、こうして余裕をぶっこいて遊んでいられるわけである。

 

 

「あ、母ちゃん。そろそろ家が騒がしくなるかもしれないけどいい? 」

「ん? それってどういう……」

 

「彰久!! 宿題教えてくれ!! 」

「彰久助けて! 宿題が終わらないのよ! 」

「た、頼むわ彰久……。宿題が終わらへん……」

 

「ほらね」

「ああ、なんとなく察したわ」

 

 

母ちゃんに一夏達が来ることを言おうとした瞬間に3人が俺の家のドアを開け、騒ぎながら家の中へと上がってきた。

タイミングが良いのか悪いのか分からないが、なんとなくは分かっていた俺である。

 

というか宿題で焦るとか君たち幾つよ。

毎度毎度同じ過ちを繰り返してるよね。

まあ俺も人のこと言えないけど。

 

 

「そういうわけだ母ちゃん、言おうと思った瞬間に来ちゃったからどうすればいい? 」

「どうするも何も上げなさいって、ウチこういうの慣れてるから大丈夫よ」

 

「すいません、おばさん……。何度も上げて貰っちゃって……」

「いいのよ鈴ちゃん。むしろいつも彰久が世話になってるからこのくらい何てことないわ」

 

そう言い母ちゃんは彼女の頭を撫でる。

顔を赤くする鈴ちゃんはかわいいなぁ。

そんなわけで我が家に来た3人を家に入れると、俺はまず自分の部屋に連れて行くことにした。

 

「そういや鈴ちゃん俺ん家に来るの久しぶりだな。いつぶりだっけ? 」

「確か中学の時ね。弾とあんたとあたしでこんな風に宿題やろうってなった時だった気がする」

 

「その時もこうして俺が手伝ったんだよな」

「うぐっ……。何も言えない……」

 

「へぇ、中学の頃から仲良かったんやね。ウチ中学は女子中だったからなんかそういうの憧れるわ」

「仲良かったというか腐れ縁だけどな。まさか高校まで彰久とか鈴と一緒になるとは思わなかったよ」

 

 

俺の部屋に着くと、懐かしむように鈴ちゃんが部屋の座布団の上で寝転ぶ。

すかさず俺が彼女のスカートを覗こうと身を屈めるが、側にいた真琴ちゃんによってそれも止められてしまった。

続いて俺を抑える真琴ちゃんの胸目掛けて手を伸ばし、彼女の胸を揉む。

 

 

「ひゃあっ!? 」

「ふっ、これぞ変態神拳秘技、"二段構え"よ。甘く見ていた……ふぎゃっ! 」

 

「あーきーひーさー……。ほんまええ加減にせえよ……」

「あぁっ……。真琴ちゃんの拳が俺の頬にめりこむ……」

 

 

ほど良く柔らかいおっぱいの感触と共に俺の頬に衝撃が走った。

真琴ちゃんは顔を赤くして胸を腕で覆うように俺の前に立ち塞がっている。

 

この表情を見るために何度己の評判を犠牲にしたことか。

中学の頃は1日でほとんどの女子から変態扱いされたのはいい思い出だ。

 

 

 

「んで、お前らはなんで1か月近くもあって宿題が終わってないんだ? また中学の頃の過ちを繰り返してんじゃねーか」

「常に中学時代の過ちを繰り返してる奴には言われたくないんだけど」

 

「はーいんじゃ宿題見せませんよー? 」

「すいませんお願いします」

 

 

この流れは完全に俺に向いて来ている。

このまま行けば宿題を餌にしてエロい事が出来るかもしれない……!

 

 

「まあいいや。とりあえず何が終わってないの? 」

「数学のテキストと……あとIS関連のレポートと生物の問題集。他のは全部終わってるんだけど、代表候補生とかの用事が忙しくて……」

 

「ふむ。大体やってあるし鈴ちゃんはまだしょうがない。真琴ちゃんと一夏は? 」

「ほ、ほぼ全部……」

「う、ウチも……」

 

 

鈴ちゃんの方は大体終わっているらしく、残っている宿題も時間を掛ければ終わる様子だ。

本当に分からない所だけが終わっていないということだろう。

さすが鈴ちゃん、ツッコミ役はやはり大人だな。

 

しかし一方で、残り二人の宿題を見せてもらったところ殆どが空白で占められている。

残り1週間弱でこの多くの量を終わらせるとなると徹夜は必須だ。

 

 

「こーのバカチンが! えぇ!? いいですか! 宿題というものは先生が生徒を信じて出す課題なんです! それを忘れるとは何事か! 宿題忘れましたって言って涙目の真耶先生とちょっと不貞腐れ気味の千冬さんを想像してみなさい! 興奮してマイサンがジェネシックガオガイガーですよ!? 」

 

「途中からお前の欲望に変わってるじゃねーか」

 

「うるさい! 先生の揚げ足を取るんじゃありません! 手に取るのはマイサンぐらいにしてください! 」

「もうド直球の下ネタ言いおったで」

 

 

某3年B組担任を彷彿とさせるスーツとカツラを着用して二人に怒鳴り散らす。

実際の先生はこんなこと言わないので見ているみんなは注意しよう。

 

 

「まあいい。多少は手伝うから自力でやってみろよ。俺は鈴ちゃんの方を手伝う」

「えぇー!? そんなん贔屓やん! 」

 

「うるせえ胸揉むぞこの巨乳! 」

「殴るぞ変態」

 

「すいませんでした」

 

 

真琴ちゃんの鉄拳って地味に痛いんだよね、快感だけど。

本当は予告なしで揉みたかったけどそうしたらさっきの二の舞いだからやめとこう。

 

