さて、いよいよ1期の中盤です。
もうそろそろ戦闘シーンに突入したいかなって。
<寮部屋、ラウラ視点>
草薙彰久と別れた後に一人で夕食を取り、私は自分にあてがわれた部屋へと戻る。
誰にも話しかけられないまま部屋に辿り着き扉を開けると、そこには何かのキャラクターのぬいぐるみで溢れ返っていた。
「……な、なんだこれは? 」
「むにゃむにゃ……アイテムなぞ、使ってんじゃねぇぇぇぇ……」
「ずいぶん激しい寝言だな。おい、お前! 起きろ! 」
「う~ん~? どなた~? 」
黄色い着ぐるみ姿で眠る生徒を起こすと、彼女は目を擦りながらむくりと起き上がる。
さっきのIS実習の時もそうだったが、なぜ日本ではISを使用するにあたってそれなりの基礎訓練をしていないのだろうか。
言い方は悪いが、正直言ってぬる過ぎると私は思った。
「今日からお前のルームメイトになるラウラ・ボーデヴィッヒだ。お前の名は? 」
「あっ、ボーちゃんが一緒なんだ! わたしは布仏本音っていうんだ、よろしくねボーちゃん! 」
「あー、その、"ボーちゃん"というのは何だ? 」
「んー? "ボーデヴィッヒ"だから最初の頭文字を取って"ボーちゃん"だよー? 」
「そ、そうか。よろしくな布仏」
布仏のゆるい雰囲気に気圧されつつ、私は部屋へと入り日用品などが入った最低限の荷物を空いている方のベッドの側に置く。
彼女は横たわりながら私の方をじーっと見つめ、熊のぬいぐるみを抱きしめていた。
「ねぇ、ボーちゃん? 」
「なんだ? 」
「もしかして、何か悩み事? わたし相談に乗るよ? 」
「……そうだな、悩んでいると言えばそうかもしれない。こんな話を初日から知り合った布仏に言うのはどうかと思うが、聞いてくれるか? 」
「もちろん! わたしボーちゃんの力になりたいもん! 」
「そうか、ありがとう」
先程の雰囲気とは一変し、布仏は私が何か悩んでいる事を言い当ててみせる。
正直ここの同級生を見下していた部分があるが、今回限りで撤回しよう。
「今朝見たと思うが、私は織斑一夏が憎い。理由は言えない、だが私の人生を歩んでいく上で奴とのケリは必ず着けておかなければならないんだ。しかし、私には織斑一夏と戦う理由がない。それは私自身もよく理解しているし、何より学園生活を送っていく上で敵を作りたくはないんだ。私は一体……どうしたらいい? 」
「おりむーはいい人だよ。でも、ボーちゃんにも譲れない理由があるんだよね……。うーん……。こんな時あっきーがいてくれたらきっと名案を出してくれそうなんだけど……」
「……草薙彰久、か。そんな風には見えなかったがな」
「確かに普段のやる事はヘンタイさんだけど、あっきーは"俺は紳士だからな"って言って相談ごとになると一緒になって真剣に考えてくれるよ」
「そう、なのか……」
"けどいいのかねぇ? 軍人が民間人に手を出してさ。"
"一夏に復讐と題して攻撃でもしてみなよ、千冬さん悲しむ上に完膚なきまでに叩きのめされるかもよ?"
