というわけで日常編。
またまた新キャラです。
<翌日、都内某所>
時は進み翌日の土曜日、今週の休みへと突入した俺たちは皆思い思いの過ごし方をすることに。
あの後先生から全校生徒に連絡が行き届き、学年別トーナメントの1回戦だけを執り行うらしく、エキシビションマッチという形式で進行するそうだ。
そして前々から弾たちと計画していた"紳士円卓会議"というものを行う為に、現在俺は都内某所の駅前で彼らを待っている。
時刻は丁度朝の10時。
この時間に彼らと待ち合わせをしていたが……弾たちはまだ来ない。
「そこの少年、君に一つ問いたいことがある」
「えっ、なんでしょうか? 」
「ツインテールとポニーテール……君ならどっちをとる? 」
「どっちもです」
「それでこそ彰久だよ! 」
「お、お前は! 熊吉!? 」
ロングコートに身を包んだ男性がそのような究極の選択を聞いてくるものだから、欲張りな俺はついどっちもとる選択をしてしまった。
どうにも聞き覚えがあると思ったら、やはり熊吉だったか。
俺の前に立つこの茶髪のイケメンの名は"熊田 熊吉(くまだ くまきち)"。
容姿端麗で運動神経もなかなか良いのだが絶望的にダサい名前と彼の性癖"ロリコン"というものによって女の子からことごとく引かれるというなんともいたたまれない奴である。
"残念なイケメン"とは熊吉のことを指すに違いない。
「久しぶりだな熊吉、やっと出所したのか」
「ムショにぶち込まれてないよ! 厳重注意だよ! 」
「いやそれでも十分まずいだろ」
「ゴキゲンな蝶になってキラめく風に乗って幼女に声かけたらいつの間にかおまわりさんが肩を叩いてたのには驚いたよね。今日も日本は平和だよ」
「主にお前の頭の中がな」
おまわりさんのお世話になるとは3流のやることである、ましてや変態紳士の契りを交わした者が厳重注意とは言語道断だ。
ちなみに変態紳士の契りを交わすには白いタイツを来て耳的な物がめっちゃ長いおっさんと契約しなければならない。
決まり文句は「私と契約して変態紳士になれよ」なので覚えておくと結構イケるはずだ。
「あれ? そういえば弾は? まだ来てないみたいだけど」
「あのシスコン何してんだろうか。時間にルーズなんて変態紳士としてあるまじき行為だ」
「本当だよね。全く幼女とデートする時にこんなんじゃダメだよ」
「すいませーん、こいつ全然反省してないんで65年ぐらいムショにぶち込んでくださーい」
「つ、通報なんてしないでよ! この変態! 」
「お前にだけは言われたくねーよロリコン! 」
中学時代から色褪せないこの漫才、これなら合コンでも役に立つはずだ。
多分その前にドン引きされて女の子達全員帰ってると思うけど。
相も変らずロリコンなのにイケメンとか更に腹立つポイントである。
まあ俺には敵わないがな。
「よおお前ら。朝から騒がしいな」
「おっ、おせーぞ弾。危うく熊吉とリアルファイトするとこだった」
「まあ僕のロリコン神拳には敵わないと思うけどね」
「お前それ幼稚園児のコスプレして殴りかかるだけじゃねーか」
「使うと同時に通報される危険性も高まるから封印安定だよアレ」
そうして弾を待つこと数分、背後から声をかけられるとそこには息を切らして膝に手を付く彼の姿が見える。
一発ここは変態紳士として殴っておきたいが弾なりにも理由はあるのだろう。
今日は勘弁してやる。
「しかし、弾が時間に遅れるなんて珍しいね。どうかしたのかい? 」
「ああ、夜通しで妹物のエロゲしてたらいつの間にか朝だった」
「よしそこに直れ」
「う、嘘だって! 冗談だよ! 」
「エロシーンはどうだった? 」
「もうたまんねぇ……って、あ」
弾はあっさり自爆し、その後俺と熊吉の変態神拳ユニゾンアタックによって地に伏すことに。
朝から騒がしいのはもはや基本、この駅を利用する人達も"またお前らか"という視線に変わりつつあった。
あ、今のリクルートスーツのお姉さんのジト目最高。
そうして俺達は倒れた弾を叩き起こした後、今日の目的地である場所へと向かった。
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<お昼前、五反田家>
「これより、"第4545回紳士円卓会議"を執り行う。進行は私"裸の錬金術師"草薙彰久だ。全員、敬礼ッ!! 」
「ジーク・紳士っ!! 」
意味不明なくだりから始まりの合図を告げた紳士円卓会議、現在俺たちはいつものように弾の部屋でジュースを高く掲げる。
久しぶりにこの会議を行うが、中学時代には嫌という程円卓会議をした覚えがあったものだ。
そのほとんどが「別のクラスに可愛い子がいる」だとか「同じクラスの女の子で誰が一番胸が大きいか」なんていう議題だったなぁ。
