今回から変態紳士のみならず他のキャラもタイトルで使ってこうかなと。
それと完全にタイトル詐欺です。
<夜、IS学園内保健室>
ゆっくりと目を開けると視界に入ってきたのは、見慣れた学園の天井であった。
それもどうやらいつも自分がお世話になっている保健室に俺は寝かされていたようである。
そっと身体を起こすと辺りは既に真っ暗で、俺が寝かされていたベッドに突っ伏して寝るセシリアの姿が視界に入った。
今まで俺の意識が戻るまでずっと保健室の中で待っていて疲れてしまったのだろう、彼女は寝息をたてながらぐっすりと眠っている。
セシリアを起こさないように彼女に毛布を掛けてからベッドから立ち上がると、一夏や鈴ちゃんも他のベッドで寝かされている事に気付く。
おそらくさっきの"角付き"と戦った生徒はメディカルチェックを受け、念のために保健室で安静にさせているのだろう。
一夏のベッドの側には箒ちゃんが、鈴ちゃんのベッドの側には本音ちゃんがそれぞれ眠っており、全員に気付かれないように保健室を出た。
ISスーツのまま寝かされていたようで、俺の腰の部分に"ギャプラン"のバックルがない事に気付く。
エマさんに聞きたい事があったのだが、これでは仕方ない。
「あ、草薙君! 」
「しーっ、あんま大きな声出さないで欲しいんだ。あいつら保健室で寝ててさ。悪いな清香ちゃん」
「う、ううん。こっちこそごめんね。もう草薙君は大丈夫なの? 」
「心配ご無用。ISの絶対防御のおかげでほとんど無傷だぜ」
「そっか……怪我とかしてなくて本当に良かった……」
出た直後に保健室へお見舞いに来たのであろう清香ちゃんと鉢合わせになり、大きな声を出しそうな彼女の口を思わず人差し指で塞いでしまった。
十分に外の声が聞こえる位置だったので、寝ている彼らを起こしてしまう可能性があったからである。
いいか、これっぽちもやましい気持ちなんてないぞ。
わざわざ心配して来てくれるなんて、変態紳士は感激した。
あとで熱い抱擁をプレゼントしよう。
「そうだ草薙君、さっき織斑先生たちが起きたら格納庫に来て欲しいって言ってたよ」
「先生たちが? 何の用だって? 」
「そこまでは聞いてないけど……」
「分かった、ありがとう。行ってみるよ」
そのまま清香ちゃんと別れ、俺は格納庫へと向かった。
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<IS学園、格納庫>
格納庫へ向かうと入り口には真耶先生が待ち構えており、まずは容態や怪我の心配をされた。
絶対防御のおかげでなんともないのであるが、一応答えておくのが礼儀というものだろう。
「草薙君の"ギャプラン"もこちらで預かっています。それを取りに来て貰うのと、織斑先生から何か話があるそうなので来てもらいました」
「千冬さんが……? 一体何のことですか? 」
「おそらく、"角付き"のことかと。私も実は、あの機体に見覚えがあるんです」
「真耶先生が? どこで見かけたんですか? 」
招かれるまま格納庫の扉の奥へと入り、真耶先生は教員のみの立ち入りが許される区域へと入っていった。
無論の事俺は歩みを止めるが、先生は構いもせずに俺をその区域内へと連れて行く。
その先には大きな昇降機が備えつけられており、慣れた手つきで真耶先生はそれを呼び出した。
「ラーク・メカニクスの研究室です。ほら、ギャプランの製作過程を見せに貰いに行った時に私が研究室を見学していたじゃないですか。その時にあの"角付き"の写真を見かけたんです」
「ラーク・メカニクスで? まさかそんな……いや、あり得るかもしれない」
「何か確証でもあるんですか? 草薙君? 」
「それは後ほど、ってことで」
ニヤリと口を吊り上げ、意地悪い笑顔を真耶先生に見せる。
そう、先程挙げたエマさんに聞きたいことというのはこの"角付き"に関しての事だった。
少ししたところで昇降機が到着し、俺達はそれに乗り込む。
大きな音を立てながら昇降機は下降し、千冬さんの待つ場所へと俺達を案内していった。
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<IS格納庫、最下層>
「まさか学園の地下にこんなとこがあるなんてな……。何これ? 生物兵器でも作ってんの? 」
「どこのバイ〇ハザードですか。まあタイラント辺りが出てきても織斑先生が出席簿で一刀両断しそうですけどね」
「なんでだろう、容易に想像できる」
千冬さんには失礼だが本当にタイラントを出席簿でやっつけてしまいそうな気がする。
だってこの前出席簿からビーム出たし。三〇無双の諸葛亮みたいに。
そんな話はさておき、最下層へと辿り着いた俺はその広さに正直驚いた。
一体このIS学園はどれだけの秘密を隠しているのだろうか。
研究室へと続く長い廊下を歩くこと約5分、千冬さんがいるという部屋に到着した俺達はその扉を軽くノックした。
直後入室を促す彼女の声が聞こえ、俺を扉を開けた。
「来たか、草薙。体調の方はどうだ? 怪我や痛む所はないか? 」
「ええ、大丈夫です。ISの絶対防御が防いでくれたみたいで、気絶はしましたが怪我はありませんよ」
「そうか。まあ、ひとまずはそこに掛けてくれ」
中に入るとそこは小さな一室で、机と椅子が一つずつあるという質素な作りの部屋である。
とりあえず挨拶を済ますと、千冬さんは俺を椅子へと座らせた。
