IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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銀の福音戦決着です。
シリアス成分多すぎィ!


決着

<作戦空域、彰久視点>

 

 

 

その瞬間、俺は何が起こったのか理解出来なかった。

 

なんで昏睡状態だった一夏がここにいる?

しかもどうしてISの形状が変わっているんだ?

というかなんで俺はこいつに抱きかかえられている?

 

 

「……うん、一夏。とりあえず降ろしてくれ」

「お、おう。大丈夫か? 」

 

「こんのバッカ野郎!! 来るのがおせーんだよ!! なーにが"待たせたな"じゃ!! かっこつけんのも大概にしろ!! 今のでこの場にいる女の子のほとんどが惚れたぞオイ!! 」

「う、うわっ!? 助けたのにその物言いはなんだよお前!! かっこつけてなんかねーぞ俺! 」

 

 

 

一夏が来てから早速口喧嘩をおっぱじめる俺達。

この状況も隙だらけなのには変わりなく、"銀の福音"がそんな猶予も与えてくれるはずもない。

 

あーあ、なんか心配して損した気分だぜ。

ったくよぉ……。

 

 

『新たなエネルギー反応確認。最優先で撃墜。方法は――――』

「ああもう、うるせぇッ!! 」

「うるさいっ!! 」

 

 

福音のシステムボイスが長々と言い渡される中、それを一蹴するように俺達は奴に一撃を加える。

いきなり攻撃を食らった"銀の福音"は思わず体制を崩した。

 

 

「ひとまず言いてえ事は後回しだ。一夏、俺が援護する。あいつに借りを返してこい」

「へっ、言われなくても。10倍返ししてやるよ! 」

 

 

右手のムーバブル・シールドバインダーは使えない。

飛行形態で使用する為にも左手の方は節約しなければ……。

 

だが岸辺にいるみんなの事も忘れてはいけないな。

向こうへ攻撃を行かせないように、ちゃんと俺達があいつの気を惹かないと。

 

 

そう考えている内に一夏は一瞬で"銀の福音"との距離を詰めており、"雪片弐型"で奴の格闘術を捌きつつ左の拳を叩きつけていた。

 

いや、あれは拳と言うよりはクローに近い。

なるほど、一夏は二次移行した"白式"で俺達の元へ駆けつけたのか。

そう仮定すれば彼の左腕が大きく変化しているのも頷ける。

道理で性能が段違いだった訳だ。

 

 

一夏の二連撃に対して奴はひるまず、むしろ反撃として光弾を収束して荷電粒子砲を彼に向けて放つ。

急いで一夏の前に出ようとするが、あいつは左腕を構えたままだ。

 

 

「"雪羅"! 」

 

その瞬間、巨大な荷電粒子砲が彼に命中するが煙の中から傷一つない一夏の姿が露わになる。

俺は奴の隙を逃さず、ロングブレードライフルで斬りかかった。

 

 

「残念! 本命はこっちだ! 」

 

 

同時に左手のビームサーベルを福音の両翼目掛けて突き刺し、奴のシールドエネルギーを減らすことに成功する。

俺を引き離すように"銀の福音"はサマーソルトを浴びせ、牽制に再び無数の光弾を放った。

 

しばらくの睨み合い。

先程俺が突いた場所は瞬く間に再生され、一夏が薙いだ部分も同時に再生されていた。

 

 

「おいおい、再生機能なんて厄介なもんつけやがって」

「仕方ないさ。同時に叩くしか方法はないみたいだな」

 

「了解。エマさん、他の人に絶対防御が発動したメンバーを救援するように指示を出してくれ」

『任せて。真耶さんに伝達するわ』

 

 

エマさんに指示を出しておくと、様々な処理がギャプランの画面端で行われる。

真耶先生の顔も映し出され、なんとも幸せな気分だ。

悦に浸っていると、申し訳なさそうに箒ちゃんが俺達の元へと近づいてくる。

……ここは黙っててやろうかね。

 

 

「一夏……私は……」

「とりあえず言いたいことは後にしよう、箒。背中は任せたぜ」

 

「あぁ……あぁ! 任せろ! 絶対に帰るぞ! 」

「そういうこった。みんな、エネルギー残量には注意しろよ? 」

 

「確かにな……。相変わらず燃費が悪いのは変わりないんだ」

「より攻めにくく…………ん? 」

 

 

 

以前の"白式"は自身のエネルギーを使用してシールド無効攻撃を行える"零落白夜"が最大の武器だったのだが、その為に燃費がかなり悪い。

一歩間違えれば自分の首を絞めかねない状況に陥ることもある。

 

だが二次移行した"白式"にはもう一つの武装が追加された。

先程一夏が防御に使用した左腕の"雪羅"である。

 