「して"裸の錬金術師"よ、今日の議題はなんだ? 」
「そうだな、早速本題に入ろう。それは、"変態紳士四天王"のメンバー決めだ」
「つ、ついに作るんだね……! けど四天王だから僕たち含めてあと1人を決めなくちゃいけない。どうするんだい? 一夏が入るのかい? 」
「ふっ、そう焦るでない"ロリコンマイスター"。既にメンバー候補は決めている! 」
そう言いつつ俺は持ってきたカバンの中からノートPCを取り出す。
既に無線LANで通信を繋げているので、いちいち有線を差し込む必要はない。
手前の操作パネルをいじって俺はSky〇eの項目をクリックした。
『あー、てすてす。大丈夫でしょうか? 』
「よく聞こえるぞ、クラさんもとい"百合と薔薇の申し子"よ」
『そのような名を頂いて光栄です。草薙彰久』
「紹介しよう。彼女は我々変態紳士四天王の紅一点となる、"クラリッサ・ハルフォーフ"だ」
クラさんの映像がPCの画面を通して表示され、思わず二人も困惑している。
実を言うと以前から彼女のことは「ドイツにめっちゃ綺麗でエロいコスプレイヤーがいる」という噂でかねがね知っており、前からSk〇peとかで通話していた。
まさかクラさんが変態淑女の一人とは思わず、話しているうちにどんどん意気投合して"変態紳士四天王"の一員に加えようと画策したのである。
「お、おい彰久……」
「どうした弾? なにか異論でも……」
「貴様どういうことだ! 俺たちは変態紳士、彼女の存在はとても嬉しいが……。"変態紳士四天王"と言うのだからもう一人も男ではないといけないぞっ! 」
「エゴだよそれは! 四天王には必ずエロい紅一点みたいなのが必要となるだろう!! ボンテージやほぼ紐のような衣装に身を包み、主人公達の前に立ちはだかる……。そして自分の存在を肯定してくれた主人公に惚れるというシーンになんど憧れたことかッ!! 」
『おぉ、この構図は弾×彰久でいけますね。夏の〇ミケのネタが早速できあがるとはさすがです』
「僕が言うのもなんだけど色々と酷いな」
朝から騒ぐ俺たちに隣の部屋から蘭ちゃんの壁ドンが鳴り響き、一気にこの場の空気を静まらせた。
さすが蘭ちゃん、弾を尻に敷いているだけあるぜ。
「……俺が間違っていたぜ、彰久。四天王を名乗ることにおいて、最も重要なのは"女幹部"の存在だよな……! 」
「分かってくれたか、弾。さあ、早速変態紳士四天王の儀式を行おう」
暗い表情から一変、弾は俺の両手をがっしりと掴む。
その目には希望の二文字が浮かんでおり、もはやクラさんが変態紳士四天王の一員になることは確実であった。
〇の軌跡シリーズのルシオラさんや、T〇Xでのプレザでムラムラした同志諸君も多いはずである。
「クラリッサ・ハルフォーフ。貴女を変態紳士四天王の一員に歓迎しよう」
「本当は鈴ちゃんみたいな合法ロリの女の子が良かったけど、二人がこう言っているんだ。よろしくね、クラリッサさん」
「失礼なことを言ってすまなかったクラさん。これからよろしくな」
『以後、よろしくお願いします。ちょっと日本へはまだ行けそうにはありませんがこちらの仕事で長期の休みがとれたら是非お会いしたいですね』
「その時はまた連絡してくれ。変態紳士全員を以て歓迎しよう」
『ありがとうございます。では、そろそろ落ちますね』
「わざわざありがとう、また一緒にFPSでもやろう」
どうやらクラさんは用事があったようで、簡単な挨拶を済ませるとSkyp〇の通話を閉じた。
日本からでもドイツに電話を繋げられるようになったのは随分技術が発達したものである。
言うなれば「ドイツの科学力は世界一ィィィィィィィィ!! 」だろうか。
「さーて、この議題は以上だ。他に何かある者は? 」
「はい、ちょっといいかな? 」
にこやかに熊吉が手を上げた。
普通にしていれば本当にただのイケメンなのだが、そこで踏みとどまらないのが変態紳士。
しかしいつもはこの後ゲームとかして遊ぶのに今回は珍しいな。
何かあったのだろうか。
「おう、どうした熊吉」
「最近、彰久が女の子とデートしたって聞いたんだけど。しかも金髪碧眼の子と」
「はっはっは、生粋の変態紳士であるこの俺がデートだと? 冗談はよせ。できたら嬉しい限りだけどな」
彼らの前ではこんな余裕の表情をとっているが、内心焦っているのは秘密。
まさかセシリアと一緒に世界IS博覧会へ行ったことがバレているとは……
なんとしてもここは嘘をつき続けなければ。
「ふーん……まあ嘘なのはバレてるよ。ほら、これ見て」
「なっ……!? 」
これは鈴ちゃんから二人に送られたメール……。
なぜ彼女は俺達がデートへ行くことを知っていたんだ……?
