IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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あんまり進展しません。
もう一人ぐらいオリキャラ登場かも。


変態紳士、介抱する

<夕方、IS学園保健室>

 

 

あの騒動の後、ラウラちゃんと一夏はすぐ保健室に搬送されメディカルチェックを受けることに。

一夏の方は何も問題がなかったらしいが、ラウラちゃんの方は全身打撲やらで衰弱しているらしく現在俺は彼女が寝かされているベットの隣で一人様子を見守っていた。

 

軍人上がりといってもやはり女の子であることには変わりない。

あんな禍々しい容姿にさせるのは変態紳士的に許せないし、何より女の子が苦しむ姿はさすがにストライクゾーン外である。

 

ちなみに先程の一夏のイケメンすぎる姿に惚れる生徒たちが続出し、今の今まで保健室に押しかけてきていたのだが千冬さんの計らい(物理)によりなんとか静かになっていた。

 

俺的にはすごい複雑である。

今まで空気だったし俺。

何なの、俺一応主人公だよ?

 

 

「……草薙、まだいたのか。お前ももう休んでいいぞ。試合やこいつらの看病で疲れたろう」

「はっはっは、女の子に尽くすのが変態紳士ですから。こんくらいで疲れているようじゃ、変態紳士を名乗れませんよ。……それに、あの時何もできませんでしたからね」

 

「そうか。ラウラと織斑の容態は? 」

「二人ともよく寝てます。一安心ですよ」

 

 

千冬さんはずいぶんと疲れているようで、柄にもなく俺に優しい言葉を投げかけてくれた。

それもそのはず、事態の収拾と対応に追われて彼女も参っているのだろう。

無論千冬さんだけではなくここの学園に所属する職員全員が慌てているとは思うが。

 

 

「……デュノアのメディカルチェックが今しがた終わってな。何も異常はないそうだ」

「お、そいつは良かった。今はもう寮の方に? 」

 

「あぁ。……すまない、お前達にこんなことをさせてしまって」

「いいんですよ。俺が好き好んでやってることですから」

 

"お前達に"、というのは気絶した一夏とラウラちゃんを保健室に俺や鈴ちゃん達が搬送したからであった。

どうやら彼女たちもこの場に残るつもりだったらしいが、女の子にそこまでさせるほど俺は落ちぶれちゃいない。

 

 

「……っ……こ、ここは……? 」

「おお! 起きたかラウラちゃん! 」

「……! 」

 

 

その時である。

俺の横で寝息を立てていたラウラちゃんが静かに瞼を開いたのだ。

思わず俺は立ち上がり、千冬さんも安心した表情を見せる。

 

「彰久、それに教官も……」

「よっ。具合はどうなんだ? 」

 

「あ、あぁ。まだ身体が重いが……とりあえずは大丈夫だ。それで、一体何が……? 」

「それは私が説明しよう。だがここからは最重要機密となる。この話は決して口外するな」

 

「は、はい」

 

 

ラウラちゃんがベッドから身体を起こすと、千冬さんに事の顛末を尋ねた。

彼女自身にもあまり記憶に残っていないようである。

確かにあんな全身装甲のISに形状変化したら気も失うだろう。

 

 

「"VTシステム"、それがお前のISから検出されたんだ。おそらくお前には秘密裏に設定されていた恐れがある。今しがたドイツ政府に問い合わせているから、もうすぐ返答が来るはずだろう」

 

「"ヴァルキリー・トレース・システム"……ですか。そんなものを埋め込まれているなんて事に気付けないとは、お恥ずかしい限りです」

 

「気にするな。あのシステムは、お前のISのダメージレベルが一定水準に達した時に強制的に発動したと見える。自分で止められることは不可能に近い」

 

ラウラちゃんの表情は沈んでいた。

先程の凛とした顔つきとは打って変わって、彼女は悔しさと悲しさに唇を噛みしめる。

……俺に、何かできることはないだろうか。

元気づけるために一子相伝の裸ネクタイ踊りでもいいが、さすがにそこまで俺も空気の読めない男ではない。

 

 

「私は、この事態の責任を以てIS学園を退学しようと考えています。短い間でしたが、ありがとうございました。教官のご指導を再び受けることができ、私は幸せ者です」

 

「……ラウラ・ボーデヴィッヒ! 座ったままでいい、私の質問に答えろ」

 

「い、イエスマム!? 」

 

なんと、ラウラちゃんは退学なんてことを考えていたのか。

今の会話を聞けば一概に彼女が悪いなんてことは言いたくもないが、ラウラちゃんは自分に責任があると思っていたようだ。

だがそんな彼女を千冬さんは一喝し、まるで昔を思い出させるように敬礼をさせる。

 

まあ退学なんてしようものなら胸でも揉んで……しまったら真っ先に千冬さんに殺されそうだな。

 

 

「お前は、何者だ? 」

「私が何者かですか。……わかりません」

 

