ここでまたまた原作改変。
一応シャルのサブシナリオはここで終わりかな?
<火曜日、1年1組教室>
デュノアさんに必殺のブレーンバスターを受けてから約二日後。
主に首と腰を痛めて飛行機に乗った俺は、月曜日の夜に帰国し、また学校を休む羽目になってしまった。
一応予備日として公欠届けは月曜日まで出していたのでなんとかなったが、二日も学校を休んでしまってはなんだか他の子たちと会うのが若干気まずい。
それはまあどうにかなるとして、気がかりなのはシャルの事である。
実はまだフランスにいた金曜日の夜、彼女からメールが届き、その内容は急遽故郷のフランスへ呼び出しが掛かったらしいとの事であった。
おそらくはデュノアさんが呼び出したのだろうが、気になるのはその後の事。
シャルがどういう形で学園に戻ってくるか心配でマイサンを愛でる事も出来なかったぜ……。
「おいーっす、おはよー」
「あら、彰久さん。フランスへ行ったと聞きましたけど、随分早いお帰りですのね。おはようございます」
「そうそう。昨日の夜に帰ってきたのよ。はいコレお土産」
「まあ、これカチューシャですか? ありがとうございます、大切にしますわ! 」
「ふっ、君に似合うと思ってね」
「そんな事まで考えてくださって……うふふ、もう、彰久さんったらぁ! 」
時差ボケで早く起きすぎたのか、教室にはセシリアしかおらずちょうどいいタイミングで彼女の為に買ってきたお土産を渡すことができた。
なんだか2、3日会ってないだけで随分と久しぶりな感じがするなぁ。
「そういやここ2、3日なにかあったか? 朝から学校にいなかったからその日の連絡事項とか聞いてなくてさ」
「うーん、特に目ぼしい連絡はなかったと思いますわ。強いて言うなら学年別トーナメントの1年生の部が終わったぐらいでしょうか。あっ、あと連絡事項ではありませんけどちょっと事件っぽいものならありましたわね」
「え、何かあったのか? もしや誰か大怪我したとか? 」
「いえ、屋上庭園の予約がとれましたのでラウラさんや一夏さんたちを誘ってお弁当を食べようって話になりましたの。そこでラウラさんがお弁当を忘れてしまったから購買でパンを買ってくる時に……」
あまりにセシリアが張りつめた表情をするので、つい俺はゴクリと唾をのみ込む。
まさかラウラ、何かやらかしたんじゃないんだろうな。
「購買で"コッペパンを要求する!"って言ってハンドガンぶっ放しましたわ」
「どこの軍曹だよ! ある程度予想はしてたけどさ! 」
「その後すかさず織斑先生がハリセンでツッコミました。その後彼女は"だって購買は戦場って言うから!"って涙目で頭抑えながら正座させられていましたわ。一応ゴム弾らしいですけどさすがに危ないですよねぇ」
「怪我させた時には遅いしなぁ。ま、誰にも被害が及んでなくてよかったよ」
けど一般知識に疎いラウラならやりそうである。
疎いってレベルじゃねーけどさ。
まさか銃を携帯してるなんて誰も思わないよな普通……。
全力で購買の人に謝っている千冬さんの姿を想像するとなんだか可哀想だ。
「おお、彰久。もう帰ってきてたのだな」
「なんや、随分早いんやね。勿論お土産はあるんやろな~? 」
「ふっ、この草薙彰久、君たちの分はおろかこのクラス全員の分を買ってきたよ。箒ちゃんはシュシュで、真琴ちゃんはストールだ。ほいコレ」
「へぇ、洒落てるな。ありがとう、彰久。使わせてもらうよ」
「え、青ってウチの好きな色やん! よく分かったねぇ? 」
「はっはっは、そりゃあんだけ青い小物を付けてればな」
どうやら二人にも喜んでもらえたようで、変態紳士は何よりである。
少し服のセンスには自信があるので、こうして女の子にアクセサリーだったり小物などをプレゼントできるのだ。
貢いでいるように見えるだって?
はっはっは、女の子の笑顔はプライスレスさ。
ちなみにちゃんと他の人にもお土産は用意してある。
鈴ちゃんにはリボンを、シャルにはネックレスを、ラウラにはブレスレットを、本音ちゃんにはぬいぐるみと挙げたらキリがない。
クラス全員にあげるお菓子も準備万端なので、心配しなくても大丈夫だ。
「……彰久さんの女たらし」
「セシリアの拗ね顔頂きっ! 久々にベストショットが撮れたぜ! 」
『告知どうもありがと。削除ね』
「あァァァァァんまりだァァァァァ! 俺のネタァァァァァ! 」
「顔が凄い形相になっとるって! お茶の間の子ガチ泣きやって! 」
「大丈夫だ、これ一応R15だから」
「そーいう問題じゃねーよ! 」
頬を膨らましてむくれるセシリア。
ああもう可愛い、今すぐ結婚したい。
そんな風に俺達が騒いでいると、いつの間にか教室は一組の子で一杯に。
俺は早速、全員にお土産を配ることにした。
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<ホームルーム>
みんなにお土産を配ること約数十分。
いつも通りに始業を告げるチャイムが鳴り響き、凛とした様子の千冬さんが教室に入ってきた。
「おはよう、みんな」
「おはようございます! 」
「うむ、いい返事だ。ホームルームをこれから始めようと思うが、その前にお前たちに重要な知らせがある。このような事態は極めて異例だが、それを承知して聞いてほしい」
真剣な表情に、息を呑む全員。
おそらくはシャルのことだろう、俺にも緊張が走る。
「うちのクラスにいる"シャルル・デュノア"という子は男ではなく女だ」
「……」
「だが自分から望んで男として入学したわけではない。彼女の所属する大手企業のデュノア社から、そう命令を受けていたらしい。その事を踏まえて、話を聞いてやってくれ」
「……何? 」
思わず俺はそう呟いた。
確かシャルは「父と母の気を惹く為、デュノア社に世間の目を向ける為に男としてIS学園に入学した」と言っていたはず……。
まさか……デュノアさんが嘘の情報を教えたのか?