おそらく盾やクローに変形できることから燃費は多少改善されたのだろうが、装甲を無視してダメージを与えていたからあれも相当使い勝手が悪いはず。

 

そう悩んでいた時、突然箒ちゃんが素っ頓狂な声を上げた。

 

 

 

「こ、これは……"単一仕様能力"!? 」

「ここでか!? うおっ、避けろ! 」

 

 

 

どうやら"単一仕様能力"が使用可能になったという報せを今受けたらしく、隙を突いて放たれた荷電粒子砲を彼女ごと防いだ。

右手のムーバブル・シールドで防げたからまだよかったものの、冷や冷やするなぁ。

 

 

「箒! 迂闊だぞ! 」

「す、すまない! だがこれは……"絢爛舞踏"だと? 」

 

 

すると突然箒ちゃんの身体が金色に光り出す。

なんだこりゃ、水の一滴でも見えたのか?

 

 

「……これは、エネルギーが回復しているのか? 」

「何!? そんなチートあってたまるかよ! 」

 

「だとしたら……二人とも! 私の手を掴め! 」

「まずは出来る状況になってからだ! 」

 

 

"銀の福音"からの光弾の雨は止まない。

ロングブレードライフルの残弾もあまりないが……致し方ない!

 

俺は銃形態に戻してから3発続けてビームを吐き出した。

あと7発……。

 

 

「今だ! 私に触れ! 今なら胸を触っても怒らん! 」

「え!? マジで!? 揉んでいいの!? 」

 

「いやっ、ちょっ、本気にするな!! 」

「そんじゃお言葉に甘えて、っと! 」

 

 

俺と一夏に向かって手を伸ばす箒ちゃん。

無数の光弾を掻き分けつつ、俺達は彼女の手に触る事ができた。

 

ちっ、どさくさに紛れておっぱい触ろうと思ったのに……。

今度こそ手中に収めてみせる。

 

だが箒ちゃんの手を掴んでいるとみるみるうちにエネルギーが回復していく。

まさか本当に補充されるとは……。

 

 

「箒ちゃん! 絶対防御が発動している人の所に向かってくれ! 」

「……そういう事か! 任せておけ! 」

 

「一夏! 援護するぞ! 」

「おう! 」

 

 

エネルギー補充を終えると、今度は箒ちゃんがシャル達の元へ行くように指示した。

彼女たちを回復させ、一気に形勢逆転を狙うつもりである。

これで満タンだしな、思う存分福音と戦えるぜ。

 

 

だが狙いに気付いたのか、奴は真っ先にみんなの元へ向かう箒ちゃんへチャージしていた荷電粒子砲を発射した。

 

素早く両腕のシールドで防ぐと、今度はその隙を突くように一夏が福音との距離を詰める。

煙と共に大きな衝撃が両腕を襲い、俺は思わず呻き声を上げた。

 

ここで臆していてはならない。

俺の後ろにいるみんなを守る為にも、助けに来た一夏に応える為にも。

 

 

「エマさん!! 照射モードへ!! 」

『了解! ムーバブル・シールド・バインダー、エネルギー充填。パワーケーブル、高容量ドライブに接続開始……』

 

 

その間約数秒。

狙うは、福音の両翼。

せっかくエネルギーが回復したんだ、撃たせてもらうぜ。

 

 

「一夏!! そのままだッ!! 」

「ッ!? お、おう!? 」

 

『ライフルシステム、照射モードへ移行! 今よ彰久! 撃てーっ!!』

「食らいなぁ!! 変態紳士からの、贈り物だッ!! 」

 

 

 

 

莫大なエネルギーと共に吐き出されるのは通常とは比べ物にならないほどの太い2本のビーム。

それは格闘戦を続ける一夏の横をすり抜け、福音の両翼を貫いた。

命中。

 

 

 

 

「今だ! 一夏! やれぇぇぇぇぇぇぇッ!! 」

「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁッ!! 」

 

 

 

絶好のチャンスを逃さんと、一夏が左腕の"雪羅"と右手の"雪片弐型"を同時に振り降ろし、大きな穴の空いた福音の両翼を切り裂く。

左右どちらとも無造作に切り捨てられ、いよいよ再生することはない。

"銀の福音"は、中にいるパイロットを乗せたまま傍にいた一夏の腕によって支えられる。

 

勝った。

 

 

俺達の、勝ちだ。

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<作戦空域外、彰久視点>

 

 

 

「こちら、草薙彰久。銀の福音の捕獲、成功しました」

『……よくやった。目標を拘束した後、速やかに帰投しろ。絶対防御が発動した者は篠ノ之の単一仕様能力で回復している。ご苦労だったぞ、お前たち』

 

 

「……ふうーっ。なんとかなったな……」

「彰久さん、ご無事で何よりですわ 」

 

