ネタ回です。
<7月上旬、都内某所大型プール施設>
夏もいよいよ本格化し、気温も次第に上昇していく。
夏休みの真っ只中、俺達は東京〇マーランドに来ている。
そのせいかこの場所には多くのカップルや家族連れが訪れており、まだ朝の10時だというのに大勢の人が既に敷地内で泳いでいた。
「むむう……。女の子の水着姿をウオッチングしに来たはいいもののこうも彼氏連れが多いとは……」
「予測は出来たが俺達には辛い仕打ちだな……」
「僕は水着姿の幼女がおがめればいいかな」
「私も筋肉質の男二人組がイチャイチャしてるのを見れればいいです」
「それは無理だなー」
「えぇー? クラリッサ納得いかない☆」
「頼む、誰かこいつらを逮捕してくれ」
無論のこと"俺達"とは変態紳士四天王のことである。
今回はなんとクラさんも夏休みがとれたということで、ドイツから日本に来てくれているわけだが、正直彼女の黒いビキニには興奮して俺の如意棒もモンキーマジックだ。
あともう一人の筋肉だるま鈍感公式チート野郎がなんか呟いているが、俺は気にしない。
つーか善良な変態紳士を逮捕とかやめてよね、僕たちがお巡りさんに敵うわけないだろ。
「手錠プレイとはまたマニアックですね織斑一夏」
「さすがにSMはねーよ一夏」
「誰もんなこと言ってねーわ変態共! 」
「ようこそ、アブノーマルの世界へ。歓迎するよ一夏」
「入ってねーよ! というかアブノーマルっていう自覚あんじゃねーか! 」
「俺達のどこがアブノーマルじゃいコラ!! 」
「全部ダメだよ!! 」
朝っぱらからこうして騒げるとはなんとも元気が有り余っているものである。
周りの視線もなかなかに痛いものとなってきてるが、変態紳士にとってはそんな視線もご褒美だ。
まったく一夏も十分にアブノーマルだろう?
こないだベッドの下からまた新しい姉物のエロ同人見つけたぞ?
確かに千冬さんは普段とのギャップがそそるし黒タイツだし巨乳だしもうなんか色々とエロいのでそういう目で見るのは分かるが、お前実姉は結構ヤバいぞ。
法に触れそうな瀬戸際ってのもムラムラするがな。
「しっかしどれも混んでるな、最低でも10分以上は並ぶぞコレ」
「ちぇー、ウォータースライダーで水上ダッシュやりたかたったのにー」
「あれ一回やったら彰久出禁になったよね」
「なんでだろうな、本当に疑問だったわ」
俺達より比較的背が高い弾は辺りを見回すと、アトラクションの待ち時間を確認してくれる。
確かにどこも長蛇の列を作っており、どこもかしこも並ぶのには時間がかかりそうだ。
ちなみに水上ダッシュとは変態神拳を極める上で一番最初に取得する技で、これが習得できるかどうかで今後の成長度が変わってくる。
代償として色んなものが失われるけどな。
異性からの評価とか。
その時である。
今後どうするか話し合っていると、背後から誰かが俺を呼ぶ声が聞こえた。
「あれー? もしかして彰久ー? 」
「おおう!? 真琴ちゃん!? なんでこんなとこに!? 」
「なんでって言われてもなー……。普通にみんなで遊びに来てるんよー」
「ってことは鈴ちゃんとかもいるのか? 」
「おるでー、というかみんな来とるよ」
「あらまぁ、なんて偶然なのかしらね」
なんと、まさか真琴ちゃん達もここに来ているとはな。
相変わらず惜しげもなく自慢のダイナマイトボディを見せつけてくれるぜ。
だが一方で非常にまずい状況でもある。
無論のこと約二名からの殺気を俺は盛大に受けているのだ。
「ほう……。てめえ一人で楽しもうって魂胆かコラ……」
「彰久……? 僕たち友達だよね……? 」
「あ、もしかして君らが彰久の友達? ウチは八神真琴、よろしくなー」
「じ、自分は五反田弾でありますっ! よろしくお願いしますっ! 」
「同じく熊田熊吉です。よろしくねー」
手のひら返しもいい所である。
なんだ"自分"って。
お前そんな事一言も喋ったことないだろーが。
まあ熊吉は全然平気そうだけど。
「ぷーくすくす、"自分"ですってよ一夏さん」
「そうだな、緊張してるんだなぷーくすくす」
「ぐ、ぐぬぬ……! こやつら……! 」
「八神真琴、私はクラリッサ・ハルフォーフです。隊長もここにいらっしゃるので? 」
「隊長……ああ、ラウラのこと? 勿論おるよー」
「つ、連れてってください! 早く隊長の水着姿をッ!! 」