草薙彰久という名前を聞くと、先程あいつに言われた言葉が頭の中を駆け巡る。
確かに彼の言うことは理にかなっていた。
ISの技術を持っているとしても、相手は民間人。
ドイツの特殊部隊であり、なにより軍人である私が危害を加えるなどあってはならない事だ。
私は……。
「ボーちゃん? どうかしたの? 」
「……あぁ、すまない。考え込んでしまっていた。ありがとう、打ち明けただけでも楽になったよ」
「もう大丈夫なの? まだ相談したい事があったら言ってくれてもいいんだよ? 」
「心遣い感謝する。だいたいの答えは決まった」
「そっか、良かったぁ! またなんかあったら遠慮なく言ってよ、いつでも力になるからね~! 」
「ああ、そうさせてもらうよ」
決めた。
プライドなど全て捨てて、明日草薙彰久に相談を仰ぐことに。
軍人が民間人を傷つけることなどあってはならない、それが第一の理由だ。
それに、もう教官が悲しむ顔など見たくはない。
「ふぁ~ぁ……相談に乗ってたらまた眠くなっちゃったよ……おやすみ、ボーちゃん」
「おやすみ、布仏。……ありがとうな」
彼女との長い会話が終わると、再び布仏は掛け布団へと潜り込む。
僅か数秒で寝息を立てる姿には驚かせられたが、私もシャワーを浴びてから早めに寝ることにした。
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<翌日、彰久視点>
「それで、1日考えて俺に相談する事に決めたわけね」
「あぁ。お前にとっては都合のいい話かもしれんがな……。嫌なら断ってくれても構わない」
時は進み、翌日の昼休みである。
いきなりラウラちゃんに"聞いてほしいことがある"と言われて昼食を取りながら話を聞くことになったわけなのだが、昨日の態度とは一変して彼女は素直に俺に頭を下げてきたのだ。
冗談混じりで告白かを聞いてみると即答で否定されたのでちょっとテンションが下がったのは秘密。
どうやらラウラちゃんは表情には出さないものの精神的に参っているらしく、藁にもすがる思いで俺に相談してきてくれたのだろう。
これが普通の男子なら断る、だが俺は変態紳士だ。
女の子の相談を断る理由などない。
「もちろん乗るよ。ラウラちゃん、必死に考えて俺のとこに来てくれたんだろう? なら断るわけないさ」
「草薙……! ありがとう、本当にありがとう! 」
「気にしないでくれよ。報酬として今日の下着の色を教えてほしい」
「黒だ」
「いやっほう!!! 」
彼女の相談を快諾するとラウラちゃんは珍しく笑顔を俺に見せながら手を握った。
普段はクールな彼女がこんなに素敵な笑顔を見せるとは変態紳士の攻略欲が湧いてしまう。
あとまさか本当に下着の色を教えてくれるとは思わなかった、見かけによらず大胆な色を穿いているんだなラウラちゃんは。
「……喜んでいるところ悪いが、早速本題に入っていいか? 」
「あぁ、ごめんごめん。話してくれ」
「既に昨日の時点で気づいていると思うが、とある理由で私は織斑一夏が憎い。出来ることなら、奴と戦って決着を着けたい。だが、生憎お前に見透かされた通り私は軍人だ。ISを使用していると言えど織斑一夏は民間人、軍人が民間人に手をかけることなどあってはならない。私は一体どうしたらいいのだ……? 」
「君が一夏を憎む理由は? 納得できる理由が欲しい」
「それは……」
彼女の相談を聞く上で重要なのは"一夏を憎む理由"だ。
昨日一夏に聞いてみたのだが彼は身に覚えがないという。
ラウラちゃんは俺の質問に答えを渋っている。
「ドイツの最重要機密に触れることなので言えない部分があるが、大雑把に説明する。私が軍に入隊したての頃、教官としてあの織斑千冬が来たんだ。彼女の訓練は厳しいの一言に尽き、毎日死ぬ思いをしてな。だが訓練が終わると教官は私たちに優しい労いの言葉をかけてくれて、それだけで明日の訓練も乗り越えることが出来た」
「千冬さんが……そんなことを……」
