IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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ずいぶんの間更新できませんでした。
風邪を引いてたんです、勘弁してくれると有難いです。


変態紳士、突撃する

<休日、IS学園校門前>

 

 

 

 

さてさて時は進み土曜日。

 

苦しい授業を乗り越え休日を迎えた俺は密かに一夏と遊ぶ約束をこじ付け、幾多の女子からのお誘い(妄想)をくぐり抜けながらこの校門へとやって来ていた。

 

 

あの後一夏は箒ちゃんらと見事に和解をしてみせたのだが、試合で見せた彼の勇姿が影響して余計に一夏がクラスで人気が高くなってしまい、正直変態紳士としては複雑な心境である。

 

 

 

「悪い悪い、待たせたな彰久」

「あたしも今来たとこだよ一夏きゅん! 」

 

 

「…………」

「おいマジで引くなよ。冗談だよ。察しろよ」

 

 

 

 

 

校舎から私服姿の一夏が息を切らしながら走ってきたのを見て、腰をクネクネさせつつ彼を出迎えた。

 

案の定血の気が引いた顔とゴミを見るような目でこちらを一瞥し、すかさず俺は弁解する。

一度言ってみたかったんだよ察しろ。

 

 

とは言いつつも俺の全身に鳥肌が駆け巡っているのは言わずもがな、野郎に甘い声なぞ変態紳士にとって御法度だ。

 

 

 

 

 

「つーか遅いんだよお前。今まで何してた? ナニしてたとか言ったら両手の爪に砂ぶち込むからな。覚悟しとけよ」

 

「お前じゃあるまいしそんな事じゃ遅刻しねーよ変態。箒たちに問い詰められてな、弁解してたらこんな時間になっちまった」

 

 

「箒ちゃんと本音ちゃんと清香ちゃんと静寐ちゃんとナニしてただぁ!? てめぇ俺も混ぜろよ! 」

 

「俺がいつそんな事言ったよ!? 耳腐ってんのかテメーは! 」

 

 

 

 

鬼気迫る勢いで一夏の胸倉を掴み、朝から放送コードギリギリの発言を叫びまくる俺。

 

人通りが少ないから少なくともお巡りさんを呼ばれることはないが、既に通行人の痛い視線がひしひしを俺の背中を突き刺している。

 

うーむ、もっとゴミを見るような目で女の子に見られないとやはり興奮はしない。

 

 

 

 

「……ふっ、まあいい。俺にはセシリア様という大天使がいるのだからな」

「本音は? 」

 

「うっひょおおおおおおお!!! パツキンのチャンネーだぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」

「おし、録音完了」

 

「俺が悪かったですからそのレコーダーを仕舞ってください」

 

 

 

 

今日の一夏はレコーダーを用意してたりと一味違っているようだ。

ここで逆らってはまずい、俺のイケメンサクセスストーリーが一気に崩れ去ることになる。

 

ええい、そんなことはさせんぞッ!!

 

 

 

 

「……ひとまず行くぞ、弾をあんま待たせるわけにも行かないしな」

「俺のこと待たせておいて何言ってんだお前」

 

「おっ、こんなとこにさっきのレコーダーが」

「さあさあ、行きましょうぞ一夏殿。弾殿を待たせてはなりませぬなぁ! 」

 

 

 

 

ぐ、ぐぬぬ……!

完全に弱みを握られて敗北している……!

 

だが逆らえば確実に学園で変態のレッテルを貼られるのは確実……ッ!