「鈴ちゃんが僕たちに教えてくれてね。まさかとは目を疑ったけど彼女に聞いてみたらどうやら本当らしいじゃないか」
「ふふふ……彰久……。お前IS学園にいることをいいことに女の子をたぶらかしてるみたいじゃねぇか……。聞いたぞ? なんか関西弁の子の巨乳を毎日揉んでるとかってな」
「だ、だって仕方ないじゃん! 女の子からお誘いを受けるなんて思わないでしょ! 今までの人生を考えてさ! 俺にも春が来てもいいじゃないか! 」
あの貧乳まな板娘なにしてくれてんだよオイ。
まさかとは思ったがマジでバラしてるとは……。
あとで鈴ちゃんにはスカートめくりとパイタッチの二段構えをしてやる。
「あぁ。お前の気持ちは痛いほど分かる。その女の子たちとの付き合いを断てなんてことは言わない。変態紳士として女の子を悲しましてはいけないからな」
「じ、じゃあ……! 」
「だからお前には2週間、お前の息子とのスキンシップを禁じる! 」
「な、なにーっ!? んな殺生な!? 」
なんて鬼畜な罰を与えてくるんだこの赤毛のシスコンは。
あんな自分以外が女の子という変態紳士にとっては最高の楽園でマイサンとのスキンシップを禁止するなんてこれが人間のやることかよぉ!!
「決めたことだからな。もし違反でもすればお前のチ〇コは天高く爆散するぞ」
「こいつはっきり言いやがった! 今までマイサンとかでうやむやにしてたのに! 」
というかマイサンが天高く爆散とか恐ろしくて想像しただけでもちびりそう……。
多分誰か絶対「汚ねぇ花火だ」とか言いそうだよね。
「よっし、つーことで円卓会議終わり! もう時間もいい頃合だし飯にしようぜ」
「そうだね。じゃあ彰久、気を持ち直したら下に来てね」
強引に円卓会議を終了され、反論などさせずに二人は部屋を出た。
絶望に打ちひしがれた俺を置いて。
おのれあやつら……!
絶対に許さん……!
「俺のリボルケインの錆にしてくれようぞ! 覚えておけッ! 」
「うるさいっ! 」
「ウェイカッ!? 」
再び立ち上がってから野望を胸に高笑いすると、突然部屋に入ってきた蘭ちゃんが俺の頭にチョップを炸裂させた。
本当に踏んだり蹴ったりである。
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<同刻、ラーク・メカニクス社・社長室>
「ええはい、お久しぶりです。以前IS学園でお会いした小木曽です。そちらの社長に御用があるとお伝えください」
社員たちが昼休み中に出払っている頃、小木曽は一人残ってある場所に電話をかけていた。
『もしもし。わざわざ連絡させてしまって申し訳ない、ミスター小木曽』
「いえ、私の方もいきなり電話をしてしまってすみません。ミスターデュノア」
その場所とはIS企業の大手である"デュノア社"。
以前彰久の"ギャプラン"を観戦する為にIS学園を訪れていた小木曽は、密かにデュノア社の社長"アルフレッド・デュノア"とこのように連絡を取り合うことを約束していたのである。
『それで、以前仰っていた話というのは? 』
「単刀直入に言わせて頂きます。御社と業務提携を考えており、その会談をさせて頂きたい。もし嫌なら断って頂いても構いません」
『……本当に単刀直入ですな。ですが、いいでしょう。話を聞かせて頂きたい』
「ありがとうございます。私の方からそちらに出向きますので。ミスターデュノアは今どちらに? 」
『今はデュノア社の日本支部ですね。明日辺りにフランスへ帰国しますので、出来れば1週間後に尋ねて頂けるとこちらも助かります』
「わかりました。来週の金曜日には日本を発ちますので、土曜日にお会いしましょうか。では、また会える日を楽しみにしています」
そう言いつつ小木曽は電話を切った。
これで彰久との約束が守れそうだが、まだ油断はできない。
向こうへ出発して提携を断られる可能性だってあるのだ、納得させられる企画書を完成させておかなければ。
彼はおもむろに自分のノートパソコンを開き、作りかけのワードを起動した。
『デュノア社共同製作予定機体"Zガンダム"企画書』
この企画書が、後に多大な影響を及ぼすことになるとは誰も知らない。
共同開発の機体はZガンダムとなりました。
ラーク・メカニクスの可変機構とデュノア社の大容量を考えてみたらこれしか浮かばなくて…。
P.S.
皆様が誤解されているようなので僭越ながら申し上げますが、彰久の搭乗機であるギャプランから上記にある"Zガンダム"には乗り換えません。
あくまでもラーク・メカニクスとデュノア社の共同開発する予定のISが"Zガンダム"というだけなので、分かりにくい書き方をしてしまったみたいです。
このようなあとがきで申し上げる事態になってしまい、本当に申し訳ない。