プチ家族旅行で更新できませんでした。
ごめんなさい。
<IS学園、寮部屋>
「……何してるの? 」
「あ」
寝ている本音ちゃんに抱き付こうとルパンダイブを仕掛けたら、なんと彼女が起きてしまった。
そりゃあんなに大声出していたら起きるのも無理はない。
(まずい……っ! このまま直進すれば逮捕は確実! しかも半裸だからより信憑性が高くなる! )
しかし今はそんなことは問題ではない。
このままだと俺は本音ちゃんに抱き付いてしまい、悲鳴をあげられそして俺逮捕というビジョンが見える。
「そんなバッドエンドにしてたまるかッ!! 変態神拳、紳士壁ドンッ!! 」
「おぉ~! 空中で軌道を変えて壁に突っ込んだ~! 」
本来の壁ドンとは違って、自らが壁に突っ込むのが"紳士壁ドン"の極意である。
意味を履き違えてる? そんなもん百も承知よ。
壁に穴こそ開かなかったものの、俺自身のダメージがなかなか大きい。
今日何回傷を負えば済むんだ俺は。
「ぐふっ……だが紳士は不死身……ここで死ぬわけにはいかないッ! 」
「大丈夫~? 」
「ご、ご心配なく、本音ちゃん。君の顔を見れただけでもう元気さ」
「あはは、ありがと~。あっきーって面白いね~」
屈託のない笑顔で俺の口説き文句をあしらう本音ちゃん。
なかなか出来る子である。
だがこれでひとまずは乗り越えたはず、安心していいだろう。
「それで、なんであっきーがここにいるの~? 不法侵入~? 」
「俺をなんだと思ってるの本音ちゃん!? 普通にルームメイトとしてここに来たんだけど!? 」
「あはは~、そうなんだ~。よろしくね、あっきー」
「う、うむ、よろしくね本音ちゃん」
確かに不法侵入だったら俺がここに来る理由もしっくりくるが決してそうではない。
れっきとした理由でこの場にいるので、それは最大限に否定しよう。
下心丸見えなのは言わずもがなである。
「さて、もう夕飯時だし積もる話も食堂でどうだい? 」
「うん、いいよ~。もしかしたら友達も一緒になりそうだけどいい? 」
「構わんよ! むしろ大歓迎さ! 」
「ありがと~。それじゃ行こっか」
どうやら本音ちゃんは着ぐるみのようなパジャマ姿のままで食堂に向かうらしい。
まあかわいいから別にいいか。
こうして、俺は危うく逮捕されそうなところを持ち前の機転の利かしで華麗に回避したのである。
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<IS学園、食堂>
ちょうど部活終わりと夕飯時が重なっていたせいか、昼間と同じように食堂は大盛況であった。
おばちゃんたちも忙しそうにしており、これは席の確保を優先した方が良さそうである。
「あらま、すごい混んでるね~」
「ちょうど夕飯時だからね、そりゃ混んでるだろうさ。俺が先に席をとっておくから、本音ちゃん先に頼んでおいたらどうだい? 」
「じゃあそうさせてもらうね、ありがと~」
「ふっ、礼には及ばないぜ」
出来る限りのイケメンフェイスを作るものの、既にそこには本音ちゃんはおらず俺一人が虚空に微笑んだことになる。
その視線の先にはなんか別のクラスの女の子がいたから良かったものの、これが一夏だったらホモ疑惑を掛けられてしまう。
「あ、あはは……どうも」
「く、草薙くん……うふふ」
なんかあの女の子顔赤くなってるよ、かわいいから後で求婚しに行こうか。
一応手を振っておくと赤くしながらも手を振り返してくれた。
ちょっとあとで日本にも一夫多妻制を取り入れるようにどっかの偉い人に直談判してくるか。
「お、あったあった」
本音ちゃんの友達も来るという話だったので偶然4~5人が座れそうな席を見つけた。
この紳士アイズ(左右視力2,5)にかかれば、座席を見つけることなど容易いのである。
「お、草薙か」
「その声は我が愛しのラブリーマイエンジェル箒ちゃんじゃないか。一夏との個人鍛錬(意味深)はもう終わったのかい? 」
「なんだラブリーマイエンジェルって。あいつ、中学三年間部活に入っていなかったようでな、少し勘を取り戻させようとして時間が掛かってしまったよ」