「おうセシリア。キミの方は動けるのか? 」

「箒さんのおかげで空を飛べるくらいには。戦闘は無理そうですわね」

 

 

千冬さんからの無線通信を聞くと、肩の力がどっと抜け落ちたようで体制を崩しそうになる。

一夏の腕に抱えられた福音はその後回復したジム・クゥエル隊によって拘束され、俺達と共にそのまま本部へと運ぶ事になった。

 

しかしISの絶対防御が発動してたおかげでみんな無事とは安心した。

今回はどうなることかと思ったぜ。

 

 

現在俺達は戦える者だけが前衛、後衛を行う編成になっており、一夏と箒ちゃんが前衛、俺のみが後衛を

務めるという形になっている。

 

 

「しっかし冷や冷やしたわね……。一夏がやられた時にはどうしようかと思っちゃったわよ」

「あの時の彰久は鬼気迫るものだったな。思わずたじろいでしまった」

 

「あ、あはは……。無我夢中でさ……」

「いつもあのような感じでいられたらよろしいのに。その方が女性に受けがいいのではなくって? 」

 

「それは俺が疲れちゃうよ。ありのままの自分を出してた方が楽だし」

「その"ありのまま"っていうのが酷いんだけどな」

 

 

空中を飛びつつ学園内でも変わらない会話を続ける俺達。

そうだ、後で母ちゃんにも連絡しないとな。

ここ最近ずいぶんとシリアス続きだったから俺も疲れてるんだろう。

 

 

「けど君たちには助けられたよ。どうだ? アメリカ軍に入ってみてもいいぞ? 」

「出た、ハンナの勧誘癖。まだこの子たちは若いんだから、そんな選択肢を絞るような真似をしないでよね」

 

「ちぇっ、いい人材だと思うんだけどなぁ……」

「あはは……遠慮しておきます……」

 

 

俺達の会話にハンナさんとメリルさんも加わり、更に賑やかになる。

さすがに軍に入る気はないけど、女性軍人を間近で見られるとなると意外とアリかもしれない。

ハートマン軍曹並の鬼教官は勘弁してほしいが。

 

その時である。

 

 

 

『……ッ!? なに、この反応……!? 注意してください! 皆さんに通常の3倍の速さで正体不明機が接近しています! 急いで離脱を! 』

 

 

 

真耶先生からの通信を受け、俺と一夏と箒ちゃんは一斉に周囲を警戒し出す。

すると突然、"ギャプラン"のモニターにある機体が映し出された。

 

 

あれは……戦闘機?

いや、違う……。

 

まさか、俺と同じタイプの可変機だと……?

 

 

その黒い機体は戦闘機のような姿から空中で人型のISへと変形し、青いビームサーベル片手に俺へと斬りかかってきた。

 

 

「彰久!! 」

「アンタ何して……ッ!? 」

 

「……はぁッ!! 」

 

 

互いに鍔競り合った後に押し返すと、左手に黒いライフルを展開させ無数の青い弾丸を放ってきた。

一体何なんだ、こいつは!?

なんで俺をこんな執拗に追ってくる!?

 

 

『会いたかった……会いたかったぞっ!! ギャプランッ!! 』

「ちっ……狙いは俺かよっ! 」

 

「彰久さん! 援護へ……! 」

「いいっ! 来るな、奴の狙いは俺だ! ここは引き受ける! セシリア達は福音を早く! 」

 

『よそ見をする余裕はあるかっ! 』

「おわっ!?」

 

 

その弾丸を避けてから再び鍔競り合うと、無線通信の音声をスピーカーにして黒い機体のパイロットは周囲に自身の声を響かせる。

この声……女性か?

 

蹴りをお見舞いされると、俺は敢えて一回転してから両腕のムーバブル・シールドバインダーを黒い機体へ向けた。

同時に奴も自前のライフルを俺に向けている。

 

 

「……すまない、彰久! 」

「ラウラ!? ……くそっ! 」

 

「行け!! 早くしろ!! 」

「そんな!嫌だ、止めてッ!! 彰久ぁっ!! 」

 

 

状況をいち早く理解したラウラとジム・クゥエル隊の全員は、その場を急いで撤退した。

一夏や鈴ちゃんたちも釣られて退くが、シャルとセシリアの二人だけが俺を未だに連れ戻そうと手を伸ばしている。

 

つくづく愛されてるねぇ。

嬉しい限りだよ。

 

二人の抵抗も虚しく俺以外のメンバーはそこを離脱し、残されたのは例の黒いヤツと俺のみ。

しばらく対峙する事になった。

 

 

『……その意気や良し! 来い、少年!! 』

「お言葉に甘えてなぁッ!! 」

 

 

 

 

 

 

死ぬわけにはいかない。

俺は、死なない。






はい、というわけでタブルオーの1期のラスト的な感じです。
最高に空気読めないね。

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