ヅダさんの戦闘シーンです。
オラワクワクすっぞ!
<観客席、彰久視点>
割れるような轟音がアリーナ内に鳴り響き、一夏と鈴ちゃんの試合を観戦していた俺達は一斉に身構えた。
一体何が起こったのか把握出来てないまま、俺は周囲を見回す。
「な、なんやあれ! あいつなんでアリーナにおんのや!? 」
「一体何者ですの……? 」
セシリアと真琴ちゃんが何かを発見したようで、その場にいた全員が彼女たちの指差した方向に目を向けた。
その先には全身を水色の装甲で覆われたISが長大なライフルを肩に担ぎ、一夏達を見据えている姿が見える。
異様な雰囲気に、誰しもが息を呑んでいた。
『アリーナのシールドが破られた!! 全員退避しろ!! 』
その時、観客席に千冬さんの怒声が響き渡り、他の場所で観戦していた生徒達が一気にパニックへと陥る。
観客席にいた先生のおかげでなんとか落ち着きを取り戻して出口に向かってはいるが、試合を行なっていた一夏たちはどうなるのだろうか。
……いや、もう答えは決まってるよな。
「セシリア、他の先生達を呼んできてくれ。真琴ちゃん、1組のみんなの誘導を頼む。本音ちゃんは織斑先生のところへ行ってほしい」
「わ、わかりましたけど……。彰久さんはどうするおつもりで? 」
「俺は……あいつと戦う。一夏たちを助けなきゃ」
「そ、そんな! 無茶や! アリーナのシールドを破ってきた奴なんやで!? 絶対危険に決まってる! 」
「そうだよ! 下手したらあっきー死んじゃうよ!? 」
「危険すぎます! 先生方の制圧を待つべきですわ! 」
例の"角付き"と戦うのを引き受けようとすると、案の定側にいた3人から猛反対を受ける。
だがどんな美少女たちのお願いでもこれは引き下がる事は出来ない。
唯一無二の友達が、危険な目に遭っているのだ。
男として、何より紳士として絶対に逃げるわけにはいかない。
「いくらみんなの要望でも、それは頷けない。あいつらも危険な目に遭ってるのは同じことだ」
「そ、それは……そうやけど……」
俺の明確な意思により、彼女たちの意見は揺れ動いているようだ。
しかしセシリア達の言い分も分かる、わざわざ危険を犯すような真似をする者を見捨てていくなんて事は出来ないのであろう。
その時である、アリーナ内にいた"角付き"が一夏達に攻撃を加えるのが観客席側からでも見えた。
もう、選択の時は迫っている。
「エマさん、ギャプランのビーム照射でアリーナのシールドは破れそうか? 」
『破れるとは思うけど……。片方のライフルで約5発分のエネルギーを消費するわ。かなり苦戦を強いられそうだけど、いけるかしら? 』
「なら上出来、半分も余ってるなら戦える。頼んだぞ、みんな」
これ以上、返答を待っている時間など俺には存在しない。
急いでギャプランを展開させた後、両腕のシールドビームライフルをアリーナのシールドに向けた。
「……彰久さん、御武運を」
「まっ、待ってよせっしー!? 」
「彰久、約束や。必ず、帰ってくるって」
「任せとけ! なんたって俺は、"変態紳士"だからな! 」
出来る限りのイケメンフェイスを彼女たちへと向けると、それを合図に一斉にセシリア達は走り出す。
決まったぜ……これで少なくとも2人は惚れたはずだ。
「んじゃ……行くとしますか! 」
『ムーバブル・シールド・バインダー、エネルギー充填。パワーケーブル、高容量ドライブに接続開始』
エマさんによる幾多もの処理がギャプランのOSで行われ、俺の目の前の画面にはシールドビームライフルにエネルギーが溜まっていく様子が映し出される。
『ライフルシステム、照射型へ移行。今よ彰久! 撃てるわ! 』
「狙い撃つぜぇぇぇぇぇッ!!! 」
咄嗟に浮かんだ掛け声と共に通常のビームより太い光がシールドビームライフルの先から放たれ、アリーナのシールドに直撃した。
凄まじい轟音と衝撃に思わずたじろいだが、構わず俺は照射を続ける。
その時、ガラスの割れるような音が鳴り響き、直感的に俺は照射を止めて戦闘機形態へと移行した。