「あらあら、そんなことがねぇ。とりあえず隣座ったら? 」
席について一人本音ちゃんを待っていると、少し疲れた様子の箒ちゃんが俺の元へとやって来た。
俺の催促によって彼女は隣に座り、ため息を吐く。
「あ、この後本音ちゃんとか来るけど大丈夫? 箒ちゃん嫌だったら俺席変えようか? 」
「いや、全然構わない。むしろそっちの方はいいのか? 」
「まぁ大丈夫じゃね? 向こうも友達来るっていうし」
「そうか、そうだといいがな……」
どうやら何かありそうだな。
一夏関連のことか、それとも何か他のことか。
そう考えていると、箒ちゃんの方から話を切り出してきた。
「なぁ、草薙。今日初めて知り合ったお前にこんな事を聞くのは野暮だと思うが……いいか? 」
「……なんかあったのかい? 話してみ」
「私を……どういう目で見ている? お前は」
「ドエロいポニテ巨乳美少女で俺の嫁候補第1位」
「違う、そうじゃない。というかそんな目で見てたのか」
「ひ、引かないで!? そんな質問する箒ちゃんも箒ちゃんだよ!? 」
真面目な雰囲気をぶち壊してこんなことを言ってみるが、案の定ドン引きされた。
だってそんな事訊かれてはそう答えることしかできねーもん。
むしろこれだけで済んだことを有難く思うのだなッ!
「冗談はさて置きどういう目で見ているか、だっけ? 箒ちゃん、自分が人にどう見られたいかなんていうのは自分で決めるものだよ」
「自分で、決める……」
「そう。まあ俺の場合は超絶イケメンで見ただけで惚れるように見てほしいと切に願っているけど一向にならないけどね。箒ちゃんはどう思われたいんだい? 」
「私は……」
気を取り直して話を進めると、箒ちゃんは再び考え込んでしまった。
"お前は当たり前だ"というツッコミ待ちだったのに、なんかスベった感じである。
「私は……"篠ノ之 束の妹"でなく"一緒のクラスメート"として見て欲しい。確かに私はあの人の妹だ。だが……それだけで変に意識などされたくないんだ」
「そっか。なら、それでいいんじゃないかな? 自分がそう思われたいなら、精一杯の努力をすればいいさ。少なくとも俺や一夏は応援するよ」
「……ありがとう。そう心掛けて過ごすことにするよ。見直したぞ、"彰久"」
「ぐへへ、これで箒ちゃんも俺に惚れたな」
「やっぱり殴るぞお前」
殴るぞと言う前に既に手が出ているのは言わずもがな、彼女のチョップが俺の頭に炸裂した。
だがその顔はなんだか晴れやかで、吹っ切れたような雰囲気であるので相談に乗った甲斐があるといものだろう。
あと名前で呼んでくれたので今日一日これで生きていけそう。
「あ、あっきーにもっぴーだ! おーい! 」
「おう本音ちゃん、箒ちゃんも一緒に食いたいって言うから同席してもいいかい? 」
「うん、全然いいよ~。あとで静寐と清香も来るから先に知らせておくね~」
「あ、あぁ。それと"もっぴー"って言うのは……? 」
「"箒"だから掃除用具のモップからとって"もっぴー"。私なりにいい名前だと思うんだよねぇ~」
「そ、そうか、もっぴーか……。ふふっ、かわいいな」
途中からプレートを持った本音ちゃんが大きく手を振りながらこちらへと近づいてきた。
どうやら友達というのは今朝休み時間で心配してくれた鷹月さんともう一人のクラスメートらしい。
「よし、なら本音ちゃん。俺と箒ちゃんは飯取ってくるからここで待っててくれる? 先食べてていいから」
「イエッサー! 任せて~! 」
「よし、なら行こうか」
「あぁ、そうだな。すまない、布仏」
そう言いながら席を立ち上がる俺と箒ちゃん。
なんだかカップル同士のようだが、ぶっちゃけ彼女には好きな人がいるんだとか。
そして約10分後、各自プレートを持ちながら席へと戻った俺たちは少し賑やかな夕食を過ごしたのである。
さて、明日はどう過ごそうか。
というわけで箒ちゃん懐柔回。
正直のほほんさんとかと打ち明けていても違和感ないんじゃね?と思った結果、こういう展開になりました。
あと本音ちゃんのあだ名が悪意に満ちているのは秘密。