箒ちゃんはもう少し待っててくれ、次回辺りに出す。
<1年1組、1限目>
「きりーつ! 気を付け、礼! 」
始業を知らせるチャイムが鳴り響いた直後、千冬さんがこの1年1組へと入ってくると先程の休み時間とは全く違った静かな様子で彼女を迎えた。
「うむ、みんなおはよう」
「おはようございます! 」
それもそのはず、千冬さんは第一回IS世界大会「モンド・グロッソ」というので総合優勝を果たし最強の称号である「ブリュンヒルデ」の名が与えられた世界的に有名な人である。
その後色々あってIS学園の教師として赴任したらしいが、経緯を聞くのは野暮であろう。
しかしキャリアスーツ姿がとても似合っていてなんだか踏まれたい気分である。
「授業を始める、と言いたいところだがまずは再来週行われるクラス対抗戦の代表者を決める。草薙の編入によってうちは若干の遅れが出た為、早く決めなければならない。それとクラス代表者とは対抗戦の出場だけでなく、生徒会会議や委員会の出席など……まぁクラス長と考えて貰っていい」
あらま、俺の編入で遅れてしまったのね。
ただ覗きに行っただけなのに、こうにも女の子たちのスケジュールを潰してしまっては変態紳士の名が廃ってしまう。
後でみんなに詫びを入れに行こう。
土下座で。
「自薦・他薦は問わない。誰かいないか? 」
「むむむ……」
教室が唸る声で満たされて数分後、一人の女の子が手を上げる。
俺の席から右手前のオレンジ色ショートヘアの子である、かわいい。
「はい! 織斑くんを推薦します! 」
「えっ? 」
「私がそれがいいかと思います」
「え!? お、俺!? 」
そのオレンジの子に続いて黒髪で清楚そうな女の子もそれに同調した。
話題の当人は慌てている様子である。
(一夏よ、相変わらず君は猛威を振るってるようだな。くたばれファッキン)
まあ一夏だろうな、鈍感イケメンクソ(ryだし。
俺のように変態紳士を推す女の子などいないに決まっておろう。
「わ、私は草薙くんがいいと思います! 」
「よしそこの君、俺と結婚しよう」
「あたしも草薙くんかなぁー……」
「んじゃ君は後で俺の寮に来てくれ。一緒にらぶらぶちゅっちゅしよう」
「口を閉じないと私の出席簿が光って唸るが? 」
「俺が悪かったですからそのシャイニング出席簿をしまって下さい」
まさか俺にも推薦が来るとは思わなかったからつい求婚と口説きをしてしまったよ。
あ、そう思っているのは本当だよ? 俺は等しく愛す男だからな。
「結婚って……そんな……やめてよ……」
「は、恥ずかしい……」
俺を推薦してくれた女の子達は赤くなって俯いていた。
待って本当に可愛いから結婚してくれ(二回目)。
「……それで、他にはいないのか? いなければこの二人でクラス代表者を争う事になるが? 」
「ちょっと待って下さい! 俺はそんなの認め……」
「推薦してくれた女の子のため……」
「納得がいきませんわッ!! 」
気を取り直して再び推薦者を募ろうとした矢先、聞き覚えのあるかん高いな声が机を叩く音と共に聞こえる。
俺の台詞遮られたでござる……。
「そのような選出は認められません! 男がクラス代表者だなんていい恥晒しですわ! このセシリア・オルコットがそのような屈辱を味わえと仰るのですか? 」
「じゃあ俺去勢してきます」
「そ、そういう事を言っているのではありません!だいたい、文化としても後進的な国で暮らさなくてはならないのがわたくしにとっては耐え難い苦痛で……! 」
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一メシマズ国家で何年覇者だよ? つーか気候が曇りばっかでなんか暗いんだよコノヤロー」
「言っちゃった! この子言っちゃったよ! 」
一夏、何もそこまで言わなくてもいいだろうに。
いや確かにメシマズだけどそういうとこも結構萌えポイントにもなり得るのよ?
「はぁ……ここは変態紳士真拳"サンバでアミーゴ"を出すしか手だてはないか……」
あと去勢だけは否定させろ。
我が愛しいマイサンと俺を切り離すのは精神的にも身体的にも苦痛過ぎて"あたしってほんとバカ"状態になり兼ねない。
「なっ!? 美味しい料理はたくさんありますわ! あなた、わたくしの祖国を侮辱しますの!? 」
「先に侮辱したのはどっちだよ。俺だって生まれた国をバカにされて頭にきているんだ、言われる覚悟は少なくともあっただろ」
「ヘイヘイヘーイ! お二人さん熱くなるなよベイビー? ここは漢らしく、決闘で決めようじゃないか! アミーゴ! 」
「お前のノリがウザい」
なんだか険悪なムードになってきたので颯爽とポンチョとギターを取り出し睨み合う二人の間に割って入った。
一夏にはウザいと言われたが、なんとなくクラスみんなの表情が弛んだのは確認出来た為やった甲斐がある。
「ですが、決闘とはいい方法ですわ。あなた方に決闘を申し込みます! 」
「おう、いいぜ。四の五の言うより分かり易い」
「ふはは、いいですとも……って待って? 俺も入ってるの? ねぇ? 」
「わざと負けたりしたら、わたくしの小間使い……いいえ、奴隷にしますわよ? 」
「いやセシリア様の奴隷なら大歓迎ですけどなんで俺まで入ってるの? ねぇ? 聞いてる? 」
総スルーされる俺を見てニヤニヤしてるのか知らないけど、千冬さんこの二人を止めてくれ。
変態紳士にスルーは厳禁なのよ、ガラスのハートだからさぁ。
「構わない。正々堂々の勝負で行くぞ」
「どうぞ。あなた方がいつまで持つか見ものですけど」
「だから話聞いてって。おい聞けよ鈍感野郎と縦ロール女」
「誰が鈍感野郎だ! 」
「縦ロールで何が悪いんですの! 」
「なんでそこだけ聞いてんだよ! 都合悪すぎだよ! 」
地獄耳にも程があるレベルで俺に怒りの視線が集中する。
どうやら話のカタはついたようで、方法は"決闘"で決まりらしい。
「お、織斑先生ェ……こいつら人の話聞かない……」
そこで終始ニヤニヤして俺たちの様子を見ていた千冬さんが腕を腰に当てて話し始めた。
「話はまとまったな。それより勝負は来週の木曜、第三アリーナで行う。織斑、草薙、オルコットは各自準備を完璧にしておくように。いいな? 」
彼女の問いに仕方なく俺は頷き、二人も睨み合うことで肯定の意見を示す。
来週の木曜日だと試合まで1週間弱。
そんな一夏を心配そうに見つめるポニテ少女が一人いるのを、俺は見逃さなかった。
程なくして俺たちは席に着くよう真耶先生に促され、授業を開始する。
「まあ、やるしかないか……」
本当に、どうしてこうなった。
ちょっと早い区切りですがこの辺で。
箒ちゃん登場フラグを立てておきました。
セシリア様は一体どちらに懐柔されるんですかねぇ…(ゲス顔)
12/4-修正しました。