IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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というわけで今回は鈴ちゃん戦。
久々の戦闘シーンでテンション上がってきた。


推参せし赤き龍

<クラス対抗戦当日、ピット内>

 

 

 

 

 

そして、1週間の月日が流れた。

ある者はこの日の為に必死に特訓し、ある者はこの日に片想いの相手と約束を取り付け、ある者は女子更衣室を覗こうとしてケツを竹刀でフルスイング――――。

 

 

 

というわけで俺はまだ痛いケツを抑えつつも鈴ちゃんの専用機が待機しているピットへと歩みを進めている。

 

女子更衣室を覗こうとしたのは三日前のこと、ほとばしる熱いパトスで思い出(黒歴史)を裏切った俺は黒いプラグスーツを着込んで潜入した。

 

しかしまぁ、世界最強と謳われる女性がいるのでバレるのは確実。

2時間のお説教の後罰として竹刀ケツバットを食らってしまい、今に至る。

 

 

あの威力は思い出すだけでも身震いがする……。

思わずMに目覚めそうなほどの痛さだった。

 

 

 

 

「お、いたいた。鈴ちゃーん」

 

「あ、学園内でガキ使のアウトテロップが流れた彰久じゃない」

 

「あれは俺でもビックリしたよ。主に著作権的な意味で」

 

「1組と2組が爆笑に包まれたけどね」

 

 

ふむ、そんなに大勢の女の子を笑顔に出来たのなら万々歳だろう。

代わりに俺のケツが犠牲となったが。

 

既に鈴ちゃんはピンク色のISスーツ姿であり、クラス対抗戦に備えて準備を行なっているところであった。

先に一夏の方にも挨拶を済ませておいたが、あいつとは違って随分とリラックスしている。

 

 

 

 

「……そういや鈴ちゃん、一夏との約束は? 」

「大丈夫よ、セシリアのおかげでばっちり約束できたわ」

 

「そりゃ良かった。正直昼ドラモードセシリアだと心配だったんだわ」

「普段の言動とは恐ろしくハイテンションだったからね……。あたしも驚いた」

 

 

 

 

そうかそうか、一夏との約束は無事取り付けたらしく鈴ちゃんもご満悦の様子。

またあの唐変木フラグ建築士が何かやらかさないか心配だったが、セシリアの助力もあって成功したという。

 

ちなみに"昼ドラモードセシリア"とは画風が少女漫画のようになり、彼女の感情の起伏がより激しさを増す状態の事だ。

 

 

 

 

「おっと、そろそろ時間みたいだな。そんじゃ鈴ちゃん、頑張れよ。俺も観客席から見させて貰うからさ」

 

「ふふふ、あたしの強さに驚いても知らないわよ? 」

 

「オッケー、期待しとく」

 

 

 

アナウンスが試合開始間近だと学園内の全員に知らせると、彼女は颯爽と自身の専用機"甲龍"を展開した。

 

 

即座に赤みがかった黒の二枚羽が鈴ちゃんの背中から生え、肩と腕の部分には何か丸い兵器のようなものが取り付けられている。

 

あれもISの武器なのだろうか……後で真琴ちゃんに聞いてみよう。

 

 

 

 

「凰 鈴音、甲龍、出るわよ! 」

 

 

 

 

カッコつけながらカタパルトにいた彼女は、元気にそう言い放つ。

もうそこに、鈴ちゃんの姿はなかった。

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<アリーナ内、一夏視点>

 

 

 

 

 

全校生徒の歓声に包まれた俺は、緊張に縛られている身体を引き締める。

俺はクラスの代表者の座にいるのだ、セシリアから譲って貰った重要な座に。

 

 

先にISを展開して対戦相手である鈴を待っていると、赤黒い羽を背中に携えた彼女の姿が視界に入ってきた。

あれが鈴のIS……。

 

 

 

「……ねえ、一夏。昨日の約束、覚えてるよね? 」

「ああ、"勝った方が負けた方になんでも言うこと聞かせられる"ってやつだろ? 」

 

「良かった、この間みたいに忘れたりしてないのね」

「うっ……。それは悪かったって……」

 

 

 

彼女に向けて手を合わせ謝ると、アリーナに試合開始を告げるブザーが鳴り響いた。

 

 

気を取り直して俺は全身を引き締めると、おそらく鈴のISの武装なのであろう大きな刀を握る彼女の姿が視界に入る。

それにつられて俺も右手に"雪片弐型"を展開させると、戦う合図と捉えたのか鈴がいきなり俺の眼前へと距離を詰めていた。

 

 

だがこの1週間、何もしていないわけではない。

彰久やセシリア、箒や千冬姉に訓練を付き合って貰った。

 

もう、負けるわけにはいかない。

他のみんなの為にも、自分自身の為にも。

 

 

 

俺は"雪片弐型"で眼前に迫る鈴の刀"双天牙月"を間一髪のところで受け止め、弾き返したのちに彼女との距離を取る。

意地悪そうに頬を吊り上げた鈴は、手にしていた"双天牙月"を回転させて遊んでいた。

 

 

「ッ! 」

「へぇ、初撃を防ぐなんてやるじゃない? なら――――」

 

 

 

 

そう鈴が身構えると、空いていた左手にも"双天牙月"が展開される。

二刀流となった彼女は、トップスピードで再び俺に斬りかかってきた。

 

 

 