「あぁ。訓練期間も終わり、教官は我々の軍を離れることになった。1年間という限定的な期間を指定されていたようでな、私達は反対したがそれも許さず教官は間もなくドイツを発った。なぜだかは分からないが、私も独自で教官のことを調べたんだ。そしたら、ある事実が判明した」
「事実? 」
初めて聞く千冬さんの過去に思わず俺は食いついていた。
あまり人の過去を聞くのは好まないのだが、まさか一夏と何か関係があるのだろうか。
「第二回モンド・グロッソ、これは世間には公表されていない事件だった。教官の弟である"織斑一夏"が誘拐され、教官は彼を救い出す為に決勝戦を棄権したんだ」
「……なんだと? まさか、一夏はそんな事一言も……」
「その時に我が国が独自の情報網を使って教官に織斑一夏の居場所を教えたみたいでな。その見返りにドイツで新人の育成を求めたようだ」
「なるほどな。だが原因はそのドイツ軍の人間じゃないのか? 」
「いや、もう既にその人間に関しては糾弾した。無論武力ではなく会議でな」
「じゃあなぜ一夏を? 」
「……私でもわからない。ただ、ケリを着けなければならない……そんな気がして」
ラウラちゃん自身でも自分の感情に抑制が出来ていないらしい。
頭では分かっていても、心がまだ否定している。
"織斑一夏を憎む"の忘れたら、きっと生きがいがなくなってしまうから。
「ラウラちゃん、敢えて言わせてもらうよ。一夏を憎むのは筋違いだ」
「……分かっている、分かっているんだ。ただ、どうしてもケリを着けたい。織斑一夏に、自分自身に」
「分かってるなら上出来。なら正式に戦える場所を探せばいい」
「正式に……? はっ、"学年別トーナメント"……」
「そういう事。だが、ラウラちゃんにはもう一つやるべき事がある。一夏に謝罪をした後、正式に学年別トーナメントで戦うことを申し込むんだ。それなら君も満足だし、一夏も理由に納得するはずだ」
「……! 」
ハッと驚いたように顔を上げ、彼女は俺を見つめる。
一夏には申し訳ないが、ラウラちゃんと戦うことを間接的にこじつけたようなものだ。
だが、困っている美少女を見捨てる程俺は生憎人間が出来ていない。
もし何か事件が起こったら全責任を負うつもりである。
「決まったな。とりあえず今後の方針は"一夏に学年別トーナメントで戦うことを申し込み、その理由を話す。そして昨日の事を謝る"ってことで」
「私はお前の事を誤解していたようだ。草薙、いや"彰久"。ありがとう、この恩は忘れない」
「礼には及ばないよ。下着の色を教えてもらったしな、グへへ」
「……前言撤回、お前はやっぱり変態だ」
「その台詞ボンテージ着てから俺の身体を踏んで言って欲しいぜ」
「機会があったらな」
「えっマジで!? やったー!! 」
呆れるようにため息をつくラウラちゃんに対して、俺は今の喜びをバク転で表す。
案の定着地に失敗して胸を強打したが、周りの女の子の注目を集めたので良しとしよう。
あ、今通った子のパンツ白だ。
「……また結果が分かったら報告する。じゃあな、今日はありがとう」
「ほいほい、楽しみにしてるよー」
制服についた埃を払いつつ立ち上がると、ラウラちゃんは俺に背を向けて歩き出していた。
だが昨日のような冷徹さは感じられず、むしろやっと感情が宿ったような気がする。
こうして、俺はラウラちゃんの懐柔に成功したのであった。
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<放課後、学生寮廊下>
5・6時間目の授業を終えた俺は、あらかじめ知らされてあったギャプランの修理に立ち会うことに。
真琴ちゃんの手によってほぼ完璧に修理されたギャプランは、再び俺の手に戻ってきたのである。
だが彼女の腕は本当に目を見張るものが多かった。
まだあまり構造が解明されていない可変機の修理を成し遂げてしまうのだから、改めて俺は真琴ちゃんの技術の高さを知ったのである。
あと作業するたびに揺れる彼女のマウンテンはいつかこの手中に収めたい。