進む先にはアリーナ内へ続く穴が空いており、出力を最大限に引き出しつつ急いでその穴へと向かう。
『シールドが再生するまでおよそ10秒! 急いで! 今しかタイミングはないわ! 』
「ぬおぉぉぉぉぉぉ!? 」
既に再生しかけている穴へと突っ込み、壁にぶつかる感触がないことから俺はアリーナ内へと突入出来たことを悟った。
しかし先程の轟音は"角付き"にも捉えられているはず、ならば先制攻撃が最善策と言えよう。
「颯爽登場ッ!! 変態紳士ッ!!! 」
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<アリーナ内、彰久視点>
変形した状態で"角付き"との距離を一気に詰め、先に攻撃される前に奴の眼前で人型へと変形して顔面に膝蹴りをお見舞いした。
右足の膝の関節から激痛が走るが、構わず俺はもう一撃加えようと左手にビームサーベルを展開させ、横殴りに薙ぎ払う。
しかしビームサーベルが捉えたのは虚空、"角付き"は一歩後ろに後退してマシンガンを俺に向けていた。
ある程度離れてはいるものの、この距離では確実に銃弾を浴びる羽目になってしまう。
咄嗟に右腕のシールドビームライフルを盾として構え、防御の体制をとった。
直後、軽い発砲音と共に銃弾が吐き出されその衝撃が右腕のシールドビームライフルに全てのしかかる。
今は耐えられるだろうが、いずれはこの体制を解かなければ防戦一方だ――――。
「龍咆っ! 」
その時、見覚えのあるツインテールと赤い羽を携えた鈴ちゃんが"角付き"へと衝撃砲を放ち、攻撃の雨を止ませる。
"角付き"は敢えてその衝撃砲を食らい、地面へと落下した状況で先程の長大なライフルを彼女に向けた。
「鈴ッ!! 」
「きゃあっ!? 」
弾速が速いが、間一髪のところで一夏が鈴ちゃんを抱きかかえて弾丸を回避する。
しかしこのままでは埒が開かない。
何か打開策は……?
「ち、ちょっと!? どこ触ってんのよアンタ!! 」
「そんなこと言ってる場合か! もうすぐで離すから! 」
一方、一夏に抱きかかえられたままの鈴ちゃんはこんな土壇場でもラブコメを繰り広げていた。
マイペースなのかは知らないが、後ろには"角付き"が彼らを追っている。
「させるかよ、っと! 」
奴の動きを妨害するようにシールドビームライフルを放ち、間髪を入れずに戦闘機形態へ変形して"角付き"へと急接近した。
そのまま空中変形によって人型へと戻り、急接近した勢いで右手にビームサーベルを展開させる。
直後、"角付き"は斧のような近接武器を展開し、ビームサーベルと鍔競り合った。
すぐに左手にもう一本のビームサーベルを展開、今度は縦に振り下ろす。
だが奴は既に右手のビームサーベルを弾き返し、素早く俺の懐へ入り込んできていた。
「ごは……ッ!? 」
腹部に強い衝撃が走り、肺にあった酸素が強制的に吐き出される。
"角付き"は左肩に装着していたクロー付きのシールドを利用して、俺の腹を殴ったらしい。
ここで引き下がると、今度は一夏達に視線が向くはず。
そしておそらく、奴の狙いは一夏だ。
やらせるわけにはいかない……。
本能的に再び戦闘機形態へと変形し、敢えて両腕のシールドビームライフルを"角付き"へ向けて放った。
当たりはしなかったものの、その攻撃を挑発と捉えたのか"角付き"はマシンガンを展開させ、俺との距離を詰めようとしてくる。
よし、これでいい。
「エマさん、プライベートチャンネルを開ける状況じゃないから一夏達に伝言を頼む。"最後は任せた"ってな」
『……了解。私も出来るだけサポートするわ』
逃げるようにして背を向けた俺は、背後に"角付き"がいることを確認した。
今は俺しか見えていない。
「くっそ! このままじゃ彰久が! 」
「……何か方法はないの……!? 」
『彰久から伝言よ、二人とも。"最後は任せた"ですって』
「最後は任せたって……。 あいつ、一人で"角付き"を請け負うつもり!? 」
「……いや、違う。彰久が無策で相手に突っ込むはずがない……」