おのれ一夏……月夜ばかりと思うなよ……。

 

 

 

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<都内某所、某駅前>

 

 

 

 

 

IS学園からモノレールを乗り継ぐこと数十分後、俺と一夏の共通の友人である"五反田 弾(ごたんだ だん)"の住む地域の最寄り駅へたどり着いた。

 

彼は一夏と同じく中学時代の親友とも言える人物の一人で、変態紳士を共に目指す同志でもある。

 

実はもう一人変態紳士を志す同志がいたのだが、現在そいつはやらかして刑務所へとぶち込まれているらしい。

 

なんでも三角定規を使って盗撮したらバレたんだとか。

全くお巡りさんのお世話になるとは三流もいいところである。

 

 

 

 

「弾には連絡しといたぞ、着いたってな」

「ちっ、連絡せずにいきなりあいつん家行って突撃隣の晩御飯やりたかったのに」

 

「お前は一体俺んちで何しようとしてるだよ……」

「おお! 弾ではないか! 久しぶりだな! 」

 

 

 

過去の栄光(?)を思い出していると背後から赤い長髪のワイルドなイケメンがそこに立っていた。

どうやら今までの俺達の会話を聞いていたようで、即座に軽いチョップをかましてくる。

 

 

「よお弾。久しぶり」

「一夏か。ニュース見たぜ、一気に人気者だな」

 

「もう大変だったよ。いきなりドタバタしながらIS学園に入学するわ、クラスメートは全員女子だわ、ここ1週間は苦労した」

「けどやっぱちやほやされんだろ? かーっ、羨ましいねぇ」

 

 

 

 

やはりイケメンとイケメンは絵になる。

まあ俺のこの天性のイケメンっぷりには到底及ばないが、彼らも充分にモテる要素はあるはずだ。

 

俺の場合は女の子がビックリして腰抜かすぐらいイケメンなので不思議とモテない。

ふっ、イケメンすぎるのも辛いということか。

 

 

 

「そうだ弾、久しぶりにアレやっとくか」

「お、そうだな。再会を祝してやっとこう」

 

 

 

弾とは変態紳士を志す同志であり、同時に共に高みを目指すライバルでもある。

このように"アレ"という略称でも意味は通じるのだ。

 

俺と弾の会話に一人取り残されている一夏は、そのまま傍観するのみ。

 

 

 

 

 

「では……流派ッ!! 変態紳士はッ!! 」

「スカートを捲る風よッ!! 」

 

「全新系裂! 」

「天破侠乱! 」

 

「「見よッ!! マイサンは赤く燃えているぅぅぅぅぅぅぅぅッ!! 」」

 

 

 

 

「すいません、警察ですか。公然わいせつでとっ捕まえて欲しい奴らがいるんですが」

「「通報はよせぇぇぇぇぇぇッ!! 」」

 

 

 

 

 

 

こうして俺達は弾の実家である"五反田食堂"へ向かった。

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<五反田家、弾の部屋>

 

 

 

 

まだ昼飯時ではなくお腹も空いていないということで弾の部屋でひとまずは遊ぶことに。

下の階の食堂では彼の祖父である"五反田 厳(ごたんだ げん)"さんが昼食時のラッシュに備えて仕込みをしており、お邪魔したときは挨拶も済ませておいた。

 

 

「昼飯はじいちゃんが作ってくれるとして、何すっか」

「ジュースを賭けてスマブラでもどうだね? 」

 

「いいな、それ。俺は乗ったぜ」

「お前ら俺のスネークに泣き言言うなよ~? 」

 

 

 

そう俺が提案すると弾は自室の戸棚からゲーム機を引っ張り出し、そのセットアップを俺達が手伝う形となる。

 

"大乱闘スマッシュブラザーズEXVS"、通称"スマブラ"は中高生の遊びには欠かせないゲームソフトであり、これが強い奴は学校でも一目置かれる存在になっていた。

 

登場キャラクターはおよそ50人以上。

 

おなじみ赤と緑の配管工や「でっていう! 」が鳴き声の恐竜、更には鍵型の武器を持った国民的ネズミをも参戦なのには驚いたものである。

主に著作権的な意味で。

 

 

 

「俺はご当地キャラから国民的キャラクターへと登り詰めたこの"ふな〇しー"を使うぜ! 」

「お前それ強キャラじゃねーか! 間をとって"アー〇ード"にしとけよ! 」

 

「おい、そろそろ本気で怒られるからその辺にしとけ」

 

 

 

いったい一夏は何に怯えているのか分からないが、全くでかい図体の割にはビビりである。

俺? 初代バイオの犬窓でちびったけど何か?