「やあエマさん、久しぶりだね。俺がいなくて寂しかった? 」
『ええ、やはり持ち主がいないとAIも暇でね。まあ八神さんたちが良くしてくれたけど』
「ちぇー、もう泣きそうになってるかと思ってたのに」
『子供ではあるまいしそんな事はしないわ。それより彰久、整備されている間に本社から興味深い連絡が届いたわ』
「興味深い連絡? 何それ? 」
『どうやらギャプランの為の追加武装が開発されてるみたいなの。名称は"ロング・ブレード・ライフル"と言って、銃身に実体剣が装備されたビームライフルよ』
"ギャプラン"の待機状態であるベルトのバックルを腰に取り付けると、周囲にエマさんの声が響く。
既に人工知能が搭載されてあるのはここら辺の生徒には周知の事実であるので、こうして会話していても不信感を抱かれることはない。
しかしついにギャプランにも武装が追加されるとは。
一体どんな武器なのかは想像もつかないが、片桐さんたちのセンスに期待するとしよう。
「あ、いたいた! 彰久! 」
「おお、一夏か。どうした、そんなに慌てて? 」
「いやあ、どうやらお前らんとこのボディーソープを交換するのを用務員の人が忘れてたみたいでさ。俺は鍵持ってないし、彰久に渡しておこうと思ったんだ」
「ちょうど部屋に帰るとこだったしいいぜ。それと、今日ラウラちゃんに何か言われなかったか? 」
「よく分かったな、そうなんだよ。何するかと思ったらいきなり謝られてさ、"都合のいいことかもしれんが、学年別トーナメントで私と戦ってほしい"って言うんだ。タッグの申し込みだと思ってたんだけど、どうやら違くて相手になってほしいって意味だったんだよ」
「それで、お前はなんて返した? 」
「対戦で当たるかは分からないけど、もし戦うことになったら全力で挑ませてもらうって言った。向こうも承諾してくれたみたいで、何事もなくて良かったよ。あと、昨日の朝の件もお互いに忘れようってことになったんだ」
「そうかそうか! そいつは良かったな! 」
授業中に気になっていたラウラちゃんの事を一夏に尋ねると、どうやら彼女は上手く立ち回ったみたいだ。
本当に良かった、もし一夏が断ったりしたらどうしようかと思ったぜ。
彼の手からボディーソープの入ったピンク色の容器を受け取ると、俺は一夏に別れを告げる。
一夏も一夏で急ぎの用事があったみたいで、廊下を走り去っていった。
ポケットに入っている部屋の鍵を鍵穴に差し込み、扉を開ける。
シャルルくんは既に戻っているらしく、水の滴る音が聞こえることからシャワーを浴びているようだ。
「ま、まさかこれは俺を誘っているのか……!? ぐふふ、生憎俺はせっかちなんでな……。突撃隣のシャワールームだぜ! 」
『十中八九その可能性はないから安心しなさい』
エマさんの突っ込みを無視して俺は素早く自前のスニーキングスーツに着替え、先程のボディーソープの容器を手にシャワールームの扉付近に身を潜める。
むふふ……さあ、ショータイムだ!
「シャルルきゅーん!! 俺と一緒に風呂入ろう……ぜ……? 」
「えっ!? あ、ああああ彰久!? 」
『……やはりね、だから言ったのよ』
扉を開けるとそこには確かにシャルルくん、いやシャルル"ちゃん"がいたのである。
しかも裸の。
生のおっぱいとか初めて見て歓喜の声を上げたいが、生憎そういう雰囲気ではない。
お、落ち着いて板東英二を数えろ……。
〇東英二が一人、板〇英二が二人、板東〇二が三人……。
「ゆでたばごっ!! 」
「なにその意味不明な断末魔!? 」
板東英〇を数える度に俺の脳内は混乱し、先程の絶景もあってか大量の鼻血を出して俺は卒倒した。
ギャプランの追加武装は"ロング・ブレード・ライフル"で確定です。
一応フライルーの武装なのですがオリジナルとして素のギャプランでも装備させちゃおうって感じ。
あとこのロングブレードライフルにも独自の設定を導入したいと思います。
いうなれば近接武器としても利用可能というような感じでしょうか。