 

「そうか。それでいい」

「えっ? 」

 

 

「自分が何者かを問われて、答えられる人間は早々いない。ましてやお前はまだ若い、時間は有り余るほどある。この学園に在籍する3年間でもいい、自分が何者なのか、なんの為に存在するのかを考えろ」

「……私は……」

 

 

"自分が何者なのか、何の為に存在するのかを考えろ"……ね。

一夏と戦うことだけを追求してきた彼女に、その言葉の威力は絶大だった。

俺の場合はきっと"世界中の美女とあんな事やこんな事をするため"に存在しているに違いない。

 

 

「それと、私はもうお前の"教官"ではない。この学園の生徒である以上、"織斑先生"だ。いいな? 」

「は、はい。きょうか……織斑先生」

「よろしい。じゃあ、また明日な」

 

 

今まで保健室の中に漂っていた沈黙は千冬さんが立ち上がることによって一蹴された。

俺にも別れを告げ、"くれぐれも変なことはするなよ"と念を押される。

変なことと聞いてラウラちゃんは首を傾げていた。

かわいい。

 

 

「すっかり教官の話で夢中になってしまったようだが……。今までずっとここにいてくれたみたいだな、彰久。すまない、お前には世話になりっぱなしだ。本当に……本当にすまない」

 

「いやぁ、ラウラちゃんが無事ならいいのよ。気にすんなって。それより、これからラウラちゃんはどうするんだい? まさかとは思うが、千冬さんの話を聞いてまだ退学なんて考えているなんてことはないよな? 」

 

「あぁ。あそこまで言われてしまっては、私も引かざるを得ないさ。しばらくは、自分の身の振り方というのを改めたい」

 

「それを聞いて安心した。さて、と。俺も戻るとしますか」

 

彼女も退学を取り消すと言ってくれたことだし、俺もそろそろ部屋に戻ろうと椅子から立ち上がる。

その時、急にラウラちゃんが俺に制服の袖を掴んだ。

 

美少女に袖を掴まれることなど変態紳士にとってはこの上ないご褒美だが、まさか夜這いでもしてほしいのだろうか。

いやもしそうだったらこの回で俺は男の階段を上ることに……!

 

 

「その……もしお前が、嫌じゃなかったら私と……」

「ま、まさか……!! 」

 

「友達に……ってなんでそんなに倒れ込んでいるんだ? 」

「あ、あはは……なんでもないよラウラちゃん……」

 

 

まあ分かってたけどさ。

完全に一夏の方に軍配が上がってるのは分かってたけどさ……。

やっぱ期待しちゃうじゃん?

俺変態紳士だし。

 

 

「ま、その件については快諾させて貰うよ。んじゃあな、"ラウラ"」

「あ、あぁ! また、明日」

 

 

出来るかぎりのイケメンフェイスを彼女に見せ、俺は保健室を出る。

やはり俺としても複雑だなぁ……。

友達だけではなくもっと距離を詰めたいんだが。

 

 

『安心したり落ち込んだり忙しいわね、彰久』

「ふっ、心が綺麗だと言ってほしいなエマさんよ」

 

『どこが綺麗なのよ。あなたのデリンジャーも心も汚いじゃない』

「なにーっ!? 俺のブルパップ式アサルトライフルのどこが汚いんだっつーの! いかに美しいかその目にしかと焼き付けろぉッ! 」

 

『なんでそんなにマニアックなのよ! いやっ、こんなとこでズボンを降ろさないでちょうだい!? 』

「あっ、この状態で黒焦げにされると社会的に死……ふぁますうぅぅぅぅぅッ!! 」

 

 

意味不明な断末魔を上げながら黒焦げになって廊下に伏す俺。

あぁ……社会的に死んだ……絶対通報される……もうダメだぁ、おしまいだぁ……。

そう思いつつ、俺はその後廊下を歩いてきた真耶先生に部屋へと連れてかれた。

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<夜、生徒会室>

 

 

夜の生徒会室で、ティーカップに入れられた紅茶を啜る女性が一人。

彼女は今、生徒会の書類を一通り片付けて休息をとっている最中である。

 

その書類の中から1枚の紙を彼女はファイルから取り出した。

彼女の名は"更識 楯無"。

 

このIS学園の2年生で、現生徒会の会長にあたる人物であった。

 

 

「草薙彰久……ね。近年稀に見るおバカさんだけど、なかなか面白そうじゃない? 」

 

 

幼さと妖艶さが合わさった美貌が微笑し、また楯無は自前の紅茶を啜る。

鮮やかな水色の髪が夜空に浮かぶ満月と妙に組み合わさり、揺れた。

 

 

 

 

"草薙彰久は一体どんな反応を見せてくれるのだろう"という期待が、楯無の胸の中に溢れかえっていた。





というわけで楯無さんがおそらく本格参戦です。
やべえよ、お姉さんとかモロ好みだよ。

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