 

 

 

「あ、やられた。やっぱ強いなふ〇っしーは」

「梨汁ぶっしゃーが偉くダメージ稼ぐからな。お前のトキとか一夏の承太郎とか一瞬だったぜ」

 

「くっ、となると一番最下位の俺が彰久と弾にジュースを奢るのか……。悔しい」

 

 

 

結果は弾の一人勝ち。

まさかあそこでふ〇っしーが北斗有情破顔拳を普通のキックで阻止したのは驚きだった。

処刑用BGM流れてたのに……。

 

つーかあのごつい面子でよくふ〇っしーは勝てたもんである。

ちなみに俺はゲーム&ウォッチ使い。

 

 

 

 

「どうする? なんかもう終わっちまったけど。違うのでもやるか? 」

「お兄、お昼の準備出来たって。早く来てよー」

 

 

 

 

スマブラも終わり、何か次の遊びでもしようとした瞬間に弾の部屋の扉が勢いよく開き、その先にだらしないタンクトップとホットパンツ姿の女の子が現れた。

 

しかもちょっと下着が見えているというサービスショットだったので、思わず無音カメラですかさず写真を撮っておく。

 

彼女の名前は"五反田 蘭(ごたんだ らん)"。

弾の妹にあたり、この食堂の看板娘でもある赤毛の女の子だ。

 

 

 

「おっ、蘭ちゃんではないか。ホットパンツとはいいセンスだ」

「久しぶり、蘭。お邪魔させてもらってるよ」

 

「彰久さんに……一夏さん!? ち、ちょっと待っててください! 」

「おわっ!? なんだよ蘭! 」

 

 

 

「なんで一夏さんが来るって言ってくんないのよ!? ついすっぴんで出てきちゃったじゃない! 」

「はっはっは、気にするでない我が妹よ。俺はそのままのお前がいいと思うぞ」

 

「そういう問題じゃないっつーの!とりあえず急いで準備してくるから時間稼いでおいてよね! 」

「イエスマイシスター! 」

 

 

 

蘭ちゃんは俺達の姿を見るなりひきつった笑顔を浮かべた後すぐ傍にいた弾と肩を組んでひそひそ話を始める。

 

 

おそらく普段のだらしない姿を一夏に見られて困惑したところを兄貴である弾に頼ったのであろう。

何そのギャップ、すごく萌えるんだけど。

 

 

 

「ご、ごめんなさい! もうお昼出来てるんで先に下降りててくださーい! 」

「お、おう。分かった」

 

「あいよー。なるべく綺麗な服装でね」

「大きなお世話ですっ! 」

 

 

そう言うなり急いで彼女は自室へと駆け込み、ドタバタ音を立てて準備を進めているようである。

言われた通りに俺達は苦笑いしつつ下の食堂へと降りていくことにした。

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<五反田食堂、テーブル席>

 

 

 

 

俺たちが席に着くのを確認したのか、厳さんが料理の載ったお盆を席まで持ってきてくれた。

 

今年でもう80歳を越えると言うが本人の身体には全くと言っていいほど老いの影響が見られず、むしろ年々に増して健康になっていると言っていいだろう。

 

しかも食事のマナーにはめっぽう厳しく、意地汚い真似をすると真っ先におたまが黄金回転しながら飛んでくるのは初体面の時には驚いたものである。

 

 

 

「いただきます」

「おう、召し上がれ」

 

 

 

その後いろいろな準備を終え、綺麗な私服に着替えた蘭ちゃんも合流したので、俺たちは一斉に提供された昼飯を食べ始めた。

 

 

厳さん特製"ホルモンと野菜のスタミナ炒め"。

中学時代にはこの料理で腹を満たしてから遊びに行ったり部活に勤しんだりしたものである。

 

 

 

「そういや蘭ちゃんってもう進路とかは決まってるの? もう中3だし、そろそろ決めとかないとまずいんじゃないの? 」

 

