IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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紅椿の登場です。


箒、新機体に乗る

<翌日、花山荘周辺>

 

 

通常の生徒達は普段通りのカリキュラムで臨海学校を進行することとなっており、俺達のような専用機持ちは千冬さんに別の場所へと連れられていた。

 

何やら話があるようで、詳しい内容は現地に到着してから言い渡されるという。

一体なんの話なんだろうか。

 

 

「よし、全員いるな。これから各々に送られてきた新装備のテストを始めるぞ」

「はい。ですがその前に一つ聞きたいことがあります」

 

「なんだ? 」

「専用機持ちだけがここに招集されたはずですが、なぜ箒がここに? 」

 

 

そして何よりも気になっていたのが箒ちゃんの存在である。

まだ彼女は専用機を持っていなかったはず、なぜこの場に集められたのか全員が疑問に思っていた。

箒ちゃん自身も不思議に思っているんだろう。

 

 

「あぁ、それはだな……」

「みんなのアイドルであるこの束さんが箒ちゃんに今から専用機を渡すからなのだー! 」

 

「…………は? 」

「早いぞ、打ち合わせじゃもう少し後の登場だったろうお前」

 

「誰だって顔してるが自己紹介させてもらうぜ! 私はお節介焼きの篠ノ之束! 」

「いや知ってます、知ってますけど……ああもういいや」

 

 

千冬さんの背後から突然ひょっこり現れたのは、ISを基礎構築・開発したという天才研究者の篠ノ之束である。

前はISを作り出した研究者ということで日本政府の監視下に置かれていたようだが、3年前に行方をくらましたまま姿を消していた。

なのにも関わらず、こうして俺達の前に姿を現すということは余程重大な事件でも起こらない限りありえないだろう。

 

ますます疑問が深まるばかりだ。

その証拠に箒ちゃんが呆れ返っている。

 

 

「あ、あはは……相変わらず奇抜な登場の仕方ですね……」

「むっふっふ……。天才的な発想と言ってほしいな、いっくん! というかお久しぶり! 」

「はい、久しぶりですね」

 

 

「それにあっくんも初めまして! 私の開発したギャプラン、可愛がってくれてる? 」

「勿論、有難く使わせてもらってます」

「それはよかった」

 

 

呆気に取られる女性陣を差し置いて束さんは笑顔で俺達に振り返った。

その間豊満な胸が揺れ、思わず口元が緩んでしまう。

篠ノ之家はきっと胸が大きい家系なんだろう……。

 

 

「積もる話は後にしてくれ。束、例のやつは? 」

「おお! すっかり忘れてた! あ、ちょっとみんなここから離れてね~」

 

 

束さんに言われるがまま俺達は今立っていた場所から数歩離れた地点へと移動する。

すると、空から何やら光るものが落ちてくるのが見えた。

 

 

「出よ! 紅椿っ! 」

「うわっ!? 」

 

 

彼女がそう口にした瞬間、やっと目で確認できる程度にはなったものの大きさはかなり大きく、どうやら何かを積んでいるコンテナのようであった。

そりゃ離れなきゃ危ないわな。

 

大きな音と振動と共に赤い長方形状のコンテナが上空から現れ、束さんがリモコンでスイッチを押すといきなり中身の物体が展開される。

これは……IS?

 

「これが箒ちゃんの第四世代型IS、"紅椿(あかつばき)"だよ。さあさあ箒ちゃん、さっそく展開してみてちょうだい! 」

「私の……専用機……」

 

 

なるほどな。

箒ちゃんがこの場に呼ばれたのは専用機を渡す為だったのか。

しかしこうも簡単に第四世代が二機も揃うとは……。

 

その"紅椿"は膝を着くと武者のような装甲を展開し、使用者である箒ちゃんを迎えるような形になった。

赤いカラーリングが目を惹き、腰の部分には二振りの刀を帯刀しているのが見える。

 

彼女は背中を預けるように"紅椿"へと搭乗し、初期設定を構築しているようだ。

 

 

「最適化はちょっと時間が掛かると思うから、その間にいっくんの"白式"とあっくんの"ギャプラン"も見せて。色々とデータとか取っておきたいからさ」

「あ、はい。分かりました」

 

 