「でやぁぁぁぁッ!! 」

「うぉぉぉッ! 」

 

 

 

繰り出された"双天牙月"と"雪片弐型"が鍔競り合い、辺りを火花が舞う。

 

相手は二本の近接武器に対して俺は一本……。

やはり単純な武装数の差、それにIS技術での差が現在の劣勢を生み出しているようだ。

 

 

 

「ちぃッ! 」

「どうしたの!? 防ぐだけじゃ勝てないわよ、っと! 」

 

 

 

威勢のいい掛け声の共に二本の"双天牙月"が振り下ろされる。

今だ。

 

"二本の武器を使用した時"こそ、二刀流の隙は生じる。

 

 

「もらったぁッ!! 」

「きゃっ!? 」

 

 

俺は振り下ろされた二本の刀を"雪片弐型"の刃で受け流し、瞬時に鈴の懐へと入り込んだ。

咄嗟に"雪片弐型"を振り上げると、彼女の身体に刃が命中しシールドエネルギーを減少させる。

 

これも箒の特訓のおかげだな、後でお礼を言いに行こう。

 

 

 

その後追撃として再び鈴との距離を詰めるが、彼女の背中の羽に付いていた球体状のユニットから「何か」が撃ち出され、俺の腹部に命中した。

 

 

 

「ぐっ……!? な、なんだ今の!? 」

 

 

驚きつつも体制を立て直し、俺は周囲を見回す。

依然として、鈴はニヤリと笑ったままだ。

 

 

再び羽から「何か」が放たれ、衝撃が右腕を襲う。

あの球体が光る度に"白式"のシールドエネルギーは削られ、次第に焦りが滲んだ。

 

 

 

 

(どう対処する……? あの"見えない弾丸"を避けるのは至難の技だ……)

 

 

シールドエネルギーをこれ以上減らさせるわけにもいかない、ならば動いて対策を講じるのが最善だろう。

そう考えた俺は逃げるようにして鈴から距離を取った。

 

 

「逃がさないわよッ! 」

 

 

 

無論のこと彼女は逃げる俺を追いかけ、あの球体から攻撃を仕掛けてくる。

どうにかして対策を講じなければ、俺に勝ち目はない。

 

 

クソッ、どうすればいいんだ……!

 

 

 

 

立て続けに放たれる"見えない弾丸"をなんとか捌きつつ、俺は必死に対抗策を練っていた。

上空高くへ飛び上がったり、地面をホバー走行したりと縦横無尽にアリーナを駆け巡る。

 

 

 

"見えない弾丸"は俺のシールドエネルギーを削らんと殺到し、俺を追うように地面に着弾し土煙を上げた。

ん……? 待てよ、"土煙が上がった"……?

 

 

 

「ほらほら! 逃げてるだけじゃ勝負にならないわよ! 」

「……ああ。そうだな、俺もそう思うぜッ!! 」

 

 

 

彼女は今俺に"見えない弾丸"を当てることに夢中だ。

なら、それを俺は"利用する"だけ。

 

今度は鈴に背を向けて地面へと俺はブーストを吹かす。

何を血迷ったかと勘違いされそうだが、今はそんなことどうでもいい。

 

あの"見えない弾丸"が"衝撃を撃ち出している"ものなら、少なからず俺に勝機はある。

 

 

地面に足を着き防御の体制をとると、案の定鈴はこちらに"衝撃砲"を撃ち出してきた。

読み通り、これで「土煙」があがる。

 

 

 

「しまった、これじゃあいつの姿が……! 」

 

 

 

 

地面に"衝撃砲"が着弾した結果、俺の身体を丸ごと包み込むように土煙が周囲を舞った。

そして今、彼女は俺の姿を見失っている。

 

この時を、この瞬間を待っていた。

"衝撃砲を利用して視界を奪う"時を。

 

 

すかさず俺は白式の単一仕様能力である"零落白夜"を起動させ、抜刀のような構えをとる。

 

 

「まさか……一夏はこれを、あたしの視界を奪うことが狙いだったの!? 」

「この瞬間を、待っていたんだぁぁぁぁぁッ!! 」

 

 

 

だが鈴が気付く頃には、既に瞬時加速によって俺は彼女の眼前に"雪片弐型"を振りかざしていた。

 

これには「バリアー無効化攻撃」という能力が備わっていて、対象のバリアーを無視した攻撃を行い、強制的に絶対防御を起動させるという一撃必殺の剣である。

 

 

驚愕に満ちた鈴の表情を一瞥し、そのまま"雪片弐型"を振り下ろそうとしたその瞬間。

 

 

 

 

何かが割れるような轟音がアリーナに鳴り響き、その場にいた全員の緊張を高めた。

大きな衝撃と爆発音がアリーナを包み、土煙が上がる。

 

煙が晴れると、その中には全身を水色の装甲で包んだ正体不明のISが視界に入った。

 

頭部には立派な角が生えており、左肩には大きなミサイル付きの盾が搭載されている。

 

 

 

「な、なんだよ? あいつ……」

「わ、わかんない……。けどあいつ、アリーナのシールドを破って来たよね? 」

 

 

 

独特な音と共に水色の頭部からピンク色のモノアイが起動し、俺たちを捉えた。

 

 

 

その目はまるで俺たちを獲物と捉えているかのように。

 






今回はここまで。
いよいよヅダさんの武力介入開始です。

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