人型の状態で戦闘機形態であるギャプランとドッグファイトを繰り広げる"角付き"。
おそらく、奴は相当な速さを持っているはずだ。
追撃としてマシンガンの弾丸が俺に殺到するが、旋回や減速することによって比較的被弾率は下がっている。
だが、反撃は出来ない。
もうシールドビームライフルのエネルギーが両腕合わせてあと2発分しか残っていないからだ。
左右一発ずつしか残弾はない。
「……そうか! 鈴、俺に向かってさっきの"龍咆"ってやつを最大出力で撃ってくれ! 」
「はあ!? アンタ狂ったの!? 」
「いいから! 俺の言うタイミングに合わせてくれ! 」
「ああもう! どうなっても知らないわよ!! 」
そうして逃げ続けている内に奴も弾が切れたのか、突然銃弾の雨が止んだ。
絶好のチャンスと踏んだ俺は、ギャプランの速度を急激に落として人型へと変形する。
かなり無茶な変形で俺の身体にとてつもない圧力がかかるが、構わず人型の状態で後ろを振り向いた。
『彰久!! ダメ、"対艦ライフルよ"!! 』
「なっ……!? 」
そう、"角付き"は俺が振り向く事を予測して敢えてマシンガンを量子化し、振り向いたところであの長大なライフルを構えていたのである。
しかも奴の方が"対艦ライフル"の展開が早く、もう発射の準備は完了しているようだ。
一方俺は無理な空中変形の後にシールドビームライフルを構えたので、多少のラグが存在している。
そうだ、それでいい。
直後俺の身体に"対艦ライフル"の弾丸が突き刺さり、半分以上のシールドエネルギーが削られていく。
だが奴は忘れている、"織斑一夏"の存在を。
弾丸が直撃した衝撃が抑えられず、俺は後方へと吹っ飛ばされると同時に一夏がその上空を駆けていた。
"零落白夜"を展開して。
あの長大な"対艦ライフル"を発射するとなると大きな反動と隙が生じるはずだ、そこを一撃必殺の刃である"零落白夜"で仕留めるという狙いだった。
「ここから……ここから……ッ!! 出て行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!! 」
瞬時加速も交えた"零落白夜"、おそらくは人型の状態でかなりの速度であるだろう。
それも、反応しにくい程の。
直後"角付き"は一夏によって横一線に斬り捨てられ、大きなクレーターを作りながら地面へと落下した。
俺も大きく吹っ飛ばされたものの、なんとか着陸して座り込む。
「へ、へへへ……。なんとかなったな」
「彰久! 大丈夫か!? 」
既にアリーナ内は先生方に包囲されたらしく、周りには"ラファール・リヴァイヴ"を纏った他の先生の姿が幾つも確認出来た。
その中にはセシリアも"ブルー・ティアーズ"を展開した状態で混じっており、見事に役目を果たしてくれたようである。
「おう、一応大丈夫。絶対防御が上手く機能してくれたみたいだ」
「そっか……。安心したよ」
座り込む俺に一夏が手を差し伸べ、彼の腕を借りながら再び立ち上がった。
ISの手で互いにハイタッチすると、鈴ちゃんも近づいてきている。
しかし、俺達はまだ気づいていなかった。
"角付き"の本当の恐ろしさを。
「彰久さん、一夏さん!! まだ動いていますわ!! 」
「何!? 確かに"零落白夜"は当てたぞ!? 」
セシリアの警告により、後ろを振り返ると何も展開していない"角付き"が俺達へと突進してきている。
周囲の先生方が奴に向けて一斉射撃を行うが、それでも止まる様子はない。
俺達との距離が近づいていく度に足の装甲や肩部のパーツが崩壊していき、最後は上半身のみとなった状態でも未だに突進を止めない。
この間僅か約5秒、いきなりすぎる出来事で狙われている一夏は立ち尽くしたままだ。
「どいてろ!! 一夏ッ!!! 」
「なっ、秋――――」
咄嗟に立ち尽くす一夏を突き飛ばし、身代わりとして俺が"角付き"の自爆を食らう。
爆風がアリーナ内を包み、煙が晴れる頃には俺の意識は途切れていた。
というわけでここまで。
試験週間なのになぜ投稿したっていう質問は駄目です☆