IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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前から書いておいたセシリアとのデート回です。
ムフフなイベントはありません。


変態紳士、博覧する

<翌日、世界IS博覧会開催地"幕〇メッセ">

 

 

 

 

そうして迎えた土曜日、俺は元々セシリアと約束していた"世界IS博覧会"を一緒に回るためにここ〇張メッセに来ている。

人生初のデートというわけでタキシードか袴か裸ネクタイで行こうか悩んだところ、「普通の私服にしてくれ。いや冗談抜きで」というマジトーンで箒ちゃんらに言われた。

 

気合いを入れる為にこういった衣装を用意しよう思ったのに……。

後であいつらには強制マリオパーティ50ターンの刑に処そう。

 

 

待ち合わせの時間より30分早く待っているのが紳士の務めだが、予想に反して眠れなかったりワクワクが押し寄せてきたので2時間前に到着した。

 

 

 

「おっ、来た来た。セシリアーっ! こっちこっちー! 」

 

 

やはり金髪でロールの巻いた優雅な髪型は人ごみに紛れても一際目立ち、制服ではなく私服を纏ったことにより一層彼女の美しさが引き出される。

ロングスカートとはまた覗き甲斐のあるものを穿いてきたようだ……。

後でこっそりと確認しよう。

 

 

セシリアに向かって手を振ると、彼女は笑顔で俺の方へと歩み寄ってくる。

同い年とは思えないほど、セシリアは大人びていた。

 

 

「お待たせしてしまったようですわね。ごめんなさい、彰久さん」

「いやいや、俺も今来たとこでさ。そこらへんにいるイケメンにガンダムファイト申し込んでたらいつの間にかセシリアがいて驚いたよ」

 

「理不尽ってレベルじゃありませんわソレ」

「意外にもノリがいい人が多くて助かったわ。普通なら通報されてるとこだった」

 

 

辺りを見回すと世界IS博覧会目当てでここに来ている人間も多く、企業の研究者、マスコミ関係者などの人物もこのイベントに招待されているようである。

 

「そういやセシリア、俺達って当日券で入るのか? 」

「いえ、イギリス政府から直々に特別な入場券を頂いていますの。これで他の方々とは違って招待者扱いになるので、スムーズに入場できますわ」

 

「政府直々に? やっぱり代表候補生ってすげえんだなぁ」

「ふふふ、そうでしょう? 頼み込んだらもう一枚頂けたのでこうしてお誘いしたわけですの」

 

 

頼み込んだらとは言いながらも本当は何か裏で手を引いている気がした。

おそらく「もう一枚くれないと脳天ぶち抜くゾ♥」とか言ってIS展開しながら言ったのであろう。

俺なら脳天じゃなくて股間をぶち抜いて下さいって言うけどな。

 

 

 

「そっか、ならあんまり急がずに行かなくて済むな。ぼちぼち行くとしますか」

「はい! 」

 

「……せ、セシリアさん? あの、そんな積極的にくっつかれるとさすがに俺も恥ずかしいんですが」

「あら? イギリスでは普通ですわよ? ほらほら、早くエスコートなさって! 」

「お、おう」

 

 

 

幕張〇ッセへと向かう人達につられて俺達も開催地へ歩き出そうしたその時、自然に彼女が俺の肩に抱き付いてきた。

トリートメントのいい香りと腕に幸せな柔らかい感触が俺の脳内を占め、珍しく赤面してしまう。

 

すまない弾……熊吉……。

俺はお前たちの誓いを破ってしまったようだ……。

お詫びとしてまた会った時に俺の秘蔵コレクションを差し上げよう……。

 

 

 

「ふふふ……チェルシーの考案した"お色気淑女作戦"の第一段階目は完了ですわね……」

「聞こえてる聞こえてる。それ心の声じゃなくて思いっきり言ってるから」

 

 

その後にちょっと怒られたのはさすがに理不尽だと思う。

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<世界IS博覧会会場内>

 

 

 

比較的早く会場に入ることができ、中では各国の政府ごとにブースが分かれて新作ISの展示をしていたり、ISに詳しくない人でも馴染みやすいアトラクションで来場客を楽しませていた。

 

セシリアは本当にIS自体が好きなのだろう、目を輝かせながら辺りのブースを回っている。

女の子が楽しそうな姿を見ていると本当に心が癒されるぜ……。

 

 

 

「あら? どうしましたの彰久さん? 」

「いやぁ、本当にISが好きなんだなって思ってさ」

 

「好きというか……。物心付く頃からISに関わっておりましたから、今更好きという感情はありませんの。なんて言ったらいいのでしょう、習慣みたいなものですかね」

「習慣、ねぇ。通りでISの操縦に慣れてるわけだ」

 

 

幼い頃から何か習い事を続けていると、それをやることが確かに習慣付くのは分かる気がする。

俺の小さい頃から綺麗なお姉さんや女の子をナンパしたりとかしていたせいで今のこの性格になった。

 

昔は受け入れられたのに年齢を重ねるごとにキモがられていくのはなんとも悲しい。

変態紳士の宿命なのだろうか。

 