すると彼女は待機状態の"ギャプラン"のバックルを机の上に置き、そしてその上に例の"角付き"のホログラムを展開する。
「ここに来て貰ったのは他でもない。うちを襲ったこの"角付き"ついて、お前に聞きたい事がある。このISに、何か見覚えはないか? 」
「見覚え、と言われても……。真耶先生がラーク・メカニクスの研究室でこいつの写真を見かけたという話ぐらいしかありませんね」
「……山田先生、本当ですか? 」
「はい。草薙君の"ギャプラン"の製作過程を一緒に見に行った時に、私はラーク・メカニクスの研究室を見させて頂いてたんです。そしたらそこにあの"角付き"の写真が……」
やはり"角付き"についての話で、椅子に座った俺にさっそく質問をする千冬さん。
今回の事件に関してはIS学園の職員も焦っている部分もあるのだろう、普段よりも鬼気迫った表情で真耶先生に詰め寄った。
「そうですか……ありがとうございます。草薙、他に何かあるか? 」
「あ、はい。ちょっとエマさんに"角付き"関連で聞きたいことがあるんで、"ギャプラン"を付けさせて貰ってもいいですか? 」
「構わん。今は出来るだけの情報が欲しいからな」
「んじゃお言葉に甘えて、っと」
千冬さんからの許しを得てから俺はギャプランのベルトを腰に付ける。
直後聞き覚えのある淑やかな女性の声が、この部屋に響いた。
『彰久! 意識が戻ったのね! 』
「ああ、おかげさまでな。それよりエマさん、聞きたいことがあるんだがいいか? 」
『聞きたい事? 構わないけれど……』
「俺が"角付き"と戦った時、やつの武装の名前を知っていたよな? どうしてだ? 」
『……それは……』
やはりか。
どうにも怪しいと思っていたが、エマさんは"角付き"に関して何かを知っているようだ。
彼女は言葉に詰まり、部屋の中は沈黙に包まれた。
『……ごめんなさい、皆さん。隠すつもりは無かったの。まさか"ヅダ"がIS学園に介入してくるなんて思いもしなくて』
「"ヅダ"? それが角付きの名前なのか? なぜここに来た? 」
『さすがにそれは分からないわ。けど、あのISはラーク・メカニクスが一番最初に開発した機体なの』
「えっ? でも、"ギャプラン"が一番先なんじゃ……」
観念したようにエマさんはこの場にいる全員に謝罪をし、千冬さんの質問に答えていく。
どうやら"角付き"の名前は"ヅダ"というらしく、しかもラーク・メカニクス社製のISだというのだ。
片桐さんには"ギャプラン"が最初に開発したISだと聞いたが……?
『それはあくまで実用化に成功した、という意味でよ。過去に何機か製造を行ったらしいけど、全て競争に負けて実用化は失敗しているわ』
「……なるほど。草薙、ラーク・メカニクス社と連絡はとれるか? 」
「あ、はい。一応技術顧問の人にはとれると思いますけど……」
「ならそれでいい。明後日の日曜日、ラーク・メカニクスに行くぞ。そこの社長に徹底的に尋問してやる」
「あ、あの……織斑先生? もしかしてすごーく怒ってます? 」
「ええ。今日の私は阿修羅すら凌駕する存在です」
「ら、乱暴はやめて下さいね!? さすがに暴力はまずいですよ……? 」
「大丈夫です。ちょっとO☆HA☆NA☆SI☆するだけですから」
質問の答えが返ってくると千冬さんは俺と一緒にラーク・メカニクス本社へ行く旨を告げ、立ち上がった。
どうやらカンカンに怒っているらしく、真耶先生の天使みたいな困り顔を見ても全然動じていない。
顔は分からないがラーク・メカニクスの社長さん、今すぐ逃げてくれ。
地下シェルター辺りがいいと思う。
『……ブリュンヒルデを怒らせてしまったようね』
「みたいだな。社長さん五体満足で帰れるだろうか……」
「よし、これで話は終わりだ。付き合わせてすまなかったな、草薙」
「いやあそんな。起きたてに美しいお二人の顔を見れただけで幸せですよ」
もう帰っていいぞ、と言わんばかりに千冬さんは再びいつもの仏頂面に戻り、俺に詫びを入れる。
起きて早々に二人を口説いてみせるが、少し笑われただけでピクリとも動じない。
相変わらずガードが固いな、いつになったら年上のお姉さんとキャッキャウフフ出来る日が来るのだろうか。
多分一生来ない。
「そうだ、言い忘れていたがお前は1週間IS使用禁止だ。観客席でISを展開してそのままシールドを壊してアリーナへ入っていく奴があるか」
「なぬっ!? あ、あの時は非常事態じゃ……! 」
「校則は校則だ。ギャプランのダメージも蓄積されているし、整備に出しておけ。丁度いい機会だろう」
「そ、そんなぁ~」
部屋から出ようとした瞬間、千冬さんが忘れていたようにIS使用禁止の旨を俺に告げる。
確かに"ヅダ"の自爆を防いだ時にシールドが半壊してしまったので、日曜日に片桐さんへ伝えておくか。
「……これは独り言だ。凰を、一夏を助けてくれた事感謝している。お前がいなければ、もっと大変な事態に陥っていたかもしれない。ありがとう」
「……それじゃ、失礼します」
珍しい千冬さんのデレをイケメンフェイスで応えつつ、俺は部屋を出た。
彼女も相当不安だったのだろう、千冬さんが安心できれば1週間IS使用禁止なんて安いものである。
「千冬さんのデレだぁぁぁぁぁぁ!! うおぉぉぉぉぉぉ!! 」
「丸聞こえだ馬鹿者」
その後シバかれたのは言うまでもない。
千冬さんはツン30%、デレ5%、ブラコン65%でお送りしてます。
シスコンの描写は後ほど。