そう言いつつ俺は真剣に宿題を進める鈴ちゃんの方へ視線を向けた。

ふむ、どうやら生物の問題集で手間取ってるようである。

 

 

「鈴ちゃん、そこの細胞分裂の順番間違ってるぞ」

「え? ……あ、本当だ。サンキュー彰久」

 

「彰久、ここの問題ってどう解くんだ? 」

「そこは……えーっと、確かここの公式を使って……」

 

 

教科書をめくりながら俺は彼らに宿題の問題を教えていく。

我ながら先生役を引き受けるのも悪くはない。

赴任するのは女子高限定がいいな。

 

なんてことを考えている内に既に鈴ちゃんは問題集を終わらせていた。

そういや中学の頃から鈴ちゃんって頭良かったよな。

 

 

「おお、早いな鈴ちゃん。もう一つ目を終わらせたのか? 」

「元々ほぼ終わってたしね。あたしの方はいいから二人を手伝ってあげてよ」

「そうだな、二人とも真剣にやってるみたいだし」

 

 

俺は立ち上がり、せっせと宿題に励む二人の隣へと座る。

一夏も一夏で忙しかったのだろう、まあ大目に見てやるとしようか。

 

 

「二人ともどんな感じ? どれくらい進んだ? 」

「ウチはやっと半分や~……。あーもう、整備科の方と普通科の方じゃ宿題違うから結構しんどいわ……」

 

「俺は1個終わったかな。整備科の宿題はどんな感じなんだ? 」

「これやで。電気工学とかIS工学とか色んな科目が増えとるんや」

 

「どれどれ……? うおっ、なんだこれ……。全く意味分かんねぇ……」

「せやろ? 基礎構築の電子配列を応用してから、こういう風に変えて……っと」

 

 

そういや真琴ちゃんと俺達の学科は違うんだよな。

IS学園と一括りされてはいるものの蓋を開けてみると様々な科目がある、と千冬さんから教えられていたのを思い出した。

 

だが口では面倒だと言いつつも彼女はすらすらとその問題を解いていく。

やっぱ真琴ちゃんって出来る子なんだなぁ。

 

 

「ほーい2個目終わり! なあなあ、そろそろお昼にせえへん? ウチお腹減ってしょうがないんよ~」

「……ふむ、そろそろ12時だしな。よし待っておけ、紳士'sキッチンで君たちのお腹をオリーブオイルではなくごま油まみれにしてあげよう」

 

「ごま油な分タチ悪いわ! なんでオリーブオイルから言い直したんだよ! 」

「それでもぼくは、ごま油」

 

「聞いてねぇコイツ!? 」

 

 

そう吐き捨て俺はダッシュで下のキッチンへと向かった。

残り少ない夏休みで、彼らが宿題を終えたかは紳士との秘密である。

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<デュノア社日本支部・地下ISアリーナ・シャル視点>

 

 

 

途切れ途切れになる呼吸。

滴る汗。

 

全ての感覚を張り巡らせて、私は再びビームライフルをドローンに向ける。

ピンク色の閃光が真っ直ぐに放たれるが、命中せずに反撃を食らってしまった。

 

衝撃に堪えきれずに私は倒れ、周りの人達が急いで訓練を中止させる。

あれから私はずっと渡された"Zガンダム"を慣らす為、お父さんに無理を言ってデュノア社の日本支部の地下アリーナを貸し切っていた。

 

 

「し、シャルロットさん!? 大丈夫ですか!? 」

「だ、大丈夫だよ……。ま、まだやれる……」

 

 

そう言いつつ私は立ち上がるが、身体が耐え切れていないようで再び地面に膝を着いてしまう。

どうしてもこの機体に慣れない……。

彰久のように動かせないと意味がないのに……。

 

 

この"Zガンダム"のテストパイロットは実を言うと私が志願したものだった。

テストパイロット役を引き受けようとした時、お父さんやお母さんは最初は驚いていたけど、私の覚悟が折れないことを悟ったのか渋々承諾してくれた。

 

 

そんなことをしてまで、このザマ。

情けないよ、こんなことじゃまた彰久に助けられちゃう……。

 

 

私がこのテストパイロットを志願したのには理由がある。

以前"銀の福音"を捕獲した直後に彰久が黒い正体不明機に狙われ、彼だけを残して私たちが撤退してしまったから。

 

あの時は本当におかしくなってしまいそうだった。

大好きな人をまた目の前で失うなんてことは絶対に嫌だ。

 

 

「……大丈夫。大丈夫だよ。もう、あんな事にはならない。私が、させない」

 

 

自分にそう言い聞かせ、深呼吸をしてから立ち上がる。

それに呼応してゼータも落ち着きを取り戻していく。

 

 

逃げない。

私は、もう逃げない。

 

 

その場で飛行形態に変形して、腹部に取り付けられたビームライフルで空中に漂うドローンを一機落とす。

ハイパーセンサーが後方からのロックオン警告を流すと、すかさず空中変形してIS形態へと戻る。

 

 

「ぐっ……! これっ、くらいっ! 」

 

 

重力と衝撃が同時に私の身体を襲い、気が飛びそうになるけど構わず振り向いて"ハイパーメガランチャー"を両手に、無我夢中でドローンへと放った。

太いビームの直線はドローンの腹部へと命中し、撃墜の表示が出される。

 

よろよろとアリーナの出口へ辿り着いた私の頭の中にはこの言葉が駆け巡っていた。

 

 

 

「で、出来た……。空中変形……」

 

 

 

 

 

 

そう一言呟くと私は膝から崩れ落ち、そのまま地面に倒れる。

お父さんが駆け寄る頃には、既に意識はなかった。







シャルがついに空中変形を習得。
あと草薙父母のエピソードも考案してます。

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