その間束さんは俺達へと近付き、待機状態にある"白式"と"ギャプラン"をかっさらって行く。

セシリア達にも新装備が行き届いているようで、現在彼女たちもその装備を自身のISに最適化している真っ最中であった。

 

 

ちなみに俺にも一応新装備らしきデータは受信している。

臨海学校の三日前ぐらいに片桐さんからメールで送られてきたものだった。

 

"ロングブレードライフル"の追加パッケージである"バレルシールド"というもので、銃身に立て掛ける事によって長距離射撃を可能にするという一品である。

だが威力こそ高くなるものの前のように連射は不可能であり、俺の最も得意とする間合いではあまり使用しないだろう。

 

こういうのは後方支援が得意なセシリアとかラウラに向いてそうなんだがなぁ。

 

 

そんな風に俺も新装備のフィッティングを済ますと、既に数人がドローンとの模擬戦を開始している。

すぐさま俺もギャプランを受け取った後に展開し、みんなの所へと向かった。

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<テスト範囲内上空、彰久視点>

 

 

千冬さんの指示で俺は岸のある浜辺へと向かい、"ロングブレードライフル"と"バレルシールド"を展開させ、俺はうつ伏せになりながら"ロングブレードライフル"を構える。

スナイパーライフルのようにスコープが現れ、俺はそれを覗きこんだ。

 

 

『今回のテストは長距離狙撃を主軸とした内容だ。お前には遠くにいるドローンをハイパーセンサーで捕捉し、狙撃してもらう』

「了解しました。もう始めて大丈夫ですよ」

『わかった。これより"バレルシールド"のテストを開始する』

 

 

無線通信による千冬さんの指示を聞き終えると、俺は再びロングブレードライフルのスコープを覗き込む。

その先には別の場所でテストをしている一夏や箒ちゃん達の姿が見えるが、今は自分のテストの事に集中しないとな。

 

 

『彰久、2時の方向よ』

「オーケー、狙い撃つぜ! 」

 

 

エマさんの指示通りに銃口を向けると、ちょうどスコープの中心にドローンの姿が見えた。

引き金を引くと普段とは違った大きめの反動が両腕を襲うが、身体全体でそれをなんとか抑える。

 

結界は見事命中。

俺の狙撃の腕もだんだん上がってきてるみたいだ。

 

 

『ドローンからの攻撃よ! 衝撃に備えて! 』

「やべっ! 見つかっちまったか! 」

 

 

頭を覆うようにして地面に伏せると、うまく"バレルシールド"が作動してくれたのかドローンからの攻撃を防ぐ事に成功する。

攻撃を受けることを想定して作られてるみたいだな、有難い限りだ。

 

 

『今度は9時の方向! 』

「任せなぁ! 」

 

 

だが先程の攻撃を受けた衝撃で若干腕が震え、射線にブレが生じてしまう。

一発放ったビームは命中せず、ドローンの頭上を駆けていった。

案の定こちらに気付いたドローンはスナイパーライフルでの攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「ぬおうっ!? 」

『シールドエネルギー減少。約10%近く減らされたわ』

 

「やりやがったな! 」

『熱くならないで、いつでも冷静になるのよ。焦るとより狙撃の命中率が下がるわ』

 

「オーライ……」

 

上がった息を整え、深呼吸してから俺は再び"ロングブレードライフル"のスコープを覗き込んだ。

落ち着け……落ち着くんだ草薙彰久……。

こういう時はクーデレ美少女を妄想するんだ……。

 

 

定まった。

狙い、撃つ。

 

 

『よし、全ドローンを撃墜したようだな。草薙、これよりお前の新装備のテストを終了する』

「はいっす! お疲れさまでしたー」

 

最後のドローンにビームが命中すると、無線で千冬さんがテスト終了の合図を告げる。

俺はため息を吐き、うつ伏せのまま背伸びをした。

他のみんなはどうなっているのか気になったので、スコープでテストの様子を覗くことに。

 

 

「エマさん、他のみんなのテストはどんな感じだ? 」

『ちょっと待ってね…………うん、篠ノ之さん、一夏くん、シャルロットさんは続行中、その他の人は既にテストを終えて彼らの様子を見ているわね』

 