「クラさん、鼻血出てる鼻血」
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<休憩所>
鈴ちゃんたちもこの場に来ているということで、並んでいた列を抜けて俺達は真琴ちゃんの案内のもと彼女たちのもとへ向かうことにした。
歩くたびに揺れる彼女のマウンテンに弾の視線は釘付けであり、さっきから自分で頬をつねったり殴ったりしてなんともコミカルである。
弾、お前のその気持ちは分かるぞ。
その誘惑に屈しないその精神、まさしく変態紳士だ。
「おいっす、こんなとこで会うとは偶然だな」
「彰久!? それに弾と熊吉も!? 」
「隊長おおおおおおッ!! なんて可憐なお水着姿ッ!! このクラリッサを踏んでくださいっ!! 」
「クラリッサ!? お前も来ていたのか!? 」
後ろから声をかけるとみんな驚いたように目を見開く。
というかさすが特殊部隊、水着姿のラウラを見た瞬間に飛びつくとはなかなかの身体能力を持っているようだな。
以前の臨海学校とはまた違った水着をみんなが着ていて眼福である。
「やあ鈴ちゃん。相変わらずの合法ロリっぷりだね。そろそろランドセルとか背負ってくれてもいい時期だと思うんだけど」
「そんなもん時期もクソもないわよ」
「はっはっは、相変わらずのまな板だな鈴! 」
「おうコラ弾、てめえちょっくらプールに沈めてやろうか」
「……鈴さんと会話してるあの殿方はどなたですか? 」
「俺と彰久の中学の友達。久しぶりに遊ぼうってなってここに来てるんだ」
久しぶりに鈴ちゃんと会ったというのもあってか、さっそくあの二人は彼女に紳士トークを仕掛けていた。
ただでさえ俺の対処とかに忙しいのに一気に三人に増えてしまってはきっと胃に穴が空くぞ鈴ちゃん。
後ろではクラさんがプールにダイナミックエントリーさせられているのをシャルと箒ちゃんが眺めている。
意外とえげつねえなラウラ。
「まあこうして合流できたわけだし、一緒に遊んでもいいか? 」
「勿論だよ! まさか僕も彰久たちと会うとは思ってなかったしね! 」
「人が多い方が楽しいだろうしな。今はちょうど昼時だ、混み具合も少し緩和されただろう」
「お、んじゃあのウォータースライダー乗ろうぜ! あの二人乗りのやつ! 」
全員の承認が得られると、俺は以前から乗りたかった長大なオレンジ色のウォータースライダーを指差した。
二人組で乗るだけあってなかなか並んでいるが、それに見合うボリューム感だろう。
だが俺が注目したのはそこではない。
あわよくば女の子と二人組になっておっぱいやら尻やらを合法的に揉むのが最大の魂胆である。
ふふふ……それに気付かないとは愚かな奴らよ……。
ここで雪辱の恨みを晴らして見せるぜ……。
「つっても11人か。自動的に一人余っちまうな」
「ふっ、なら俺が残ろう」
「だ、弾!? なぜお前が!? 」
「決まってんだろ、お前らのその手に夢と希望を掴ませる為だ」
だ、弾……!
お前ってやつは……紳士の鑑だぜ……!
その遺志、無駄にはしない!
絶対にセシリアかシャルか箒ちゃんか真琴ちゃんの胸を掴んでみせるぞ!
あ、鈴ちゃんは揉む胸がないからいいかな。
「なーに言うとんのよ弾! ウチが戻ってきたらもう一回一緒に乗ろうや! 」
「お願いします真琴さま! いや大天使マコトエル! 」
「出た、弾渾身の土下座。久しぶりに見たわ」
「俺もだ鈴ちゃん」
笑顔で真琴ちゃんが彼の肩を叩くと、赤くなったのを隠すために弾は彼女に土下座をし始めた。
流れるような動作だ、腕は衰えていないようだな。
そんなこんなで俺はシャルと二人で乗る事に。
クラさんは本人の強い願望でラウラと、熊吉は相変わらず鈴ちゃんに執着し、セシリアは真琴ちゃんと、一夏はジャンケンで箒ちゃんと乗る事になった。
「そういえばこうしてシャルと二人でなんかするのは久しぶりだな」
「う、うん! そうだね! 僕個人としてはもっと二人で遊びたいかなぁ、なーんて」
「ふっ、この変態紳士で良ければいつでもお相手しよう! 夜の方も歓迎だ! 」
「一言余計すぎるよ彰久」
そして約10分後、ようやくスライダーの頂上まで到着した俺達は二人分のスペースが空いた浮き輪に座り込む。
シャルと先に座らせると、自動的に俺は後ろとなった。
ふふ、作戦は完璧っ!