 

 

「そういや、国自体が総力を上げてISを作っているとこもあるんだな。ずっとラーク・メカニクスとか倉持技研みたいに企業が作ってるのかと思ったよ」

「そうですわ。例えば、ドイツや中国といった国が代表的ですわね。あと、わたくしの故郷であるイギリスも入ります」

「へえ、さすが代表候補生。詳しいな」

 

 

 

セシリアと一緒に各ブースを回っていると、視界にドイツの黒い第三世代のISが目に飛び込んできた。

名前は"シュヴァルツェア・レーゲン"というなんともドイツらしい機体で、右肩部分に大きなカノン砲が収納されている。

 

その隣には実際にこの機体を動かした映像が大きなモニターから流れており、どうやらドイツ軍にも既に導入されているようだ。

隊長らしき眼帯を付けた銀髪の女の子が、多くの隊員を引き連れて空を滑空している。

 

 

 

「これらの国々のISはそれぞれ特徴が分かれておりますの。例えば中国の"甲龍"は、第三世代のISながらも燃費の向上に主軸を置いた機体で武装の威力が少し軽減されていますわ」

 

「なるほど、道理で一夏が鈴ちゃんの衝撃砲をあんなに食らっても――――うおっ!? 」

「うわぁっ!? 」

 

 

二人で話しながら次のブースへ向かおうとした時、俺が話に夢中になっていたせいか誰かとぶつかって転ばせてしまったようだ。

急いで俺は立ち上がり、転ばせてしまった人に手を差し伸べる。

 

 

「す、すみません! 俺の不注意で……! 」

「いえ、僕も見えてませんでしたから」

 

 

その人は差し出された俺の手を握り、埃を払いながら立ち上がった。

どうやら日本人ではなく、腰の辺りで結んでいる金髪がそれを表している。

スーツ姿に身を包んだ彼(と言ってもいいのかはわからない)は中性的な顔立ちをしており、俺より少し背が小さかった。

 

 

ま、まさか……彼が……。

 

 

 

「お、男の娘……? 幻だと思っていたが……」

「へっ? 」

 

「失礼しましたプリンス。私の名前は草薙彰久。貴方のお名前を伺っても? 」

「あ、えっと、し、シャルル・デュノアです。よろしく……? 」

 

 

 

彼の名前はシャルルくんというらしく、男の娘と分かった俺は咄嗟に彼の足元に跪いて手を握る。

少し顔を赤くして自己紹介を行うシャルルくんを見て、俺はここに来て良かったと改めて実感した。

 

つくづく神は変態紳士に味方してくれているようだ、アニメや薄い本でしか見る事の出来ない"男の娘"をこの場でお目にかかることができるとは……!

 

 

 

「ああなんて麗しい名前なんだ! さあシャルルくん、僕と一緒にこの会場を共に回ろうではな――――」

「あ~き~ひ~さ~さ~ん~? もしかしてわたくしを差し置いてこの方と一緒に会場を回ろうって考えているのかしら~? 」

 

「や、やだなぁセシリア様。そんなこと微塵も思っていませんわよ? 」

「あらそう? ならこちらへ行きましょ? 少しお話しがあるんですの」

 

 

シャルルくんと共にこの世界IS博覧会を回ることを目論んで彼の手を引くも、後ろから放たれる強烈なプレッシャーに視線を向ける。

そこにはセシリアが笑顔(ただし目は笑っていない)でこちらを向いており、なんだか黒いオーラみたいなものを纏っているように見えた。

 

 

「いやあぁぁぁぁ!! 離してぇぇぇぇ!! シャルルくぅぅぅぅぅぅぅんッ!!! 」

「あ、あはは……。ご愁傷さま……」

 

 

 

そのまま首根っこを掴まれてセシリアに引きずられながら、俺はシャルルくんに助けを求める。

だが彼は苦笑いしたままで、手を振りながらこの場を後にしてしまった。

 

あぁ……弾……。

すまない、俺はここで死ぬみたいだ……。

 

 

 

その後幕張メ〇セには男の悲鳴が響いたが、会場の騒がしさには勝てずにかき消されてしまう。

まだ響いてみんなに聞こえるならまだしも、かき消されるとなるとオチも締まらなくなってしまった。

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<同刻、シャルル視点>

 

 

 

 

草薙彰久がセシリア・オルコットに引きずられいくのを見送りながら、僕はデュノア社のブースへと急ぐ。

そうか……彼が世界で第二の男性IS操縦者なんだ……。

 

僕……いや"私"は、来週の月曜日に"男性"としてIS学園に転校することとなる。

織斑一夏と草薙彰久の極秘情報を盗み出すため、そしてデュノア社に再びマスコミの焦点が向くようにするために。

 

 

「見つけた……草薙彰久」

 

 

 

 

 

 

 

そう呟きながら僕は彼らの向かった方向を一瞥した。






というわけで次の展開に繋がるようにシャルの登場です。
次回は千冬さんが倍返しするかも。

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