「あぁ、私IS学園に決めてます」

 

「なにッ!? お兄ちゃんはそんなこと聞いていませんのことよッ!? 」

「だって言ってないもん。言ったなら言ったでお兄は反対するし」

 

 

 

無言で昼食を済ませるわけにもいかないので蘭ちゃんの進路先を聞こうとしたらとんでもない返答が返ってきた。

どうやら弾には言っていなかったらしく、えらく驚いた様子である。

 

 

だが蘭ちゃんはIS学園に俺がいることは知らないはずだ。

何せ俺はまだ非公式の男性IS操縦者、その存在が露見したら世界は混乱に陥るから。

 

 

 

 

「けど、ISの適正試験とかはどうだったんだ? やっぱり動かすのも難しいし……」

「A判定貰ったから大丈夫でした。あとは入学試験に備えて勉強するだけです」

 

「A判定って……。相当な才能じゃないか。兄貴とは違って蘭は優秀だな」

「えへへ……。そういうことだから、来年入学したら一夏さんにいろいろISの手ほどきして頂きたいなって思っているんですけど……二人で」

 

「あぁ、いいぜ。蘭とは付き合い長いからな、後輩としてもよろしく頼むぜ」

「は、はい! ありがとうございます! 」

 

 

 

 

 

蘭ちゃん懐柔の光景を目の前で見ている弾と俺は正直複雑な気持ちでいっぱいである。

こうしてまた一人、一夏のファンが増えていく……。

 

たぶん彼はただISの特訓をして欲しいと思っているんだろうが、蘭ちゃんの方はそんな気はさらさらなく、少しでも一夏に近付きたい一心でいるのだと思う。

 

なんだろうこの既視感、無性にゴルディオンハンマーを一夏にしたくなってきた。

 

 

 

「あと彰久もいるからな。お前が暇なときは一緒に訓練しようぜ」

「えっ、彰久さんもいるんですか!? 」

 

「ばっ、お前は口が軽いんだっつーの! あんな口外すんなよ、最重要機密なんだから」

「す、すまん彰久……。つい言ってしまった」

 

「な、なんだと……。お前まであの桃源郷にいっちまったっていうのか……!? 嘘だッ!! 」

「お兄、落ち着いてよ」

 

 

 

実を言うと弾にも自分がIS学園に在学していると言っておらず、こうなることを予知して今まで黙っていたわけだが……。

 

一夏のおかげで五反田兄弟にバレてしまった。

 

 

 

 

「まあバレちまった以上は仕方ない、実は俺もIS学園に在学している。そういうわけだ、来年は蘭ちゃんの先輩としてよろしく頼むわ」

「はい、よろしくお願いしますね彰久さん。それと……」

 

 

「邪魔シタラ承知シマセンヨ? 」

「ひっ、ひぃぃぃぃ……。分かっております蘭様……」

 

 

 

 

いきなり表情が変貌しヤンデレ臭のする顔でそんなことを尋ねてくる蘭ちゃん。

思わずちびりそうだったので、弾に助けを求めようと彼に視線を向けると無表情でスタミナ炒めを食べている姿が目に入る。

 

 

 

 

「た、助けて厳さん!! 蘭ちゃんがもうヤンデレに……!! 」

「誰の孫娘がヤンデレだってェ~ッ!? 」

 

「そうだった!! 厳さんは蘭ちゃんを溺愛してるんだった!! 」

「おたまact4ッ!! 」

 

 

 

 

すかさず厳さんに助けを請うと何故かプッツンした状態で俺の方を振り向いた。

どこぞのメキシコからの向かい風よろしく回転をかけながらおたまを投げる。

 

 

 

 

 

 

この五反田家にはアホしかいない。

そう改めて実感させられた俺は、おたまがクリティカルヒットして床に伏せた。

 

 

 

 

 

こうして俺たちの休日は終わりを迎える。

明後日からはいよいよISの実習だ。

 

 

 

 






久しぶりなもんでテンポがグダグダの極み。
五反田家の皆さんはバラエティに富んでいます。

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