「さあ、レッツらゴーだ! 」
「え、まだ心の準備が!? ちょっ、きゃーっ!? 」
有無を言わせずに猛スピードで浮き輪はスライダーは水の上を滑走していく。
速さに夢中な今が好機である。
かかったなシャルよ……。
最近おっぱいを揉んでなくてムラムラしていたのだッ!!
「変態神拳奥義! "俺の手は薔薇の香り"! 」
「……あーきーひーさー? この手は何かなー? 」
「あ、あれっ? シャルさん……バレてました? 」
「バレバレだよ! どさくさに紛れて胸を揉もうなんて! 」
彼女の胸を揉もうとした瞬間、急にシャルが俺の両腕を掴む。
ムッとした表情を見せたあと、グイッと俺の腕を引いてきた。
こ、この構えはっ!
誰も未だ成功したことのない変態神拳秘奥義"桃白白乗り"……!
シャル……君はそれを成功させようというのだな……。
いいだろう!
君の覚悟……しかと受け取ったッ!
「シャル! 俺の背中に乗れっ! 」
「えっ!? ギャプランでもないのになんでそんなこと!? 」
「いいから! なんか必殺技ができそうなんだよ! 」
「この状況で必殺技が出来るの!? ほんとどうかしてるよ! 」
言われるがままシャルは俺の背中に乗る。
口ではこう言ってるがやってくれる辺りノリがいいなとは思う。
いくぜ、見ていろ弾!
今から俺は鳥になる!
「うおおおおお!! 変態神拳秘奥義ッ! "桃白白乗り"ッ!! 」
水しぶきと共に、俺はウォータースライダーの出口から背中にシャルを乗せた状態で現れる。
並んでいた人全員の視線を集め、俺はそのままプールを越えて隣の茂みへと突っ込んだ。
さ、さすがに無理があったか……。
変態紳士は無駄に頑丈なので(ギャグ補正ともいう)大丈夫なのだが、如何せん痛いのはキツイ。
立ち上がって彼女のもとへと向かおうとした瞬間、俺はある事に気付いた。
海パンが、脱げた。
「なんてこった……さすがにここから海パンを取りに行けば普通に変態になっちまう……」
その後通報されて牢屋へぶち込まれるというビジョンが見え、思わず俺は青ざめる。
それだけは絶対に避けたい。
すると俺の視界にあるものが入った。
きっと中の人が休憩やトイレなどに行って脱いだのであろう、ここのマスコットキャラである"ボ〇太くん"の着ぐるみがそのままになってあったのである。
あれしかないと思った俺は、一時的に葉っぱ隊となった後、素早くその着ぐるみを着込む。
ふふふ、完璧だな。
「あー! 見てママ! ボ〇太くんだよ! 」
「あらまぁ、本当ね。写真撮って貰いましょうか」
「ふもっ!? 」
「わーい、〇ン太くーん! 」
しかし安心も束の間、親子連れのお母さんと男の子が俺の元へと走って来た。
ちぃっ、ここは持ち前の紳士スマイルで!
「ボン〇くん写真撮ってー! 」
「ふ、ふもー! 」
親子連れと写真を撮った後、男の子に手を振ってから俺はシャル達の元へダッシュで戻る。
なんとかやり切ったが、さすがに着ぐるみ姿は目立つぜ。
と、その時である。
さすがに元々中の人が気付いたのか、タンクトップ姿の男の人が慌てたように着ぐるみを探している姿が目に入った。
「ふ、ふもふも! 」
「あれ、ここのマスコット? かわいいね、写真撮ってよ」
「ふ、ふもふもふも!! 」
「え、ちょっとどうしましたの? 何か慌てているようですが……」
「い、いた! あそこだ! コノヤロー、着ぐるみ盗みやがって! 」
「ふ、ふもーっ!! 」
なんとこの着ぐるみ、喋った言葉が自動的に「ふも」とだけしか喋れないようになっており、このようにシャル達に近づいても俺だと気付かれないのである。
着ぐるみ姿で目立つせいか、すぐに警備員を連れた中の人に見つかってしまう。
チクショウ、今だけ技術の革新を恨むぜ。
「ふもふもふもぉぉぉぉぉぉぉッ!! 」
「逃がすかーっ!! 」
その後俺は2時間の追いかけっこの末に捕まり、全裸で発見されるが事情を説明してなんとか厳重注意で事無きを得た。
本当に逮捕されると思った。
今回はシャルがメイン。
というか彼女がかなりのぐう畜と化しています。
本当はそんな子じゃないのにね。