「サンキュー、んじゃ箒ちゃんの方をカメラに映してくれるか? 」

『……変な意味じゃないでしょうね? 』

 

「当たり前だよ。そりゃあの巨乳も気になってるけどな」

『はぁ、わかったわよ。メインカメラの方に映すわ』

 

 

数秒後、先程の"紅椿"を纏って空を駆ける箒ちゃんの姿がギャプランのカメラに映し出される。

鎧武者のような赤い風貌は、青い空の中ではより目立つのですぐに彼女のISだと視認できた。

 

しかし"紅椿"という機体、かなりの高性能を有しているみたいだな。

背中と肩、腕と脚部に取り付けられた装甲が可変して盾や剣になったり、スラスターの役割を果たしたりとせわしく彼女の周囲で蠢いている。

 

 

「さすが、第四世代は伊達じゃないな」

『……そうかしら』

 

「ん? なんだ、何か不満でもあるのか? 」

『そういう訳じゃないわ。ただ……なんというか篠ノ之さんが有り余った力に翻弄され過ぎているように見えてしまってね』

 

「……なるほど。まあ第二世代のISから第四世代のISへレベルが上がったんだ、そりゃ扱えなくて当然だろ」

『それはそうだけど……』

 

 

箒ちゃんが手にした刀からエネルギー刃を飛ばし、ミサイルを発射したドローンごと斬り捨てた。

中距離戦も可能なんて本当に壊れ性能だな。

まるでどこぞのキングオブハートみたいだ。

 

その一方でエマさんは不安そうは表情を見せる。

珍しいな、余程の事がない限り笑顔を崩さない彼女がこんな顔を見せるとは。

 

 

「まあいいや。エマさん、そろそろ俺達も集合場所へ向かおうぜ」

『……そうね。他のみんなも待っているみたいだし』

 

 

話を切り上げて俺はギャプランを飛行形態へと移行させ、みんなの待つ花山荘の周辺の沿岸へ向かう。

エマさんのやけに不安げな顔が妙に気になったが、俺は気にせず後の3人を待つことにした。

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<束の移動ラボ、グレイス視点>

 

 

昨日草薙彰久たちの泊まる花山荘の温泉に浸かったあと、私はそこで1泊してから再び束の移動ラボへと戻っていた。

しかし昨日接触した男性二人が草薙彰久と織斑一夏だとは……。

 

なかなかいい目をしていた。

今後の成長に期待だな。

 

「うっ……ううん……? 」

「おや、お目覚めのようだな。気分はどうだ? どこか痛いところはないか? 」

 

「……あなたは……? 」

「失礼、自己紹介がまだだった。私の名はグレイス・エーカー。ご覧の通り……ではなかったな。君の名前を教えてもらっても? 」

 

「……わたしの名前……クロエ・クロニクル……」

「クロエというのか。いい名前だ」

 

 

そう言いつつ私は彼女の頭を優しく撫でる。

最初は恥ずかしがっていたものの、次第に慣れてきたのか目を閉じたり開いたりしていた。

無理もない、ここ数日で彼女の暮らしはガラッと変化したのだから。

クロエを寝かしつけると、私は再び作業へと取り掛かる。

 

 

「さて……束に教えて貰ったはいいが、このオーバーフラッグをどう整備するかだな。まあいい、時間は有り余っている。どうにかしてやってみるとしよう」

 

 

そう言いつつ私はフラッグの装甲を展開し、束から渡されたパソコンとフラッグをケーブルで繋いだ。

軍にいた頃は整備士に任せっきりだったからな、こういう事はさっぱりわからない。

私はようやく整備士の存在の偉大さを思い知る。

 

 

だが気が進まないな。

この機体で草薙彰久を奇襲するとは……。

 

 

束曰く"ギャプラン"の真の力を発現させる為に本気で戦ってほしいとの事だが、ああいった見込みのある少年をねじ伏せるとなるとまた違ってくる。

 

 

……心が躍っているのは確かだが。

 

 

 

 

「草薙彰久。敢えて言わせてもらおう、期待しているぞ」

 






というわけで彰久とグレイスの戦闘確定です。

で、話は変わるんですが今後の変態紳士の更新について重要なお知らせを活動報告にて致しました。
ご覧いただけたら幸いです。

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