そんな考察を待たずして、ミニスカート姿のシャルが教室に入ってきた。
あ、生足がエロすぎてもうそんな考察どうでもいいや。
「"シャルル・デュノア"改め"シャルロット・デュノア"です。皆を驚かせてしまってごめんなさい。騙すつもりはなかったんですが、もし不快に思うなら無視して頂いて構いません」
「そ、そんな事する訳ないだろう! 」
「そうだよしゃるるん! 」
本音ちゃんやラウラがすかさず彼女のフォローに入り、それに同意するように他の生徒達も頷く。
確かに会社の命令でやらせられていたのにも関わらずシャルを責めるのはお門違いである。
だがそれも嘘。
シャルを守る為に、デュノアさんが用意した口実に過ぎない。
……本当の事を知っている分、少し悲しいけどな。
「みんな……」
「……さて、デュノア。もう席に着け。これからホームルームを始める」
どうやらみんなは彼女の事を受け入れるらしく、それを察した千冬さんはシャルを自分の席に座らせた。
涙を堪えつつ席に向かう彼女の姿を見ると、本当にフランスへ行った甲斐がある。
……ふぅ。
さすがに今回ばかりはいけるかどうか不安だったが、成功して良かったぜ。
「お前たちも気づいているようだが、来週の水、木、金に臨海学校がある。持ち物は既にプリントで纏めて記載しておいたが、無くしてしまった者は速やかに職員室へ取りに来い。それと、この後の私の授業を使ってバスの席を決めておこうと思う」
「え、臨海学校? マジですか? 」
「ああ。そういえば草薙はその連絡をした時には公欠だったな。後で色々と渡すプリントがあるから取りに来てくれ。連絡は以上だ。号令! 」
臨海学校だと……?
まさか、海?
いや待て、焦るな草薙彰久。
ここで動揺を見せてしまったら泣きを見ることになるぞ……。
「起立! 気をつけ、礼! 」
「ありがとうございました! 」
思慮に耽っているといつの間にかホームルームは終わっており、今朝のように教室は先程連絡のあった臨海学校のことで持ち切りになった。
とりあえずプリントは昼休み辺りに取りに行くとして、まずは情報が必要である。
そう思った俺は一夏の元へ行くことにした。
「なぁ、一夏。来週の水曜日から金曜日ってマジで臨海学校? 」
「そうだよ、お前今の話聞いてなかったのか? 」
「いや、聞いてたけどさ……。臨海学校っていうからもしや海で遊ぶのとかあったり? 」
「そうなんだよ、水着用意しないとなー」
「イエスッ!! キタコレ!! 人生最大のエロイベントッ!! 」
「声だだ漏れだっつーの」
どうやら俺の予想は的中したらしい。
神様、こんな俺に恵みを与えてくれるとは……あんたは最高だぜ!
思わずガッツポーズをして周りに引かれたのは言わずもがなである。
「あ、けど水着買ってねーや。さすがに昔のだとサイズ合わないしなぁ」
「俺もちょうどないからさ、今週の土曜日に買いに行かないか? 」
「いいね、久々に出かけますか」
「どうする? 箒達も誘うか? 」
「当たり前よ。むしろそこでどんな水着を買うのはチェックするんだよこのアホめ! 」
「アホはお前だろ……」
もはや様式美といえる俺と一夏のやり取りに、クラスのみんなは半ば呆れた視線を俺に向けた。
うふっ……ぞくぞくするぜ……。
特にセシリアなんかの視線は最高だ……!
だが女の子と海へ行くことを想定して今まで筋トレを重ねてきたのは事実。
この俺の鍛え抜かれた肉体にクラス全員の女の子はきっとメロメロになること間違いなしである。
「しかし良かったな一夏、お前の愛しの千冬さんと海へ出かけられるなんて! 」
「て、てめっ! んなこと思ってるわけねーだろ! 実の姉ちゃんだぞ! 」
「嘘つけ、俺は知ってるんだぞ? お前のベッドの下に隠してある……」
「おわーっ!! やめろーっ!! それだけは言うなー!! 」
年頃の男子みたく猥談を続けていると、急にガラッと教室の扉が開いた。
息を切らした千冬さんが涙目でこちらを見ており、一体何が起こったのか全員が把握できずに教室中が静まり返る。
「いっ、一夏! ちょっとこっち来い! 」
「おわっ!? 千冬姉……じゃなかった、織斑先生!? 」
彼の手を引いたまま千冬さんは教室を出て行った。
思わず唖然とする全員。
まさかここであの"ブリュンヒルデ"の意外な一面を目にするとは思わなかったのであろう。
そうして数分後、先程の凛とした表情の千冬さんとげっそりした一夏が教室に戻り、何があったのか聞きたくても聞けない状況になってしまったのである。
いまいち進まなかった回でした。
次回辺りから水着買ったりします。
さて、ここでアンケートの実施を告知したいと思います。
今回のお題は「ライバルの可変機」という感じ。
詳しい内容は活動報告にて募集します。